100.最後の異形
『野営地』
トンテンカン トンテンカン
馬防柵設置急げえ!!
盗賊「うほほ…こりゃまた貧相な野営地だこと…」キョロ
衛兵隊長「ゾンビの侵入を防ぐのに即席で作って居るのだ…昨日今日で作ったにしては中々良いとは思わんか?」
盗賊「なんでこういう動きをもっと早く出来なかったのか聞きたい」
衛兵隊長「ルイーダのお陰でやっと纏まり始めたんだ…彼女を守る為にな?」
戦士「ふむ…どうやらシン・リーンはルイーダ殿が居る限りまだ戦える様だね」
衛兵隊長「俺達衛兵隊も彼女の行いに感化されて随分動きが変わった…お前達を安易に塔へ案内出来ない理由の一つだ」
盗賊「他の冒険者はどうなっちまってる?ランカー冒険者とか沢山居た筈だが…」
衛兵隊長「フフ…ランカー上位はほぼ全員魔術師だ…」
盗賊「なんだそういうカラクリな?…そうやって民兵を鍛え上げてた訳だ…」
衛兵隊長「諜報や工作員のあぶり出しとかもある」
盗賊「相手が魔術師だってんならあんまランカー冒険者に話を聞いても意味無えな…」
女ハンター「アラン…もしかしてまだルイーダの行先を探ろうとしてる?」
盗賊「いや…ルイーダはがっつり守られてる様だからもう良い…今知りたいのは森の状況だ」
女ハンター「魔物討伐隊の状況という事ね」
盗賊「うむ…機械が復活しちまってんだろ?どんな具合なのか知りたくてな」
女ハンター「まさか…」ジロリ
盗賊「何よ…」タジ
女ハンター「行くつもりじゃ無いでしょうね?」
盗賊「だったらどうだってのよ」
女ハンター「弾薬尽きてるのに機械と戦える訳無い…ダメよ」
盗賊「悪いが俺は一人でも行く…いや…むしろその方が都合が良い」
女ハンター「又危険な事を…長距離援護無しで無茶な真似は止して」
盗賊「良いか?良く聞け…」
女ハンター「結論から言って」
盗賊「イッコが残したオーブをアーカイブに接続する…これで理解出来るか?」
女ハンター「どうやって…」
盗賊「簡単だ…他の精霊のオーブと同じ様に設置してくるんだ」
女ハンター「場所は分かってるの?」
盗賊「分からん…只まぁ…エルフの森のどっか地下に思う」
女ハンター「危険過ぎる」
盗賊「んな事は分かってる…だが俺一人なら姿を消したまま行く事が出来るんだ」
女ハンター「…」
盗賊「その後俺は例の歌でアーカイブを眠らせる…そしてみんなイッコの記憶の中にある目を覗いてロールバック」
女ハンター「そんな簡単に行くと思って居るの?」
盗賊「あいつら3人を救う方法は多分これしか無い」
衛兵隊長「待ってくれ…その話…」
盗賊「んん?関わるつもりなんか?」
衛兵隊長「どの位のロールバックを想定して?」ズイ
盗賊「詳しくは良く分からんが…数日前から2年ぐらいの期間の何処かって感じか?」
衛兵隊長「数日前…そうか…まだ可能性が残されて居たか…」
盗賊「おいおい独り言で自己完結すんなら俺らの話に割って入って来んな」
衛兵隊長「ああ悪い…これはあまり口外出来る話では無いのだが…ルイーダが瞳を失うのを阻止出来るかも知れないと…」
盗賊「なぬ?」
衛兵隊長「ルイーダの父君との約束なのだ…俺はルイーダを守らなければならない…このままでは先王に合わせる顔が無いと…」
盗賊「ほう?忠義ってやつか…その命貰っちまう事になるかも知れんぞ?」
衛兵隊長「もう老いぼれだ…この命でルイーダが救われるならそれも良い」
盗賊「ふむ…ただやっぱ足手まといになりそうだ」
衛兵隊長「待て…俺はファルクリードとほぼ同じ作戦行動が出来る…機動隊とも行動を共にした過去がある」
盗賊「おっと…伊達に親父とつるんでた訳じゃ無いってか」
女ハンター「衛兵隊長の立場がそんな簡単に単独行動を出来るの?」
衛兵隊長「俺の代わりなど魔術師なら誰でも出来る…そしてルイーダの為だと知れば魔術師も見て見ぬふりをする筈だ」
盗賊「おーし決まりだ」
衛兵隊長「準備に1日時間をくれ…魔導士が使って居た2人乗りの気球が調達出来る」
盗賊「おおお!!それがありゃ一発で行けそうだ…俺は徒歩で向かうつもりだったわ」
女ハンター「2人乗り…私は待機になってしまうのね」
盗賊「済まんな…どうも俺はイッコのオーブを手に入れてから諦めが付かん…ここに俺達の未来があると直感しちまったんだ」
女ハンター「私達の未来…」---私はどうなりたいのか?---
---違う---
---初めから知ってる---
---あなたを失いたく無かった---
---あなたを探してた---
女ハンター「だ…だめ…」ガバ
盗賊「うお!おいおいどうした…いきなり抱き付くな…」タジ
女ハンター「私の直感…アランが犠牲になる」
盗賊「俺が犠牲にだと?何でそんなんなる?」
女ハンター「知らない…でも直感」
盗賊「俺達2人の隠れ家あんだろ…必ずそこに戻って来る…そこでもっかいやり直しだ」
女ハンター「あの隠れ家…」
盗賊「お前もアーカイブの存在は知ってる訳だ…自分の目を探してそこに向かえば良いだけの話…簡単だろう?」
女ハンター「…」---今気付いた---
---人はこうやって愛を紡いで来た---
---それが終わってしまうアーカイブに置き換わってしまう位なら---
---イッコが残したオーブに賭けてみたい---
---それがアランの言う未来---
---ホムコさん達が眠りに付いたのもきっと狙いが有っての事---
---多分ロールバックが近いのを予期してる---
---だったらホムコさんの知らないイッコのオーブで世界を再創生した方が---
---もう一度愛を紡げるチャンスがある---
女ハンター「…」スル
盗賊「お?納得したか?」
女ハンター「必ずよ…」ギロリ
盗賊「何回も言わせんな…俺ぁ戻って来る」
『キャンプ』
メラメラ パチ
盗賊「ふごーーすぅ…」zzz
女ハンター「…」チラリ
ドドドドド
女ハンタ「!!?」
戦士「ラシャニクア殿!!」ドドド
女ハンター「シーーッ…アランが仮眠中」
戦士「そうであったか…そうとは知らず私とした事が…」
女ハンター「どう?外の方は?」
戦士「やはり大型のゾンビに苦戦している」
女ハンター「プラズマの援護が必要?」
戦士「いや…それには及ばない…ラシャニクア殿から借りて居るミスリルダガーを少し改良したいと思って相談に来たのだ」
女ハンター「改良?」
戦士「武器としては短過ぎてだね…柄を付け替えて槍にしたいのだが良いかね?」
女ハンター「あぁそんな事…好きにして良い」
戦士「あとこれから夜間に掛けてガーゴイルも出て来るそうだ…ミスリル銀の音を鳴らして欲しいとの事」
女ハンター「ミスリルの鈴を鳴らせば?」
戦士「うむ」
女ハンター「靄が立ち込めて居て太陽の方角も分からないのだけれど…そろそろ夕刻?」
戦士「まぁそれくらいだろう…倒したゾンビを燃やしながらの戦いだから明かりには困ら…んん?」
女ハンター「何?」
戦士「浮かない顔をしている様だ…何か心配事でも?」
女ハンター「何でも無い…ただ200年前の精霊が人間に裏切られた理由を少し考えて居ただけ」
戦士「ふむ…」
女ハンター「深い理由がその時に在ったのだと…気付いてしまったから…」
戦士「私から一つ助言をしておこう…前を見て前にだけ進めば良い…迷った時は前を見るのだ」
女ハンター「どうしてそれを今?」
戦士「考えても大体結論は出ないのだよ…兎に角今出来る事をやって次に進める事だけが自分を満たす」
女ハンター「考えても無駄って言いたいのね」
戦士「愛は曲げないと一旦決めてしまえば後はラクなものだよ…そこに向かって進むだけだ」
女ハンター「じゃぁ私はどうすれば…」
戦士「アラン殿を愛して居るのだね?失いたくないのだね?」
女ハンター「…」
戦士「前に私は贈り物に縁が宿ると言ったが…お守りを分けて持つのも良いのだよ」
女ハンター「お守り…」
戦士「丁度ラシャニクア殿は沢山お守りを持っている様だ…分けてみてはどうだろう?」
女ハンター「参考になったわ…ありがとう」
『ミスリル銀の鈴』
チリンチリーン…
盗賊「んん?」モソモソ
女ハンター「…」ゴソゴソ
盗賊「んあぁ…何やってんだラス!あんま俺の持ち物を触るな」
女ハンター「起こしてしまったみたいね?」ゴソゴソ
盗賊「だから何やってんのよ」ムクリ
チリーン…
盗賊「んん?」
女ハンター「私が持ってる鈴とアランの鈴を交換したのよ」
盗賊「何だって又そんな事を…」
女ハンター「アーカイブに堕ちてもこれで私の目を探せるでしょう?」
盗賊「何だそんな事か…」
女ハンター「そんな事じゃない大事な事…あと他にもアラクネーの牙も2つに分けたわ」
盗賊「むむ…もしかしてお前の目をお袋が覗いて無えか?」
女ハンター「だったら何?」ジロリ
盗賊「無駄に世話焼くのはお袋みてぇだってな…」
女ハンター「別にそれでも構わない…それからもう一つ約束して」
盗賊「んあ?何よ?」
女ハンター「私に新しい鼻をくれると言ったでしょう?…約束は果たして」
盗賊「分かった分かった…もうちっと待ってろ」
女ハンター「じゃぁ私の鼻をあなたに預ける」スッ
盗賊「おいおい…何も今鼻を外さんでも良いだろう…てか鼻だけ俺に持ち歩けってか…」
女ハンター「もうこれで…あなたにあげられる物は何も持って無い…」
盗賊「何も死にに行く訳じゃ無えから…ほんで隠れ家に戻る約束もした…大丈夫だ!上手く行く」
女ハンター「はっきり言っておくわ…私の夢ではあなたは返って来ない」
盗賊「なに?」
女ハンター「多分夢で何度も同じ経験をしてる…それが夢幻」
盗賊「マテマテどういうこった?」
女ハンター「今起こって居る事も次に目を覚ましたら夢だと感じてる…世界はそうやってループして居るの」
盗賊「だったらそのループした先でもっかいやり直しをだな…」
女ハンター「その時に今の記憶が無くなって居る事をよく考えて」
盗賊「…」トーイメ
---何度も同じ夢を見て居る---
---そうだ俺は---
---アーカイブを再起動させる為に残る必要が有った---
---そして気付いたらお袋が持ってた冒険の書を読んでたんだ---
『遠い記憶』
母「…また勝手に冒険の書を持ちだして…勝手に触ってはいけないと言ったでしょう?」
俺「ぅ…ここは何処だ?」キョロ
母「ほら混乱してしまって居る…マルコ!!鎮静剤を入手して来て欲しいわ」
男「ハハ…鎮静剤を使わないとまた暴れてしまうか…ちょっと待ってて」
俺「お袋と…マ…マルコ?カゲミじゃ無えのか?」
母「アラン落ち着いて…ゆっくりで良いから冒険の書に書かれて居た事を話して」
俺「いや待て…今はどの時代だ?マルコが居るって事は…そうだミファはどうなってる?」
母「ミファちゃんの事は心配無い…裕福な里親が見つかって養ってもらえる事になったの」
俺「そらいつの話よ?」
母「いつって…ついこの間一緒に見送ったでしょう?それよりもいつからそんな言葉の使い方を覚えたの?」
俺「ミファを見送っただと?…おいお袋!!ミファが脳みそ取り出されちまうぞ!!」
母「又そんな事を言い出して…」
俺「今ならまだ間に合う!ちっと出かけて来る」
母「待ちなさいアラン!!建屋から出てはダメよ」
俺「うるせえ俺に構うな!!」
母「マルコ!!早く来てマルコ!!またアランが暴れ始めて…」
---そうだ俺はその時にすべてを知ったんだ---
---だがいつの間に記憶が無くなって行く---
---その様子をマルコだけはしっかり観察してた---
---マルコは俺の理解者だった---
『キャンプ』
メラメラ パチ
盗賊「…」ボーゼン
女ハンター「何か思い出したみたいね…」
盗賊「いや…悪い…済まなかった…ちっと思い出したわ」
女ハンター「済まなかったってどう言う事?」
盗賊「俺のプランじゃお前の言う様に俺は返って来れん…次元が分かれるってのか?そんな様な事が起こる」
女ハンター「詳しく」
盗賊「アーカイブを眠らせた後に誰かが起こす必要があるんだ…勝手に目覚める訳じゃ無えのよ」
盗賊「ほんで俺が目覚めの歌を歌うとだな…俺だけ元の次元に残されたままになる」
女ハンター「じゃぁどうするの?」
盗賊「ちっと考える…まだ半日猶予が有る」
女ハンター「約束は守ってもらうから…はっきり言っておくわ」
女ハンター「あなたを愛してる…だから失いたくない」
女ハンター「こんな事を私に言わせておいて…約束が守れなかったなんて許さない」
盗賊「こりゃまた責任重大だな…ちっと考えさせてくれ」
女ハンター「…」
---傍に居られるなら私の命だってあなたにあげる…だから置いて行かないで---
『考え事』
マルコに何を話したのかもう記憶に残って無え…
ただ今の俺ならマルコに何を話すのかある程度想像出来る
つまりマルコが精霊樹の下へ向かったのは俺からの情報が有ったからだ
アーカイブの存在を確かめに行ったのは間違いない
そしてその後どうする?
俺の思惑通りにもう一つのアーカイブの仕組みをマルコに作れるか?
いや無理だな…
ミライみたいに管理者権限を持ってる奴じゃ無いと変えられない
でも待て…誰かに助言をする事は出来る
マルコはホムコに対して何か助言をして居ないか?いやカゲミに?
もしかしたらお袋に何か言い残してるかも知れんな…
クソだめだ…どちらにせよ俺が何か変えられる事が無え
変化を他人に求めちまう事になる…それじゃ確実性が無い
どうする?
このままマルコを信じて新しいアーカイブにロールバックされるのを待つか?
ダメだダメだ…すべて失うかも知れん
やっぱ俺がやるしか無え
眠らせたアーカイブをどうやって目覚めさせるか…
いやそもそもアーカイブを再起動させた後になんで俺だけ居残ってるのか…
”賭けになってしまうが…自死という手も…”
そうか俺だけアーカイブに堕ちて無かったかも知れん
もたもたしてる内に強制ロールバックでも食らったか?
ダメだ記憶が曖昧だ…
もっと現実的な手段を…
『敵襲』
タタタターン! タタタターン!
盗賊「何ぃ!!?」ガバッ
女ハンター「銃声…この音はアサルトライフル」
盗賊「何でここに来て銃器を持った奴が居んのよ…」
女ハンター「ロストノーズ…行方が分からなくなってた」
盗賊「敵か?味方か?」
女ハンター「ゾンビが制御不能で向こうも混乱して居るのかも知れない」
盗賊「銃器でゾンビを倒せん事ぐらい分かるだろう…今の発砲は人間か異形の魔物のどちらかに撃ったんだ」
女ハンター「ロストノーズがシン・リーンを敵にする理由が分からない」
盗賊「黄金だな…腐るほど持ってる筈だ…てかルーデウスがやられた事を知らん可能性も高い…」
女ハンター「マズいわね…ゾンビ攻めで疲弊してる状況で攻められてしまうと…」
盗賊「ちぃぃ…ゲリラ戦になっちまうか…向こうはどんなゾンビ対策やってんのよ」
女ハンター「考えられそうなのは気球…」
盗賊「そらイカン…こっちの気球を全部撃ち落されちまう…てかさっきの銃声は気球を狙ったか…」
女ハンター「読めて来た…シン・リーンを攻略した後にロストノーズが略奪をする手筈だったと言う事ね」
盗賊「クソッたれだ…こっちは必死でゾンビを相手にしてるってのに…」
女ハンター「ワイヤーの装置を貸して…木の上に上がって観測する」
盗賊「頼む…どうやら休んでる暇は無い様だ…俺もその辺見回るわ」ガチャガチャ
女ハンター「援護は視界が悪くて200メートルが限界…残弾は10発しか無いと思って」
盗賊「プラズマは居場所を悟られるから最後の手段にしろ…バヨネッタがまだ4発残ってたよな?」
女ハンター「分かったわ…一応リボルバーも6発だけ残ってる」
盗賊「俺も散弾が2発撃てるから向こうの気球を落とすぐらいならイケると思う」
女ハンター「視界が悪くて狙撃のリスクが少ないのは良かった…見つけ次第球皮にバヨネッタ当てて行く」
盗賊「おーし!上手く行きゃ弾丸入手出来るか…じゃ行って来んな?」タッタ
『空中戦』
ターン! タターン!
盗賊「ええい!クソ!!気球同士撃ち合いやってんだろうが銃器相手にシン・リーンが勝てる訳無え」
戦士「アラン殿ぉぉぉぉ」ドドドドド
盗賊「おおバレン!!探したぞ!!」
戦士「皮紐を持っては居らんか?」
盗賊「んあ?そんなもん持ってる訳…ってお前の鎧は皮紐で組んでるじゃ無えか」
戦士「おお!!こんな所に…」
盗賊「皮紐なんか何に使うのよ」
戦士「スリングが有れば投石が出来るのだよ…200メートル以上飛ぶ筈なのだ」
盗賊「採用だ!!今すぐ作るぞ!片腕だけで良いから鎧を脱げ!!」
戦士「他の兵隊にも配りたい…どうにか作り増せないかね?」
盗賊「ロープなら持ってる…こいつと組み合わせりゃ10個ぐらいは行けそうだな」
戦士「急ぎでお願いする…これでガーゴイルをどうにか…」
盗賊「いやマテマテ…銃器使ってる気球を狙うんじゃ無くてガーゴイルを狙うんか?」
戦士「んん?上空で気球がガーゴイルに襲われて居るのでは?」
盗賊「そら確かなんか?」
戦士「私の目にはそう見えたのだがね」
盗賊「ロストノーズがガーゴイルに襲われてるって可能性もあるか…」
戦士「ロストノーズ…」トーイメ
盗賊「シン・リーンの奴らで銃器使ってる奴なんか見た事無いだろう…あの音はアサルトライフルなんだ…それを持ってるのはロストノーズだ」
戦士「味方では無いと言う事か…それで他の気球が高度を下げて…」
盗賊「そりゃ球皮を撃たれちまって高度上げられんくなってんだな…マズい状況だぞ」
戦士「早く他の兵隊に伝令をしなければ余計な被害が出てしまう…どうやら私達が銃器を持って居るから味方だと誤認して居る様だね」
盗賊「走れ!!撃ち落とすのは銃器使ってる気球だ!」
戦士「10分で戻る故にスリングを作り増して欲しい」
盗賊「分かった早く行け!!」
『10分後…』
ドドドドドドド…
うらぁぁぁ!!どけどけぇぇぇ!!
盗賊「うほほ…バレンの奴何処行っても目立つな…ライフルで狙い撃ちされんきゃ良いが…」
戦士「アラン殿ぉ!!スリングの準備はよかろうか?」ドタドタ
盗賊「持ってけ!!」
戦士「よしよし…これでガーゴイルを撃ち落とせる」
盗賊「いや…だから撃ち落とすのは銃器使ってる気球の方だと言ってるんだが」
戦士「取り急ぎガーゴイルが持って居る武器を入手したいのだよ…銀製の武器を持って居る様なのだ」
盗賊「そんなのが飛び回ってるんか…」
戦士「今の所銃器による被害が出て居る様子は無い…優先事項として銀を入手したいのだ」
盗賊「ふむ…良く考えてみたら銃器持ってても大量のゾンビが居るのに気球から降りられんわな…」
戦士「気球の件は気にしておくから安心したまえ」
盗賊「あんま派手に動いて狙い撃ちされんなよ?」
戦士「では私はこれにて…」ドドドドド
盗賊「まぁ俺は気球が高度下げて来るの待って散弾を当てて行くかぁ…」
ピカーーー チュドーーン!!
盗賊「ん!!?プラズマだと?」キョロ
盗賊「どこだ!?」
タタタタン!!
盗賊「バヨネッタ…4発撃ち切った…こりゃ緊急事態だ」
盗賊「ラスが襲われてる!!くっそ!!耐えてくれ!!」ダダ
『野営地』
ドタドタ ドタドタ
敵襲!敵襲!!異形だぁ!!
女ハンター「っつぅぅぅ…抜かった…あの異形の魔物を忘れて…」---木から落ちて足が上手く動かない---
異形の魔物「裏切り者の鼻無しめ…お前だけは生かして置けん」ヒタヒタ
女ハンター「くぅぅ…」---プラズマ銃を何処に落としたの?---
異形の魔物「させるか…」ギリリ シュン!!
グサッ!!
女ハンター「くはっ…」---まずい…木に釘打ちされた---
異形の魔物「どんな顔かと思えば…醜い只の鼻無しか」グイ
女ハンター「触らないで…反吐が出そう」---しまった!ダガーを持って無い---
異形の魔物「お前の皮を削ぐ気も失せた…このまま頭ごと握り潰してやる」グググ
メキメキ パキッ
女ハンター「あぐ…あががが」---だめ…アラン助けて---
スゥ…
スパッ スパスパッ
異形の魔物「何ぃ!!?」ブシュー
盗賊「両腕もらい!!くたばれ死にぞこないがぁ!!」ブン
スパスパッ
異形の魔物「ゴボゴボッ…」ブシュゥゥ ドタリ
女ハンター「ア…ラン…」クター
盗賊「しゃべるな…応急処置してやる」
盗賊「気を失う前に良く聞け…妖精を呼んで眠らせて貰え…ほんで体を癒すんだ…分かったな?後は俺に任せろ…」
女ハンター「…」パクパク
盗賊「動くな…そのままにしてろ」
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『翌朝?』
チュン バサバサバサ
戦士「アラン殿ぉ!!」ドドド
盗賊「おお!やっと来たか…血が足りん!お前の血を貰う!!」
戦士「ラシャニクア殿に何が?」
盗賊「一体異形の魔物が残ってただろ…そいつに背後からやられた様だ」
戦士「私の血で良ければ好きなだけ使って下され」
盗賊「そうさせて貰う…オークの血が有る限り死ぬ事は無え…筈だ」
戦士「いやしかし…これでは仮に生き永らえたとしても…」
盗賊「うるせえ…生きてりゃ俺がホムンクルスの体を与えてやれるんだ」
戦士「承知した」
盗賊「あぁぁクソ…やっぱこんな華奢な体じゃ戦場じゃやって行けん」
戦士「頭蓋の大きさは体格に関係無いがね?」
盗賊「異形のやろう素手で頭蓋を潰すってどんな握力していやがる…」
戦士「それは私も出来なくはない…それよりもラシャニクア殿の目は大丈夫なのだろうか?」
盗賊「もう片方の目が有る…それにホムンクルスの体を与えりゃ失った目だって…」---いや違う---
---俺が上手く世界をロールバックさせりゃこうならんで済むんだ---
---待ってろ---
---新しい世界でもっかいやり直すぞ---
---今度こそきっと上手く行く---
戦士「さて…輸血はどの様に?」
盗賊「教えておくからしっかり覚えてくれよ?」
戦士「私は手先が器用では無いのだが大丈夫だろうか?」
盗賊「くぁぁぁグダグダうるせぇ何とかしろやい!!」
戦士「承知した」
ここはこうして…あれはこうして…
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