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25.遠回り



『キャラック船』



ドワーフの爺がクソ重いから小舟に乗せたまま一艘づつ引き上げてくれ!


ほんで血まみれで汚れてっから雨で綺麗に流して荷室に運ぶんだ


オーライ オーライ!



盗賊「ゲスは怪我人の治療に専念してくれぇ!!」


学者「へ~い!!」ドタドタ


盗賊「おいミライ!!船動かすから帆を頼む!」


剣士「え!?今動かす?」


盗賊「陸から大砲撃たれるかも知れん…とりあえず沖に出たいのよ」


剣士「そうなんだ…」


盗賊「人出が足りんからお前一人で頼む…俺は荷上げで手が離せん」


剣士「わかったぁ!!」シュタタ


女オーク「みんな怪我してるのね…」


盗賊「おう!!まともに動けんのは俺とお前だけだ…てかミルク!!遊んでないでお前も手伝え」


少女「しゅっぱーつ!!」ビシ


盗賊「カゲミ!!ガトリングん所で空警戒しててくれぇ!!」


闇商人「え!?アレがこっちを襲って来る事ある?」


盗賊「備えだ備え!!見張り役頼む!!」



ドタドタ ドタドタ




『ムン・バイ沖』



ザブ~ン ユラ~リ



盗賊「ふぅぅぅ…やっと落ち着いた」


剣士「お酒持って来たよ…はい」


盗賊「おぉ気が利くな?お前も飲むか?」グビ


剣士「僕は要らない」


盗賊「しかしあのタイミングでガトリング使うのはグッジョブだ」


剣士「あぁ…あれ姉さんが使ってたんだ…謎の魔物に当たったのは偶然さ」


盗賊「そうだったか…あの一発で敵が引いて行ったもんだからよ…助かったわ」


剣士「そんなに危なかったんだ?」


盗賊「弓を撃たれててな?小舟にも穴が開いちまったから後で修理頼むわヌハハ」


剣士「あの魔物は何?」


盗賊「俺はあんま良く知らんのだがダークエルフの化け物なんだとよ?」


剣士「へぇ?道理で賢そうな動きをしてた訳だ…」


盗賊「ガトリングで恐竜撃ち落とすのも見てたぜ?」


剣士「そうさスゴイよね?あんな大きな恐竜を撃ち落とせるなんてさ」


盗賊「集弾がちっと悪そうだがまぁかなり良い武器になった…もうちっと集弾性をどうにか出来んか?」


剣士「多分無理だね…使ってる弾の方に問題があるんだ」


盗賊「そうか…まぁしゃぁ無えか」


剣士「バヨネッタの方はもう少しなんとかなるかも知れない」


盗賊「お!?そうよ全然当たらんのよ」


剣士「えとね…撃った反動で少し上振れしてるんだと思う…弾が上に逸れて行っちゃってない?」


盗賊「確かにそんな傾向は有りそうだ」


剣士「両手で持つ様に改造すればもう少し当てられる様になるかもしれないよ」


盗賊「なるほどな?」


剣士「あ!!そうそう…持って帰って来た物資の中に魔石が切れたバヨネッタが有ったよ」


盗賊「おお!!これで3台有る訳か」


剣士「なんだかんだでバヨネットは良い武器だよね…完成されてて工夫の余地は無いけど」


盗賊「だな?弾数が多くて継続火力も高いしな?」



ドスドス



剣士「あ…姉さん…輸血は終わったんだね…血を抜かれ過ぎてない?」


女オーク「平気…ゲスさんに酒飲んで湯に浸かれと言われたわ」


剣士「雨で新しく樽に水が溜まってる筈だから湯を沸かして来るよ」シュタタ


盗賊「酒あるぞ?飲め飲め~」ポイ


女オーク「ありがとう…」


盗賊「輸血要員になっちまってるが…これで戦力維持出来るんならオークは貴重だな…」


女オーク「役に立てて良かった」




『翌日_デッキ』



ザブ~ン ユラ~リ



盗賊「いよ~う!動いて大丈夫か?」


女ハンター「平気…今何処?」


盗賊「船を東に進めてる…まぁ2~3日はこのまま進むだな」


女ハンター「そう…幽霊船を待つ気は無い訳ね」


盗賊「あそこに居ると戦闘に巻き込まれちまう気がしてな」


女ハンター「お酒貰っても良い?」


盗賊「ぬお!どうしたのよ?お前あんま飲まんだろ」


女ハンター「ゲスにお酒飲んで休めって言われてるの」


盗賊「そうか!丁度一人で飲むのもつまらんと思ってた所だ…こっち来いや」


女ハンター「ミライ君は船首楼の方?」


盗賊「そうだ…なんかバヨネッタを改造するらしい…ミライに用があんのか?」


女ハンター「ゲスからコレを預かったの…ミライ君に渡せって」ザラザラ


盗賊「んん?なんだそりゃ?」


女ハンター「黒曜石の欠片らしいわ…ドワーフの体の中から出て来たって」


盗賊「矢尻か…こんな沢山入ってたんか…」


女ハンター「麻酔無しで取り出してるなんて…本当にもう…」ブル


盗賊「お前も又傷が増えちまったな?」


女ハンター「気にしてないわ」


盗賊「まぁ俺もだ…おら!こっちで一緒に飲むぞ」ポイ


女ハンター「頂く…」グビ プハァ


盗賊「立って無いで座れや…ちっと顔見せて見ろ」


女ハンター「何ヨ?」ギロ


盗賊「火薬の焼け跡がポツポツ顔に付いてんだろ」


女ハンター「あぁいつもの事よ…気にして無いから」


盗賊「ライフルに顔引っ付けてっからこんなんなっちまうか…」


女ハンター「フフ…そろそろ分解清掃しなきゃいけない目安なの」


盗賊「今ミライが改造してるバヨネッタはお前用なんだとよ」


女ハンター「どういう事?」


盗賊「反動で手振れせん様にするらしい」


女ハンター「そういう事ね…でも私のライフル並みの精度はムリ」


盗賊「そんな1キロ先じゃなくても300メートルでそこそこ当たりや十分だ」


女ハンター「残念だけどライフルとバヨネッタの2つを持ち歩く気にはならないわ」


盗賊「マテマテいつも長物を背負ってるって訳にもイカンだろ?バヨネッタは隠しやすいという良さもある」


女ハンター「…」ジロ


女ハンター「あなた…何を想定しているの?」


盗賊「ちょっとした危機管理だ…昨日のやたら動きの良い魔物みたいのが居る事を知っちまったからな」


女ハンター「確かに…残弾を数えられてた…」


盗賊「そういうこった…弾数の多いバヨネッタを上手く使う方が良いって事よ」




『バヨネッタ改』



今までのバヨネッタは片手で取り回しやすい様な形状をしてたんだ


銃を支えてるのがハンドルの部分だけ…だから撃鉄を引いた時にも少し銃身が動いてしまう


それに加えて単発の反動でもっと銃身がブレる…これが命中率悪い原因さ


今度の奴はストックの形状を少し変えた…この部分を肩に当てて使うんだ


そして左手で握るグリップも追加した…両手で保持するんだよ



学者「ほーーちっこいライフルっすね」


剣士「今までと同じ様に片手でも使えるから命中率がどれくらい違うのか試してみて?」


女ハンター「照準はアテになるのか?」


剣士「調整は必要になると思う…一応スコープが取り付けられる様になってるけど意味無いと思うな」


女ハンター「スコープで狙えるほど精度は良くないと言う事ね」


剣士「うん…でも弾道が発光して見やすいからスコープで見る利点が無い訳じゃ無いよ」


女ハンター「リロードで余分な動きが無い分…これはこれで使えるか…」カチャ カチャ


剣士「外しても2秒後に又撃てるからね…そこが強みだよ」


盗賊「火薬が飛び散って顔に焼けジミが出来ないのも利点だぜ?」


女ハンター「うるさい…」チャキリ


盗賊「おいおい!こっち向けんな」


学者「しかしこう…みんな甲板に集まって武器持って裸同然の恰好じゃ海賊みたいっすね?」


盗賊「ヌハハ違い無え…ちっと暑いから海水被って来るわ」ドタドタ


女ハンター「私も血を洗い流しておく」スタ


盗賊「おー来い来い!デッキブラシで背中擦ってやるぞ?」




『数日後_船尾楼』



ユラ~リ ギシ



闇商人「あ…ゴッツさん動ける様になったみたいだね」


航海士「お陰様やな…相方はまだ血が足りん様や」


闇商人「何か食べたいなら荷室の食料好きな物食べて貰って構わないよ」


航海士「ゲスいう医者に制限されとる」


闇商人「ハハそれは残念だったね…多分ポーションの効き具合とか実験されてるんだ」


航海士「しかしこの船は医者もおるし船大工も良いのが乗ってる様やな?」


闇商人「分かるかい?」


航海士「小振りやが良い船や…おまんは航海士の役なんか?」


闇商人「僕は物資管理かな…航海士は居無いよ」


航海士「積み荷を見た感じ商船とはちと互いそうやが?おまんら何者や?」


闇商人「只の冒険者と言った方が合うのかもね…目的は海賊王の娘を探してる…」


航海士「娘さん達を探してどないするんよ?」


闇商人「血縁かも知れない人がこの船に乗ってるのさ…ほら?今言ってた良さそうな船大工…」


航海士「なんやとぅ!?まさか…名はミライ…なんか?」


闇商人「お!?話が早そうだね?」


航海士「こりゃエライ巡り合わせや…シン・リーン行っとる場合や無いで?」


闇商人「どういう事?」


航海士「ドワーフ領行って保護してもろうた方がええわ…ちと遠いんやが…」


闇商人「でもそこに行って海賊王の娘が見つかる訳じゃ無いよね」


航海士「うむむ…そうなんやが俺等それを知りながら放置しとったのがバレたら海賊王に追われてまう」


闇商人「まぁでも…そのうちドワーフ領に行く事になるだろうさ」


航海士「それまで同行せなアカンくなってもうたわい」


闇商人「それは助かるねぇ…戦力が足りない所だったからさ」


航海士「ちっとそのミライいう船大工を見て来てかまんか?」


闇商人「良いよ…いつも船首楼の方に居る」




『甲板』



ユラ~ ザブ~ン



盗賊「ミライ!!フォアの帆を2番に張り替えてくれぇ!!リッカはメイン頼む!!」ドタドタ


剣士「おっけ~!!」シュタタ


盗賊「お?ドワーフの爺か…動ける様になったんだな?」


航海士「ゴッツや!!いい加減名前を覚え~や!!」


盗賊「ちっと帆の張り替えで忙しい所だからその辺で見ててくれぇ」ダダダ


航海士「かまんかまん!ちいと様子を見に来ただけや…気にすんなや?」


剣士「髭もじゃのドワーフさ~ん!!こっちに海水汲んでるから血を落として~!!」


航海士「ゴッツや言うとるやろ」


剣士「じゃぁゴッツさん…もじゃもじゃの毛に血がこびり付いてるよ…匂うから落としてぇ!!」


航海士「んん?そんな気にならんが?」


盗賊「ヌハハ…ドワーフは自分の血がどんな匂いすんのか分かって無い様だな?」


航海士「そら済まんかったな?」ドスドス


剣士「もう一つの樽は雨水が入ってるから最後はそれで洗い流せば良いよ」


航海士「おまんがミライか?」


剣士「ん?どうして?」


航海士「なんで目隠ししとるんよ」


剣士「あぁコレね…布の網目からちゃんと見えてるんだよ…こうしてた方が色々見える事が有るのさ」


航海士「ちっと顔が見たいんやが…」


剣士「ダメダメ…そういう訓練してる最中だから」


航海士「まぁええわ…この船はおまんが整備しとるんよな?」


剣士「うん!装備品も銃器も全部僕が手を入れてるんだ…何か欲しい物でも有るのかな?」


航海士「銃器もおまんがやっとるちゅうんか…」


盗賊「おおミライ!そういやドワーフ2人は手ぶらなのよ…適当な武器あるか?」


剣士「鉄の斧が使い道無くて丁度余ってる…あと木槌なら直ぐに作れるけどどうする?」


盗賊「まぁベタな所で盾と斧だな…これで安定だ」


剣士「おっけ~!!帆の張り替えが終わったらちょっと綺麗に細工してあげる」


航海士「俺は装備品を貰いに来た訳や無いんやが…」


盗賊「人出が足りて無えもんだからよ…武装してデッキに出ておいて貰えると助かる訳よ」


航海士「まぁええわ…細工してる所を見ててもかまんか?」


剣士「お!!?細工に興味ある?」


航海士「そら俺等ドワーフやからしょぼい細工やないか気になるわ」


剣士「おけおけ!裏技があるのさ…何か教えて貰える事があるなら聞きたいよ」


航海士「ほな体洗ろうて待っとるで?」


剣士「うん!!こっち急いで終わらせる!!」




『船首楼_作業場』



カーン カンカン



この斧はさ?只の鋼鉄の形を整えた単純な物なんだけど…


こうやって模様を沢山施すと強度が増すんだよ…不思議でしょ?


ミスリルとか軽い材料で作るよりも普通の鉄にこうやって細工を施した方が良い斧になるんだ


焼きを入れる炉が無いから鉄が柔らかいままだけどその分直ぐに直せる


刃の部分は研がなくても十分威力があるからこのままで良い



剣士「あとは骨粉をまぶして擦れば艶も出て来る…」ゴシゴシ


航海士「おまん…鍛冶は独学なんか?」


剣士「本を読んで勉強したさ…本当は精錬して全部自分で作ってみたいよ…まぁ船の上じゃ無理だね」


航海士「ふむ…腕は確かな様や」


剣士「細工して無い斧と比べてみて?打感が全然違うよ?」


航海士「どうやって試せ言うんや」


剣士「あぁ甲板に置いてる木人は壊してしまっても良いんだ…試し切りしても良いさ」


航海士「ほうか…もう一つ相方の分も作って貰えるか?」


剣士「おけおけ!斧は丁度余ってたんだ…もう一個作っておくよ」





『デッキ』



スタスタ



盗賊「お?カゲミか…船尾楼から出てくんの珍しいじゃ無えか…どうした?」


闇商人「これを見てくれ…」パサ


盗賊「そらお前の海図だろ?何回も見たぞ?」


闇商人「ゴッツさんに陸地を書き直して貰ったのさ」


盗賊「なぬ?間違ってたってのか?」


闇商人「いや…間違っては居ないんだけれど海図が古いらしい」


盗賊「ほーん…」ハナホジー


闇商人「今居る場所は赤道に近い場所なんだけど海面が上がっててこの海図とは陸地の形が違うんだってさ」


盗賊「んん?ちょい見せろ」


闇商人「僕もビックリさ…こんなに違うとは思わなかった」


盗賊「なんだこりゃ…シン・リーンの東側はみんな海になってんのか?」


闇商人「そうらしい…なんでも昔岩塩地帯だった場所は海水が入り込んで一気に無くなったのだとか」


盗賊「なるほど…標高の低い場所はみんな沈んだって事か」


闇商人「特にこの赤道付近は全然陸地の形が違うのさ」


盗賊「まぁス・エズー海峡に行く分にはそう変わらんわな」


闇商人「それも少し問題が有ってね…潮位が高い時じゃ無いと向こうに行けない様だ」


盗賊「マジか…手前で足止め食らうってか」


闇商人「そういう事さ…夜になったら月の観測をして直径を測るんだってさ」


盗賊「月が近い時じゃ無いと行け無え訳か…そんな情報全然無かったな?」


闇商人「天然の関所だよ…ス・エズー海峡の手前でシン・リーンに行く船を全部チェックされる」


盗賊「そら面倒毎が起きちまうかもな?ガトリングなんか見せられんぞ」


闇商人「やっぱりそう思うよね」


盗賊「バラしてロボの腹の中にでも隠すだな」


闇商人「お?そんな手があるのか…」


盗賊「お前商工会のパスは持ってんだろ?」


闇商人「有るけどシン・リーンとは取引が無い…まぁ外海渡って来てる訳だから海賊にしか見えないと思う」


盗賊「そうか…下手に掴まるのは避けたいな…う~む」


闇商人「それで…ス・エズー海峡には行かず大陸を右手に見て大回りするという行き方もある」


盗賊「そらゴッツの提案か?」


闇商人「余分に10日程掛かるけどどうせ潮位が上がるのを待つならそう変わらないんだよ」


盗賊「なるほど?航路はゴッツが知ってんだな?」


闇商人「まぁ他の海賊が沢山居るらしいけど…運が良ければドワーフの海賊とコンタクト出来るかも知れないんだ」


盗賊「おし分かった!国と関わるよりも海賊の方がよっぽどか楽だ」


闇商人「航路の選択はゴッツさんに任せても良いかな?」


盗賊「素人の俺等よりも良さそうなんだろ?」


闇商人「まぁそうだろうね」


盗賊「任せるわ…俺は船の操作に専念するわ」


闇商人「じゃぁそうさせて貰う」スタ


盗賊「おい!ちっと待て」


闇商人「んん?何かな?


盗賊「話が変わるんだが…この間手に入れた電脳化した奴の部品…」


闇商人「ああアレね…」


盗賊「俺なりにちょい考えたんだが…フィン・イッシュ女王の船がムン・バイに寄港する理由はソレじゃ無えか?」


闇商人「どう言う事?」


盗賊「あの機械はぶっ壊さないと他の奴が来ると言っただろう」


闇商人「ふむ…可能性は有りそうだね…」


盗賊「女王が細かい行き先を指示するとは思えんのよ…その周りに誰か居るんじゃ無いかと思ってな」


闇商人「なるほど…じゃぁあの機械を持って居る限りずっと追われる可能性が有ると言いたいんだね?」


盗賊「それも有るんだが…それよりも奴らがなんで来るのかって話よ」


闇商人「マルコさんも同じ物を持って居たんだよ…それを使ってホムコさんを生んだらしい」


盗賊「生む?」


闇商人「ホムンクルスの体を機械に与えるのさ」


盗賊「なるほど読めて来たぞ…つまり電脳化の奴らはそいつを壊さんと数が減らん訳だ」


闇商人「まぁ待って…僕が調べて分かったのはマルコさんが持ってた物とは少し違いそうだと言う事だよ」


盗賊「話せよ」


闇商人「マルコさんの持ってた物はもう一回り大きな物でメモリと言う物を差し込む穴が2つ有るんだ」


闇商人「この間手に入れた機械にはその穴が2つとも無い…だから別物の可能性が高い」


盗賊「お前それをどうするつもりなんだ?」


闇商人「こう考えを変えて見ないかい?人質だよ…」


盗賊「ほう?」


闇商人「君が言う様にあの機械を探しに他の電脳化の者が来るのならそれはそれで利用価値が有る」ギラリ


盗賊「おっとぉ…ちっと俺はゾクっとしたぜ?お前の本来の姿はそういう感じだ」


闇商人「電脳化の者がホムンクルスだと知った今…僕も少し考え方が変わって来たよ…」


闇商人「マルコさんに変わってこの謎に向き合わなきゃいけないと思い始めた」



何故ならホムンクルスの有り方がマルコさんの思い描いてた物と違うから…


簡単に人を殺すようなホムンクルスなんか居て良い訳がない…




『数日後_大海原』



ザブ~ン ユラ~リ



盗賊「なぁぁ~んも起きんな…」ボケー


戦士「穏やかで良いでは無いか」


盗賊「立ち合いでもやっか?」


戦士「歳を考えてくれ…遠慮する」


盗賊「こう暑くちゃ寝るにしても寝苦しくてよ」


戦士「ドワーフ2人が働く様になってから少し暇になった様だね?」


盗賊「まぁな?もともと船乗りだったもんだから俺等より手際が良いんだ…全然進む速度も違う」


戦士「その様だ…アランは見習わなくて良いのか?」


盗賊「帆走のか?」


戦士「まぁ色々だな」


盗賊「星の観測とか俺はあまり興味が無くてよ」


戦士「ハハ仕方が無いか…」


盗賊「ミルクはどうした?ずっと荷室だよな?」


戦士「フーガという少年を飼い慣らすと言って構って居る…まぁやらせておけば良い」



シュタタタ クルクル シュタ



盗賊「んあ?ミライ!!そりゃミルクの真似か?」


剣士「アハ…バレたか」


盗賊「あんま飛び回って海に落ちんなよ?」


剣士「これ作ったんだ…皆に一つづつ配ってる」ジャラリ


盗賊「んん?なんかのアクセサリーか?」


剣士「黒曜石の欠片が一杯余ってたからさ…オークは黒曜石を魔除けに使うって言うんだ」


盗賊「ほーん…ほんじゃそらお守りって訳だな?」


剣士「リコルさんの分もあるよ…ハイ」ジャラリ


戦士「これを首に下げて置けば良いのかね?」


剣士「うん!!姉さんが言うにはそれで悪い夢を見なくなるらしい」


盗賊「おお!!暑くて寝苦しかったのよ」


剣士「良い夢見られると良いね…じゃぁ他の人にも配って来る」シュタタ


戦士「良く見ると銀細工を施してあるぞ?」ジロジロ


盗賊「まぁそこそこの値段で売れそうだわな」


戦士「いやいや黒曜石の魔除け効果は本当にあるらしい…これで100日の闇を乗り切った者も居るそうだ」


盗賊「むむ…もしかして魔物が全然現れないのはこれのお陰か?」


戦士「そうかも知れないねぇ…」



カーン カーン カーン



盗賊「んん!?」ガバ


女ハンター「左舷側に並走するスクーナー!!距離5キロ以上」


盗賊「おっとお!!?どこだ見えん!!」キョロ


女ハンター「望遠鏡使って!」


盗賊「船の大きさは!?」


女ハンター「4本マストの低床…向こうの方が早い」


盗賊「こりゃ追い抜かれて一気に横から来るパターンだな…ちっと備えるか」


女ハンター「2キロまで寄ったら警告射撃を船に当てられる…どうする?」


盗賊「バヨネッタの調整やりたかったんだろ?500メートルまで寄せて的にしろ」


女ハンター「向こうに大砲が乗ってたら危ないわ」


盗賊「追い散らしてもどうせ夜中にこっちの武器奪いに又来る訳よ…こっちにゃガトリングが有るから撃ち負けん」


女ハンター「分かった…監視しておく」




『海戦』



ドーン! ポチャ



盗賊「毎度の事だが…当たりもし無え大砲撃って無駄だと思わんのか…」


学者「こっちのドテッパラに直進して来やすね…これが海賊の定石なんすかね?」


航海士「あの船はドワーフの海賊やないで好きにしてかまんで~」


盗賊「だとよ?ラス!!乗ってる奴の顔確認出来るか?」


女ハンター「いつもの感じ…今距離1キロくらい」


盗賊「そろそろ降りて来てバヨネッタ撃つ準備しろ」


女ハンター「分かった…」ピョン スルスル


盗賊「おーし!カゲミも居るな?」


闇商人「準備オーケーさ」


盗賊「まぁ相手を殺す必要は無え…狙いはバヨネッタでマストの破壊だ」


学者「動く的はなかなか当たらんすけどね…」


盗賊「弾速が早えんだから上手く狙え!ほんで照準を調整しながら命中精度を上げるのを優先しろ」


学者「へいへい…」


盗賊「危険な距離まで寄ったらガトリングぶっぱするからまぁ安心しろ」


学者「ほんじゃそろそろ撃ちやすぜ?」


盗賊「何度も言うが照準の調整が第一優先だからな?」


学者「分かっていやすよ」


盗賊「おーし!撃てぇ!!」



ターン! ターン! ターン!



学者「ウハハ火薬の煙が出ないんでこっちが何してるか分かって無さそうっス」


盗賊「無駄口は良いから狙い通り撃ててるか確認しろボケ!」


女ハンター「なるほど…弾速が途中で変わるのね…」ブツブツ



多分熱膨張で少し膨らんで空気抵抗が増すのが原因…


弾道が不規則なのはそのせいね…でもしばらくは直進性がある


300メートルならそれなりに当てられるかも…



女ハンター「…」カチャカチャ


盗賊「どうよ?命中精度上がりそうか?」


女ハンター「まだ遠いから狙い通りに行かないけれど300メートルくらいなら…」チャキリ


盗賊「焦らんで良いぞ?どうせ向こうの大砲は威嚇だろうからな」



ターン! ターン! ターン!




『スクーナー』



ザブン ギシギシ



海賊1「うはははアイツ等デッキに上がって立ちんぼだ…お前等乗り込む準備だぁ!」


海賊2「いやぁこんな所で無印の商船たぁツイてる」


海賊3「デッキ上の大砲らしい物を動かす素振りは無えな?」


海賊4「おい!!甲板に乗ってるのはドワーフじゃ無えのか?」


海賊1「ちぃぃドワーフが乗ってんのか…先に弓で射かけるぞ!弓持て弓!!」



シュン! シュン! シュン!



海賊2「んん?何だ今の?」


海賊1「構うな!!奴らの船の前方に回って進路塞ぐぞ!舵回せ!!」


海賊3「おい!大砲どうすんだ?次撃てるぞ?」


海賊1「一発当ててやれぇ…大人しくなるだろう!!」


海賊3「おっしゃぁ!!」



ドーン!! ポチャ



海賊1「しっかり当てろボケがぁ!!」



シュン! バチン! パラパラ



海賊1「なんだぁ!?」


海賊2「おいおい!何か銃器を撃って来てるぞ?」


海賊1「何ぃぃぃ!!?」ドタドタ



バチン! バチン! パラパラ



海賊4「おいおいおいおい…アイツ等マスト狙って撃っていやがる」


海賊1「ごらぁぁ!!右に転進だぁ!!後方に回って逃げっぞ!!」



バチン! バチン! メキメキメキ 



海賊1「うお!!フォアマストが倒れ…」



ザブ~ン バキバキバキ




『キャラック船』



ユラ~リ ギシ



盗賊「おっしゃ!!フォア折れて着水だ…いきなり船止まって放り出されていやがる」


学者「あららら斜め向いちゃって居やすね?」


盗賊「そらあの速度でいきなり帆が着水したらロープ切らんとあんなんなるわ」


女ハンター「ふぅ…ガトリングの出番無かったわね」


盗賊「ほんでどうよ?」


女ハンター「300メートルはギリギリのライン…何度か打ち直せば当たる感じ」


盗賊「ゲスもそんな感じか?」


学者「俺っちもスコープ欲しいっすよ…目視は限界ありやす」


女ハンター「私が調整するから貸して貰える?」


学者「それが良いっすね」


女ハンター「200メートルくらいから弾道が不規則に変わるからこの調整が限界ね」


盗賊「それが分かれば収穫在りだ」


学者「これ威力は相当なもんすね?何発か当ててマスト折っちゃうくらいなんで」


盗賊「折れたのは帆が風をもろに拾ってたからだな」


女ハンター「無垢の木だから弾が突き抜けなかったのも良かった」


盗賊「まぁこれでバヨネッタの使い方が大分分かって来た」


学者「兄貴は何を想定してるんすか?」


盗賊「ズバリ言うとエルフ対策だ」


女ハンター「やっぱりそういう事ね」


盗賊「奴らの弓は…まぁ大体300メートルくらい飛ぶらしい…ほんで命中率も高い」


学者「300メートルで弓が当てられると思えんのですが…」


盗賊「最大射程はそんなもんよ…有効射程がどんなもん有るか知らんが張り合うならそれ以上無いとダメな訳だ」


盗賊「ほんで俺らはエルフの様に機敏じゃ無え…射程と精度で勝負するしか無いのよ」


学者「なんで又エルフと戦う想定なんすかね?」


盗賊「あぁ言い方悪かった…エルフ並みの奴と言った方が正しい」


闇商人「アランの言い分は正しいよ…僕はその昔勇者達の戦い振りを見た事が有る」


学者「え!?マジっすか…」


闇商人「海賊王の娘アイリーン…宙を舞って戦う姿はエルフ以上なんだ…強い魔物ってそんな感じさ」


盗賊「機動隊の連中も戦い方が異常だろ?そういう奴らに備えてる訳よ」


学者「いやぁぁ雲の上の存在だと思って居やしたが…これで俺っちも機動隊と同等っすか…ウヒヒ」


盗賊「ラスはまぁ行ける…お前はもうちっと鍛える必要がありそうだ」



『日暮れ_デッキ後部』



ザブ~ン ユラ~



盗賊「リコル!海賊が追って来ないか確認してんのか?」


戦士「ハハまぁ一応ね…スクーナーが居たと言う事は陸も近くて他にも居そうだと思ってね」


盗賊「もう暗くなってなんも見えんだろ」


戦士「陸を全然見ないが現在地は分かって居るのかい?」


盗賊「そら心配しなくて良いらしい…海賊が多い海域を避けてるんだそうだ」


戦士「そういう事か…」


盗賊「どうも陸の方はちょいちょい村みたいなのが出来てる様でな…割と他の船も来るらしいのよ」


戦士「ほう?未踏の大陸を開発している訳か…私達は寄らないのか?」


盗賊「今は補給の必要が無いもんでな…先を急ぐって訳だ」



スタスタ



闇商人「やぁ!2人で何をヒソヒソ話してるんだい?」


盗賊「おぉカゲミ!お前も暇で出て来たな?」


闇商人「まぁ書物が乗って無いから暇でね…海図眺めるのも飽きたさ…ほらお酒持って来たよ」ポイ


盗賊「じゃぁ3人で回し飲みでもすっか!」グビ


闇商人「此処に来たのは今後の相談をしようと思ってね」


盗賊「んん?何ヨ?」


闇商人「まぁちょっと海図を見て…結論から言うと行き先を旧港町に変更しないかと言う事なんだ」


盗賊「海に沈んだ岩塩地帯を超えてくってか…ちと遠く無いか?」


闇商人「新しくこちら側に出来た港町はシン・リーンの玄関口に当たるのは知ってるね?」


盗賊「ふむ…」


闇商人「軍港も兼ねて居て沢山の魔術師も居るのさ…ここまで言えば後は分かるね?」


盗賊「旧港町の方に行けば魔術師に関わらんで済むって訳な?」


闇商人「正解…僕達は銃器や爆弾を沢山持って居るから商人ですという言い訳は通用しないと思うんだ」


盗賊「ほんじゃ旧港町の方なら行けるって算段なんだな?」


闇商人「うん…今は漁船が行き来するだけの港さ…そう言うのも有ってドワーフが行きやすい場所なんだってさ」


盗賊「シン・リーンまで行くなら船を置いて行く必要があるよな?」


闇商人「それは新しい港町でも変わらないさ…むしろ旧港町の方がシン・リーンへのアクセスが良かったりもする」


盗賊「こっち側から行くと山越えすんだっけか」


闇商人「そう…上手く商隊に入れれば良いけど僕には伝手が無い」


盗賊「まぁそれで行くか!!」


闇商人「1週間で旧港町に入れる計算になる…寒くなって来るから着替えを用意した方が良いよ」


盗賊「マジか…俺の着る物はどっか捨てて来たな」


戦士「丁度引き上げた衣類が荷室に保管してある…それを着れば良い」





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