22.望遠鏡の向こう側
『船尾楼』
ガチャリ バタン
学者「あらら?カゲミさんどうしたんすか?海図なんか広げて…」
闇商人「んん?あぁちょっとフィン・イッシュ船団の行動をもう一度考え直そうと思ってね」
学者「この船は大分先行しちゃって居やすかね?」
闇商人「多分そうだよ…あ…肉を持って来てくれたのかい?」
学者「これカゲミさんの分の肉っす…ワニ肉と殆ど同じっす」
闇商人「ありがとう…頂くよ」モグ
学者「…それで…何か考え有るんすか?」
闇商人「う~ん…確実な話じゃ無いんだけど…もし要衝の攻略でハウ・アイ島の方に行ってたとしたらと思ってね」
学者「俺っちはその島の事知らんす」
闇商人「君の目から見てフィン・イッシュの船団は要衝攻略にどれくらい掛かると思う?」
学者「早くて2カ月くらいは掛かるっす…重装射撃砲と合わせて空から魔法撃てるならもうちょい早いかもっすね」
闇商人「そんなに掛かるのか…」
学者「もしハウ・アイ島の攻略やってるんなら終わるまでここで待ちぼうけ食らうかも知れんすね」
闇商人「うん…なんか今からそっちに向かうのも迷いそうだ」
学者「逆方向じゃ無いっすか」
闇商人「なんか分かって来たな…沢山ある立ち寄り場所は多分補給する所だな…」
学者「どういう事っすか?」
闇商人「幽霊船に扮した船は補給で各地を回るんじゃないかな?」
学者「あーーー本体じゃなくて補給船な訳っすね?」
闇商人「戦闘には参加しないで物資運搬が主な役割…幽霊船を扮して各地を回るのさ」
学者「そういや船がやたら大きかったですわ」
闇商人「そう考えると立ち寄る場所が広く分布してる説明が付く」
学者「でもヤン・ゴンの方に2隻の軍船が居たじゃないっすか…アレはどう考えやす?」
闇商人「単純に連絡が行き届いて居ないのさ…海賊に阻まれて居たりするんじゃないかな?」
学者「なるほど…」
闇商人「まぁ要衝攻略が終わりそうになったら女王の乗る幽霊船もどきがこっちに来るんだろうなぁ」
学者「下手に動くと行き違いになりそうっすね」
闇商人「うん…でもなぁ…あと2カ月待つ感じになりそうかぁ…」
学者「もうちっと早いかも知れやせんが…」
闇商人「2カ月も主力の兵隊が国を離れている状況は良く無いな…」
学者「え…それって攻められるっていう意味っすか?」
闇商人「うん…シン・リーンも同じだよ…要衝攻略で魔術師達が居ない隙を狙われる可能性もある」
学者「いやいや考えすぎっすよ…他に攻め込んで来る勢力なんか無いじゃ無いっすか」
闇商人「エルフは?他にもドワーフ達は?」
学者「もしかしてそんな話とか何処かで聞いたんすか?」
闇商人「聞いては居ないけどさ…そういう可能性も無い訳じゃ無いと思ってね」
学者「ちっと情報が足りんすよ」
闇商人「今日も高高度を飛んでる気球を見たんだ…僕達が海に出てる間に世界はいろいろ起きて居るのかも知れない」
学者「向かってる方向は?」
闇商人「昨日と一緒さ…何が有るのか分からないけれど外海の方向に向かってる」
学者「ちっと兄貴にも報告しときやすね」
闇商人「助かるよ…」
学者「それでカゲミさんにお願いが有ってですね…」
闇商人「何だい?」
学者「新しい銃器を作ってるんでちっと魔石を融通して欲しいんすよ」
闇商人「あぁ…じゃぁこうしよう…ウラン結晶で魔石の充填をするのは僕を優先して欲しい」
学者「兄貴にお願いしてきやす」
闇商人「もう僕の財産は魔石しか無くてね…これが無くなったら一文無しさ」
学者「大丈夫っすよ…なんやかんや兄貴の稼ぎは半端じゃ無いもんで」
『翌日』
ザブン ギシ
盗賊「じゃぁ俺等行って来るからよ…後頼むわ…ラス!ミルク!小舟に乗ってくれ」
少女「ウルフィも連れて行くぞ」シュタタ
盗賊「恐竜に食われんなよ?」
少女「ウルフィ来い!!肉探しに行くぞ」
ウルフ「ガウルルル…」シュタタ
学者「兄貴ぃ!!ちっと海の中潜る範囲広げるんでちっと船動かしやすぜ?」
盗賊「構わんが船底擦って穴開けんなよ?」
学者「俺っちが潜って目視するんで大丈夫っす」
盗賊「舵はロボだな?」
学者「そうなりやすね…暇にならんので良いっすよ」
盗賊「まぁ任せる…あんま遠くに船を停めると帰りがしんどいからちっと考えてくれ」
学者「分かりやした」
盗賊「おーし!ほんじゃ探索行くか!!」
女ハンター「ちょっと!!デリンジャーの弾は忘れてない?」
盗賊「今日はバッチリだ…爆弾も少し余裕持ってる…お前の方こそ荷物が軽い様だが?」
女ハンター「機動重視…ライフル弾20発…ベレッタ2丁合わせて弾倉26発分」
盗賊「まぁ十分か…出発する」
『ムン・バイ遺跡』
スタスタ
盗賊「ミルク!索敵はお前の鼻頼りだから頼むな?」
少女「ウルフィを先行させるぞ」
盗賊「恐竜はクソ足速いんだぞ?一匹で行かせて大丈夫なんか?」
少女「ウルフィは小さいから何処にでも逃げられる」
盗賊「おぉ!!確かに…てかお前もそうだな」
少女「恐竜倒したら肉は貰うぞ…血は生きてる内に飲まないとマズくなる」
盗賊「あぁ好きにしろ」
少女「それでキャンプ跡はどっちの方角だ?」
盗賊「まぁ付いて来い…2キロ程歩く」スタ
女ハンター「ねぇ…ここの遺跡って何か壊され方が変よ?」
盗賊「多分な…未踏の地だったもんだから氷で押しつぶされてんのよ」
女ハンター「あぁそう言う事ね」
盗賊「丈夫な建造物は潰されないで残ってるから身を隠す場所は沢山ある」
女ハンター「なるほど…それで小型の恐竜も身を隠すのに来ている訳ね」
盗賊「だろうな?空飛んでるくそデカイ恐竜から隠れてる訳よ」
女ハンター「プテラノドン」
盗賊「ヌハハ…どうも名前を覚えらん」
女ハンター「それであの小さい恐竜の餌になってるのは何?」
盗賊「そのプテラノドンの食い残しでも漁ってんじゃ無えのか?」
女ハンター「じゃぁ基本的に共食いする訳ね…倒した恐竜をそこに残せば安全になる…罠が有効ね」
盗賊「お前…罠作れるんか?」
女ハンター「材料があれば作れるけれど持って来て無い」
盗賊「恐竜を捕まえる罠ってどんなよ?」
女ハンター「捕まえるのじゃなくて地雷で倒してしまうの」
盗賊「あぁそう言う事か…確かに餌と地雷置いときゃ索敵にもなるな」
女ハンター「ちょとしたバネと黄鉄鉱があれば作れるからミライ君に材料無いか聞いておく」
盗賊「黄鉄鉱か…爆弾の信管用に確か沢山買ってた筈だ」
少女「おい!!ウルフィ先に行っちゃったぞ…無駄話してないで早く案内しろ」
盗賊「へいへい…」
『キャンプ跡』
盗賊「ここだ…」
女ハンター「こんな建屋の中で良く見つけたのね…でも随分古い」
盗賊「1年以上は経ってそうだ…散らかり具合からして5~6人は居た筈」
女ハンター「長期間この環境で過ごすのはムリがある」
盗賊「地下が有る筈だからそこに逃げ込めば行けるだろ…ミルク!何か分からんか?」
少女「そんなに長い間匂いは残らんぞ」
盗賊「そらそうだわな」
少女「でも水の匂いが何処かでするな」
盗賊「水?毎日雨降るからどっかに溜まってんじゃ無えのか?」
少女「違う…何処かから流れてる違う匂いのする水だ」
盗賊「おお!!」
女ハンター「とりあえずこの場所は安全そうだから休憩するなら此処ね」
盗賊「うむ…まぁ燃やす物が何も無いんだが…」
女ハンター「一応低木はポツポツ生えて居るけど?」
盗賊「ヤシ系の中身がスカスカな奴だ…あんなん速攻燃え尽きる」
女ハンター「実が生って居るなら持ち帰れば良い」
盗賊「余裕が有ったらな?俺らは探索に来てる訳だから採取はその後だ」
女ハンター「いつだったかあなたにあげたヤシの実…覚えてる?」
盗賊「わーったわーった!採って来るから待ってろ」ダダ
少女「なるほど…アランはこうやって言う事聞かせるか」
女ハンター「この建屋の上階は多分狙撃に適して居るから私はここで待機した方が良さそう」
少女「その為の水分調達か」
女ハンター「上階を見て来るからアランが戻ったら伝えておいて」
『30分後_建屋上階』
スタスタ
盗賊「お!?こりゃ…」キョロ
女ハンター「ヤシの実は?」
盗賊「採って来たぞ…これでヤシの実の借りはチャラな?」ポイ
シュタタタ ズザザー
少女「おおお!!何だこれは!!快適そうだぁ」ゴロゴロ
盗賊「ここに居た奴らはここでしばらく生活してたんだな…建屋の中は何も無いと思って探索して無かったわ」
女ハンター「敷物は全部恐竜の皮ね…もう傷んでるけれど生活道具は割と揃ってる」
盗賊「全部骨を削って作ったんか…食器類はまだ使えそうだ」
女ハンター「こんな事出来るのは誰だと思う?」
盗賊「ミライなら出来る」
女ハンター「それから出窓から海も見えるのよ…あなたの船もここから丸見え」
盗賊「んん?てことはこの安全な場所で船が来るのを待ってた感じか…」
女ハンター「多分そう…」
盗賊「つまり船で此処まで来たのは良いが沈没してこの建屋で過ごしてた…」
女ハンター「そこまでは分からない…置き去りにされたのかも知れないし」
盗賊「この丁寧な感じはそこらの海賊とは違うな…」
女ハンター「骨をこんな風に加工できるのはドワーフくらいなのでは?」
盗賊「うむ…確かにそうだ」
少女「アラン!この骨の食器は模様が掘ってあるぞ」
盗賊「ミライがそんな感じの物を作るな?」
少女「今海賊じゃないって言っただろう?ドワーフは大体海賊じゃ無いのか?」
盗賊「んあぁぁ…普通の海賊よりも意識の高い海賊だわな…細けえ事うるせぇ」
女ハンター「やっと海賊王絡みの手掛かりを見つけた…そう思わない?」
盗賊「海賊王の娘が此処にか…まぁ有り得ん話ではない」
少女「こういう場所が他にも有るかも知れないぞ」
盗賊「取りあえず此処を拠点にして周囲の探索だ」
女ハンター「私は此処に残って狙撃準備をする…援護射撃は1キロ圏内」
盗賊「分かった分かった…その範囲内で探索するからよろしく頼む」
女ハンター「あと今日は私一人此処に残るから船に戻ったら光を使った連絡手段を伝えておいて」
盗賊「なぬ!?」
女ハンター「こちらから船も伺えるし船からも望遠鏡でこちらを伺える…良い条件でしょ?」
少女「ウルフィは此処に残しても良いぞ」
女ハンター「それなら尚安心ね」
盗賊「なんでまた一人で残りたいのよ…気に入ったんか?」
女ハンター「勘ね…夜はまた違った発見が有ると思うから」
盗賊「食い物はヤシの実しか無いが良いのか?」
女ハンター「大丈夫…レーションを少し持って来てる」
盗賊「まぁ良いや…弾は無駄撃ちすんなよ?」
女ハンター「あなたに言われたくない」
盗賊「ケッ!!おいミルク!!もう十分休んだだろ…探索行くぞ」
『キャラック船』
オーライ オーライ ザバァァァ
戦士「ふんっ!!」グイグイ
学者「とりあえずチェストボックスだけ引き上げっス」
戦士「結構重いな…ふんっ!!」
学者「リッカさ~ん!!今日はもう潜らんので俺っちも引き上げて下せぇ!!」
女オーク「分かったわ…」グイ
闇商人「おぉぉ!!これはお宝期待出来そうだ」
学者「まだ開けて居やせんぜ?お楽しみはこれからっす」
戦士「ミライ君!!チェストボックスを引き寄せてくれ」
剣士「う…うん!!」シュタ
闇商人「まだ他にも沈んで居そうかな?」
学者「結構深いんで全部見回れて無いんすよ…明日明るくなったらもっかい調べやす」
闇商人「沈んでる船の大きさは?」
学者「船首側が折れて深い所に沈んじゃってるもんで良く分からんのですが多分軽キャラベルすね」
闇商人「じゃぁこの船と同程度か」
学者「大砲もあったんで海賊が使ってたんじゃ無いかと思いやす」
学者「うらぁぁぁ!!」
ドサー ガラガラ
剣士「あぁぁぁ甲板に傷が付いちゃう」ドタドタ
学者「ウヒヒヒ…チェストボックスの中からお宝の音がするじゃ無いっすか」
戦士「ふぅぅぅ…これは開けるのが楽しみだねぇ」
学者「皆さん集まって下せぇ…開けやすぜ?」ガチャ ガチャ
闇商人「鍵は掛かって居ないの?」
学者「ありゃりゃ…こりゃ鍵が掛かってて直ぐに開けられんですわ」ガチャ ガチャ
剣士「ちょっと見せて?」
学者「ミライ君に開けられやすか?」
剣士「これ海水で鉄が腐食してるから直ぐに壊せるよ?」
学者「やっちゃって下せぇ」
剣士「姉さん!!前に作った木槌でちょっと叩いてみて?」
女オーク「分かったわ…ちょっと待ってて」ドタドタ
学者「じゃぁリッカさんが戻って来るまで中身の予想をしやしょうか…」
闇商人「ハハ…いいね?じゃぁベタな所で金貨!」
学者「俺っちは宝石っす」
剣士「じゃぁ僕はレアな鉱石!」
戦士「では私は…重さと音からして装備品だ」
闇商人「あぁ重さかぁ…金貨一杯だと引き上げられないかぁ…」
戦士「金貨だった場合…そうだなぁ…袋4つ分くらいに思う」
女オーク「お待たせ…木槌を持って来たわ」ドタドタ
学者「いっちゃって下せぇ」
女オーク「じゃぁ…ふん!!」
バコーン!! ザラザラ
学者「おぉ!!金貨に宝石に…こりゃミスリルのナイフっすか?全員当たりじゃ無いっすか!」
闇商人「これは良い稼ぎになったね」
学者「あれ?…これ書簡っすね」バサ
闇商人「ええ!?白黒の書簡だ…インクが流れないでそのままになってる」
学者「これエライ物発見したかも知れやせんぜ?」
戦士「おやおや…沈んだ船は只の船では無かったと言う事だねぇ」
闇商人「ゲス君!船に旗印は残って居なかったかい?」
学者「良く見て無かったんすが…もっかい見て来やしょうか?」
闇商人「そうだね…恐らく沈んだ船は電脳化した者と一緒にこの密書を運ぼうとして居たんだ」
学者「それに気付いた誰かに沈められたって訳っすね?」
闇商人「ドラゴンなら簡単だよね…フィン・イッシュの時の様に」
戦士「まぁまぁ…もう暗くなってきているから明日にしてはどうだね?」
闇商人「焦らなくても時間はあるか…まぁ良いや…ちょっと入手した物を調べたいから船尾楼の方へ運ぼう」
学者「そうっすね…先に言っときやすが分け前は均等っすよ?」
闇商人「分かってるさ」
『船尾楼』
引き上げたお宝の中に例の白黒の密書は7枚…
金貨は全部古代金貨でシャ・バクダの物だ…今では値打ちが下がって普通の金貨と大差無い…これが100枚ほど
宝石は恐らく魔石の使い古しで貴族が居なくなった今高額取引はされない物
武器類はミスリルのナイフ2つと4連装デリンジャー25口径
装備品は魔石を必要とする義手と義足…これももう骨董品だ
学者「金貨と宝石は均等分けで良いっすね?」
闇商人「そうだね…もう分けちゃって良いよ」
学者「書簡が7枚もあるのはエライこってすね」
闇商人「確か盗賊ギルドのリカオンと言う人がシン・リーンに運ぶだけの価値の有る物なんだね?」
学者「そーっす…姉御が暗殺された原因もその書簡っす」
闇商人「今引き上げた物の物量からすると…まだ他に引き上げられる物が沢山残って居そうだ」
学者「他の積荷は明日確認して来やす」
戦士「カゲミ君は全部荷を引き上げたいと思っているのかね?」
闇商人「荷が何かによるけれど…何を運んで居たのかの方が気になる」
学者「荷の引き上げは今日のチェストボックスくらいの重さが限界っすよ?」
闇商人「引き上げは二の次さ…それよりも誰の船なのかとか情報が欲しい」
学者「何か気になる事が有るんすね?」
闇商人「アランにはもう話してあるんだけど麻薬のアヘン…これの出所が分からないんだよ」
学者「どういう事っすか?此処で取引されてるって思ってるんすか?」
闇商人「そのカラクリは良く分からないけど…なんか怪しいと思ってる」
そもそもシャ・バクダの古代金貨がどうしてこんな所まで運ばれて居るのかも謎だ
このムン・バイには人も住んで居なくてアヘンを栽培出来る環境でも無い
それなのにフィン・イッシュ女王の乗る幽霊船もどきがムン・バイに寄港する予定なのは変だと思う
戦士「ふむ…カゲミ君…今リカオンが持つ情報の7倍を手に入れてしまった訳だが…」
闇商人「そうだね…」
戦士「その情報をどうする?」
闇商人「う~ん…アランと相談したい」
戦士「どうも国を動かしてしまうだけの情報な気がする」
闇商人「うん…まぁ僕の目的は捕らわれのマルコさんを救う事だから出来るだけ早くシン・リーンに行きたいよ」
学者「ちっと待って下せぇよ?その情報を持ってシン・リーンに行ったら逆に捕らわれになったりしやせんか?」
闇商人「下手に動くとそうなるかもね…正面から取引はしないさ」
学者「兄貴がどうするかっすよねぇ…」
ドタドタ ガチャリ
盗賊「いよーう!!何か釣り上げた様だな?」
学者「あ!!兄貴ぃ…丁度今兄貴の話しをしてた所なんすよ」
盗賊「沈没船見っけたんだな?何を釣り上げたのよ」
闇商人「今このテーブルに広げて居た所さ」
盗賊「おおおお!!デリンジャー有るじゃ無えか!!ミスリルナイフも良さそうだな」
学者「いやいや兄貴…良く見て下せぇ…書簡の方っす」
盗賊「んん?こりゃ…」
闇商人「気付いたかい?大変な物を拾った様だよ」
盗賊「これで全部か?」
学者「明日もう一回潜ってもっと詳しく調べやす」
盗賊「なるほど分かったぞ…その船に乗ってた奴が陸のどっかに隠れてるって事だ」ギラリ
闇商人「どういう事?」
盗賊「キャンプ跡を見つけたと言っただろう…その建屋に生活してた痕跡も見つけたのよ」
闇商人「じゃぁ危ないな…電脳化した者も居るかもしれない」
盗賊「そういうこった…機動隊並みに戦える可能性が有る訳だ」
学者「これ…船を狙われたりしそうっすね」
盗賊「ワイヤー使われたら速攻船に乗り込まれちまうな」
学者「こんな所まで泳いで来ると思えないんすが…陸から結構距離ありやすぜ?」
盗賊「ヤシの木があるからそいつに掴まりながらなら泳いで来るのも可能だ…さてどうすっかな…」
剣士「ねぇ…この船は船首楼と船尾楼の扉に鍵を掛けて置けば乗り込まれても何も出来ないよ?」
盗賊「ふむ…確かにそうなんだが…」
剣士「ゲスさんとカゲミさんのバヨネッタがあれば余程追い払える気がするな」
盗賊「見えて居ればな?」
剣士「え!?どういう事?」
盗賊「ガチの奴らは光学迷彩を使うのよ…見えんのだ」
剣士「あぁ大丈夫!僕は鼻が利くから匂いで何処に居るのか分かる」
盗賊「なぬ!?」
剣士「多分ミルクちゃんと同じくらい鼻が利くから大丈夫だよ」
盗賊「マジか…」
剣士「因みに姉さんも勘が良いよ…だから船の心配はしなくて良い」
盗賊「そうか…まぁその言葉を信じるか」
剣士「それよりラスさんの匂いがしない…一人で陸に残ってるの?」
盗賊「アイツも何か勘付いたみたいでな…今の話聞いてそっちの方が心配になって来たわ」
剣士「戻ってあげた方が良いと思うな」
盗賊「そうだな…ちっと物資持って陸の方行くわ」
学者「引き続きお宝探しやってて良いんすよね?」
盗賊「構わんが用心しとけよ?他に誰か居ると思って動け」
学者「分かって居やすよ…」
盗賊「俺とラスはしばらく陸の方に行きっぱなしになりそうだから連絡手段教えておくわ」
学者「へい…」
盗賊「こっから望遠鏡使って見えるんだが…」
2キロ程向こうのちっと高い建屋に安全地帯が有るのよ
向こうからも船の様子が丸見えなんだ
ほんでな?要領は前線行ってる時と同じで光を使うんだ…お前もライト持ってんだろ?
定時連絡は日の出と日没…
学者「分かりやした…ポーションが結構余ってるんで多めに持って行って下せぇ」
盗賊「おう!そうするわ」
闇商人「アラン!ちょっと考えておいて欲しいんだけど…シン・リーンに行く件」
盗賊「わーってるわーってる!割と緊急事態なのは理解した」
闇商人「そうかい…」
盗賊「動くのはお宝探しが終わった後だ…どうせまだ情報足りんのだろう?」
闇商人「ハハそこまで分かって居るならわざわざ話す事も無いかな」
盗賊「俺も陸で情報集めてる感じなんだが…どうやら海賊王絡みっぽいのよ」
闇商人「え!?」
盗賊「まぁもうちょい調べんと分からん」
闇商人「待てよ…引き上げた機械の義手と義足…まさかコレって…」
盗賊「関係あるかもな?ほんじゃ俺は行くわ…上手くヤレな?」ダダ
『とある建造物の上』
グエェェェ ドドドド
女ハンター(…やっぱり思った通り恐竜は夜行性)
女ハンター(でも段々分かって来た…恐竜は足の形状から人間が作った階段を上がれない)
女ハンター(だから建屋の上階は何処でも安全)
女ハンター(でもこの気配は他の動物も居る気配…何が居るんだろう…)
ヒラヒラ ヒラヒラ
女ハンター「あ…見えた…妖精さんね?」
妖精「…」ヒソヒソ
女ハンター「ごめんなさいね…声が聞こえなくなってしまって…遊びに来たのでしょう?」
女ハンター「ちょっと待って…蝋燭を灯すから」チッチ ポ
ヒラヒラ クルクル
妖精「困るなぁ…」
女ハンター「聞こえる…だんだん聞こえる様になって来た」
妖精「こんな遠くに呼び出されて僕も忙しいんだよ」
女ハンター「私が…呼んだ?」
妖精「だって夢をもう一度見たいって願ったでしょ?」
女ハンター「夢…」
妖精「君の夢は望遠鏡で望んだ夢…でしょ?」
女ハンター「あ…覚えていたんだ」
妖精「僕もその夢見て見たいなぁ」
女ハンター「あぁ…見て見る?私が乗って来た船だけど」
妖精「見る見るぅ」パタパタ
女ハンター「この穴から覗くの」
妖精「どれどれ?」
そう…私は自分が乗って来た船を外側から望遠鏡で見て見たかった
継ぎはぎだらけの船…そこに私の居場所が有ると言う事を確かめたかった
見慣れた船を遠くから望遠鏡で覗いて…まるでそこに居る様な感覚…
妖精「あれれ~?見知った顔が居るなぁ…誰だっけなぁ…」
女ハンター「え?誰の事?」
妖精「ほら…目隠ししてる子…あ!!大きな女の子も知ってる気がする」
女ハンター「あぁ…あの2人ね」
妖精「へぇ~楽しそうだぁ」ヒョイ ヒョイ
女ハンター「掴もうとしている?」
妖精「すぐ近くに見えるのに届かない…不思議だなぁ」
女ハンター「そういえば妖精さん?昔月に行きたいって言ってたけれど…行けたの?」
妖精「昔の事は覚えて無いなぁ…月に何しに行くんだっけ?」
女ハンター「さぁ?私は聞いてない」
妖精「さてぇ!!用事も無い様だし…おっぱいに挟まって寝るね」ピョン スポ
女ハンター「次はいつお話出来るの?」
妖精「いつもそばに居るよ?」
女ハンター「ここに挟まって?」
妖精「うるさいなぁ…質問攻めはキライだぁ…寝る寝る寝る!!」
女ハンター「フフ…」
ガサリ
盗賊「いよう!誰と話してんだ?」
女ハンター「ハッ!!」ガバ
盗賊「おいおい…そんなビビんな」
女ハンター「どうして戻って…」
盗賊「そらお前が心配だから戻って来たんだ…物資も持って来たぞ」ドサ
女ハンター「ミルクちゃんは?」
盗賊「ワンコ探しに見回りに行った…ほんで?お前妖精と話をしてたな?」
女ハンター「悪い?」
盗賊「いや…俺は妖精が見えんもんだからむしろ羨ましい」
女ハンター「変人だとは思わない?」
盗賊「姉御も良く妖精と話をしてたんだ…ガキの頃の話だがな」
女ハンター「そう…座ったら?」
盗賊「酒持って来たんだ…お前も飲むか?」
女ハンター「遠慮する」
盗賊「先に言っとくがどうやらここも安全じゃ無い様だ…電脳化の奴らが潜んでる可能性がある」
女ハンター「え!?どういう事?」
盗賊「ゲスが宝箱引き上げたのは見てたよな?」
女ハンター「勿論…」
盗賊「そん中に白黒の書簡が何枚も入ってたのよ」
女ハンター「なるほどそういう事ね…」
盗賊「陸から俺の船は丸見えな訳よ…つまり奪いに来る可能性がある」
女ハンター「この場所は沈没した船の誰かが使ってた…そう言いたいのね」
盗賊「そういうこった…だから戻って来た」
女ハンター「今の所変わった感じは無さそう」
盗賊「そうか…寝るのは交代だぞ?良いか?」
女ハンター「慣れてるから平気」
盗賊「蝋燭消すぞ?こんな明かりでも察知されちまう」シュ
女ハンター「随分と慎重なのね?」
盗賊「まぁな?実は機動隊の連中が動いてる気がしてよ」
女ハンター「そんな…向こうの大陸の事じゃない」
盗賊「いや…ゲスが引き上げた物の中に4連装デリンジャーが有った…これは機動隊が使う物だ」
女ハンター「他の兵装は?」
盗賊「見つかって無い」
女ハンター「じゃぁバヨネッタとワイヤー機動…それから光学迷彩…」
盗賊「そういう相手だと思ってくれ」
女ハンター「どうして機動隊が敵だと思って?」
盗賊「勘だ…電脳化してる奴が紛れてるんじゃ無くて機動隊全員電脳化してんじゃ無えかと思ってる」
女ハンター「あなた…傭兵を辞めたのはそれが原因?」
盗賊「まあな?」
実はな…ガキの頃はいろいろ有って機動隊の奴らと一緒に居たのよ
そん時はミネア・ポリスに居た…
俺等孤児を集められて狭い部屋で寝かしつけられた事もあった
ほんで寝たふりをしながら機動隊の連中が話す内容を聞いて居た訳だ
そん中で知ったのは奴らの目的は何処かにある中央制御端末という機械の復旧だった
その為にインドラシステムってのを動かしてエネルギー充填が必要だったらしい
だがある日インドラシステムがどういう訳か喪失した
奴らは落胆した様でな?内輪もめでゴタゴタしたり色々有った訳だ
そんな中当時神の手と呼ばれた大泥棒がミネア・ポリスに来たんだ
機動隊の奴らはそいつを気に入った様だが事件が起きた…
色んな事情を知ったその大泥棒は機動隊を裏切って奴らの秘密を奪って逃げたんだ
何故そんな事になったのは俺は分からなかった…
だがそいつから聞かされたのは機動隊の連中は4000年ぐらい昔から箱舟に乗って現代に来たと言う事だ
何の為かと言うと古代文明を復活させる為…そんな話を聞いて俺は全く信じられなかった
だが今になって思う…
当時見た事も無いような高性能な兵装を使って行動する機動隊はやっぱどう考えてもおかしい
その大泥棒の言ってた事は正しかったと改めて思う…ほんでその大泥棒は俺の実の親父だった人物だ
女ハンター「機動隊の本当の目的は端末の復活…」
盗賊「気付いたか?電脳化の奴らも恐らくそれが目的なのよ」
女ハンター「その事は他の誰にも言って無いの?」
盗賊「孤児だった俺らの仲間はみんな知ってる…姉御もな?」
女ハンター「…だから皆殺された?」
盗賊「それは分からん…まぁみんなバラバラで何処に行ったのかももう追えん」
女ハンター「機動隊が機械の側だったとしてどうして先頭に立って機械達と戦って居るの?」
盗賊「ウラン結晶が欲しい訳よ…その結果魔石が流通しなくなったってこった」
女ハンター「そういう事ね…」
盗賊「ほんでまだ不可解な事が有る…機動隊の奴らは年を取らん」
女ハンター「そういえば電脳化してる人達は皆若い…」
盗賊「だろ?俺は20年前から顔を知ってるが今でも当時のままよ…人間じゃ無え」
女ハンター「あなたは機動隊のすぐそばに居たのでしょう?どうして離れてしまったの?」
盗賊「色々考える事はある…ただ俺一人で秘密を暴くのは親父と同じ様に殺されると悟った…」
女ハンター「敵が機動隊だなんて…勝てる気がしない」
盗賊「まぁ俺らもだんだん装備が整って来てるから相手が1人なら何とかなるかもな」
シュタタタ クルクル シュタ
少女「おい!!血の匂いだぞ」
盗賊「お?戻って来たな?」
女ハンター「恐竜の血?」
少女「違う…多分ドワーフだ…血が臭い」
盗賊「どっから匂う?」
少女「水と一緒に流れてる…どこかに地下が有るぞ」
盗賊「ミルク!ちっと危険そうだから俺達から離れるな」
少女「分かった…腹膨れたら眠たくなった…寝る」グター
盗賊「なんか食って来たんか?」
少女「恐竜落ちてた…肉食ったぞ」
女ハンター「あ…近くに居た一匹を狙撃したの」
盗賊「放置して様子見てたんか」
女ハンター「そう…他の恐竜が来るかなと思って」
盗賊「とりあえず夜明け待ちだな…流石に光源が少なすぎて行動出来ん」
女ハンター「暗視ゴーグルは?」
盗賊「ゲスが使うと思って置いて来た…こっちはお前が持ってるから十分だろう」
女ハンター「私は片目で十分だから…これ半分に改造できる?」
盗賊「おお!なるほど…ちょい貸せ」
女ハンター「敷物にしてる恐竜の皮を切って使えば眼帯の様に使える」
盗賊「だな?これがありゃ夜間も行動出来るか…」




