17.難破船
『出港』
ガラガラガラ
盗賊「おーし!!碇上げたぞぉぉ!!帆を開けぇ!!」ドタドタ
剣士「えっほ!えっほ!」グイグイ
学者「兄貴ぃ…凪時であんま風が無いっす…」
盗賊「直に陸から風が降りて来る…まぁお試し帆走だ」
戦士「夕日があるうちに沖へ出ておきたいがな?」
スタスタ
闇商人「ふあぁぁぁ!!」ノビー
盗賊「おうカゲミ!!やっと樽から出て来たな?」
闇商人「もう膝が痛くて…」
盗賊「いつまでフード被ってんのよ…もう誰も居ないぞ?」
闇商人「これで良いんだよ…それよりもう何日も水浴びして居ないんだ…自分の体臭が臭くてたまらない」
剣士「あ!!湯を沸かそうか?姉さんも水浴びしたいよね?」
女オーク「そうね…宿でゆっくり出来なかったし…」
盗賊「まぁ…凪で船は進まんし…今の内に水浴びしとけ」
学者「兄貴も大分汚れていやすけどねぇ…」ジロ
盗賊「俺は海水でザブサブ流すだけで構わん」
剣士「まだ水には余裕があるから順番で水浴びしよう」
学者「そーすね…俺っちも流したいっすよ」
盗賊「しかし…やっと自由になれた感じだ」
戦士「飲むか?」スッ
盗賊「おぉやっぱ酒か…」グビ プハァ
剣士「じゃぁ湯を沸かして来るね」シュタタ
闇商人「良く見ると…中々良い船だねぇ…」キョロ
戦士「塗装し直して見違えたな?雨漏りで苦労した船とは思えん…ハハハ」
闇商人「船尾楼のデッキに重クロスボウ2つか…ふむ」
盗賊「メイン火力はラシャニクアの遠距離狙撃よ…中距離は爆弾の遠投…ほんで近距離はゲスとお前のバヨネッタ」
少女「私の2連クロスボウも忘れるな」シャキーン
闇商人「なかなかの火力だね…これなら海賊も追い払えそうだ」
盗賊「んん?海賊?」
闇商人「大陸の北側は海賊だらけの筈さ…一番相手にしたく無いのがドワーフの海賊達だね」
学者「まーた海賊っすか…」
闇商人「ある意味この船も海賊船だと思うけどね…まぁ北側は今までよりももっと無法地帯なのさ」
盗賊「そうそう…そういやお前なんで昨日の海賊を雇ってたのよ?どんな繋がりだ?」
闇商人「向こうの大陸では麻薬の取り引き相手だったのさ」
盗賊「やっぱりお前が闇で流してたんか…」
闇商人「まぁ僕だけじゃ無いけどね…彼等は行動力があって意外と優秀だったんだよ…だから雇ったんだけど…」
盗賊「盗賊ギルドに雇い返された訳な?」
闇商人「そうだね…僕が出す以上の金か女で簡単に買収出来たんだと思う」
戦士「カゲミ君…君はアヘンの出所を知って居るのかい?」
闇商人「勿論…フィン・イッシュの国策だよ」
盗賊「国策?」
闇商人「タダ同然の物資を流通させる事でその他の物資も流通が促されるのさ…海賊が動き回るのも流通が活発な証だよ」
盗賊「それじゃフィン・イッシュの資金が枯渇しそうなんだけどな…」
闇商人「そうだね…どうやりくりして居るのか分からないけれど…財務を束ねている人物が優秀なんだとは思う…」
盗賊「あ…お前知らん様だな?」
闇商人「何を?」
盗賊「その財務担当の側近がこの間暗殺されたんだ…エルフにな?」
闇商人「エルフに?…」ギラリ
盗賊「その辺りの事情が俺ら良く分からん…何か知ってるか?」
闇商人「ふ~む…裏が在りそうだ…そもそも僕があの傭兵に裏切られたのもそんな事情が隠れて居たのかも知れない」
盗賊「そんな事情?」
闇商人「きっと僕の存在が財務担当の手足になってると見えてたという事さ…それなら盗賊ギルドの行いも納得がいく」
学者「ちっと待って下せぇよ?財務担当の暗殺は盗賊ギルドも絡んでるって事なんすかね?」
闇商人「確実な事は言えないね…ただ盗賊ギルドの連中は特殊な方法でエルフと連絡が出来るそうだよ」
戦士「ミルク?」
少女「…」シラー
盗賊「なるほど?遠吠えやら夢を使って密かに情報流してた訳か…ほんで電脳化していた財務担当を女王が居ない隙に暗殺した訳だ」
闇商人「電脳化?何の話だい?」
盗賊「その財務担当は頭が爆発したらしい…電脳化の証拠隠滅だろう」
闇商人「ハハそういう事か…それは良い情報を聞けた」
戦士「この件はフィン・イッシュ女王の危機と考えても良さそうだが…」
闇商人「さぁ?どっちかな?危険から遠ざけたという見方もある…実はね…女王はかなりの独裁気質なんだよ」
戦士「ほう?」
闇商人「とにかく人の言う事を聞かないで物事を決める…国家予算をすべて農民に分けるのも勝手に女王が決めた事なのさ」
闇商人「勝手に畑を耕して勝手に人を招き入れて…誰の言う事も聞かない…そのクセ忍びにがっちり守られてる」
学者「じゃぁ国に蔓延る膿を出す為に…海賊王の娘に扮して外に連れ出されたってのも考えられそうっすね」
闇商人「そういう役を盗賊ギルドが担って居たのかも知れない…なるほど」フムフム
少女「お前達!!上を見ろ!!」ユビサシ
盗賊「んん?あらら…もうガーゴイルが飛んでんな…」
女ハンター「どうする?」
盗賊「構うだけ弾丸のムダになっちまう…折角ミスリルの鐘貰ったんだからコレ使うぞ」スッ
学者「お!?それどっかぶら下げといて敵見つけたら鳴らせば良さそうっすね?」
盗賊「だな?ちっと手伝え!」ゴソゴソ
カラン コローーン
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『夜_甲板』
ザブ~ン ユラ~
剣士「よいしょ…よいしょ!!」ドスン
女オーク「こっちの木人にも盾を?」
剣士「うん!どうせ拾い物だし…」ガチャガチャ
盗賊「ほーーこれで6体目か…この装備品も作ったんか?」
剣士「それ海賊から剥ぎ取った装備を少し直したんだ」
盗賊「上手い事作るもんだ…」ジロジロ
剣士「これで武器と盾持ってたら傭兵に見えるよね?」
盗賊「ふむ…こりゃ囲まれた時の訓練にも使えそうだ」
剣士「そうそう!そういう風に活用して欲しい」
盗賊「ちっと関節動かして自然な感じにすんぞ?」グイ
剣士「イイね!!」
盗賊「なんかこれはこれで中々楽しい…そうよ…こんな感じで盾に体を隠す…」グイ
剣士「この木人を魔法か何かで動かせると良いね」
盗賊「だな?戦わせてみたいな?」
剣士「魔術書にさ?土で作った人形のゴーレムっていう魔物の事が書いてあるんだ」
盗賊「ほう?」
剣士「多分こんな感じなんだよ…これは木で作った人形だけどね」
盗賊「機械も多分…始めはこんな感じだったと思うぞ…」
剣士「ハッ…そうだね…」
盗賊「人と同じ心を宿したとして…やっぱ命が欲しくなると思うか?」
剣士「どうだろう…」トーイメ
盗賊「なんかよぅ…どうも俺は違うんじゃないかと思えて来た」
剣士「違うって?」
盗賊「欲しいのは命じゃ無くて…記憶なんじゃないかってな?」
剣士「記憶?」
盗賊「ほらこうやって俺ら楽しく遊んでるだろう?…その記憶をどうにかして残したいんじゃ無いかと思ったのよ」
剣士「じゃぁその手段として…命が欲しい?」
盗賊「それだ…命は2番目なのよ…記憶さえ残れば命なんざ求めて居ないってのが…俺の思う所だ」
剣士「なんか深いね…」
盗賊「そしてな?俺ら人間は死ぬ時にそれまでの記憶を一緒に持って行く訳だ…何故ならそれが死だと既に知って居るから」
盗賊「だが機械はそもそも命が無い…つまり死を理解できない…だから記憶を残したいのよ」
剣士「それは一度命を得れば理解出来るんじゃないかな?」
盗賊「なるほど…」
剣士「なんか命が有るって…素晴らしい事だね」
盗賊「逆に命の無いこの木人が…俺はすごく愛おしく感じる…まぁ何でもそうだな?小さい頃持ってたおもちゃも同じだ」
剣士「分かる…木人も同じ時間を過ごしたなら…その記憶を残したい感じも…なんか分かる」
盗賊「俺ら人間が一方的に思ってるだけかも知れんが…どうも気になってよ」
剣士「それが…こうやって木人と遊ぶ動機なのかもね?」
盗賊「おっし!!完璧に仕上げるぞ!!誰か来てもビビるぐらいにな?」
剣士「おぉぉ!!なんかやる気出て来た!!」
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『翌日』
ドタドタ
学者「おぉぉ…船首楼と船尾楼の上に1体づつ…甲板に4体…」
盗賊「どっからどう見ても見張りに見えんだろ?」
学者「そうっすね…甲板の木人が剣を抜いてる所が良いっすね」
盗賊「あれは戦闘訓練用だ…壊さん程度に色々試して良いぞ」
戦士「私達も含めて船上に人影がこれだけ見えて居れば…20人ぐらいは乗って居る様に見えるな?」
女ハンター「アラン!!右前方…手漕ぎのガレー船が居る」
盗賊「なぬ!?早速海賊か?」
女ハンター「この船が追い越す形になりそうだ」
戦士「そのガレー船に帆は?」
女ハンター「三角帆が2枚…細長い船体で30人ぐらい乗って居そう」
タッタッタ
闇商人「ガレー船?」キョロ
女ハンター「まだ目視じゃ見えないよ…向こうにも気付かれてない」
闇商人「少し沖へ距離を取った方が良いね…ガレー船は此処一発で一気に距離を詰めて来る」
盗賊「この船より早いってか?」
闇商人「一瞬だけね…多分僕が雇っていた傭兵達と同じ感じさ…大した武器は持って居ないけど兎に角行動が早いんだ」
盗賊「やっぱ陸沿いはいろいろ遭遇すんだな…ちっと進路変えるか」
戦士「ガレー船が未だに居るとは…」
闇商人「スクーナーとかより造船コストが安いのさ…接近戦で一気に襲撃する北方の海賊が好む船だよ」
学者「この近くにはなんかあるんすか?」
闇商人「漁村やちょとした集落は無数にあって数えられないね…」
盗賊「まぁちっと進路変える…」スタ
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『船尾楼』
ユラ~ ギシ
盗賊「ふむ…操舵の感じも少し変わって居そうだな?」
ロボ「ピポポ…」クルクル
盗賊「直進性が増してて修正が少し遅れて来てんだな?…まぁ羅針盤見ながらちょいちょい修正してくれ」
学者「兄貴…このまま行くと陸が見えなくなっちまいやすが?」
盗賊「仕方ないだろう…海賊と無駄な消耗したく無いからな」
学者「いよいよ天測器で緯度求めんとイカンくなりやすね…」
盗賊「まぁどんどん赤道に近付いているから羅針盤も精度が割と高い…外海のど真ん中じゃないからどうにかなる」
学者「船の向いてる方向が進んでる方向とは限らんですぜ?」
盗賊「わかってらい!!ただな?船の直進性が良くなってそうなんだ…その辺りどうなのか試しても見たい」
学者「そーっすか…じゃぁ俺っちは日が出てる内に天測器の準備でもしておきやす」
闇商人「アラン…今向かって居るのはこの印を目指して居るのかい?」ユビサシ
盗賊「いや…そこは飛ばしてこっち側だ…10日ぐらいのつもりで居る」
闇商人「また海賊が多い場所を…」
盗賊「でもここ行かないと女王の船に追いつけんぞ」
闇商人「そこはねヤン・ゴンという遺跡が発見された場所なんだ…盗掘目当ての冒険家がみんな海賊になって居るのさ」
盗賊「遺跡?ほんじゃ機械がウヨウヨしてるってか?」
闇商人「向こうの大陸のような遺跡では無いらしいよ…」
盗賊「ほーん…そん次に行こうと思てるのが此処だ…名前知ってるか?」
闇商人「ちょっと待って…メモが残って無いか探してみる」パラパラ
盗賊「なんだお前…秘密のメモがあるなら先に出せよ」
闇商人「ダメだよこれは…僕の日記さ…恥ずかしい事も沢山書いてある」
盗賊「ヌハハそら見せれんか…何だお前の恥ずかしい事ってよ?」
闇商人「君は僕の月の物がいつなのか知りたいのかい?」ジロ
盗賊「うへぇ…興味無さ過ぎる」
闇商人「よしよし有った…そこはムン・バイだね…既に攻略された古代遺跡さ…そして次がメッカという遺跡」
盗賊「この海峡は?…ここが一番の難所だと思ってんだが…」ユビサシ
闇商人「岩塩地帯にあるス・エズーという海峡だよ…そこは目的地じゃなくて通過する場所だね」
盗賊「ギルドから貰った海図では全域浅瀬になってんのよ」
闇商人「この船より大型な女王の船隊がそこを通ろうとして居るんだろう?どうという事は無いと思うけどね」
盗賊「この海峡で一旦降りる計画になってんだが?何が有るんだ?」
闇商人「何だろうね?僕は知らない…ただそこを抜けてしまえば後はシン・リーンの港町がいくつも有る」
戦士「話を聞くとなかなか楽しそうな航海だね…この年でこんな機会が来るなんて思っても居なかったよ」
盗賊「そう上手く行きゃ良いが…海賊に追われっぱなしじゃ休めんかも知れんぞ?」
カラン コローン…
盗賊「お!!?敵が来たか…」スック
戦士「ハハ初日から色々起こる…行こう!」ダダ
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『デッキ』
ドタドタ…
盗賊「どうした!!?」ズダダ
女ハンター「例のガレー船に気付かれたんだよ…少しづつ寄って来てる」
盗賊「帆を燃やしてやれぇ!」
女ハンター「まだ射程距離じゃない…それから向こうは手漕ぎだから帆を燃やしても意味無い」
盗賊「デッキからでも目視できるな…まだ帆走だけか…」
女ハンター「乗って居るのは30人どころじゃ無いね…40人ぐらいだ…丸い盾を装備し始めた」
学者「今時そういうガチ海賊のスタイルがまだ居るんすね…」
盗賊「ちっと沖に出るだけじゃダメだったか…」
女ハンター「漕ぎ始めた…」
学者「なんか太鼓の音がし始めたんすが…」ドーン ドンドンドンドン
盗賊「ウハハまた分かりやすい合図だ」ドーン ドンドンドンドン
女ハンター「射程にそろそろ入る…」
盗賊「撃て!!」
ダーン!
女ハンター「クソ…盾に当たって燃えたけど…直ぐに消されてる…」ガチャコン
盗賊「こりゃ一気に来るな…」
女ハンター「どうする?まだ撃つ?」
戦士「嫌だねぇ…一気に乗り込もうとする戦術…」
盗賊「リッカ!!爆弾準備しとけ…あの船は船底が浅くて大波が来りゃ直ぐに転落する奴がでる」
女オーク「狙うのは波?」
盗賊「そうだ…直撃させんで良い…乗ってる奴を何人か落とせば終わりだ」
女オーク「分かったわ…」ダダ
女ハンター「船を左に転進させて!!私もデッキに降りる」ピョン
盗賊「おう!!ミライ!!前方の帆を1番に繋ぎ変えろ…船を回すぞ!!」
剣士「おっけー!!」シュタタ
盗賊「リッカは射程に入ったら爆弾投げまくって揺らしてやれ!!」ダダ
戦士「私はやる事が無い様だ…」
盗賊「一応重クロスボウ撃つ準備だけ頼む」
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『ガレー船』
ドーン ドンドンドンドン
舵手「テンポアップ!テンポアップ!ロウ!ロウ!ロウ!」ドコドコドコドコ ドーン
漕手「どるぁぁぁ…」フン! フン!
海賊「ウハハハ一気に行けぇ!!」
舵手「帆が抵抗になって居るから畳んでくれぇ」ドーン ドンドンドンドン
水夫「エッホ!エッホ!」グイグイ
海賊「何か撃って来るぞぉ!!盾をしっかり展開しろぉ!!」
舵手「バウサイド!アップ!アップ!ストロークサイド!ブレーキアンドゴー!!」
海賊「ようし!!どてっ腹に突っ込めそうだ…このまま行けぇ!!」
ヒュゥゥ ポチャン…
海賊「んん?何撃って来たんだ?」キョロ
ザブーン!! ボコボコボコ
海賊「どわぁぁぁ!!」ゴロゴロ
舵手「オ…オールメン…バ…バックロウ!!」
海賊「馬鹿野郎!このまま突っ込め!!」グイ
舵手「うるさい!舵手は俺だ!従え!!バックロウ!!バックロウ!!」
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『キャラック船』
ダダダ ポイ! ドッコーン ジャバジャバ
盗賊「うはぁ…あの船…転進しないでそのまま下がれるんか…」
闇商人「見たかい?彼らの瞬発力…」
盗賊「前後どっちにでも進める船だったんか…」アゼン
戦士「太鼓と言い…漕手の統率感と言い…あれはあれで戦力になりそうだ」
闇商人「かつては北方の海賊と言われていたらしいよ…下半身に節操が無いのも有名さ」
戦士「あれが北方の海賊だったか…」
学者「本で読んだ事ありやすよ?女は飲み物だとか言った奴が居るらしいっす」
盗賊「飲み物だとう?…何を飲むんだか…」
戦士「まぁ良い話は聞かないねぇ…」
盗賊「とりあえずこれで追っては来れんだろう」
剣士「これさぁ…向こうの帆を燃やしても意味無いから…一気に乗り込まれた時の事考えておかないとね?」
盗賊「うむ…中々厄介だな」
剣士「乗り込む時は梯子を使うか…ロープを引っかけるか…う~ん」
盗賊「接弦される前に処理するしか無い様に思うがな…」
剣士「それは出来るだけやるとして…不意を突かれて乗り込まれた時の準備だよ」
盗賊「罠でも仕掛けるってか?」
剣士「そうそう…僕達は知って居るから引っかからない罠」
盗賊「なるほど?網で一気に捕らえるとかそういう奴な?」
剣士「うん…ちょっと考えてみる」
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『甲板』
トンテンカン トンテンカン
戦士「ミライ君は又何を仕掛けようと?」
盗賊「手摺の補強だとよ…どうやら刃の付いた鉄板を取り付けてロープが切れちまう様にする様だ」
戦士「ほう?」
盗賊「確かに鉤ロープ引っ掛った後は手摺が支点になるからそこで切れると登って来れん」
戦士「考えたねぇ…だが不用意に手摺にもたれられなくなるな…」
盗賊「刃は外向きだから心配すんなとか言ってたぞ?」
戦士「要らぬ心配だったか…」
盗賊「それより木人使った戦闘訓練をラスとゲスに教えようと思って居たんだが…」
戦士「それは良い…最低限の自衛が出来る出来ないでは随分違う」
盗賊「俺はラスに教えっからゲスの方をよろしく頼む」
戦士「ゲス君はダガーを?」
盗賊「ダガーもだが…銃にダガーを付けた槍のスタイルも教えといた方が良いな」
戦士「分かった…」
盗賊「お~い!!ラス!!ゲス!!こっち来~い!!運動すっぞ!!」
ドタドタ…
木人相手に実際の武器使った間合い取りの練習だ…
切り込んでも構わん
防具のスキを狙うのにどう立ち回れば良いか考えながらやってみろ
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『一週間後_嵐』
ゴゴゴゴ ザブ~ン ドッパ~ン
盗賊「んぁぁぁ…波に揺られるだけで何もやる事無ぇな…」グビ プハァ
少女「風が弱くなってる…そろそろ終わるぞ」
盗賊「まだ帆は開けんな…」
ユラ~~ ググググググ
学者「チェックメイト!ニヒヒヒヒ…」ニマー
闇商人「あぁぁ…僕が攻めてた筈なのに…」
学者「いやいや又金貨頂きやすぜ?」ジャラ
盗賊「ゲス!!ぼろ儲けだな?」
学者「そうっすねぇ…こりゃ戦場での経験が差になって居やすよ…ナハハハハ」
闇商人「あぁもう止めだヤメ!!」ガラガラ
学者「カゲミさんは飛び道具をアテにし過ぎっすね…結局勝敗は歩兵をどんだけ使うかっす」
闇商人「ハイハイ分かったよ…ちょっと雨が降ってる内に全身流して来る」スック
盗賊「んあ?海に落ちんな?」
闇商人「ロープを括り付けておけば良いんでしょ?」
盗賊「手摺超えたらロープ切れちまうからあんまアテにすんなよ?」
闇商人「分かった分かった…」ギュゥ
ガチャリ ビュゥゥゥ バタン!
学者「アハ…ちっと機嫌損ねちまいやしたかね?」
盗賊「大丈夫だろ?」グビグビ プハァ
戦士「しかし蒸し暑いな…私も雨で汗を流すか…」スック
盗賊「暇だし俺も付き合うかぁ?いっそのこと全員で裸祭りなんかどうよ?」
戦士「女性も居るのだから程ほどに…」
盗賊「上半身ぐらいどうって事無ぇ…行くぞ!」スック
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『甲板』
ザザー ジャブジャブ
闇商人「んん?なんだ心配で見に来たのかい?」ジャブジャブ
盗賊「いや暑くてよ…」
闇商人「そうだね…びしょ濡れの方が気持ち良い」ゴシゴシ
戦士「おぉ!!魚が甲板に乗り上げてるじゃないか」
ビチビチ ピョン
盗賊「もう魚は見たくも無ぇよ」
ドップ~ン!! ザバーーー
戦士「これは中々…」ヨロ
闇商人「アハハ…もう雨も海水も分からない」ゴシゴシ
盗賊「こりゃほとんど風に巻き上げられた海水だ」
闇商人「この船は船首楼が高くて良いね…高波に強い」
盗賊「甲板は波にさらわれやすいからデッキ上がっとけ」
闇商人「デッキは風がねぇ…」
盗賊「そうか…デッキの方がむしろ危ないか」
闇商人「マストにロープを括り付けておけば余程大丈夫さ」
盗賊「ヌハハお前は肝が座ってんな?」
--------------
『半日後』
ビュゥゥゥ
盗賊「大分風が収まった様だ…」
学者「もう現在地何処か分からんすよ?」
盗賊「こっから東の方向に行けばどっか陸が見えて来るとは思う」
学者「帆を開きやす?」
盗賊「とりあえず一枚だな…いつ突風が来るか分かんねぇし…」
学者「雨が止めば良いんすが…」
盗賊「んん?天測器か?」
学者「緯度だけでも分かれば大分違いやすよね?」
盗賊「そんな現在地変わってると思えんがな…」
学者「海流で変な所に流されてなきゃ良いっすけどねぇ…」
盗賊「帆を開いて来る…舵はまかせんな?」ダダ
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『土砂降り』
ザザーー ザバザバ
盗賊「くぁぁぁ視界悪いな!!」
女ハンター「もう日が落ちる…もっと視界悪くなるよ」モゾモゾ
盗賊「ヌハハ洋服が張り付いて動きづらそうだな?お前も脱いだらどうだ?」
女ハンター「鞭の傷を見せびらかせと?」
盗賊「一回見せちまえば気にならなくなるんじゃ無ぇか?」
女ハンター「フン!!」ヌギヌギ
盗賊「見て見ろ俺の体を!!火傷に縫い傷…まともな部分の方が少無ぇ」ムキムキ
女ハンター「あんたと一緒にするな」
盗賊「傷者同士仲良くしようぜ?ヌハハハ」
女ハンター「傷者か…」
盗賊「治っちまえば痛くもかゆくも無ぇのよ…傷っちゃそんなもんだ」
女ハンター「アレ?…なにか見えた…」
盗賊「んん?どこよ?」キョロ
女ハンター「何だろう…漂流物か?」
盗賊「おっとぉ!!ありゃ転覆した小舟だ…ひっくり返ってる」ダダ
女ハンター「誰かしがみついてる…」
盗賊「なぬ!?どっかに難破船が居んのか…」ダダ
女ハンター「髪の毛が長い…多分女の人…」
盗賊「こりゃ助けるしか無ぇ!!」ピョン ダダダ
カラン コローン! カラン コローン!
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『甲板』
ドタドタ
学者「ななな…なんか有ったんすか?敵っすね?」ドタドタ
剣士「何!?なんか来た!?」キョロ
盗賊「右舷側に難破船を見つけた!小舟に誰かしがみついてんだ…助けに行く」グイ グイ ギュゥ
学者「海に飛び込むつもりっすか?」
盗賊「それしか無いだろう!上手い事船を回してくれ」
学者「ちょちょちょ…そのまま行ったらロープ切れちまいやすって!!」
盗賊「良く見ろ!!ロープは手摺の下側潜ってんだろ!」
学者「え?あ…そういう事っすね…」オロオロ
盗賊「口に咥えるガスマスク持ってっか?」
学者「へい…これっすね?」スッ
盗賊「おーし!!これで死ぬ事ぁ無ぇ…行ってくっから上手い事ロープ引き上げてくれ」ダダダ ピョン
学者「あああ!!兄貴…」
女ハンター「船が行き過ぎてしまう…帆を畳んで!!」
剣士「あ…わ…わかった!」シュタタ
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『難破船』
ザザーー ザブザブ
200メートル位先に樽!!あっちにも誰かしがみついて居そう…
兄貴ぃ!!引き上げやすぜぇ!!
光をこっちに向けないで!暗視ゴーグルで目が眩む!!
おい!帆を引っ張るぞ!!上手く船を流して行ってくれ
なんすかコレ!!足枷が付いとるじゃないすか…
僕が切る…救急処置続けて
おーい!!ロープもう一本投げてくれぇ!!
あぁぁ息してないっすね…胸部圧迫お願いしやす…衣類も脱がして下せぇ
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『翌朝_荷室』
ドタドタ…
盗賊「どうだ?助かりそうか?」キョロ
学者「兄貴ぃ…助かりそうなの一人だけっす…」
戦士「マッサージはどうする?」グイ グイ
学者「その子も諦めやしょう…もう限界時間超えてるんで…」
盗賊「全員ガリガリだな…」
学者「多分奴隷だったんすよ…船で逃げたは良いんすが…食べ物も殆ど無かったんすね」
シュタタ
剣士「水を持って来たよ」チャプ
学者「助かるっす…息のある子に少しづつ飲ませて行って下せぇ」
剣士「この子…髪長いから女の子だと思ってたけど…男の子だね」
少年「…」グター
盗賊「奴隷生活が長いと皆そんなんなるんだ」
剣士「どうしてこの子だけ血色良いんだろう?」
盗賊「ううむ…やせ細っちゃ居るが…確かに衰弱具合は違いそうだ」
学者「その子はこの石を握ってたんすが…何か関係ありやすかね?」コロン
盗賊「石?」
学者「宝石とはちっと違いそうっすね」
盗賊「カゲミに見せてみる…アイツなら知ってるかも知れん」
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『甲板』
ザブ~ン ユラ~
盗賊「ラス!!どうだ?もう難破船の残骸は見つけられんか?」
女ハンター「この広い海でそんな簡単に見つけられると思う?」ジロ
盗賊「まぁ無理だな…」
女ハンター「晴れ間が見えて来てる…そろそろ船を進めたら?」
盗賊「んんん…まだ他に生きてる奴が居るかもしれんと思うと…」
女ハンター「だからこの周辺にはもう居ない!!」
盗賊「そうか…だが先に水葬を済ませる」
女ハンター「助からなかったのか…」
盗賊「一人だけ生きている…目を覚まして他の仲間の遺体なぞ見たくないだろうしな」
女ハンター「仲間…」
盗賊「察するに一緒に逃げたんだろうよ…運悪く嵐に巻き込まれちまったが…」
女ハンター「あの小さな船に…乗ってた仲間…」
盗賊「想像出来るか?極限の飢えでも支え合ってた仲間…鉄の足枷が付いているから多分この下に沈んでる」
女ハンター「そう…じゃぁ仲間の所へ還さないと…」
盗賊「俺はお前の仲間になれてるか?」
女ハンター「え!?…」---仲間---
---いつの間に---
---雇われじゃ無くなってる---
---望遠鏡で見た夢の世界に---
---いつの間にか入り込んでる---
---これが夢---
『船尾楼』
ガチャリ バタン
闇商人「…」カキカキ
盗賊「んん?何してんだ?」
闇商人「船の現在地がどの辺なのか予測してるのさ」
盗賊「ほーん…」
闇商人「嵐に合ってから帆は畳んで居るから…この予測円の範囲内に居る筈さ」
盗賊「だろうな?」
闇商人「海流からすると大体ここら辺に流されてる…」ユビサシ
盗賊「おいちっと待て…難破船も同じ様に流されて来てるんじゃ無ぇか?」
闇商人「そうだろうね?」
盗賊「じゃぁ今から行くヤン・ゴンの方面から来たことになる」
闇商人「それがどうしたと言うんだい?」
盗賊「難破船に乗ってたのは皆足枷付けた奴隷だ…なんでそんな事になってる?」
闇商人「単純に労働力だろうね…発見された遺跡を調査する為じゃないかな?」
盗賊「おいおい!!フィン・イッシュは奴隷を使ってんのか?」
闇商人「あぁ…ヤン・ゴン遺跡はどの国の領地でも無い…遺跡調査に力を入れてるのはシン・リーンだ」
盗賊「じゃぁシン・リーンが子供を奴隷にして使ってるってのか?」
闇商人「さぁ?そんな事を表立ってはやらないと思うよ」
盗賊「裏はどうなのよ?」
闇商人「海賊達は奴隷を使うのを厭わない…その海賊を使って居るのはそれぞれの国だったりする」
盗賊「ケッ!!間接的に奴隷使ってんのと同じだろうが」
闇商人「まぁそういう話は表に出て来ないさ…でもね?発展に奴隷が必要なのは否定しない」
盗賊「なんかイラつくな…」ムカムカ
闇商人「君は…ゴミを食べる生活を思い出したりしないかい?」
盗賊「何が言いてえのよ?」
闇商人「ゴミを食べてたあの生活が幸せだったと思う事もある…奴隷には奴隷の幸せもあるのさ」
盗賊「…」
闇商人「そういう価値観がある事を知って置いた方が良いよ」
盗賊「ちぃぃ…話変わるが…この石が何だか分かるか?」コロン
闇商人「これは…」ジロジロ
盗賊「何だ勿体ぶんな!腹立させんなよ」イラ
闇商人「これは預かっても良いのかい?」
盗賊「ダメだ!持ち主は奴隷の小僧だ」
闇商人「結論を言おう…多分これは賢者の石の欠片だよ…マルコさんも同じ様な物を持ってた」
盗賊「ほう?魔術師が黄金を使って作ろうとして居る奴だな?」
闇商人「ご名答…それをどうして奴隷が持って居たか…ちょっと気になるね」
盗賊「どうやら俺らはキーマンを助け出した様だ…こいつは俺が預かる」
闇商人「持ち主は奴隷の子じゃ無かったかい?」
盗賊「奪う気なんざ無い…たった一つあの小僧が持ってた物だ…気を失っても尚握ってな」
闇商人「そうかい…大事な物なんだね」
盗賊「小僧に返して来る」スタ
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『水葬』
ドブーン ボコボコ
学者「なんか…死体なんすが…まだ人の形が整ったのを沈めるのって気が滅入っちまいやすね…」
盗賊「海でもう一回生まれ変われりゃ良い…」ポイ ドブーン
女ハンター「これで仲間の所へ?」
盗賊「うむ…多分次はイルカだ…イルカになりゃ遠くまで行ける」
戦士「気の毒に…」ナムナム
盗賊「さてぇ!!帆を開くかぁ!!」
学者「俺っちは荷室であの子の面倒見ときやす」
盗賊「おう!!その石しっかり握らせとけよ?」
学者「分かって居やすとも…賢者の石の効果を見て見たかった所っすよ」
盗賊「ミライとリッカ!!いつも通り帆を開くぞ!!」
剣士「分かったぁ!!」シュタタ
女オーク「…」ドスドス
盗賊「ロボ!!進路東だ!!舵は任せる!!」ダダ
ロボ「ピポポ…」ウィーン ガシャガシャ
戦士「ミルク…荷室へ行ってゲス君のお手伝いをして居なさい」
少女「ウルフィ行くぞ!!」シュタタ
ウルフ「ガウガウ…」シュタタ
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