2.氷河を抜けて
『昼前』
ユサユサ ユサユサ
学者「兄貴!そろそろ起きて下せぇ!」
盗賊「んが?」パチ
剣士「あ!!起きた?」
盗賊「やべぇ…がっつり寝ちまった…」ゴシゴシ
学者「昨夜は遅かったんすか?」
盗賊「まぁな?繋いである鎖を切るのに手こずってよ…」
学者「そら大変でしたねぇ…」
盗賊「寒くて死ぬかと思ったわ」
剣士「鎖?」
盗賊「あぁ気にするな…こっちの話だ」
剣士「そう…ねぇ朗報だよ!姉さんが船動かすの手伝っても良いと言ってるよ」
盗賊「おぉ!!説得成功か」
剣士「それで?これからどうすれば良い?持って行く物とか準備しないと…」
盗賊「う~ん…お前等剣を使うと言ってたな?」
剣士「あるよ!!」
盗賊「なら最低限戦える準備だけしてくれ」
剣士「それだけ?」
盗賊「まぁ特に何か持って行く事も無いんだが…そうだ!今からソリを調達してくるからそこに荷物をまとめてくれ」
剣士「分かった!」
盗賊「おいゲス!!」
学者「へい!!」
盗賊「お前魚を買い付けて来い…あと塩とか適当に食料買ってソリに積んでくれ」
学者「分かりやした」
盗賊「そうだミライ!そこにある小さな炉を持って行って構わんか?それから石炭も欲しいな」
剣士「家に有るだけ持って行けるよ…石炭は樽に一杯分有るかな」
盗賊「まぁ何とかなるか…早速俺はソリ調達行って来るから荷物のまとめはやっといてくれ」
剣士「うん…姉さんにも伝えて置く」
盗賊「姉は何処行ったんだ?」
剣士「炭坑の方さ…向こうに色々荷物を残してるから取りに行った」
盗賊「そうか…出発は夜だから準備はゆっくりで良いぞ」
学者「じゃぁ兄貴!!買い付け行って来やす」タッタ
--------------
『夕方』
ヨッコラ ドサリ
盗賊「ようし!これで一通り荷物は乗ったな?」
剣士「姉さん遅いなぁ…」オロオロ
盗賊「炭坑は遠いのか?」
剣士「そんなに遠くない…何か有ったのかな?」
学者「ハハーン…兄貴!これ手切れ金を要求されてるパターンじゃ無いっすかね?」
剣士「手切れ金?」
盗賊「まぁ良くある事なんだ…仕事を辞めると言ったら金を要求されるのよ」
剣士「そんな事が…」
盗賊「ミライ!お前炭坑の場所は知ってるんだな?」
剣士「うん…」
盗賊「ゲス!お前一緒に行ってやれ…得意なやつだろ」
学者「良いんすか?又怪我人が出ちまいやすが?」
盗賊「ほどほどにだ…ついでにピンハネした分も取り返して来い」
学者「ウヒヒヒ腕がなりやすねぇ…」ボキボキ
盗賊「さて俺はもう一度港を見て来る…夜には戻って来いよ」
学者「分かりやした…ミライ君…案内して下せぇ」
剣士「うん…行こう!」スタ
盗賊「じゃぁロボ!付いて来い」
ロボ「ピポポ…」プシュー
---------------
『旧軍港』
ヨイショー ドスン
盗賊「ようし!!ロボはこの樽の中で見張りをしていてくれ」
ロボ「ピポポ…」プシュー
盗賊「魚を降ろした漁船は桟橋を離れて向こう側に船を移動するんだ…」
盗賊「そのタイミングでいつも通り光で知らせて欲しい」
盗賊「光を見て俺らは一気にあのキャラック船に乗り込む」
盗賊「まぁ…夜になったら殆ど人は居ないからそんなに難しい仕事じゃない」
盗賊「出来るな?」
ロボ「ピポポ…」クルリン
盗賊「ようし!ちっとの間一人になるが…孤独死すんなよ?」
盗賊「じゃぁ上手くやれ…俺は一旦戻る」ダダ
--------------
『その夜』
ゴソゴソ ゴソゴソ
学者「いやぁぁ随分あいつ等貯め込んで居やしたねぇ…」スタ
盗賊「おぉ!!戻ったか!!」
学者「へい!やっぱり手切れ金で揉めて居やしたよ」
盗賊「怪我は無いか?」
女オーク「お陰様で…」
盗賊「なんだ元気無ぇな」
剣士「ショック受けてるんだ…一生賢明働いたのに騙されて居たのを知ってさ」
盗賊「まぁなんだ…そういう輩は多い」
学者「でもピンハネされた分は大分取り返して来たと思うんすがね…」ジャラリ
盗賊「そりゃお前の取り分じゃ無いだろ」
女オーク「いえ…私が要らないと言ったから…」
盗賊「マジか…まぁ良い!!おいゲス!!今度レーションたっぷりおごってやれ!!」
学者「へいへい…ウヒヒヒ」
盗賊「そろそろ出発だから急いで準備しろ!」
剣士「姉さんの分はもう全部積んで有る…もう体一つで良いよ」
盗賊「そうか…ほんじゃ俺とリッカでソリを引くぞ」
女オーク「え!?どうして私の名を…」
剣士「あ…教えちゃった…ダメだった?」
女オーク「その名で呼ばれた事が無いから…」
剣士「あぁ…僕も名前では呼ばないね」
盗賊「なんだ呼ばれて気持ち悪いのか?何て呼べば良いんだ?」
女オーク「リッカ…」
剣士「僕もそう呼んだ方が良い?」
女オーク「…」
剣士「ねぇリッカ!…なんか恥ずかしいなぁ」
盗賊「何言ってんだ馬鹿!リッカで良いだろ…てかそろそろ出発の筈なんだ…ソリ引くの手伝え」
女オーク「え…あ…うん」スタ
盗賊「ミライとゲスはソリに乗れ…チョロチョロすると邪魔だ」
剣士「ロボは?」
盗賊「もう先に行ってる…」
ピカーーーー
盗賊「お!!合図だ!!行くぞ乗れ!!」グイ
学者「どんぴしゃでしたねぇ…」ピョン
剣士「あわわ…」ピョン
女オーク「ど…何処へ?」グイ
盗賊「港に決まってんだろ…急ぐぞ」
ススススー ズリズリ
--------------
『港の桟橋』
ドタドタ
剣士「えええ!!?こ…この船!?」
盗賊「大きな声出すな!!黙って荷物を放り込め!!」
学者「ロボは向こうの樽っすね?回収して来るっす」
盗賊「樽ごと頼む…樽はその内必要になる」ワッセ ワッセ
学者「転がしても構わんすか?」
盗賊「背負ってこいアホが!!ロボは俺の一部だと言っただろう!!」ワッセ ワッセ
学者「わ…分かって居やすとも…トホホ」ダダ
女オーク「こ…これって…」ヨッコラ ドスン
剣士「まさかこんな方法で…」ワッセ ワッセ
盗賊「ようし!!ソリもこっから投げ入れるぞ!!リッカそっち持て!!」グイ
女オーク「フン!!」グイ
盗賊「さすが力持ちだな…いくぞ!?わっせぇぇぇ!!」
ドスーン!
盗賊「ようし乗って良いぞ!!」
剣士「ほ…本当に?」
盗賊「ビビるな!周りにゃ誰も居無ぇ!!」
剣士「あわわ…」ピョン ヨジヨジ
盗賊「リッカも乗って直ぐに帆を開いてくれ…」
女オーク「え…あ…ええと」ピョン ヨジヨジ
学者「兄貴ぃぃ…重いっす」ヨタヨタ
盗賊「ヘタレがぁ!!」グイ ドスン
学者「ひぃひぃ…」
盗賊「ようし!!桟橋のフックからロープ抜くぞ?飛び乗れ!!」スポ
学者「へい!!」ピョン スタ
盗賊「ヌハハ楽勝だ楽勝!!」ピョン スタ
--------------
『船出』
ユラ~リ グググ
盗賊「桟橋から離れりゃこっちのもんよ」
学者「やりやしたね?」ガッツ
盗賊「ゲス!!とりあえずお前が舵やれ!!船尾楼の内側にある」
学者「舵が楼の内側にあるタイプなんすね?」
盗賊「おう!!もう扉の錠は開けてある…あとは何とかして慣れろ」
学者「分かりやしたぁ!!」ダダ
盗賊「リッカとミライ!!帆の開き方は分かるか?」
剣士「何とか…ロープが凍ってて硬い…うぬぬぬ」グイグイ
盗賊「まぁ…ここまで来たら誰も追っては来れんから落ち着いてヤレ…俺は船首側の縦帆を開いて来る」ダダ
女オーク「ミライ!?そこは私がやるから…あなたは下に降りてロープを引っかける役をお願い」
剣士「分かったよ…」ピョン スタ
女オーク「よし!!」グイ シュルシュル
バサバサ
剣士「これ…漁船の時と一緒かな?」
女オーク「多分…私もそっちに降りる」ピョン ドスン
剣士「確か…この引っかけにグルグル回して…」グルグル
学者「お?お?お?…横に流れて…」
盗賊「おいゲス!!動き始めたから舵切って上手い事進めろ!!」
学者「へ…へい!!」グイ
ユラ~リ グググ
盗賊「縦帆開くぞ!!」バサ
女オーク「ミライ!!今度は後ろの三角の帆を!!」ダダ
学者「おぉ…どんどん陸から離れて行くっすね…」
盗賊「ふぅぅぅ…後は慣れだな…しかし雪に月が反射して夜でも明るいのが救いだ」
学者「兄貴ぃ…これ2人じゃやっぱきつかったっすね?」
盗賊「だな?丁度良く人員を確保出来て良かった」
-------------
『氷河の壁』
ズドドドドド ザブーーーン
盗賊「またクソでかいのが崩れたな…波が来るぞ!!何かに掴まって置け!!」
学者「氷河の壁からは離れた方が良いっすね…」グイ
盗賊「だな?…しかしやはり夜は暗い…このまま進めて良いのかどうか…」
グラ~リ ユラ~ ギシ
剣士「甲板に置きっぱなしの荷が動いてる!!」
盗賊「波が収まるまで甲板には出るな…波を被って落ちたら死ぬと思え」
剣士「石炭の入った樽が動いてて落ちちゃいそうだよ…」
盗賊「しゃぁ無ぇ…俺が行って来る!!炉で火を起こす準備しとけ」
剣士「うん…気を付けて」
ユラ~リ ググググ
盗賊「うぉととととと…確かにこりゃ樽がどっか行っちまいそうだ」ダダ
-------------
『小型の炉』
ボゥ… メラメラ
盗賊「よし…これで船尾楼の中だけはちったぁ温かくなる…」
剣士「4人共ここで寝泊まり?」
盗賊「炉が一つしか無いからそうなるな…持って来た毛皮を広げて寝床を確保して良いぞ」
学者「この船はな~んも乗って無いんすね…」
盗賊「確認したが荷室の方に木材が少し乗ってるだけだな…あと腐った水が入った樽がいくつか有る」
剣士「あ!!そういえば水を持って来てない!!」
盗賊「おう心配すんな…空の樽があるからそいつに雪を突っ込んどきゃその内溶ける」
学者「さすが兄貴ぃ!!計算済みなんすね!!」
盗賊「まぁ…そういうのは夜が明けてからで良いだろう…喉が渇くなら雪食っとけ」
剣士「アハハそっかぁ…」
盗賊「んん?どうしたリッカ!にやけてるぞ?」
女オーク「何でも無いわ…ミライが楽しそうだから」
剣士「楽しいというか…まさか船を盗んでこんな事になると思って無かったからさ…ドキドキしてる」
盗賊「俺はちゃんと自己紹介したぜ?本職は泥棒だってな」
剣士「でも大丈夫?…この船はどこかのお金持ちの物だよ?」
盗賊「そんなん知らん!今は俺の物だ」
学者「まぁまぁミライ君!行動しないと何も手に入らないんす」ズイ
盗賊「そら俺が言った言葉だ!!ヘタレが言って良い言葉じゃ無ぇ!」
学者「兄貴ぃ…俺っちもたまには良い台詞言わせて下せぇ」
盗賊「さて!!…波も落ち着いた様だし荷物を此処に入れるぞ」スタ
剣士「そうだね…」スタ
--------------
『翌朝』
ユラ~リ ギシ
盗賊「風に乗ってるつもりだったがあまり速度出て居なさそうだ…」
学者「そうっすねぇ…流氷と一緒に流れてるって感じっすね」
盗賊「帆の塩梅はこれから慣れて行く必要がありそうだ…進んでない原因は多分帆の使い方がマズい」
女オーク「あまり速度を出すと逆に危ないらしいわ」
盗賊「流氷とぶつかるってか?」
女オーク「そう…氷は船よりも硬いから簡単に沈没してしまうそうよ」
盗賊「なるほど…まぁ昼間は帆走に慣れて夜はゆっくり行く感じにするか…」
剣士「ところでこれから何処へ?」
盗賊「このまま陸と氷河の間を抜けて地庄炉村という所に行く…5日くらいを見込んでたが…もっと掛かりそうだな」
剣士「地図とかある?」
盗賊「無い…だから陸を見失わない様に進める」
剣士「暖を取る石炭足りるだろうか…」
盗賊「船尾楼の隙間風をどうにかして節約するだな…まぁ今日はとりあえず船の掃除だ」
剣士「あ!!ちょっと探検して見たかったんだ」
盗賊「おう掃除ついでに行って来い!!良い物見つけたら持って来いよ?」
剣士「うん!!姉さん!!…ちが…リッカさ~ん…う~んなんか呼びにくいなぁ…」
盗賊「何言ってんだお前…」
女オーク「呼んだ?」ドスドス
剣士「船の掃除がてら探検に行こうよ…自由にして良いみたいだ」
盗賊「行って来い行って来い!!俺らは帆の使い方研究しとるわ…」
剣士「行こう!」グイ
女オーク「ウフフ…」スタ
ドタドタ
学者「な~んかあの二人ぎこちないっすねぇ…」
盗賊「色々有んだろう…ほっとけ!」
--------------
『甲板』
ドルァァァァ フン!!
盗賊「…しかしロープがカチカチになってて巻き取りシンドイな…ハァハァ」
学者「お?お?…おぉ…兄貴ぃ!!やっぱり横帆は追い風無い時は畳んだ方が速度出るみたいっす」
盗賊「なるほどな?だが頻繁に出し入れすんのはキツイわ…」
学者「夜の内は追い風だったんすけどねぇ…」
盗賊「どうせ昼と夜で向きが変わるんだろ…まぁ昼間だけ進めるなら前後の縦帆で進めって事だ」
学者「夜が追い風なんで上手く乗りたいっすねぇ…」
盗賊「氷山が無くなりゃそれでも良いだろうな…まぁ一応は進んでる訳だ…ゆっくり行くぞ」
ドタドタ
盗賊「よう!!何か見つけたか?」
剣士「掃除して火山灰を集めたんだ」
盗賊「そんなもん海に捨てておけ」
剣士「これ水と骨粉まぜて練れば粘土替わりに出来るよ…船尾楼の隙間風対策さ」
盗賊「骨粉なんか持って来て無いだろうが」
剣士「何かの骨が転がってたよ?炙って砕けば骨粉に出来る」
盗賊「骨?そんなん有ったか?」
剣士「一番下の船底って言うのかな?そこがゴミ捨て場になってたみたい…貝殻とかもあるよ」
盗賊「ヌハハそんな所まで見てないわな」
剣士「骨粉にしたら食料にもなるんだ」
盗賊「そうか…」---こいつ…骨を食って飢えを凌いできた訳か---
盗賊「…」---そうだ忘れてた…本来俺もそっち側の人間だったんだ---
剣士「自由にやってて構わないよね?」
盗賊「おう任せた!!こりゃ報酬払わんとな」
剣士「なんか新しい家が出来たみたいで楽しいよ…いっぱい工夫が出来そう」
盗賊「そりゃ結構!!」---見習わんとな---
--------------
『船首』
バサバサ
盗賊「こんなもんか?」エッホ エッホ
学者「ひぃひぃ…帆の張り替えはしんどいっすねぇ…」
盗賊「動いてりゃ寒くも無ぇ!!慣れろ!!」グイ グイ
学者「ふぅぅぅ…やっぱ縦帆は横風受けて進むようになってるっすね…」
盗賊「その様だ…ちっと進む方角考えながら張り替えする必要がありそうだ」
学者「縦帆だけで大分速度出るみたいっすね…」
盗賊「うむ…夜の内は後方の縦帆だけで十分だな」
学者「そろそろ休憩しやせんか?」
盗賊「そうだな…魚仕入れて来ただろ?一匹焼いて食うか…」
学者「良いっすねぇ…リッカさんとミライ君も呼んで来るっす」
盗賊「おう!!俺は火を起こして置く」ダダ
--------------
『小さな炉』
メラ パチパチ
学者「なんかちっこい炉を囲って食事するのも良い感じっすね…」モグ
盗賊「ほら干し芋焼けたぞ…食え」ポイ
女オーク「ありがとう…」ハム
盗賊「ミライは魚食うか?」
剣士「う~ん…僕は芋が良いかな」
盗賊「なんだ魚が新鮮で美味いんだがな…」
剣士「僕は木の実とか根が好みなんだ…姉さんも同じ」
盗賊「そうか…まぁ良い…こりゃ魚が余りそうだ」ガブ モグ
剣士「レーション一杯あるけど?」
盗賊「そりゃ保存食だから残しとけ…どうしても食い物が足りない時に一口食えば良い」
剣士「そうだったんだ…」
盗賊「ほんで?掃除の方はどうよ?」
剣士「殆ど終わった…あぁそうそう!!荷室にあった樽に入った水…あれ水じゃ無くて油だよ」
盗賊「なぬ!?」
剣士「水なら凍るでしょ?」
盗賊「おぉ!!そういやそうだったな…油が残ってたのか」
学者「あ!!ロボに少し油をさした方が良いっすね…ここは海の上なんで錆びちまいやす」
盗賊「そりゃラッキーだ…そうか油が有るとなりゃ明かりにも困らんな」
学者「ランプ持って来て無いじゃないっすか…」
剣士「銅貨を叩いて延ばせば簡単な器は作れるよ…心材にロープの屑を入れればちょっとしたランプになる」
盗賊「お前作れるんか?」
剣士「僕は手先が器用で細工が得意なんだ…直ぐに出来るよ?」
盗賊「そりゃ助かるな…明かりが有ると無いとじゃ随分違う」
剣士「じゃぁ直ぐに作って来る…姉さんハンマー借りるね」スック
盗賊「銅貨ならたらふく持ってるぜ?」ジャラリ
剣士「あ!!それ使わせて貰うね」スタ
学者「いやぁ稀に見る良い人材を雇ったみたいっすねぇ…」
盗賊「だな?正直ここまで働けるとは思って居なかった…リッカは何か出来るんか?」
女オーク「え…私はミライの様に器用じゃないの…力仕事なら出来る」
盗賊「まぁそれで十分っちゃ十分だ」
---------------
『お手伝いロボ』
カチャカチャ…
学者「大分ボロが来てるっすねぇ…軸受けを交換しないと直に壊れそうっす」
盗賊「やっぱりそうか…ここん所動きがおかしいと思ってたんだ」
学者「油差して少しは長持ちするとは思うんすが…そろそろ交換を考えた方が良いっすね」カチャ
盗賊「部品は手に入りそうか?」
学者「軸受けはジャンク屋を回って探せば見つかると思いやす…それよりも…」
盗賊「何だ?」
学者「人口筋肉の替えが見つからんかも知れんっす…もう作って無いんすよ」
盗賊「どの部分よ?」
学者「これ小動力化の為にモーターは使わないで人口筋肉で動いてるんす…耐用年数はとっくに超えてるっすね」
盗賊「そんな事前の整備時には言われなかったぞ?」
学者「まだ壊れて無いから言わなかっただけっすね…人口筋肉は寒さに弱いんであんま無理すると切れちまいやす」
盗賊「こいつも温めてやる必要が有るってか…」
学者「大事にするならそうっすね…切れたら替えが無いのは覚えて置いて下せぇ」
盗賊「ちぃぃ…そうだ!!キラーマシンの中にも同じような物が有るだろう…それで代替効かんのか?」
学者「キラーマシンの人口筋肉も同じ様に耐用年数超えてる筈っス…問題はもう作って無い事なんす」
盗賊「そういう事か…」
学者「キラーマシンから人口筋肉だけ取り外してストックしておくのは良さそうなんすが…考える事は皆同じなんすよ」
盗賊「そう簡単に見つからん訳だな?」
学者「そうっすね…さて可動部への油差しは終わりっす…ちっと動いて見て下せぇ」
ロボ「ピポポ…」ウィーン
学者「ロボの筐体に入れっぱなしの俺っちのバヨネッタ…回収しときやす」
盗賊「あぁ忘れてた…俺のラッパ銃も入ってるだろ」
学者「そのラッパ銃も手入れしやしょうか?」
盗賊「これは自分でやる」カチャ
--------------
『船尾楼』
ユラ~リ ギシ
盗賊「ロボ…お前はしばらくこの部屋からは出ない方が良さそうだ…ここならそれほど寒くない」
ロボ「ピピ…」シュン
盗賊「どうも無理させてた様だ…悪かったな?」
盗賊「お前用の毛皮が有るのは良いが…自分で発熱しないから保温になって無いのがなぁ…」
学者「ああ!!」
盗賊「何だ急に?」
学者「ソレっすね…発熱させれば良いっすね」
盗賊「何か案が有るのか?」
学者「白金…プラチナっす…プラチナは油と反応して発熱するんす」
盗賊「んなもんそうそう手に入らん…」
学者「機械の中に色々使ってるんすよ…ガラクタでも集めればいくらか回収できるんす」
盗賊「ふむ…地庄炉村でガラクタ探してみるか…10年前はあの辺もいくらか戦地になってた筈…」
学者「姉御の計画では地庄炉村の後は何処に行く感じなんすか?」
盗賊「盗賊ギルドから支援を得て荷を運ぶ先がフィン・イッシュなんだが…詳細が書かれていない」
学者「信用できるんすかね?」
盗賊「確かに…用心はしておかないと足物見られそうだな」
学者「どうやって接触するんすか?」
盗賊「酒場でコブラ酒を注文するらしい…その後向こうからアクションが有るんだとよ」
学者「うほーなんか楽しみっすね」
盗賊「俺は気に入ら無ぇがな…どうせ見定められてるんだろう…」---姉御抜きで話が通るんだろうか---
---------------
『オイルランプ』
ユラユラ ピカー
盗賊「おぉぉ!!良いランプが出来たじゃ無ぇか…」
剣士「一人一個づつだよ…油は一杯あるからずっと点けて居ても良いね」
盗賊「おい!!このランプの上で湯を沸かせそうだな?」
剣士「そうだね?」
盗賊「おーし!!これでロボを温められるぞ…」
学者「あいやいやダメっす…暖め過ぎると脳が死んじまいます」
盗賊「んな事は分かってる!部屋を暖めりゃロボも温まるって話だ」
学者「ロボの筐体に入れちまうかと思いやした」
盗賊「そんな危ない事する訳無いだろう」
剣士「火山灰と骨粉で簡単なモルタル作るから炉を使わせて貰うよ」ゴソゴソ
盗賊「ほぉ?お前何でも作るんだな?」
剣士「うん…こういうの好きなんだ…今日は部屋を暖かくして休めるよ」
盗賊「そうか…ほんじゃこっちはミライに任せて俺らはそろそろ帆を畳みに行くぞ!」スック
学者「あぁぁぁ…寒いんすよねぇ…手が痛くなるんすよねぇ…」
盗賊「何ヘタレた事言ってんだ!行くぞ」グイ
---------------
『夜』
ガチャリ バタン
盗賊「うぅぅぅ寒ぶっ…」スリスリ
学者「あぅぅぅ…」ガクガク ブルブル
女オーク「湯が沸いてるけど?」
盗賊「おう!ちっと飲むわ…」
剣士「もう帆は畳んだの?」
盗賊「うむ…夜は氷山との激突が怖いからあまり動かん事にした…まぁ…海流が丁度向こうに行ってるから流れに任せる」
剣士「なんか楽しいなぁ…」ワクワク
盗賊「そりゃ結構!もうモルタルで隙間は埋めたんか?」
剣士「うん!大分暖かくなったよ…壁の木材が冷たくなってるのはもう仕方ないね」
盗賊「布か何かで一枚仕切が出来りゃ良いんだがな…」
剣士「今はランプだけで部屋を暖めてるからね…限界な気がするなぁ…」
盗賊「なぬ!?炉は使って無いのか!」
剣士「隙間風が入って来なくなったからさ…下手に炉を使うと危ないかなと思って」
盗賊「炉は石炭2~3個で良いんだ…空気が入らんほどここも気密が高い訳じゃ無いぞ?」
学者「空気が無くなるなら先にランプが消えるんでランプが点いてる内は大丈夫っすよ」
剣士「お!?そういう事か…」
盗賊「しかしこれで炉無しか…こりゃ快適に寝られそうだ…今晩は交代で睡眠な?」
剣士「じゃぁ先に寝て良いよ…僕は興奮して今全然眠れない」
盗賊「もうちっと暖かくなってからな?ふぅぅぅ…しかし外は死ぬほど寒いな…こりゃ船も放置するわ…」
-------------
『数日後_昼間』
ザブ~ン ユラ~リ
剣士「大分海氷が減って来たね」
盗賊「だな?太陽で船に乗ってる雪が解けちまうから飲料用の水は急いで確保しとかんとイカン」
剣士「空いてる樽が1個しか無いね」
盗賊「う~む…油が入った樽を開ける訳にもイカンしなぁ…」
剣士「そうだ!木材が少し乗ってたから木箱を作ろう…そしたら石炭を入れてる樽が1個空く」
盗賊「湯を沸かしてるから結構水を使うんだよな…まぁ樽2つありゃ何とか足りるか…」
剣士「あと何日掛かるのかな?」
盗賊「正直分からん…キ・カイを出て5日ぐらいのつもりだったんだが…」
剣士「通り越しちゃったって事は無いよね?」
盗賊「それは無いと思う…灯台を一度も見て居ないだろう?」
剣士「へぇ?灯台があるんだ…」
盗賊「地庄炉村は10年ぐらい前までフィン・イッシュとの貿易港だったのよ…今じゃ廃れた様だが…」
剣士「僕初めて行くんだ…何があるんだろう?」
盗賊「亜麻の生産地だ…他にも少し硫黄と金が掘れるらしい…そうそう…後木材だな」
剣士「キ・カイでは木は全然生えない…」
盗賊「大分温いから針葉樹が生えるんだ…何つたっけな…スプルースだっけな」
剣士「木が有ると言う事は実も生ってるよね?」
盗賊「お前は木の実が好きだったな?…もう一個忘れてたんだが地庄炉村はナッツが有名だ」
剣士「おぉぉ!!姉さんは色んな食べ物ガマンするから食べさせてあげたい」
盗賊「ガマン?何でよ?」
剣士「貧しいから僕の分を残す為にガマンしちゃうんだよ…貰ったレーションも食べてない」
盗賊「おっとヤメロヤメロ…俺はその手の話に弱い…話題変えるぞ?」
剣士「あぁゴメン…同情を買うつもりは無かった」
盗賊「お前剣を使うと言っただろう?」
剣士「うん…どうして?」
盗賊「ちっと俺と立ち回って見るか?まぁ…チャンバラよ」
剣士「ええと…良いのかな?姉さんに許可貰わないと…」
盗賊「武器は使わん…凍った魚でチャンバラするだけだ」
剣士「魚?アハハハ…面白そう」
盗賊「ようし!ほんじゃ好きな魚を選べ」
-------------
『立ち合い』
コン コン ビシ!
盗賊「…にゃろう!!」ダダ ビシ
剣士「あたっ…」ズダダ
盗賊「なるほど…体のバネは一級品だな…これならオーガ相手でも良さそうだ」
剣士「ちょっとこの魚重いし握り難い…」
盗賊「そりゃ俺も同じ条件よ…お前の姉はもっと強いのか?」
剣士「うん…速さは僕と同じくらいだけど力が全然違う」
盗賊「…って事は俺でも敵わんか…」
ドタドタ
学者「あらら?又やってるんすね?」
盗賊「お前もやって見るか?」
学者「俺っちは接近戦はやらんっす…射撃一本なんで…」
盗賊「けっ!!そういう所がヘタレなんだ」
剣士「姉さんともやってみる?強いよぉ?」
盗賊「まぁ実力は大体分かった…魔物相手なら十分だってな?」
学者「戦場じゃ全然通用しないっすけどね…」
盗賊「おいおい…こいつらは傭兵じゃ無ぇんだから仕方無ぇ」
剣士「それってどういう事?姉さんでもダメ?」
盗賊「昔なら通用したかもしれんな?…でも今の戦場は剣を使うような戦い方にはならん…コレだ!銃器」チャキリ
剣士「そうなんだ…」
盗賊「魔物を追い払うのは剣でも良いだろう…機械相手の戦場は銃の撃ち合いなんだ…接近する前にやられる」
剣士「魔法は?」
盗賊「向こうの大陸じゃ魔法も使って居るとは聞くな…だが魔法も射程が短いからやっぱり銃器頼りだろう」
学者「ミライ君も戦場に出るつもりなら銃の使い方を勉強した方が良いっすね」
盗賊「そうはやし立てるな…折角戦場とは無縁の生活してんだから…」
剣士「銃か…なんか興味出て来たなぁ…それ僕に見せてくれないかな?」
盗賊「これか?…見る分には構わんが壊すなよ?」ポイ
学者「素人に渡して危なくないっすか?」
盗賊「火薬も弾も入っちゃ居無ぇ…形見だから持ち歩いてるだけだ」
学者「な~んだそうだったんすね…俺っちのバヨネッタも弾は入って無いんで見ても良いっすよ」ポイ
剣士「おぉ!!ありがとう」パス
学者「それは銃剣って奴なんす…一応接近戦も想定された銃なんす」
剣士「へぇ…スゴイな」ジロジロ
---------------
『デッキ』
ユラ~リ ギシ
盗賊「おう…どうした?黄昏てんのか?」
女オーク「違うの…ミライが楽しそうにしているから…」
盗賊「まぁそんな感じだな?」
女オーク「ミライを閉じ込めすぎていたかも知れないって反省してる…」
盗賊「お前…ミライの本当の姉では無いのだろう?」
女オーク「…」ウツムキ
盗賊「まぁ…それぞれ事情が有るだろうからあまり聞く気は無いんだが…俺にも血の繋がって居ない姉が居るんだ」
女オーク「そう…」
盗賊「お前と同じハーフオークな訳よ…その…なんだ…同じ様な境遇で少し気になっただけだ」
女オーク「私とミライの関係は少し違うと思う」
盗賊「そうか?まぁあまり詮索はしない方が良さそうだな?…そうそう思い出した…食って見ろ」スッ
女オーク「これは…」
盗賊「俺が持ってるレーションだ…食え」
女オーク「あ…ありがとう」パク
盗賊「うまいか?」
女オーク「美味しい…」モグ
盗賊「ミライがな?お前を心配して居たんだ…自分の為に食べ物をガマンしてるってな?」
女オーク「ミライが私を…」
盗賊「健気なこった…ミライを想うならお前ももう少し我を出した方が良い」
女オーク「…」ポロリ ツツー
盗賊「おいおい…俺ぁ泣かすつもりで言った訳じゃ無えぞ?」アタフタ
女オーク「ごめんなさい…何でも無いの」フキフキ
盗賊「レーション全部食えよ!?その後ちっと運動だ」スタ
---こりゃケアが必要なのは姉の方だな---
---何か抱えて居やがる---
『地庄炉村_近海?』
ザブ~ン ユラ~リ
学者「陸の方は雪が無い場所が増えてきやしたね?」
盗賊「そら今は真夏だからな…しかし現在地が全然分からん」
学者「ちょいちょい小さな漁村があるんすが…」
盗賊「う~む…寄って行っても良いんだが…漁村に寄って何する訳でも無いしなぁ…」
学者「この辺りはどこの領地なんすかね?」
盗賊「分からん…だが地庄炉村がフィン・イッシュ領なのは間違いない」
学者「地図だけでも入手しに行きやせんか?」
盗賊「お前…小さな漁港に地図が売ってると思うか?」
学者「確かにそうっすね…」
剣士「アランさ~ん!!正面に島が見えて来たよ~」
盗賊「そらマズイな…浅瀬に乗り上げちまうかもしれん」
学者「ちっと進路修正して来るっす」
盗賊「島か…急いでる訳でも無ぇから停船出来る場所が有るなら一晩寄って見ても良いな」
学者「いやいやそれなら漁村の方に…」
盗賊「馬鹿!変なトラブルに巻き込まれたくない…無人島なら貝とかカニとか他の食い物も探せるだろう」
学者「そういう事っすね?…確かに魚ばっかりは飽きやした」
盗賊「シカ肉が食いてぇな…」
学者「おぉぉぉ!!良いっすね!!」
盗賊「お前の銃もまだ試し撃ちして居ないんだろ?」
学者「島に行きやしょう!!」
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『無人島_崖』
ユラー ギシ
盗賊「よし!!ここなら向こうの崖に飛び移れそうだな?」
学者「碇を降ろしやす!!リッカさん手伝ってくだせぇ」ガラガラ
女オーク「これを回すのね?」ガラガラ
盗賊「ロープ持って先に飛び移る!!」ダダ ピョン
学者「もうちっと船を手繰り寄せられやせんか?」
盗賊「んむむ…やってるが…こりゃ無理だな…ふんがぁぁ!!」グイグイ
学者「これじゃロボが船から降りられんっすね…」
女オーク「私が背負って飛び移るわ」
盗賊「おぉ!!頼む!!」
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『浜辺』
ザザー ザザー
盗賊「ここだな…崖を背にして丁度良い…今晩はここで休む」
剣士「火を焚かないとね」
盗賊「リッカと一緒に薪を集めて来てくれ…ついでに何か食い物も探してこい」
学者「俺っちは銃の試し撃ちついでに何か居たら狩って来やす」
盗賊「おう!!寝床作っといてやる」
学者「じゃぁ行って来るっす」
盗賊「日が落ちる前に戻って来いよ」
学者「分かって居やすとも」タッタッタ
剣士「あぁぁぁ!!木の芽だ!!姉さん!!一杯ある!!」
女オーク「じゃぁミライは芽を摘んでおいて?薪は私が切って来るから」
盗賊「日が暮れるぞ!!じゃんじゃん獲りまくれ」
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『焚火』
メラメラ パチ
盗賊「やっぱこんだけ火が強いと暖かいな…」ふぅぅぅ
女オーク「薪はこれぐらいで一晩持つ?」
盗賊「十分だ…こりゃ倒木でも有ったのか?」
女オーク「沈没船の残骸が崖の向こうに有ったのよ」
盗賊「なぬ!?他には何か無いのか?」
女オーク「残骸だけ…使えそうな物は何も無かった」
タッタッタ
剣士「大漁大漁!」ドサドサ
盗賊「おいおい…こんなに沢山食い切れんが…」
剣士「持って帰るに決まってるじゃない…もう一回獲って来るぅぅ!!」タッタッタ
盗賊「ヤレヤレ…これどうやって食うんだ?」
女オーク「大き目の葉に包んで焼くの…ミライの大好物」
盗賊「ほう?ってことはお前も大好物だな?」
女オーク「私は…」
盗賊「こんだけ沢山あるんだ…腹いっぱい食うぞ…ええと?どうやるんだ?どの葉に包むのよ?」ガサガサ
女オーク「私がやるわ…」テキパキ
盗賊「そういや姉御も同じ様な物作ってたな…葉に芋を包んで土の中に埋めるんだ」
女オーク「そういうやり方も有る…木の芽は直ぐに柔らかくなるから焚火の近くに置くだけ」
タタタターン!
盗賊「お!?ゲスが何か狩ってんな…こりゃ肉に有り着けそうだ」
女オーク「肉はどうやって?」
盗賊「剣にぶっ刺して海水で洗うだろ?…その後直火でこんがりよ」
女オーク「あまり美味しそうに思えない…」
盗賊「ヌハハ…食い物はオークと喧嘩しないで済むな…まぁ俺は芋も好きだけどな?」
女オーク「木の芽…焼けたからどうぞ」スッ
盗賊「おぉ!!どれどれ」パク モグ
女オーク「どう?」
盗賊「ふむ…独特の苦みがあるな…こりゃ酒が欲しい」モグ
女オーク「苦み?」
盗賊「あぁそうか…オークは味覚が少し違うんだったな…まぁ中々美味い…お前も食え!」
女オーク「私は後で…」
盗賊「良いから食え!!ミライが沢山木の芽を摘んでるのはお前に食わせる為だ…その辺察してやれ」
女オーク「…じゃぁ…少し」パク モグ
盗賊「うまいか?」
女オーク「美味しい…」モグモグ
盗賊「おう…それで良いんだ…美味い物は美味い!欲しい物は欲しい!…な?」
---まいったな---
---どうも俺は貧しい奴に弱い---
---傷を負った奴に弱い---
『バーベキュー』
ジュゥゥゥ
盗賊「ウサギ相手に銃を使うたぁ恐れ入る…」ガブ モグ
学者「兄貴ぃ…他に居なかったんすよ…俺っちにも肉をっすねぇ…」
盗賊「しかも4発撃ったな?オーバーキルだ」モグモグ
学者「試し撃ちだったんすよ…」
盗賊「カニ食うか?」
学者「お!?兄貴カニ捕まえたんすか?」
盗賊「軍隊ガニが居てな?蹴とばしたら泡拭いた…銃なんぞ使わんでもな?」
学者「兄貴ぃぃ勘弁して下せぇ…」
女オーク「木の芽の香葉焼きをどうぞ…」スッ
学者「リッカさんありっすー」パク モグ
剣士「姉さん!!根も少し掘って来たんだ…これ洗ってそのままの方が良いよね?」
女オーク「そうね…」
剣士「半分こしよう!はい…」ブチ
盗賊「おぉ食え食えぇ!!おーし!!次カニ焼くぞ!!」
学者「待っていやした!!」
盗賊「いやぁしかし…この島に来て正解だわ…なんつうか旅ってこういう感じなのよ」
剣士「すごく楽しい…焚火も暖かいし」
盗賊「お!!貝も焼けた様だ…ゲス!!先に食って良いぞ!!」
学者「うっしゃぁぁ!!あつつつ…」パク モグ
剣士「貝かぁ…僕も食べて見ようかな?」
盗賊「おぅ!!食え食え!!俺はもう腹いっぱいだ」
女オーク「ウフフ…」
学者「カニの頭は俺っちがもらいやすウヒヒ…」
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『談話』
メラメラ パチ
ウサギの毛皮…そろそろ乾いたかな…
何か作るんすか?
軍隊ガニの甲羅と組み合わせてちょっとした肩当だよ
ほえ~…上手い事作るんすね
こういうの作って売ればお金が手に入るのさ…今度は幾らで売れるかな~?
盗賊「ミライは細工の才能が有りそうだ…アレでそこそこの稼ぎになるだろう?」
女オーク「そうね…いつも何か拾って来ては工夫して作ってる…」
盗賊「まぁ…辺境に居てはそれほど稼げるとは思えんが…良い才能だな」
女オーク「…」
盗賊「アレは俺が買い取ってやる…」ピーン
女オーク「え!?…金貨…こんなに?」パス
盗賊「船の掃除代も込みだ…地庄炉村に着いたら多少の買い物も出来るから足しにしろ」
女オーク「ありがとう…」
盗賊「しかし…酒でも無いと時間が潰せんな…」
女オーク「先に休んでもらって良いわ…多分ミライはまだ寝ないから」
盗賊「ヌハハその様だ…ほんじゃ先に横になる…薪はケチらんで全部使えよ?」
女オーク「ウフフ…分かった」
今度は何作るんすか?
貝殻を細かく砕いて粉にするんだ…これも食料だよ
えええ?そんなもん食えるなんて初耳っすね
他にも色々使い道が有るんだよ?顔料にしたり金属を磨いたりね?魔法の粉さ…
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