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【連載版】最高の祝福  作者: アウリィ
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閑話:大聖堂の思惑

放浪癖のあるあの人が帰ってきました。

ロード・カスティニオーリが久方ぶりに大聖堂に帰ってきた。


その知らせを聞いて、大聖堂の上層部の意見は真っ二つに分かれた。

あの問題児を今度こそ縛り付けて仕事をさせて大人しくさせようというものと、いない方が平和だから何かしら理由をつけて遠方へ飛ばそうというものと。


大聖堂のトップは御三家と呼ばれる三つの家系から一人ずつ、当主であるロードと呼ばれる存在を大司祭として輩出し、大聖堂全体と各々の派閥を管理するという形で成り立っている。

ロードの下にはセヴンスと呼ばれる7人の司祭がおり、基本的には方針をロードが決定しセヴンスがそれに則って統治するという仕組みだ。

セヴンスは御三家それぞれから二人指名され、それ以外に公平性を保つために中立派が一人選ばれての7人で構成される。そのため、御三家のどこかが理不尽な命令をしたとき等には中立派のセヴンスが拒否権を以て制することができる程度に中立派の立場は強くあるようにできている。


御三家はそれぞれが独特の色を持ち合わせているが、ずば抜けて目立つのがカスティニオーリ派だ。

カスティニオーリ派にとってはロード・カスティニオーリの決定こそが絶対であり、ロードは派閥内において完全な決定権を持つ。異議を唱えることも、拒否することもあってはならない。それこそ、ロードが死ねと命じれば躊躇なく自害するほどの異常さがある。

ついでに言うならやりたい放題やらかす。あのロードの頭には自重というものがないのだ。

本来ならばとっくに責任追及しているしているのだが、如何せんセヴンスの二人が有能すぎた。ロードがいなくても全く問題なく仕事をこなす上に、一人はロード代行の権限を与えられている。


このような事情が重なり、ロード・カスティニオーリの取り扱いは公に問題行動を起こさない限りは放置が一番安全と解釈されていた。


そんなロードの帰還。

そもそも大聖堂のトップであるロードがふらふらしていることが異常なことなのだが、そこはカスティニオーリはそういうものだと諦めている。

何もないことを祈りたいが、アレが帰ってきて何もやらかさない訳がない。

ロードが揃ったために開かれた議会の中でカスティニオーリ以外のロードとセヴンスが警戒する中、


「ロード・カスティニオーリの名のもと、「大聖堂」として新しき我が国の国王を神の名のもとに祝福することを推薦する。そして我がカスティニオーリ派は国王ルーデルト個人の後見になることにした」


やっぱりやらかした。

ロードとして発言した以上、カスティニオーリ派の決定事項だからたちが悪い。大聖堂が祝福をしなくとも、カスティニオーリ派は関係なく後見となると言っているのだから。後ろに控えているカスティニオーリのセヴンスは、一度顔を見合わせたが一つ頷いて、その後は平然としている。おそらく知らされてはいなかっただろうが、ロードが決めたならそれが総意という在り方ならではの反応だ。


「待て、カスティニオーリ。話が飛びすぎていて訳が分からない、詳細な説明を求める」


そう何とか口に出したのはロード・クローツィアだった。

若干ひきつった顔をしているのは仕方ない。


「単に気に入ったからってだけだな」

「なんでそれで「大聖堂」が後ろ盾になるって話になる!」

「『不死』の件は知っているだろう? あの魔法に関することは大聖堂の管轄でもある。成り立ての国王には重すぎる案件だ。となれば後ろ盾という形をとればこちらも介入しやすいし、わたしの権限もおまけに付ければ他の貴族どもの要らん横やりも入りづらいだと思ったんだよ」


そう言って肩をすくめた。

まったくの考えなしではなく、一応理由はあったらしい。

その返答にロード・クローツィアは顎に手をやり何かを考える素振りを見せた。

だが。


「完全に口実だな」


ここでバッサリと切ったのがロード・ラウレントだった。

元々カスティニオーリ派とラウレント派はそれほど仲が良くない。正確にはトップであるロード二人が馬が合わなく、所々で衝突しているからである。それもあったためか、初めからしかめっ面をしていたのだが、ここで口をはさんだ。

珍しくロード・カスティニオーリがまともに聞こえなくもない理由を説明したのが面白くなかったのもあるだろう。


「あぁ、口実だ。だが悪くはあるまい? お前ら二人が「大聖堂」としての判断を下し、わたしが個人として介入する。はたから見れば我がカスティニオーリ派の「いつもの事」としてお前らの派閥を抑える二重の口実になるのだからな」

「………」


ロード・ラウレントは今にも舌打ちしそうな表情をしているが、沈黙を以て返した。ロード・クローツィアも結論は出たらしい。

ここまで来ればもう何も言うまい。


「なら、最後に。ミュラドーラ、お前の採決を求める」


ロード・カスティニオーリは中立派のセヴンスであるミュラドーラに問いかけた。

答えなんて、わかり切っているにも関わらず。

ちょっとした裏事情でした。

本日も夕方、1話ほど更新予定です!

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