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12.自由の国フィン・イッシュ



『数日後_フィン・イッシュ近海』



ザブ~ン ユラ~リ



盗賊「もうすぐ港が見えて来る筈なんだが…どうした?全員集めて…」


中年の女「到着する前にフィン・イッシュの事を少し教えておこうと思って…」


盗賊「アレか?剣と魔法の世界だから注意しろって話か?」


中年の女「それも有るわ…それより目立った行動は避けて欲しいと言う事…その為の知識よ」


盗賊「…だそうだ…特にゲスは良く聞いとけ!」


中年の女「じゃぁフィン・イッシュの話から…」



フィン・イッシュという国は領地に生える植物や作物全部…所有者は女王なの


畑で収穫された物は100%国に納めなければならない


その代わり生産者…農民たちは出来高に応じて有り余る金貨を貰える


だから最も裕福なのは畑を耕す農民なの


そのお金を使って装備を買うも良し…食べ物を買うも良し


そのお陰で民兵の質が何処国よりも異常に高いし人数も多い…


でも中にはお金を溜めようとする人が出て来る


いくらかまとまったお金が溜まるとある日突然泥棒に全部持って行かれる


それを皆が知って居るから国から貰ったお金はほぼ使い切る



学者「お金使い切ったら食って行けんくなるんじゃ無いっすか?」


中年の女「それは民の全員に毎日最低限の食料配給があるの…だから飢えている人は一人も居ない」


学者「おぉぉメッチャ良い国っすね…」


盗賊「言い変えりゃ生きて行くのに必須な食料を押さえられてる…奴隷みたいなもんだ」


中年の女「フフ…辛口だけれど…その通りよ…」


学者「でも畑耕せば又お金が手に入るんならそれでも良いっすね…」


中年の女「そうやって経済が回って居るの…」



そしてフィン・イッシュでは税金が全く無い


貿易も自由…鉱山で鉱物を掘ってもすべて掘った人の物…食料以外は完全に自由…


国の収入は税金という形では無く経済が回った余り分で…そのほぼすべてを農民に対して使ってる


だから国境に壁も無ければ城を守る城壁も無い…と言うのが建前


その実カジノや娯楽で出回ったお金の回収は出来ている…そしてその中に盗賊ギルドが含まれる…



中年の女「これで大体立ち位置が分かったわね?」


盗賊「纏まった金盗んで国に還付する役割か…」


中年の女「必要悪と言えば分かりやすいわね…それで注意して欲しいのが民兵と揉め事を起こさないで欲しい」


盗賊「もめる気なんざ更々無い」


中年の女「豪遊して女遊びしている人達を放っておける?」


盗賊「そんなん俺にゃ関係無ぇ」


中年の女「その女が子供だったとしてもよ」


盗賊「…」タラリ


中年の女「その子がお金を稼ぐ術を失ってしまう事になる…些細な事だけれど大きな問題に発展して行く可能性がある」


中年の女「そして盗賊ギルドとして…そういう国の政策に一切関与してはいけない」


盗賊「わーったわーった!!」


中年の女「それから…バン・クーバと違って魔物が多く出るからしっかり武装はしておく事」


学者「魔物って何が出るんすか?」


中年の女「色々よ…最近では猛獣も多く出る…向こうの大陸のオーガなんかと比べ物にならないから注意して」


盗賊「そんなに魔物出るのに壁で囲わんのか…」


中年の女「そういう政策…代わりに民兵の質が異常に高い」


盗賊「民兵が壁の役割ってか…」


中年の女「じゃぁこれで話は終わり…到着したら宿にでも入って連絡を待って」


盗賊「へいへい!!ほんじゃ停船の準備するぞぉ!!」スック



---------------


---------------


---------------





『自由の国フィン・イッシュ』



ガラガラガラ ジャブーーン



盗賊「おーし!!碇落としたな?荷物纏めて降りて良いぞぉぉ!!」


中年の女「ご苦労…私は一足先に行くから後は上手くやって…」スタ


盗賊「おいおい!!一人で行くんか?リコル達はどうする?」


中年の女「詳しくはリコルに聞いて…急いでいるから私は行くわ…」シュタタ


盗賊「…」ポカーン


盗賊「おいリコル!!置いて行かれたぞ?どうすんのよ?」


戦士「ハハハいつもの事だ…私が一緒では邪魔なのだよ」


盗賊「ほーん…まぁ良いや…とりあえず宿屋だな?」


戦士「う~む…新市街地と旧市街地とあるが」


盗賊「俺はどっちでも構わん」


戦士「旧市街地はここから馬車で2時間程移動する事になる」


盗賊「じゃぁ新市街地だな」


戦士「但し…カジノや娯楽が多いのが旧市街地だ」


盗賊「カジノか…うーむ…」


学者「兄貴ぃ…ここに何しに来たんでしたっけ?」


盗賊「おぉ!!俺の知り合い探さにゃならん…闇商人が何処に居るか知らんよな?」


戦士「私が知って居ると思うか?」


学者「闇取引やってる様な場所と言えば…何処っすかねぇ」


戦士「まぁ娯楽の多い旧市街地の方で聞いてみたらどうだ?」


盗賊「しゃぁ無ぇ…2時間馬車乗るかぁ…」



-------------



『馬車』



ガタゴト ガタゴト



剣士「やっぱり馬が引っ張ると早いなぁ…」キョロ


盗賊「んん?もしかしてよう…キ・カイのお前の家に有った馬車は人力で引っ張ってたか?」


剣士「そうだよ?馬なんか居なかったし」


盗賊「ヌハハとことん貧乏生活してたんだな」


剣士「今はもうお金持ちさ!!ねぇ姉さん!!」


女オーク「ウフフ…」


学者「いやぁぁフィン・イッシュってメッチャ栄えて居やすね…建物でびっしりじゃ無いっすか…」


盗賊「こっちは良質の木材が腐る程生えてるからな?」


戦士「少し離れると畑ばかりになる…まぁそれでも民家は一杯建って居るがね」


学者「行き交う馬車に乗ってる人はオークとかドワーフとか色々っすね…」


戦士「うむ…異種族全員平等なんだよ…地庄炉村も同じだね」


剣士「文化が違うってこういう事かぁ…」



ソヨソヨ~



剣士「ん?何だこの匂い?」クンクン


少女「森の匂いだ…嗅いだ事無いか?」


学者「んん?何も匂いやせんが?」クンクン


少女「お前は鼻が鈍感なのだ…死肉を食ってるから鼻が腐ってる」


学者「なかなか毒舌っすねぇ…グリグリしちゃおぅかなぁ~」


少女「父ぃ!!ゲスは歩きで良いぞ」


戦士「ハハハまぁまぁ…仲よくしなさい」


剣士「あぁぁ良い匂いだなぁ…」クンクン


少女「そうだろうそうだろう…」ウムウム


盗賊「おい!!内海側が見えて来たぜ?旧市街地も見える!」


学者「おぉぉぉぉ!!なんすかこの絶景…」


戦士「ハハハ建物が特徴的だからねぇ…左手の塔がいくつも建って居る所がフィン・イッシュの城だよ」


学者「感動っす…きっと歴史有る建物なんすね…」アゼン


盗賊「まぁ向こうの大陸は皆壊されちまってるからなぁ…歴史って意味じゃ古代遺跡使ったバン・クーバの方が古いだろうが…」


戦士「もっと言うと光の国シン・リーンも歴史が古いらしい…中立の国セントラルはそこそこ歴史が長いが…もう廃墟だ」


盗賊「セントラルは氷の城になったと聞いたぞ?」


戦士「暇があるならその辺りの歴史を調べてみてはどうだ?」


盗賊「俺は忙しいな…ゲスは暇だろうから適当に書物漁っとけ」


学者「へいへい…」




--------------




『馬宿』



ヒヒ~ン ブルル



馭者「はい着いたよ~…降りた降りたぁ!!」


学者「腰が…いたたたた」ヨロ


盗賊「たった2時間でも結構キツイな…」ノビー


剣士「見て!!気球が飛んでる…大きい!!」シュタ



フワフワ ソヨ~



学者「珍しいっすねぇ…あぁぁアレは魔石使わんタイプの熱気球っすね…大きさの割に何も運べん奴っす」


剣士「人が乗ってるよ…ええと…6人くらいかな」


盗賊「馬車で移動するより大分ラクそうだ」


戦士「昔は気球がそこら中飛んで居たものなんだがね…」


盗賊「魔石が流通しなくなった事と…機械のミサイルで落とされまくったのが原因だな」


戦士「一部安全に飛べる場所なら定期便として飛んで居るんだよ?」


盗賊「ほう?こっから何処へ?」


戦士「シャ・バクダの方面だと聞いた…私は行った事が無い」


剣士「見る物全部初めての物ばっかりだ!ワクワクする!!」ワクワク


盗賊「おーし!!全員降りたな?暗くなる前に宿屋探すぞ!!」


剣士「おーーーー!!」シュタタ



--------------




『宿屋の納屋』



ガラガラ



宿屋の女将「…この納屋でしたらお使い頂いても宜しいですが…どうしましょう?」


盗賊「あぁ…他の宿屋も一杯でよう…納屋でも助かるわ」


宿屋の女将「なにも準備出来なくて申し訳ありません…」


盗賊「こっちの方こそ無理言って悪かった…ほら宿代」ジャラリ


宿屋の女将「ありがとうございます…水浴び場は自由にお使い頂いて結構ですので…ごゆっくり」ペコリ スタ


盗賊「ヌハハ…てな訳でやっとこ休める訳だ」


学者「これ薪を保管する納屋っすね…」キョロ


盗賊「まぁ建物の中で寝られるだけ良いだろ…住めば都だ」


剣士「すぅぅぅぅぅ…はぁぁぁぁぁ」ウットリ


少女「すぅぅぅぅぅ…はぁぁぁぁぁ」ウットリ


盗賊「何やってんのよ?」


剣士「気に入ったよ此処!!木の香りがすごく良い!!」スゥゥ ハァァ


盗賊「そら結構!!まぁちっと片づけりゃしばらく住んでも良いな?」


学者「何日分の宿代出したんすか?」


盗賊「とりあえず持ってる分全部出した…金貨8枚か…何日かは良く分からん」


学者「えええ!!そんなに出したんすか…この納屋に」


盗賊「いやいや出る時に差額分は返して貰える」


学者「あぁそういう事っすね…」


盗賊「まぁ夏の内は自由に使って良いらしいから…ミライ!その辺の木材使ってテーブルとイスを頼む」


剣士「おっけーーー!!」シュタタ


盗賊「水浴び場に湯があるそうだから行きたい奴は言って来て良いぞ」



--------------



『1時間後』



ガラガラ ピシャン!



学者「買い出し行ってきやしたぜ?食い物に酒…あと油とランプっす」


盗賊「おーう!!酒くれぇぇい!!」


学者「もうくつろぎモードっすねぇ…」ドサドサ


戦士「私も酒を頂こう…お!!フルーツが有るじゃ無いか!!」ガブリ


学者「やっぱこっちの大陸はフルーツとか新鮮なんすよ…ランプ点けやすぜ?」チッチ ピカー


盗賊「ヌハハハこりゃ雰囲気あるな…馬車ん中みてぇだ」グビグビ


剣士「アハハ…そうだね…木製の大きな馬車みたいだね」


学者「木箱のテーブルに…生木を組んだだけの椅子…」


剣士「製材した木材じゃないからこんなもんさ…まぁ十分使えるよ」ギシ



ガラガラ…



少女「父ぃ!!黒いのが空飛んでる…」シュタ


戦士「んん?」


少女「初めて見る…見に来い」


盗賊「魔物か?」スック


学者「早速何か出て来た様っすね…」スック



--------------




『裏路地』



バッサ バッサ



少女「アレだ…あの黒いの何だ?」


戦士「あぁ…ガーゴイルという魔物だ」


少女「他にも居るぞ…あっちだ」ユビサシ


盗賊「全部で4匹ぐらいか?」


学者「誰も慌てる気配が無いって事は…通常運転じゃないっすか?コレ…」


戦士「地庄炉村では殆ど見なくなったが…昔は沢山居たんだぞ?」


少女「そうだったか…雑魚なんだな」


戦士「ハハハ雑魚では無い…まぁ飛んで居るからミルクでは倒せんな」


少女「遠くで良く分からないが…結構大きいな」


戦士「ふむ…牛並みの大きさの物が飛んで居ると考えれば強さが想像出来るだろう」


少女「牛か…」



シュン! ドス!



少女「あ…」


盗賊「おぉ!!槍か何か飛んでったな…」


女ハンター「見えた…多分オークが弓を撃った」


学者「えええ!?アレが弓矢?…なんかデカくないっすか?」


女ハンター「又撃ちそう…」



シュン! ドス!



盗賊「うほーーーすげぇな…槍並みの矢を撃ってんのか…」


学者「もしかして…これが民兵?」


盗賊「オークならくそデカイ弓を使ってもおかしく無ぇ…」


学者「ハハ…誰も慌てて居ない…通常運転っすね」


盗賊「どうやら…俺らクソ雑魚かも知れんぞ…」


少女「落ちた黒いの燃やしてる…ちょっと見て来る」シュタタ



-------------



『納屋』



グビグビ プハァ



盗賊「水浴びからリッカ戻って来ないんだが…遅く無いか?」


女ハンター「あ…言うの忘れてた…お茶を買いに行くって…」


剣士「あぁ…姉さんお茶が好きなんだ…家に置いて来ちゃったからさ」


盗賊「まぁ安全そうだし良いかぁ…今日は寝るつもりだったが…ちっと俺も情報集めに散歩でも行って来るか」


戦士「私はここで酒でも飲んでゴロゴロして居るから安心して行って来て良い…どうも船を下りた後は平衡感覚が…」


剣士「じゃぁ僕も姉さん探しに行こうかな」


学者「俺っちは眠たいんで寝やす…」ドター


盗賊「ロボ!!一緒に行くか?」


ロボ「ピポポ…」クルリン


盗賊「おーし!!ほんじゃ行くか!!」スタ



ガラガラ ピシャン!



-------------



『翌朝』



チュンチュン ピヨ



盗賊「ふぁ~あ!!」ノビー


ロボ「ピポポ…」ウィーン クルクル


剣士「あ!!アランさんおはよう!!」


盗賊「おろ?ミライだけか?みんな何処行った?」キョロ


剣士「宿屋の外の広場で配給やってるんだ…貰いに行ってるよ」


盗賊「ほ~ん…お前は貰って来たんか?」


剣士「うん!ホラ?」スッ


盗賊「米か…」


剣士「調理前のを貰って来たんだ…僕の携帯食料さ」


盗賊「俺ぁ要らんな…」


剣士「今日の予定は?」


盗賊「俺は闇商人が何処に居るか情報集めに行く予定だ…まぁ…各自自由にするだな」


剣士「そっかぁ…どうしようかなぁ…」


盗賊「宿屋前の張り紙に魔物の戦利品買い取りリストが有ったぞ?」


剣士「お?」


盗賊「ミスリルの剣を使ってみたいんじゃ無いのか?」


剣士「戦利品ってどんな?」


盗賊「牙とか角とか…リザードマンの鱗とか色々有った様だ…」


剣士「後で見に行ってみるよ」


盗賊「俺とロボは情報集めに行って来るからお前等自由にしてろ…」


剣士「分かった」


盗賊「ほんじゃロボ!!もっかい行くか!!」スック



--------------



『1時間後』



アーデモナイ コーデモナイ



剣士「あ!!みんなおかえり~」


学者「あらら?兄貴は何処行っちゃいましたかね?」キョロ


剣士「なんか闇商人探すと言って又ロボと出て行ったよ…僕達は自由にしてて良いってさ」


学者「そーっすか…リッカさんどうしやす?買いに行きやす?」


剣士「んん?何か買い物?」


学者「昨夜オークが使ってる弓を見たじゃ無いっすか」


剣士「あーー凄かったね」


学者「どうやらこっちの大陸ではあれぐらいの弓を使うのが普通みたいなんす」


剣士「え?もしかして姉さんも弓使うの?」


戦士「飛んで居る相手に近接の武器だけでは何も出来ないのだよ」


学者「詳しく言うとこういう事っス…」



オークはもともと手先が器用じゃ無いんで武器とか弓はしょぼいのしか使って無かったんすが


ドワーフがオーク用の武器を作る様になってから


オークがエルフ以上に戦える事が認知されるようになってるんすよ


ほんでフィン・イッシュではオークがめちゃ良い装備をしてるのが普通になってるんす



剣士「あーーー姉さんの装備が見劣っちゃってる…って事だね?」


学者「早い話そうっすね」


戦士「今使って居る剣はかなり良い物だから問題無さそうだが…遠隔攻撃の手段が無いのは飛ぶ相手に対して無力なのだよ」


女オーク「弓を普段使いするのでは無くて…船で使うつもりで…と思って」


学者「重ねて言うと銃器では火力不足になる魔物に対して毒を塗った弓の方が効果的らしいんす」


剣士「毒…」


学者「こっちの大陸では弓の方がメジャーな武器なんすね…機械相手じゃ無いもんで」


剣士「まぁ…僕もミスリルの剣を買っちゃったから姉さんも弓くらい良いと思うよ」


学者「ほんじゃちっと見に行きやすかぁ」



--------------


--------------


--------------




『武器屋』



ガチャリ ギー



店主「らっしゃい!!」


戦士「ほーう…中々色々揃って…」キョロ


少女「父も何か買うか?」


戦士「う~む…盾を持ったままだとなぁ…」


店主「そんなお客さんには…パヴィースとクロスボウのセットをおすすめするよ?」ニヒヒ


剣士「あ!!ちょっと僕見たいな」フムフム


店主「はいはい…見て行って下さいな」


学者「リッカさん…この弓なんかどうっすかね?」ユビサシ


女オーク「う~ん…」


店主「オークが使う弓でしたら…こちら」ドスン


学者「うわ…デカ…」


女オーク「これ…引いてみても?」


店主「どうぞどうぞ」


女オーク「フン!」ギリリ


学者「うわわ…ソレ全部金属っすよね」


剣士「姉さんなんか…ちょっと軽そうだね?」ジロジロ


女オーク「こういう物なのかも…」ハテ?


店主「それ以上の強弓は扱って居ないねぇ…どうだい買って行くかい?金貨30枚だよ?」


学者「おぉぉ結構しやすね…槍みたいな矢が一本金貨1枚っすね…」


女オーク「でもなんか違う…」


剣士「ちょっと見せて?」フムフム ジロジロ


学者「どうしやす?」


剣士「よし!!買うの止めよう!!なんか姉さんには合わない!!」


学者「アハ…いやまぁ良いんすよ?」


剣士「そんなでっかい弓なんか持ち歩いてたら姉さんの持ち味発揮出来ないさ…船に必要なら僕が作る」


女オーク「じゃぁ止めて置くわ」


戦士「ミライ君に考えが在りそうだね?」


剣士「うん…毒が必要なら弾丸に毒仕込めば良いのさ…そっち方向で工夫したいかな」


店主「いやいや買って行って下さいなぁ…」


剣士「また必要になったら買いに来るね~」ノシ



--------------



『街路』



ワイワイ ガヤガヤ



剣士「実はね…姉さんは石の遠投が得意なんだよ」


学者「オークロードみたいな感じっすか?」


剣士「僕はオークロードを見た事が無いんだけど…拳ぐらいの小石なら300メートル位投げるのさ」


学者「ほーーー結構行きやすね」


剣士「もしそれが爆弾だったら?」


女ハンター「それは榴弾と言う…」


剣士「弓なんか使わなくてもそれで良いと思ったんだ…遠投して爆発したら鉛が弾ける…」


学者「それまさしく榴弾っす…ホラ?俺っち持って居やす…」チラ


剣士「姉さんは速さが命の戦い方だから重たい弓よりもその榴弾投げてる方が絶対良い」


女ハンター「300メートルと言うのは水平方向の話でしょう?…上にはそんなに飛ばないと思う」


剣士「あーーーーそうか…100メートルも飛ばないかぁ…」


学者「それでも上空で鉛が弾けるのはそれなりに効果有りそうっすね」


剣士「まぁ材料買って一回作ってみる」


学者「じゃぁ今から資材入手っすか」


剣士「うん!ついでに毒とか色々買って帰ろう…リコルさんの盾もパヴィースに改造するよ」


戦士「ハハ…クロスボウが無いがね」


剣士「いやいや榴弾投げて盾で守る…きっとそれで行ける」


戦士「なるほど…」


剣士「僕らには僕らの戦い方が有るよ…よーし!!やる事出来たぞぉ!!」



--------------



『宿屋の納屋』



アーデモナイ コーデモナイ



学者「榴弾の構造を図解するとこんな感じっす…点火部分が2重になってるんすよ」


剣士「なるほどー…それで遅延して爆発するのか…」


学者「ミライ君の作る爆弾はその遅延を導線工夫してやって居やすね」


剣士「僕の爆弾は導線に火を点ける動作が必要になるんだ…咄嗟には使えないんだよね…うーむ…」


女ハンター「火打石で擦って点火してみては?」


剣士「なるほど…錬鉄擦れば火花が出るな…そこから導線に火が付けば良いか…」


学者「火薬入れる容器はポーションの空き瓶が丁度良い大きさなんでコレを使うとしてっすねぇ…」


剣士「口の部分に錬鉄で蓋をして…着火する細工か…よし!!何個か作って試してみよう」


学者「これかなり危ない実験になりやすぜ?即爆発するかも知れんっす…」


剣士「まず火薬無しで導線への着火実験かな…」


学者「じゃぁ俺っち必要になりそうな物調達してくるんで実験やってて下せぇ」


剣士「うん!!」



--------------



『夕方』



ガラガラ ピシャン!



学者「お!?兄貴ぃ…どうでしたか?」


盗賊「ダメだぁ…全く手掛かりが無い…ちっと金貸してくれぇ」


学者「あらら…どんくらい必要っすかね?」


盗賊「金貨10枚だ…やっぱ酒場とか怪しい場所で聞き込みしないとダメな様だ」


学者「あんま飲みで使わんで下せぇ…」ジャラリ


盗賊「ところでミライは何やってんのよ?」


学者「榴弾を作るんすよ…信管の部分を今用意出来る物で工夫してる所っすね」


盗賊「今までの爆弾じゃダメだってか?」


学者「やっぱ金属片入れて榴弾にしないと殺傷力無いじゃ無いっすか」


盗賊「確かに…」


学者「この辺に居る魔物相手だと今の武器じゃ通用しないもんで榴弾作ってるんすよ」


盗賊「銃器持って通用しないって事は無いだろう」


学者「兄貴…魔物討伐のビラ見てないんすか?10メートル近いワニとか居るみたいっすよ?」


盗賊「なぬ!?」


学者「俺っちのバヨネッタとか鼻くそっすね」


盗賊「まぁ…榴弾作るのは良いが怪我させんなよ?」


学者「へい…しっかり見ときやす」


盗賊「ほんで…俺は酒場とかで情報集めて来るんだが…ロボを連れまわる訳にイカンからちっと頼む」


学者「暇なんで整備しときやす」


盗賊「頼む…じゃぁな!」ノシ



-------------



『夜』



クンクン キョロ



少女「父!!母の匂い近いぞ」


戦士「お?こちらを見つけた様だ」


学者「あらら?兄貴がどっか行っちまってるんすが…」



ガラガラ…



中年の女「宿では無く納屋の中だったのね…」ツカツカ


戦士「空きが無かったのだよ…一人か?」


中年の女「あの子たちは二人ともシャ・バクダの方に行ったそうよ」


戦士「なんだ久しぶりに会うのを楽しみにして居たのに…」


中年の女「どうもギルドの連絡員が行方不明で私達の所へ連絡が途絶えて居たらしいわ」


戦士「そういう事か…」


中年の女「アランが見え無い様だけれど…」キョロ


学者「兄貴は情報収集でどっか行きやしたね…朝までには戻ると思うんすが…」


中年の女「まぁ良いわ…リコル?あなたにはちょっと悪いけれど私はしばらく留守にするわ」


戦士「…というと?」


中年の女「急ぎで例の書簡をシン・リーンへ届けなければいけない」


戦士「どうやって行くんだ?」


中年の女「気球の定期便でシャ・バクダに向かって娘2人連れて森を抜けるわ…あなたは連れて行けない」


戦士「森を抜ける…昔エルフの森だった場所か…」


中年の女「そうよ…私達3人なら徒歩で抜けられる筈…残念だけどあなたは邪魔になってしまう」


戦士「そうか…残念だ」


中年の女「それで…あなたにお願いが有るのだけれど…」


戦士「何だ?」


中年の女「ミルクと一緒にアランをサポートして欲しい…ミルクにとって成長のチャンスでもあると思ってるの」


戦士「ふむ…サポートと言っても何をするか決まって居るのか?」


中年の女「話はこうよ…」



アイリーンに扮したアバズレ女が居たでしょう?


あのアバズレ女の船にフィン・イッシュの女王も乗って居たのよ


2人で海賊王の娘を演じて本物を誘き出そうとして居るそうよ


これは女王からの提案で盗賊ギルドとして断り用が無かったらしいわ


それであの2人は既に出港してしまって居て…


この大陸を北側からぐるりと回ってシン・リーンへ向かってるの



戦士「女王本人が船に…」


中年の女「無茶だと思うでしょう?でもこの計画には忍び一族も…シン・リーンの魔術師団も関わってる」


戦士「国家共同作戦か…ふむ…そこに追随しろと言う訳だね?」


中年の女「そうよ…だから次あなたと合流するのはシン・リーンね…それまでアランをサポートして欲しい」


戦士「ハハ旅はまだ続くという事か…楽しみになって来た」


中年の女「そう言ってくれて嬉しいわ…只…今のアランの船では温かい海を航海するのは厳しいの」


戦士「新しい船を用意してくれれば問題無い」


中年の女「そういう訳にも行かなくて…女王は1隻では無くて大船隊を組んで航海してる…」


戦士「良い船は出払って居る?」


中年の女「そう…だから今急ぎでドワーフの船大工にアランの船を整備させようとしている所なのよ…」


戦士「大体話は理解した…整備を待って女王の船を追えば良い訳だ」


中年の女「女王の寄港地計画は追って父から連絡がある筈…私は直ぐに旅立ってしまうから後はあなた頼りになってしまう」


戦士「任せろ!!」


中年の女「ミルク!?ギルドの頼り方は分かって居るわね?」


少女「母!!任せろ!!父居れば大丈夫」


中年の女「フフ…心強いわ…じゃぁもう行ってしまうから…後はよろしく」ギュゥ


学者「ええと…抱擁中に済まんのですが…」


中年の女「何?」


学者「兄貴の目的なんすが…ホムンクルスの件ってどうなりやしたかね?」


中年の女「あら…言い忘れる所だったわ…完全体のホムンクルスの生存情報…出所はドワーフなのよ」


学者「はぁ…で?」


中年の女「ドワーフに居場所を聞いても海賊王の許可が無いと教えられないらしいわ」


学者「つまり海賊王を探せってこってすかね?」


中年の女「そうなってしまう…フィン・イッシュ女王の後を追えば遭遇する可能性もあると思うわ」


学者「あぁぁぁなるほど…海賊王も娘を追ってる可能性が有る訳っすね…」


中年の女「そういう事よ…アランにちゃんと伝えておいて」


学者「分かりやした…」


中年の女「じゃぁ私は行くわ…どうか無事にシン・リーンまで辿り着いて…」ノシ



ガラガラ ピシャン!



--------------



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