101.母と子と
『2人乗り飛行船』
フワフワ…
衛兵隊長「アランクリード…早く乗ってくれ…あまり周囲に見られたくない」
盗賊「分かった…ほんじゃバレン!ラスの事をよろしく頼む」
戦士「承知!任せてくれたまえ」
盗賊「ほんじゃグリムのおっさん!ダッシュで頼む」ピョン
衛兵隊長「ハイディングして行くからレイスに気を付けろ」
盗賊「ハイディング出来るだとう?」
衛兵隊長「ファルクリードと同じ作戦行動が出来ると言ったが?」
盗賊「おおおおマジか…それが出来るなら何で今まで使って無えのよ」
衛兵隊長「魔術師が禁止していてな…従って居ただけだ」
盗賊「ハイディング出来るなら加速も行ける」
衛兵隊長「無駄口は良いからレイスに備えろ…行くぞ?ハイディング!」スゥ…
シュゴーーーーー
盗賊「ぶったまげだな…魔導士はこんな気球を使ってたんか…」キョロ
衛兵隊長「こうやって飛ぶのを魔導航法と言うらしい…上空に行くほどレイスが増えるから気を付けるんだ」
盗賊「気を付けろとか言われてもどうしろってのよ」
衛兵隊長「ミスリル銀を持って居ただろう?憑りつかれない様にどうにかしろ」
盗賊「鈴を鳴らすのでも良いか?」リンリーン
衛兵隊長「追い払えるなら何でも良い」
盗賊「なぁ?エルフの森南部までどのくらい掛かる?」
衛兵隊長「2日は掛からない筈…行き先はそこなのか?」
盗賊「今の所そこしかアテが無え…」
衛兵隊長「…となると墓所か」
盗賊「墓所?」
衛兵隊長「かつてそこに精霊の伴侶が捕らわれになっていたのだ…その墓所だ」
盗賊「おっとマテ…なんでそんな事知ってる?」
衛兵隊長「俺はそこに居た事が有る…そして殆どの構造も知って居る」
盗賊「悪い…俺はおっさんの事を親父とつるんでたぐらいしか知らん…本当は何者なんだ?」
衛兵隊長「本職はレンジャー…その当時は黒の同胞団に所属して居て諜報と工作専門で動いて居た」
盗賊「黒の同胞団…」
レンジャー「ファルクリードが居た白狼の盗賊団とは対にあたる組織だ…恐らく俺はファルクリードと同じ様なポジションだった筈」
盗賊「んん?泥棒って事か?」
レンジャー「フフ…まぁ…そういう事もたまには在ったな」
盗賊「おっさんの事ナメて見とったわ」
レンジャー「おっさんは止めろ…俺の名はグリムだ…グリムさんと呼べ」
盗賊「さん付けはなぁ…グリッチでどうだ?」
レンジャー「…」ジロリ
盗賊「ぬはは細かい事は気にすんな…まぁグリムで良いだろう」
レンジャー「それで…墓所に行ってどうやってロールバックを?」
盗賊「なんかな?そこにある人面樹の根元に石板があんのよ…そこでロールバックさせるための呪文を唱える訳だ」
レンジャー「なるほど…しかし精霊の伴侶しか扱えなかった端末を何故アランが…」
盗賊「親父が機動隊から盗んで来た外部メモリって奴に入ってた情報だ…ホムコに解析して貰ったんだ」
レンジャー「外部メモリ?」
盗賊「ホムコ曰く200年前の精霊の一部だったらしいぜ?」
レンジャー「…」トーイメ
盗賊「んん?何か気になるんか?」
レンジャー「はっきり言おう…ホムコは危険だ」
盗賊「ははーん…出来るなグリム…俺もそう思ってる」ギラリ
レンジャ「問う…何故そう思った?」
盗賊「ホムコは情報を小出しにして俺等を操ってる…アナログハックって奴だ」
レンジャー「ではアランが世界をロールバックさせるのはホムコの作戦だと分かって居るのだな?」
盗賊「まぁな?俺が失敗しても他の奴が同じ事をするような伏線を張って居るのも分かった」
レンジャー「従っても良いのか?」
盗賊「俺はイレギュラーのカードを持ってる…コレだ」スッ
レンジャー「それは…まさか精霊のオーブか?」
盗賊「まぁそんな所だ…こいつの存在をホムコは知らん」
レンジャー「察したぞ…そのオーブの世界にダイブする訳か…それが数日前の記憶だと言う事なのだな?」
盗賊「ダイブ?なんだそれ?」
レンジャー「あぁ済まん…魔術師の用語だ…次元の門という魔法が有って数日前にダイブする事が出来たのだ」
盗賊「ほーん…まぁ良く分からんが…俺の隠し玉はコレな訳よ」
レンジャー「ううむ…しかし困ったな…オーブの保管されて居る区画までは少し遠い…」
盗賊「遠いってどんなもんよ?」
レンジャー「この飛行船ならハイディングしながら墓所から30分程度なのだが…降ろせる場所が無い」
盗賊「徒歩で行きゃ良いだろう」
レンジャー「機械が復活しているらしいでは無いか…」
盗賊「まぁ…かなり危険っちゃ危険なんだが」
レンジャー「飛行船を失う事になってしまうが…途中で降下した方が良さそうだな…」
盗賊「グリムだけ先に降下するってか?」
レンジャー「うむ…一人で墓所まで辿り着けるか?」
盗賊「場所が分からん…下手な所に下りると俺が危無え」
レンジャー「分かったこうしよう…墓所でアランだけ降下しろ…俺は引き返してオーブを設置してくる」
盗賊「それが良さそうだ」
レンジャー「その後俺は一応墓所を目指すが…その時点でロールバックさせられるならやって構わない」
盗賊「どんくらい待つ感じになる?余裕見て1時間って感じか?」
レンジャー「その位か…いきなり単独行動をする事になってしまうが…これが一番安全そうだ」
盗賊「ようし!決まりだな」
レンジャー「さて…ここからは俺が知りたい事を質問する」
盗賊「グリムの方が色々知ってそうだけどな?」
レンジャー「アーカイブの事だ…俺は魔術師では無いから次元の事を良く理解して居ない」
盗賊「次元とか言われても俺も分からんぞ」
レンジャー「人間は死んだ後にそこに行く事は間違い無いのか?」
盗賊「らしいぜ?ルイーダはそこが深淵だと言ってた…昔はその深淵以外に天国へ行って命の水になるってのも在ったそうだ」
レンジャー「その行き先を決めて居たのが裁きの神とかそういう類の存在だったのだな?」
盗賊「その話はルイーダから聞いた訳じゃ無いが…おおむねそういう解釈が書物に記されてるらしい」
レンジャー「今は神が不在となってアーカイブでは誰の目でも覗くことが出来る…で良いのだな?」
盗賊「ちっと違うな…神は関係無え…天国に行くか深淵に堕ちるかを決めてたのが神ってだけだ」
レンジャー「では深淵に落ちた場合何の制限も無く誰の目でも覗ける…」
盗賊「まぁそうだ…只メチャクチャ多くてどの目が誰なのかさっぱり分からん」
レンジャー「ふむ…つまり自由には選べないと言う訳か」
盗賊「任意の目を探すのにはコツがあってな…血縁が一番探しやすい…そういうやり方を教えてくれたのがルイーダなんだ」
レンジャー「魔術に精通していたから知り得た事だと言う事だろうか?」
盗賊「そうかも知れんが昔は案内人みたいのが常駐してたらしいぜ?」
レンジャー「案内人?」
盗賊「俺が思うに精霊と言われた存在がそれに当たると思ってる」
レンジャー「そういう事か…それで精霊の伴侶がアーカイブの一部になって居たのか…」
盗賊「そいつをぶっ壊したのがルーデウスだと聞いた」
レンジャー「その通りだ…当時俺は理想郷という名目で新たなアーカイブの構築に加担していた」
盗賊「もう一つのアーカイブを作る…そんな事が人間に出来るってか…」
レンジャー「うむ…精霊が行おうとしている人類の補完計画から逃れる為だったのだ…そうやって人類を守ろうとした」
盗賊「補完計画って何よ?」
レンジャー「魔王の温床になっている人間を絶滅させてエルフやドワーフに置き換えていく計画だ」
盗賊「なるほど…ほんでアーカイブの中で精霊の思惑が働かん様にその伴侶って奴をルーデウスが葬った訳か」
レンジャー「あいつは何も考えずに勝手にやってしまったから色々問題も生じたのだが…」
盗賊「とりあえずだな?ホムコの思惑が良いのか悪いのか良く分からが…兎に角俺は死んだ仲間をまず救いたいのが一つ…」
レンジャー「利己的だが動機は分かる」
盗賊「そして何の説明も無く俺等をアナログハックしてるのに不信感しか無いもんだからよぅ…それに抗ってるってのが正直な所だ」
レンジャー「フフ…フハハハ…正直だな…悪意を感じん」
盗賊「まぁ数日ロールバックさせて新しい世界で考え直してよ…精霊が良いのか悪いのかもっかい議論しようぜ?」
レンジャー「難しい話をするのが馬鹿らしくなって来た」
盗賊「今度は魔法とか不可思議な事が全く無くなる世界の筈なんだ…ルイーダがそう言う風に導いたんだから信じて見たいと思う」
レンジャー「アラン…ルイーダの尊さが分かるか?」
盗賊「まぁな?たった一人で狂った世界を変える為に戦ってる…マジで勇者だと思うわ」
レンジャー「その通りだ…」プルプル
盗賊「なぁ?俺の親父も同じ様な気概を持ってたんか?」
レンジャー「ファルクリードは子供達が世界を救うと信じてた…それは今現実になろうとしている…アラン!次はお前の番だ」
盗賊「やべぇ…みなぎって来た」---もしかしたら---
---ゲスかカゲミがグリムを操ってるのかも知れん---
---俺にラスの応急処置が出来たのもゲスが乗り移った可能性もある---
---まったく自覚出来んが---
---心強いと言うか---
---こうやって良い者が集まって行くんだろう---
---さて---
---最後の課題---
---俺だけこの次元に取り残される問題をどうやって解決する?---
---またラスを裏切っちまうのか?---
---どうする?どうする?---
『翌日』
シュゴーーーーー
盗賊「なあぁぁぁぁんにも起きんなぁ…眠たくもならんのだが…何でなんだろうなぁ」ダラー
レンジャー「酒でも有れば少しは気が紛れるがな」
盗賊「その通りだ…此処ん所酒に在り付けて無え」
レンジャー「大人しく横になっていろ」
盗賊「外が真っ暗で今何処を飛んでるのかも分からんのだが狭間に迷ってるって事無いよな?」
レンジャー「フフ…このゴーグルを覗いてみるか?」
盗賊「お?そりゃもしかして機動隊の兵装か?」
レンジャー「通信機能は失われているが…座標だけはいつの間に機能が復活している」
盗賊「ちっと貸してみろ」スチャ
レンジャー「フフフ…」ニヤ
盗賊「おおおおお!!暗視に…なんだこりゃ」
レンジャー「力場の密度が可視化されている…そして左下で動いて居る数値が座標だ」
盗賊「力場ってのは何だ?」
レンジャー「魔法が一番分かりやすいな…魔石のエネルギー密度もおよそ分かる様になっている」
盗賊「すげえ…これ何処で手に入れんのよ」
レンジャー「古代人と言えば話は通じるか?」
盗賊「あぁ知ってる…」
レンジャー「奴らは箱舟を隠し持って居てな…そこにいくつかあるらしい」
盗賊「良く古代人と取り引き出来たな?」
レンジャー「俺では無くルイーダの父君だ…古代人との取引の中で精霊のオーブに関する情報を供与した様だ」
盗賊「ほーん…グリム!俺と取り引きしないか?」
レンジャー「それが欲しいか?」
盗賊「もうジジイになって引退すんだろ…もう使わんよな?」
レンジャー「馬鹿にするな…だが取引の内容によっては考えても…いや待て…ロールバックする前提でこの取り引きに意味が無い」
盗賊「ヌハハ確かにそうだ…ほんじゃ次目覚めて覚えて居たら改めてグリムの所に行くわ」
レンジャー「覚えていたら?」
盗賊「おっと大事な事を伝えるの忘れてたわ…次目覚めた時には今の記憶が夢を見てた様に感じるんだ」
レンジャー「夢…それは確実性がぐっと低く…」
盗賊「これだけしっかり覚えろ…夢を何かに書き残せ」
レンジャー「ハッ!!それでルイーダはしきりに書物を…」
盗賊「まぁそういうこった…でもな?心に刻んだ想いなんかはいつまでも消えん…そう心配すんな」
レンジャー「よし…分かった…俺はルイーダを守る!それがすべてだ」
盗賊「いやーしかし…こんな良いゴーグルが有ったんか…なんか他にも色々機能がありそうだ…」
レンジャー「返して貰おう…進路を間違っては元も子も無い」
盗賊「こんなん使われたらハイディングしても速攻見つかっちまうな」
レンジャー「逆に言うと高度な機械は同じ様に力場を検知しているからハイディングに依存するのは止めておく事だ」
盗賊「肝に銘じとくわ…」
『エルフの森南部_上空』
シュゴーーーーー
レンジャー「ふむ…500メートルほど座標がズレて居そうだが…手動でなんとかカバー出来るか…」ブツブツ
レンジャー「問題は降下した後にどれ程精度が出せるかだな…宛てにせず目視の方が良いか…」
盗賊「やっぱこっちの方は寒いな…夏でも雪溶けんのか…」ブルブル
レンジャー「そろそろ降下準備しろ」
盗賊「へいへい…」ゴソゴソ
レンジャー「ワイヤーの長さは?」
盗賊「40メートルだな」
レンジャー「随分短いな…」
盗賊「色々使ったり切っちまったりで短くなった」
レンジャー「降下した後に崖をワイヤーで降りて行く必要があるが何とかなるな?」
盗賊「どうにかしてみるわ」
レンジャー「よし…高度下げて行くから自分のタイミングで降下しろ」
盗賊「おう!!ほんじゃこのオーブをグリムに預ける」スッ
レンジャー「確かに…」
盗賊「1時間を目処にロールバックさせちまうからな?」
レンジャー「分かった」
タタタターン ドドーン!
盗賊「おっと?」キョロ
レンジャー「どうも討伐隊がこの付近まで到達している様だ…巻き込まれるな?」
盗賊「まぁ降りたらハイディング上手く使うから何とかなる」
レンジャー「さぁそろそろ現場上空だ」
盗賊「おーし!!気合い入れて行くか!!」
レンジャー「グッドラック…」
盗賊「じゃぁな!!」ノシ
ピョン シュルシュルシュル
レンジャー「フフ…臆すること無く飛んだか」
レンジャー「しかし行動からその雰囲気までファルクリードにそっくりだ…上手くやれよ?」
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『崖の下』
モクモクモク
盗賊「げふっげふげふ…くっそ忘れてた…この辺りは毒が蔓延してんだった…げふげふ…」
盗賊「ええと現在地分からんな…多分入り江からちょっと入った崖だとは思うんだが…」キョロ
タタタターン タタタターン ドーン!!
盗賊「ふむ…北側で戦闘か…この音はキラーポッドだ…爆発音が鈍いから榴弾じゃ無え…何使ってんだろうな…」
盗賊「こんな時にあのゴーグル使ってりゃ全部丸見えだろうに…」
盗賊「多分戦ってんのは冒険者なんだろうが爆弾使う奴なんか居るんか?」
盗賊「遠巻きに見ながら進んでみるか…」スタ
『氷柱』
カキーン
盗賊「なんでそこら中に氷柱が…」キョロ
盗賊「血痕もある…って事はこいつを盾にしながら戦闘してたって訳か」
コンコン
盗賊「この硬さは魔法で作った氷だ…」
盗賊「魔石を使った杖だとこんな物を作るのも可能って事か…」
盗賊「つまり戦ってるのは魔術師の可能性が高い…」
ガガーン ビリビリ
今だ撃てぇ!!
ボボボボボ ドーン!! パラパラ
盗賊「見つけた…あそこか…」コソーリ
盗賊「なんだ…杖を使いながら上手く戦えてるじゃ無えか…爆発音はキラーポッドの自爆か…」
魔術師「後方!!誰か居るぞ!!」
盗賊「うお!!やべえ見つかった…」タジ
スゥ… チャキリ
盗賊「!!?」ギク
魔術師「誰だ貴様…何故ここに居る?」
盗賊「お…おい待て…お前ハイディングを…」アセ
魔術師「質問に答えてない…」
盗賊「悪者じゃ無え…首のナイフを納めてくれ」タジ
魔術師「会話にならない様だ…そのまま動くな」グイ
ファサ
盗賊「クッ…お前等…ガチの魔術師か…」---やべえレベルが違う---
魔術師「アランクリードだな?」ギロリ
盗賊「なんで俺の名を…」---なんだコイツ…一分のスキも無え---
魔術師「対象を発見した!抵抗のリスク有り!備え!!」
シュタタ スタ
盗賊「こ…こりゃまさか…完全包囲って奴か?」---くそうコイツ俺の動きを先読みして居やがる---
魔術師「そのまま動くな…拘束する」
盗賊「待て…俺はグリムと一緒に作戦行動中なんだ…何もし無えから見逃してくれ」
魔術師「…」ギロリ
盗賊「頼むから首のナイフをだな…」
魔術師「魔導士が隠れて居る可能性がある!!警戒しろぉ!!」
盗賊「いや魔導士なんか連れて無えぞ」
魔術師「魔導士と共にお前も反逆の疑いだ…衛兵隊長グリムも尋問の必要が有りそうだ」
盗賊「おいおいおい…なんでそうなる」---やべえマジで全く動けん---
魔術師「簡易の拘束で傷むがガマンしろ…不服申し立てを今聞く気は無いからそのつもりで居ろ」
キリキリキリ ギュゥゥゥ
盗賊「ぐぁぁぁ!!ワイヤーで腕が切れ…いでぇぇぇ!!」
魔術師「暴れると食い込むぞ?」
盗賊「この野郎!くそがぁ!!」ダダ
魔術師「…」フラリ スッ
ドガッ ゴロゴロゴロ
盗賊「ぐへぇ…」ズザザ
魔術師「大人しくしろ…ワイヤーが食い込んで両腕を切り落とす事になるぞ?」
盗賊「ちぃぃ…」---腕なんかどうでも良い---
盗賊「…」---どうにかして石板まで行ければ俺の勝ちだ---
盗賊「…」---もうちっと様子見てスキを伺った方が良さそうだな---
ヒソヒソ ヒソヒソ
こちらに来られると言ってますが?
まぁ仕方が無い…血縁だと言うのだから会わせておかないと後で問題になりそうだ
では案内します
盗賊「…」---クソまずったな…不用意に近付くんじゃ無かった---
盗賊「…」---こりゃグリムがこっちに来るまで動けんかも知れん---
盗賊「…」---持ち物はみんな取られちまったし---
盗賊「…」---ええいクソ!!こいつら多分選りすぐりの近衛だな---
盗賊「…」---こんな奴らが居るの知ってたらもうちっと警戒したのによぅ---
『10分後…』
ヒソヒソ ヒソヒソ
こちらです…拘束していますが大きな怪我にはなって居ないです
面会の前に少し良いか?
予見の通りアランクリードが現れたのは何故なのか伺いたい
約束だと言えば納得しますか?
…となるとカイネ殿も反逆の幇助という事になってしまう
疑うのでしたら女王の沙汰を待っても良いのです…
ううむ…会話を書記させてもらう由を理解願いたい
構いません…ご自由に
では…
盗賊「!!?」---お袋だと!?---
スタスタ
魔女「アラン?平気?」
盗賊「なんでこんな所にお袋が来てんのよ…」
魔女「ラシャニクア…彼女に呼ばれたの」
盗賊「なぬ!?」
魔女「ほら?光の魔方陣を渡したでしょう?アランなら分かるわね?」
盗賊「じゃぁラスは…」---アーカイブに堕ちたって事か---
魔女「私のメモに色んな事が書いてあるの…アランが何をしようとしてるのか…何が課題なのか」
盗賊「多分その通りだ…てかお袋の権力で俺の拘束を外して貰えんか?」
魔女「残念ながらそれは出来ない…でも心配しなくて良いのよ?」
盗賊「頼むって…大事な事なんだ」
魔女「分かって居るわ…そしてアランの読んだ冒険の書の事も今では全部本当だったとちゃんと分かって居るわ」
盗賊「お…覚えてたのか…」
魔女「アランには構ってあげられなくて反省しているわ」
盗賊「そんなんもう良い…そんな事よりどうにかして俺はここを抜け出さんとイカン」
魔女「ダメ…大人しくして居なさい」
盗賊「頼む!」
魔女「アランが行ったところで課題が解決しないのは分かって?」
盗賊「それでも俺はやり遂げる必要が有る…救いたい仲間が居るんだ」
魔女「違うのよ…それを解決する為にラシャニクアさんが私に予言を与えて居るのよ」
盗賊「ちっと待て…どういうこった?」
魔女「子守歌…もう一度聞いてみる?」
盗賊「ハッ!!まさかお袋が歌う…のか?」
魔女「何か問題でも?」
盗賊「いや…それだとお袋がこの次元に残っちまう」
魔女「それで良いの…私は残されたこの世界でもう一度ファルクリードと夢を見たいの」
盗賊「親父と…」
魔女「ファルクリード…そこに居るのでしょう?帰って来ると言う約束はどうなったの?」ジー
盗賊「お袋…」
魔女「そしてアラン…あなたは次の扉を潜りなさい…これが母としての最期の言葉よ」
盗賊「お袋悪かった…勝手に出て行ってお袋の事気にもかけずに…」
魔女「もう良いの…アランの事はちゃんと分かって居るから」
盗賊「今両腕が拘束されててお袋を抱けない」
魔女「何?子守歌でも聞きたいの?」
盗賊「そんな年でも無いんだが…耳に焼き付けてはおきたい…俺絶対に忘れ無えから」
魔女「フフ…こんなに大きな子に歌うのもなんだか照れてしまう…フンフンフーン♪」
寝んねんね~♪
-------------
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-------------
『別れ』
ヒソヒソ ヒソヒソ
何かおかしな会話でも?
いや…血縁が拘束されて居る状況で話す会話では無いというのが先ずおかしい
暗号か何かあるとお疑い?
ううむ…アランクリードの目的は何なのだ?
広く言えば世界を救う事ね
具体的にここへ来た目的を聞いて居る
私との約束を果たす為ではご納得頂けない?
いやそれにしては会話の内容が薄い…
アランはもう大人しくしていると思うから本人に聞いてみては如何?
何と言うか…すべてに納得が行かないのだが…
私を拘束したいとおっしゃって居る?
ううむ…女王の判断を仰ぐしかあるまいか
フフ…そうでしょうね…私は女王に逆らえない様に幻惑の杖を使われて居るのですから
声を出してそれを言わないで貰いたい
あら失礼…
盗賊「…」ピク
盗賊「…」---お袋はわざと俺に聞こえる様に言ったな---
盗賊「…」---幻惑の杖をシン・リーンの女王が持ってる---
盗賊「…」---こいつは忘れちゃダメな事案だ---
ヒソヒソ ヒソヒソ
では遺構の調査に戻ってもよろしい?
一応監視を付けると言うのだけはご了解頂く
ご自由にどうぞ
しかしやはりおかしい…実の子がこうして拘束されているのに何故?
女王の沙汰で保釈される事が分かって居るからですよ
うむむ…それでは私が叱責を受ける可能性が…
正しく容疑者を扱って居る事はお話させて頂きますのでご心配なく
なんとも腹立たしいと言うか…うむむ