18.ヤン・ゴンの港
『数日後_デッキ』
ダーン! ボボボボボ
女ハンター「ヒット!!」
盗賊「おーし!!これで追って来んな?」
女ハンター「もう一回見張り台に上がって…」
盗賊「いや此処に居ろ…お前ばかり働き過ぎだ…少し休め」
戦士「クロスボウを少しは撃たせて貰いたいな?ハハ…」
盗賊「大砲の乗って居ない海賊船はもう少し寄せても構わんのだ」
女ハンター「気を使って居るの?」
盗賊「殆ど寝て居ないだろう?デッキで横になるのも気持ち良いぞ?」
女ハンター「フフじゃぁ少し目を瞑る…」スゥ
盗賊「しかし大砲を積んだ海賊は全然居無ぇな?」
戦士「補給に問題が有るのだろう」
盗賊「もうスクーナーとスループ船使った海賊は怖く無ぇ」
戦士「ハハハ…ミライ君の作った鉤縄キャッチャーが上手く働くからねぇ…何個溜まったんだろうか」
盗賊「11個だとか言ってたな…それ使って又何か作ってる様だ」
戦士「それは楽しみだ…」
シュタタ クルクル
盗賊「おっと危無ぇ!!その手は食わんぞ!!」ズダダ
少女「アラン!!匂いする!!」シュタ
盗賊「んん?目的地近いか?」キョロ
少女「血の匂いだ…多いぞ」
戦士「まさか…また焼き討ち…」
盗賊「方角は?」
少女「このままで良い…なんだこの匂い」クンクン
戦士「見ろ!!大型の船が2隻…」ユビサシ
盗賊「おぉ!!追い付いたか」
少女「火薬の匂いだな…目が滲みるぞ」ゴシゴシ
戦士「大砲を撃ったのか…これは危ないかも知れん…」
盗賊「俺らを海賊だと思って撃って来るってか?」
戦士「重装射撃砲の飛距離は?」
盗賊「地上に置いて精密射撃で600メートル…射角上げて2キロぐらいが有効射程」
戦士「一応警戒しておいた方が良い」
女ハンター「もう向こうにはこの船が見えてる筈…船はどっちの方向を向いて?」
盗賊「ちっと見張り台上がって来る…お前は横になってろ」ダダ
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『見張り台』
ユラ~ ググググ
盗賊「スループ船3隻と気球がこっちに向かってる…銃器は隠して置け!」
戦士「こっちを海賊と見誤らないで欲しい物だ…」
盗賊「えらく重装な船が2隻か…何やってんだ?」
戦士「海賊船の鎮圧では無いか?」
盗賊「なるほど…」
戦士「このままあの船の庇護に入って居れば海賊に襲われんで済みそうだが…」
盗賊「あいつらどうやって見極めてんだろうな?」
女ハンター「フフ…勘でしょ?勘?」
盗賊「ヌハハそういう事か…」
女ハンター「何…これで会話成立したの?」ニヤ
盗賊「勘で分かるって事は襲って来無ぇって事だ…どう見ても俺らは海賊面じゃ無ぇ」
戦士「んん?」チラ
女ハンター「フフ…」チラ
戦士「アラン君…君はどう見ても海賊の顔をしているが?」
盗賊「なんだとう!!」
女ハンター「喋り方も声も…海賊その物ね…」
盗賊「悪りぃ…ちっと俺隠れとくわ…小僧の様子でも見て来る」
戦士「ミルク!!ミライ君とリッカ君も呼んで来てくれ」
少女「分かったぁ!!」シュタタ
--------------
『荷室』
ユラ~リ ググググググ
盗賊「どうだ?小僧の様子は?」スタ
学者「体の回復は順調なんすが…極度のストレスで失語症になって居やすね…半年から1年は喋れんと思いやす」
少年「ィィィ…ァ」ギロリ
盗賊「おぉぅ…まぁ怯えんな…俺は顔が怖いだけで中身は紳士だ」スッ
ズザザ!
少年「ゥゥ…」ギラギラ
学者「あんま怖がらせんで下せぇよ?」
盗賊「ヌハハその眼だ…そうだ俺と同じ眼をしてる…それで良い」
少年「…」ギロ
盗賊「レーションだ…食って見ろ」ポイ
少年「…」タジ
盗賊「とりあえずな?何でも良いから食って体力付けろ…その後生き方を教えてやる」
学者「急に食べても逆効果っすよ?」
盗賊「んな事は体が覚えて行くんだ…食える時に食え」
少年「…」カリ モグ
盗賊「んん?やっぱお前その石握りっ放しか…」
少年「…」ガバッ グググ
盗賊「取りゃし無ぇよ…ゲス!包帯有るか?」
学者「何するんすか?」スッ
盗賊「こいつの手から石が落ちない様に包帯を巻いてやるのよ…ゴラ動くな!」マキマキ
少年「ァゥ…ゥァァ」バタバタ
盗賊「よーし!!これで両手使えるだろ?」
少年「…」ギロリ
盗賊「無くすんじゃ無ぇぞ?大事な石なんだろ?」
少年「ゥゥ…」ギュゥ プルプル
盗賊「こりゃかなり訳ありだな…」
学者「兄貴ぃ…それより外の様子はどうなんすか?」
盗賊「多分フィン・イッシュの軍船が近くに居てよ…俺が顔出すと海賊に間違えられそうだから荷室に来たんだ」
学者「アハ兄貴は人相悪いっすもんねぇ…」
盗賊「うるせぇ!!」ゴン
学者「あたたた…ほんで?軍船近いって事は目的地も近いって事っすね?」
盗賊「まぁな?只俺らはちっと立ち寄るだけだから情報集めて次に進むつもりだ」
学者「食料とかちっと補給出来ると良いっすね?」
盗賊「うむ…米とか芋はもう食い飽きた…魚もだ」
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『1時間後』
チョキ チョキ バサ
盗賊「暴れんなゴラ!」チョキ
少年「ゥァァァ…」ジタバタ
盗賊「おら?随分スッキリしたじゃ無ぇか?」
少年「ゥゥゥゥ…」ギロ
学者「切った髪の毛は後でミライ君が使うかもしれやせんぜ?」
盗賊「だな?集めて束ねとく」ガサガサ
学者「ちっと切り過ぎたんじゃ無いっすか?殆ど坊主じゃ無いっすか…」
盗賊「小僧はこれで良いんだ…おら終わりだ!」ペチン
少年「ゥゥゥ…」ギロ
ガコン! ギシギシ
少年「ゥァ…」ゴロゴロ ドタ
盗賊「何だ!?」スック
学者「足音が聞こえやすね?」ドタドタ
盗賊「なるほど…海賊じゃ無いか確かめに来てんのか…」
シュタタ スタ
剣士「アランさん!!大きな船の人が積荷を見に来るよ」
盗賊「やっぱそうか…俺はどうすりゃ良い?隠れときゃ良いんか?」
剣士「多分大丈夫…今カゲミさんが話をしてくれてるんだ」
盗賊「ふむ…海賊じゃ無い事が確認取れれば無罪放免だな?」
剣士「なんかそんな感じ…」
盗賊「そうそう…今コイツの髪の毛切った所だ…お前使うだろう?」
剣士「あ~貰って行くよ」バサ
学者「俺っちもちっと上見て来やしょうかねぇ…兄貴よりマシな顔してるんで」
盗賊「ケッ!!様子見て来い!!」ドン
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『甲板』
ドタドタ…
大砲に見えるのはハリボテですね…砲弾も見当たりません
フハハハこれは木人か…こんな子供騙しでやり切って来たのか
乗員は7名と子供が2名…あと一台旧式の機械がありますが非武装です
メインの武器は中古の重クロスボウの様ですね…
闇商人「…これが商工会の証明書さ…確認する?」パス
兵隊「ふむ…確かに…」ジロ
闇商人「積み荷は主に木材と鉄鋼…食料だね…密輸に当たる物は積んで居ないよ」
兵隊「我々はそれを取り締まっている訳では無い…現在武装組織と係争中でな」
闇商人「武装組織…じゃぁヤン・ゴンに入船は出来ないのかな?」
兵隊「一応追い払っては居るが…隠れ潜んでる者が居るかもしれないから安全は保障出来ないが?」
闇商人「補給にだけ立ち寄りたいかな…」
兵隊「ふむ…まぁ良いだろう…だが他の友軍から誤爆を避ける為に旗印を立てて貰いたいのだが…」
闇商人「旗印か…係争してる相手からすると敵になってしまうね」
兵隊「無印の商船が自由に出入りできる状況では無いぞ?」
闇商人「わかったよ…」
兵隊「では友軍の旗印はこちらで用意する…この船の場合…メインマスト上部が良かろう」
兵隊「警告しておくが友軍に対して敵対が発覚した場合…即刻船ごと沈められる事を忘れるな?」
闇商人「肝に銘じるさ…」
兵隊「では我々は撤収する!旗印が届くまでここで待て…失礼!」スタ
ドタドタ…
学者「話上手く行ったみたいっすね?」
闇商人「まぁ…相手は正規軍だからね…話は通じるさ」
学者「フィン・イッシュの正規軍っすよね?」
闇商人「うん…数少ないけど…精鋭中の精鋭らしいよ…陸上での話だけど」
戦士「正規軍には元セントラル王のバレンシュタイン卿が居ると聞いたな…」
闇商人「そうだね…没落貴族の一人さ」
戦士「船に乗って居るのだろうか?」
闇商人「どうだろうね?そういう話は一般には知らされないからね」
学者「乗ってるなら見て見たいっす…」
シュタタ
剣士「旗を受け取ったよぉ!!」シュタ
闇商人「それをメインマストの上に掲揚しなければいけないらしい」
剣士「おけおけ!!取りつけてくるね」シュタタ
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『水龍の旗印』
バサバサ ヒラヒラ
盗賊「ほほー…これでフィン・イッシュの庇護下だな?」
闇商人「僕らはフィン・イッシュの友軍が誰なのか知らないから動きにくい所もあるんだよ…」
盗賊「確かに…どこのどいつを雇ってるか分からんな…」
闇商人「さっさと補給と情報収集終わらせて立ち去るのが吉かな」
盗賊「まぁこれでヤン・ゴンに入船出来るんだが…どうすっかな…」
戦士「数人は船に残って離岸させておいた方が良いと思う」
盗賊「やっぱそうなるな…」
剣士「僕と姉さんは船に残るよ…作り物もやってる最中だし」
学者「俺っちも残りやす…賢者の石の効果も確認したいんで」
闇商人「僕はヤン・ゴンに降りて見たい…ちょっと確認したい事もある」
盗賊「おう!ほんじゃ降りるのは…俺とカゲミ…ほんでラスと…」
戦士「私は船で少し休む…ミルクを連れて行って勉強させてくれないか?」
盗賊「おっしこれで4人だな?」
少女「ウルフィは連れて行くぞ…陸で狩りさせないと衰える」
盗賊「ちゃんと面倒見ろよ?」
学者「兄貴ぃ…船どうしやす?直接桟橋の方に行っても良いんすが…」
盗賊「う~ん…船は沖に置いといて小舟連結させて双胴船にするのを試してみっか?」
剣士「お!?何それ?」
盗賊「なんかな?小舟を板で連結させて帆が立てられる様になってるらしい」
剣士「おぉぉぉ!!組み立ててみたい!!」
盗賊「じゃぁ早速船止めて小舟降ろすぞ!」ダダ
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『双胴船』
ガサゴソ
盗賊「おぉ!なんだこれ…めちゃ簡単だな」
剣士「帆も差し込むだけだね…漕いで進む事も出来るのかぁ…便利だなぁ」
盗賊「お~い!!降りて来て良いぞぉ!!」
ピョン クルクル シュタ
少女「ムフフ…」
剣士「じゃぁ僕は船に上がるね」ヨジヨジ
盗賊「カゲミとラスも順に降りて来いよぉ!!」
学者「兄貴ぃ!!こっちの船どうしやす?」
盗賊「200メートルぐらい沖に停船してりゃ良いだろ」
学者「分かりやしたぁ!!後で移動しやすねぇ!!」
女ハンタ「ホッ!!」スタ
闇商人「とぅ!!」スタ
ウルフ「がうがう!!」シュタ
盗賊「ほーーーこりゃ双胴船馬鹿に出来んな…相当安定してる」
闇商人「荷物も随分乗りそうだね?」
盗賊「これ一人で動かせるんか?」
闇商人「舵を足で操作して居るのを見た事が有るよ」
盗賊「なるほど…まぁやって見るか…習うより慣れろだ」バサバサ
闇商人「お?進みだした…」
盗賊「こりゃ面白れぇ…」グイ バサバサ
盗賊「なるほど…この金具で帆角固定するんか…」グイグイ ギュゥ
闇商人「ハハすぐに乗りこなせるんだね」
盗賊「キャラック船より随分風の捕まえ方が簡単だ…あとは舵取りだけだ…おぉ!!舵も固定出来るようになってんのか」
少女「なかなか早いな…」
盗賊「アレだ…一枚帆のスループ船みたいなもんよ…ちっと帆が小さいが」
闇商人「ボートにそれぞれ3人…間のデッキ部分に6人は乗れそうだね」
盗賊「気に入ったぜ双胴船!」
バサバサ ザブン ザブン
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『ヤン・ゴンの港』
ガコン ギシギシ
盗賊「帆だけ片付けて行く…先に降りててくれ」ガサゴソ
闇商人「よいしょ!」ヨッコラ
女ハンター「気を付けて…」スタ
少女「ウルフィ行くぞ」ピョン シュタ
男達「…」ジロジロ
女ハンター「なんか嫌な感じ…」
闇商人「見てるねぇ…」
盗賊「おっし!終わったぁ!!」ピョン ズダ
闇商人「普通ならココで入船料取りに来るんだけど…」
盗賊「入船料も何も小舟だぞ?漁船よりもショボイ船に金出せってか…」
闇商人「桟橋の利用はどこもタダじゃないさ…ええと…あの箱にお金を入れろって事かな…」スタ
盗賊「おいラス!武器はしっかり隠しとけよ?」
女ハンター「分かってる…」スタ
闇商人「…」チャリン チャリン
盗賊「律儀な事で…」
闇商人「帰りに小船が無くなったら困るだろう?」
盗賊「無くならん様に仕掛けはしてあるがな?」
女ハンター「なんかココ…雰囲気おかしくない?」キョロ
盗賊「無法地帯なんだろ?気にすんな」
女ハンター「あんたねぇ…」イラ
盗賊「ヌハハお嬢様じゃ無いだろうに…只の難民キャンプだと思えばどうって事無い」
闇商人「宿があるのかも微妙な様だね…」
男達「…」ヒソヒソ
女ハンター「…」キョロ
盗賊「まぁそうビク付くな…軍船すり抜けて堂々と桟橋使ってる訳だ…おまけに番犬まで連れた一行をそう簡単には襲わん」
少女「番犬言うな!ウルフィだ!」ゲシゲシ
盗賊「しかしラス!かなり薄着だが…吹っ切れたか?」
女ハンター「暑いだけだ…」
盗賊「俺ら良いコンビだぞ?全身傷だらけの奴が堂々と歩いてる訳よ…そら怖いわな?ヌハハ」
闇商人「よしこうしよう…僕がリーダーで君達2人は傭兵さ…ミルクは僕のお手伝い役」
盗賊「言わんでもそんな風に見えてるぞ?なぁミルク!!ヒソヒソ話してんの聞こえてんだろ?」
少女「商船が入って来ないって文句言ってるぞ」
盗賊「そっちか…」
少女「麻の布とか売りたいみたいだ」
闇商人「麻の産地なのか…」
盗賊「布は船に乗って無いから欲しい所だ」
闇商人「いくら持ってる?」
盗賊「金貨20枚ぐらいある」
闇商人「ふむ…確か船に要らない武器とか沢山有ったね…鉄鋼も余裕がある」
盗賊「商売する気か?」
闇商人「酒場とか期待出来そうに無いからね…取り引きで色々聞き出した方が早いと思う」
盗賊「なるほど…おっし!俺が荷物運んでやる」
闇商人「まぁ慌てないで何が欲しいのか聞き出してみようか…」
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『道端の切り株』
タッタッタ…
女ハンター「宿は見つかったか?」
盗賊「今カゲミが聞き込みしてくれてる…それよりほら!麻の羽織りだ」バサ
女ハンター「また随分安そうな物を…」
盗賊「そら涼しいんだ…腰にある武器がチラチラ見えるからそれ羽織って隠せ」
女ハンター「フン!」バサ
女ハンター「ゴワゴワだ…」
盗賊「日に当たらんで済むからそう悪く無いぞ?」
女ハンター「カゲミとミルクだけで聞き込みやらせて大丈夫なのか?」
盗賊「俺が行くと値引き出来ないから邪魔らしい」
女ハンター「フフ…じゃぁこの羽織はどうした?」
盗賊「銀貨2枚…」
女ハンター「麻袋と大した変わらない物に銀貨2枚も使った?」
盗賊「うるせぇ!金持ってる奴はじゃんじゃん使えば良いんだ」
女ハンター「酒は買って無いの?」
盗賊「何処に売ってるか分からんもんだからよ…だが大麻は見つけた」チッチ スパーーー フゥゥゥ
女ハンター「…」ジロリ
盗賊「何だよ?お前も吸うか?」
女ハンター「要らない…」
盗賊「しかし…ここは随分シケた所だ」
女ハンター「紛争の最中だからじゃないの?」
盗賊「ふむ…港の方にも何隻か船が沈んでたな」
女ハンター「重装射撃砲なら海賊船なんか簡単に沈められる…」
盗賊「どてっぱらにドーンってか?」
女ハンター「それよりフィン・イッシュの女王が乗る船の情報は?」
盗賊「多分な?俺らが追い越したんだと思うわ…沖で停船してる2隻は先遣部隊だろう」
女ハンター「じゃぁここで待つ感じに?」
盗賊「俺らの目的は追随なんだが…ちっとどうするか迷ってる」
女ハンター「今の所軍船の近くに居た方が安全と言えば安全ね…」
盗賊「しばらく海賊に追われてあんま寝て居ないから…ちっと休憩だな」
女ハンター「休憩出来れば良いけど…」
--------------
『1時間後』
シュタタ クルクル ガシ!!
盗賊「ウハハハ見切ったぞ!!」
少女「アラン!仕事だ…食材買ったから船に運べ」
盗賊「マジか…」
少女「荷車は借りてる…来い!」
盗賊「おいおい…そう慌てるな…宿はどうなってる?」
少女「テントを借りられる様にカゲミが話してる」
盗賊「ぐはぁ…難民キャンプかよ…」
少女「仕方ないだろう…虫除けになるだけマシだ」
女ハンター「何処を見ても大した建物が建って居ないでしょう?どんな期待してたの?」
盗賊「ううむ…確かにそうだな…低木ばっかじゃロクな木材切り出せんか…」
女ハンター「ここは20年前まで氷に覆われた未踏の地…何処に行っても同じだと思う」
盗賊「そういやそうだったか…」
少女「おい!!食材を荷車に積みっぱなしだ…早く行くぞ!」グイ
盗賊「お…おう」スタ
---------------
『荷車』
ゴトゴト
盗賊「ほんで?この食材運んで何を持って帰ってくりゃ良いんだ?」
少女「銀の武器と鉄の斧だ…鉄鋼は要らんらしい」
盗賊「なんで又銀の武器なんか…」
少女「知らん…ゾンビでも出るんじゃ無いか?」
盗賊「まぁ…銀の武器は余ってたから良いか」
少女「それで布と交換するのだ」
盗賊「ここまでで良いぞ?後は俺一人で行ける」
少女「そうか?」
盗賊「戻って来たら何処行けば良い?」
少女「匂いで分かる…何処でも良いぞ」
盗賊「便利な鼻だこと…ほんじゃラス!ミルクを頼むな?」
女ハンター「分かった…」
盗賊「じゃぁ又後でな?」ノシ
---------------
『テント』
バサッ
男「このテントなら使っても良い…どうだ?これぐらいで」スリスリ
闇商人「フフ…仕方ないか…」ジャラリ
男「旦那ぁ?夜は野党が出るかも知れんので…休む時は下の方で…ウヒヒヒ」
闇商人「下?」
男「床の板をめくって見りゃ分かる」
闇商人「なるほどね」
男「じゃぁ俺はこの辺で…」コソコソ
闇商人「下か…」グイ
闇商人「…」---塹壕の上に板を置いて居るのか---
闇商人「…」---獣除けには良いけど…これじゃ逃げ道が無い---
闇商人「…」---見張りをおく必要がありそうだなぁ---
シュタタ スタ
闇商人「お!?見つけたね?」
少女「ここか…ふむふむ…」
女ハンター「中々良さそうなテントだこと…」キョロ
闇商人「まぁまぁ…テントの下が塹壕になって居るんだ」
女ハンター「塹壕で休む?中々衛生的ね」
闇商人「一応敷物は敷いてあるよ…ハハハ」
女ハンター「塹壕に隠れなきゃいけないほど何かが有ると言う事ね」
闇商人「ゾンビとスケルトンが絶えないらしいよ…あと野党が出るとも言われた」
女ハンター「それで銀の武器が欲しい訳ね…」
闇商人「ところでウルフィは?」
少女「狩りに行ったぞ」
闇商人「そうか…夜中見張りを置かないとちょっと危なさそうなんだ」
少女「ウルフィの仲間呼ぶか?」
闇商人「それも他の人を怖がらせてしまうね」
少女「誰か来ても匂いで分かるから大丈夫だぞ」
闇商人「そうかい?」
女ハンター「じゃぁ私は先に少し休ませて貰う…」
闇商人「そうだね…まぁしばらくは大丈夫だから安心して休んで」
--------------
『夕方』
ガチャガチャ
少女「此処だ…」シュタ
盗賊「おぉぉ!!思ったより良さそうなテントじゃ無ぇか」ドサー
闇商人「あ…武器を持って来てくれたね?」
盗賊「要らん武器全部持って来たぞ…中々重かった」フゥ
闇商人「鉄の武器とかは要らないけどね」
盗賊「馬鹿…鉄で出来てんのは斧だけで他は全部銀の武器だ」
闇商人「ふむ…これだけ有れば布以外の物も買えそうだな…」
盗賊「他に何が売ってる?」
闇商人「色々あるけどね…気になってるのはお札だよ」
盗賊「お札?」
闇商人「どういう訳か呪術用の呪符っていう物が売ってるのさ」
盗賊「ほーう?何か効果あんだろうな?」
闇商人「呪を封じるとか言ってたから魔除けの類だね…オークも呪符を使ってたりするじゃない?」
盗賊「あぁオークシャーマンだっけか…そういやミネア・ポリスにも居たな」
闇商人「こっちの大陸の呪符はオークのそれとは違うみたいだよ…でもまぁ同じ様な効果なら買っても良いかなと」
盗賊「あれは直ぐ剥がれてどっか行っちまうからなぁ…」
闇商人「どうせ使わない武器なら使いそうな物に交換した方が良い」
盗賊「そらそうだ…てか…ラスは何処行った?」
闇商人「今寝てる…このテントの下に塹壕があるのさ」
盗賊「おぉ!!そりゃ良い!!」
闇商人「夜中に野党が出るから下で休めとか言われたけど…どう思う?」
盗賊「ヌハハそんなん石か何か置かれて閉じ込められるに決まってるだろ」
闇商人「やっぱりそうだよね…」
少女「大丈夫だぞ…誰か来てもすぐ分かる」
盗賊「ミルク様さまだな?撫でてやる」ナデナデ
少女「ふにゃー」ゴロン
盗賊「まぁ野党が来たら金儲けのチャンスだ…身ぐるみ剥いで塹壕の中に入れときゃ良い」
闇商人「心強いね」
盗賊「さて…俺もちっと酒飲んで休むか」キュポン グビ プハァ
闇商人「もう休む?」
盗賊「何よ?」
闇商人「面白い話が聞けたのさ」
盗賊「お?」
闇商人「此処に居た武装勢力の事さ…」
早い話海賊なんだ
正規軍に勝てる訳なんか無くて全滅さ…船も沈められた
どうしてやられたかと言うと…
例の石…賢者の石を盗んだからなんだよ
盗賊「なぬ!?」
闇商人「興味出て来たかい?」
ここから川を遡って20キロほど行った所に大きな遺跡があるらしい
そこで発見された物はミイラとなったご神体が封印されていたそうだよ
そこではシン・リーンの研究者が何かやっているらしい
その影響で死者がゾンビとなって動き回ってるとか言うんだ
盗賊「ほーん…ほんで呪符は魔除けのお札って訳か…」
闇商人「どういう繋がりがあるか分からないけれど…呪いだとか言う噂もあるね」
盗賊「賢者の石はそこから盗まれた訳だな?」
闇商人「確実な話では無いけれど…なんかそんな気がするよね?」
盗賊「ちょい待て…あの石はマルコが持って居た物なのか?」
闇商人「同一の物かどうか正直分からない…もし同一の物だったなら…シン・リーンの研究者はマルコさんの可能性もある」
盗賊「お前…俺を誘導してんな?」
闇商人「まあね?」
闇商人「重ねて言うと…賢者の石は命を与える効果なんだ…もしかするとご神体を復活させようとしていたのかも知れない」
盗賊「そのご神体は何者よ?」
闇商人「わからないよ…見て見ない事には…」
盗賊「くぁぁぁ行くしか無いか…20キロも川を登れると思うか?」
闇商人「やってみない事には何とも言えないね」
盗賊「まぁ明日にでも行って見るか…」
闇商人「フフ…」
--------------
『夜_焚火』
メラメラ パチ
盗賊「おら焼けたぞ?鳥の丸焼きだ…お前も食うよな?」
闇商人「そうだね…どうやって食べる?」
盗賊「んなもんダガーで適当に削ぎ落して食うんだ…お前何か持って無いのか?」
闇商人「有るには有るけど…突き刺し専用の武器でね」スチャ
盗賊「ニードルダガーか…又キワモノを…」
闇商人「護身にはこれで十分さ…」プス
盗賊「おいおい肉を丸ごと持って行くな」グイ
闇商人「じゃぁ切り分けてよ」
盗賊「世話の焼ける…」スパ ポイ
闇商人「フフ…久しぶりの新鮮な肉だ…」パク モグ
盗賊「やっぱ肉だよな?ミルクも要るか?」
少女「バナナ食い過ぎて腹一杯だ」ゲフー
盗賊「そうか…食いぶち減って良かったわ」ガブリ モグモグ
盗賊「ほんでカゲミ!ちっとそのニードルダガー見せてみろ…」
闇商人「んん?何か気になるかい?」ポイ
盗賊「ほーう…やたら軽いな」スチャ
闇商人「鉄の鎧も貫けるとか言われて買ったのは良いけど無理だったよ…ハハハ」
盗賊「使い方次第だな…こりゃ暗殺用の武器なんだ…材質はミスリル銀かぁ?」ジロジロ
闇商人「欲しいなら使っても良いよ」
盗賊「俺ぁ普通のダガーの方が好みだ…暗殺目当てならこっちの方が良いかも知れんが…」
闇商人「そうかい…」
盗賊「そいつはな?突き刺した後に刃を抜かない限り殆ど血が出ないんだ…綺麗に暗殺する為の武器よ」
闇商人「あんまりそういうシーンは無いね」
盗賊「まぁ…汚れずに相手を倒せるのは利点だから覚えとけ」
少女「おいアラン!遠くでヒソヒソ悪い話してるぞ」
盗賊「ヌハハ来なすったか…何て言ってんだ?」
少女「寝てる隙に泥棒するつもりだ」
盗賊「またショボイ話だな?」
闇商人「ヤレヤレだね?どうする?」
盗賊「荷物纏めて塹壕の中に入っときゃ何も出来んのじゃないか?」
闇商人「板を塞がれて閉じ込められるんじゃ?」
盗賊「こんなペラペラの板なんざ銃で簡単に穴空くだろ…そんな事せんでもちっと細工しときゃ済む」
闇商人「なんだ結局そういう風か…」
盗賊「あいつ等ビビッてっからどうせ大したこと無い…寝てる隙に泥棒とかショボ過ぎるわ」
闇商人「気にしないで休むかぁ!!」ノビー
盗賊「おう!!寝るぞ!!」
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『深夜』
アオ~ン アオ~~ン
くそう…荷物全部下の方に持って行った様だ…
どうする?一旦埋めて後から掘り返すか?
そうだな…土乗せて行くぞ
おい待て待て!…ウルフがうろついてる
ちぃぃぃ番犬が居たのか
良く見ろ!ウルフはビビッて近づいて来ない様だ…
お前ウルフを見張ってろ!!埋めるぞ!!
ヴヴヴヴヴ… ガァァァ… ズルズル
うお!!あのウルフ…ゾンビに追われてんじゃ無ぇか…
何ぃ!?
やばいこっち来る!隠れろ!
シュタタ シュタタ ピョン!
おわっ!!なんだあのウルフ…
やばいゾンビだ…おい!!火を起こせ!!
松明…松明…
メラメラ ボゥ
まずいな…3体居る…
油を取りに戻らないと焼けないぞ!?
仕方無ぇ!一旦戻るぞ!!
タッタッタ…
-------------
-------------
-------------
『翌朝』
モクモク モクモク
女ハンター「ふぁ~あ…良く寝た…んん?何か騒がしいな」キョロ
闇商人「あ!おはよう!」
女ハンター「この騒ぎは?」
闇商人「僕達が寝てる間にゾンビが出たらしい…あの煙は燃やしてる所さ」
女ハンター「ここは塹壕が有って良かったみたい…」
闇商人「その様だね…アランはまだ起きない?」
女ハンター「いつも通り…」
闇商人「しばらく寝かせてても良いか…ちょっと僕は武器持って取り引きしてくるよ」
女ハンター「一人で持てる?」
闇商人「う~ん…まぁ荷車借りて来るから大丈夫さ」
女ハンター「そう…」
闇商人「君は昨夜何も食べて無いでしょ?」
女ハンター「まぁ…」
闇商人「鶏肉があるから焼いて食べなよ…バナナとヤシの実もある」
女ハンター「そうね…焚火起こしておく」
闇商人「うん…じゃあちょっと行って来るからアラン起きるまで此処に居て」スタ
-------------
『2時間後』
ゲシゲシ
少女「起きろアラン!」ゲシゲシ
盗賊「んが!?」パチ
少女「キターーー!!ラス!!起きたぞ!!」シュタタ
盗賊「んあぁぁぁ水くれぇ…」ムクリ ヨロ
女ハンター「…」ポイ
ゴツン!
盗賊「あだっ!!ててて…」スリスリ
女ハンター「水は無いから…それ飲んで」
盗賊「ヤシの実か…」グサ グサ
女ハンター「又妖精の夢でも?」
盗賊「いや今日はぐっすりよ…さっき目を閉じたと思ったら一瞬で目が覚めたな」ゴクゴク プハァ
女ハンター「一瞬!?本当呆れるわ…」
盗賊「しかし良く寝た気分だ…」ヨタヨタ
女ハンター「そう!!良く寝てたから!!」フン
盗賊「なんでそんなカリカリしてんのよ…」
女ハンター「ヤシの実は一個しか無いの…分かる?」
盗賊「ヌハハ悪い…まだ残ってるぞ?」ポイ
女ハンター「フン!」グイ ゴクゴク
盗賊「カゲミはどうしたんよ?」キョロ
少女「武器持って布と交換行った…もう直ぐ戻る」
盗賊「おぉそうか…ほんじゃ又船まで往復だな…んん?なんだこの匂い」クンクン
少女「アランでも分かるか…臭いだろう」
盗賊「こりゃゾンビ焼いてる匂いだな…」
女ハンター「私達が呑気に寝て居る間にウルフィが此処を守ってくれたらしいわ?」
盗賊「なぬ?」
少女「そうだぞ!!ウルフィに感謝しろ」
盗賊「ほーん…まぁがっつり寝ちまったが結果オーライだ」
闇商人「おーーーーい!!」タッタッタ
盗賊「お!!?戻って来たな?」
闇商人「荷車重すぎて途中で置いて来ちゃった…一回船に戻ろう!!」
盗賊「…だとよ?直ぐ行けるか?」
女ハンター「もう準備終わってる…あんただけ何もしてないの」
盗賊「まぁそう言うな…俺も大した物持って無ぇから」
闇商人「早くぅぅぅ!!荷車盗まれるぅぅ!!」
盗賊「ほんじゃ行くか!!」ダダ
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『桟橋_双胴船』
ヨッコラ ドサー ユラユラ
盗賊「こりゃ全員乗れるかぁ?」
少女「ウルフィは狩りに出てるから数に入れなくていいぞ」
盗賊「軽いから最初から入って無ぇよ…ちっと一人づつゆっくり乗ってくれ」ギシ
女ハンター「私もカゲミも軽いから多分大丈夫…」ソローリ ギシ
闇商人「大丈夫かな…」ソローリ ギシ
盗賊「ヌハハ…全然大丈夫だったわ…しかしこんなに布とロープが調達出来るとはな?」
闇商人「丁度昨夜ゾンビが来てた様だからねぇ…銀の武器が良い取引になったよ」
盗賊「なるほどな?」
少女「乗るぞ!!」シュタタ ピョン スタ
盗賊「おーし!!ほんじゃ船に戻るかぁ!!」グイ バサバサ
闇商人「なんかさ?ここに居た海賊達が何処で死んだか分からないから火葬出来て居ないらしい」
盗賊「そりゃ後処理やってない正規軍が悪いな」
闇商人「重装射撃砲の榴弾だからね…後から死体探しても中々見つからないよね」
盗賊「死体がゾンビ化するとは思って無かったか…」
闇商人「どうしてゾンビ化するのかも謎だね」
盗賊「ゾンビ化は病気の一種だとか聞いたぞ?」
闇商人「病気…なるほど…それが呪いの正体か」
盗賊「もしかすると俺らももう掛かってるかも知れんな?」
闇商人「そうだね…でも僕は対処法を知って居るよ」
盗賊「対処?ゾンビ化のか?」
闇商人「エリクサーさ…ゾンビ化してもエリクサーを飲めば進行は止まるんだ…マルコさんはそうやって命を繋いでた」
盗賊「ちょっと待て…そらどういう事だ?」
闇商人「マルコさんはゾンビ化して不死者になって居たんだよ…僕は良くエリクサーの調達をやらされた」
盗賊「マジか…知らんかったわ」
闇商人「不死者の研究もしてたさ…賢者の石を常に持って居たのも多分…命を繋ぐため」
盗賊「待て…ちっと今閃いた…」
闇商人「何だい?」
盗賊「ゾンビにはそもそも命が無い…繋いだのは命じゃ無くて…記憶じゃ無ぇのか?」
闇商人「え?」
盗賊「記憶を繋ぐのに必要な物がエリクサーと賢者の石じゃ無ぇかって話だ…」
闇商人「あぁ逆説になるか…記憶を繋ぐのに命が必要…その手段がエリクサーと賢者の石…だね?」
盗賊「ううむ…なんか引っかかるが…ゾンビも機械も一緒なんじゃ無いかと思ったんだ」
闇商人「機械も…なるほど…確かにそうかもね…」
盗賊「なぁ?…もし不死者になったとして…もう一回元の命が欲しいと思うか?」
闇商人「不死者ならもう命は要らないかも…」
盗賊「だろ?…じゃぁどうしたいのかと言うと…記憶を失いたくないんだと思うんだ」
闇商人「記憶ねぇ…生前の記憶か…ふむ…君の言う事の方も一理ありそうだ」
盗賊「変な話になるが…機械が持つ記憶をどうにかして残す事が出来れば…すべて終わる気がするな」
闇商人「機械の記憶…精霊の記憶…確かそれが夢幻という…」ボソ
盗賊「夢幻?」
闇商人「そういう記憶の集まりを夢幻と言うらしい…マルコさんは夢幻の研究もしてた」
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