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【連載版】最高の祝福  作者: アウリィ
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6.大聖堂からの祝福とロード・カスティニオーリ

嵐はまだまだ終わらない。

「どうしてこうなった…」

「オーレリア嬢をどうこうできる人間のほうが少ないと思いますよ」

「だからといって「大聖堂」そのものを動かせるとかあり得ないだろう」

「そこはほら、やっぱりオーレリア嬢ですから」


オーレリアなら何でもありで片づけるあたり、ガレスも相当だと思う。

式典用の正装をガレスに着つけてもらいながら、今日という日をもたらしたオーレリアがやらかしたことを考える私は頭痛と戦っていた。


…式典前に頭痛薬飲もう。


祝福されることは本来喜ばしいことのはずだと思うのだが、心労となってしまうのはどうしてか。

正直近いうちに胃薬も必要になるかもしれないと考えている。

今までも色々とやらかしてきた友人は、このペースで通常運転されると何が起こるか判ったものではない。


時間となり私は広間へと案内され、未だ慣れない広間の玉座に腰掛け、気づかれない程度に深呼吸する。

相手は大聖堂のトップのロードだ。仮にも不可侵であった相手であるだけで敵対しているわけではないが、侮られるようなことはあってはならない。


「大聖堂より、ロード・カスティニオーリのご入来です!」


ついに、来た。

大扉が開かれると、3人の人影が見えた。まだ遠くて顔までは視認できないが、中央にいるのがロード・カスティニオーリだろう。怯むなと自分に言い聞かせる。

だが、ゆっくりとこちらへと歩んでくる人物の顔がはっきりと見えた途端、思わず声を上げそうになったのを必死に飲み込んだ。


…オーレリア!?


ちょっと待て。ロードが来た、大聖堂のトップだからそれはわかる。だがなぜオーレリアが大司祭の正装を着ている。悠然とこちらへと歩いてくるオーレリアはどこまでも自信に満ち溢れていた。戸惑いも、敵意も、羨望も、何もかもの視線と空気を受けても堂々としていた。

そしてオーレリアが後ろに従えている男女の司祭二人も、それが当然のような表情だ。


私の前まできて歩みを止めたオーレリアに、女性の司祭が持っていた魔石の付いた豪奢な杖を恭しく渡した。

杖を受け取ったオーレリアは静かに口を開いた。


「大聖堂より、我が国の新たなる時代の王を、その未来を祝福する。我らを守護する神の祝福があらんことを」


その言葉が放たれると同時にオーレリアの持つ杖が光を帯び、杖を掲げれば小さな光の粒が広間に舞い広がった。


―祝福の光―


魔法によって作られた光は、眩しさを感じさせない暖かい光だった。

静まり返っていた広間にいた人々は一瞬の静寂の後、盛大な歓声を上げた。

話でしか聞いたことのない本物の祝福の光を目の当たりにしたのだ。誰もが心浮き立ったことだろう。

私もまたその光に魅入ってしまった。


そこまではよかった。

光が収束すると、オーレリアは私を見て、ニヤリと笑った。


…あ、いやな予感がする。


「そして我、ロード・カスティニオーリの名のもとに、ルーデルト・カイザー・ヴィントリッヒ国王へ、大聖堂が一柱であるカスティニオーリはその後見となることを宣言する」


その言葉を飲み込むのに何秒かかったか。

静まり返った広間は時が止まったかのように感じられた。

誰もが言葉を失った状況を、オーレリアは「どうだ、喜べ」と言わんばかりに満足そうに笑って見せた。


単に大聖堂という組織が後ろ盾になるぶんには、「すごいこと」で済む範囲だった。前代未聞には違いないが。

そこに追い打ちをかけて「ロード・カスティニオーリ」がその名のもとに派閥ごと私の後見となるということは、大聖堂が認めないような案件でもカスティニオーリ派が私のやること全てに味方をし責任を持つという、職権乱用ともいえる宣言なのだ。


あっけにとられ、完全なる沈黙の空間と化した中、オーレリアはクルリと身を翻し持っていた杖を連れ立っていた司祭に渡すとそのままあっさりと、空気を読まずに去っていった。


…この状況放置して帰らないでください!!


その言葉は、口をパクパクさせるだけで声に出なかった。そして薬を飲んで抑えていた頭痛が悪化した。

誰かオーレリアを引き留めてくれと心底思ったが、状況整理で誰もが手一杯だ。

「祝福」と称した衝撃で頭痛を私に与えた我が友人は、どこまでも我が道をゆくようだった。

おめでとう、祝われたよルーデルト!

頭痛薬は早急にガレスが用意してくれるでしょう。

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