5.大聖堂から降ってきた災害的事象
もはや何もいうまいというやつです
オーレリアが執務室に襲来した日から数日。
今のところは何も起きていない。今のところは。
「祝福」をしてやるといったオーレリアからの連絡は一切なく、ようやく宰相などと今後の具体的な公務の割振りや、最大の問題である「不死」の魔法の解析の準備が出来つつあり、順調な日々の始まりに思えた。
だが、例のごとく例によって、これは嵐の前の静けさであった。
いっそ台風が来て、今は台風の目が来ていて暴風雨が静まっていただけの段階とでもいうべきか。目が過ぎ去れば再び暴風雨なのは承知の通り。
それからさらに数日後、「大聖堂」が、新しき国王を「祝福」するという爆弾が放り込まれた。
それを伝達しにきた大聖堂の使者の哀愁漂う表情は忘れられない。
元々大聖堂は国から独立した機関であり、王族と大聖堂はお互いの領分に干渉し合わないという暗黙の了解があった。
にも関わらず、だ。
これは「大聖堂」という組織が国王である私の後ろ盾になることを意味している。前代未聞の事態に、私を含めた王族と上位貴族は書類仕事・公務云々どころではない、てんやわんやの大騒ぎになった。
もしかしなくとも元凶は十中八九オーレリアだろう。
…言ったけど! 盛大に祝ってくれとは言いましたけれども!!
その時の私の心中を察することができるものはいるまい。あの時のオーレリアとのやり取りを知る者はおらず、あくまで友人として祝ってほしいと言ったつもりだったのが、とんでもない大規模なものになって返ってきた。
オーレリアがどのような地位にあるかは知らないが、「大聖堂」という組織そのものを動かしたのだ。彼女の性格からして、どれだけ上層部を脅かしてきたかは計り知れないものがある。
ちょっとオーレリアの取り扱い方法を間違ったかもしれないと、さすがに後悔した。ちょっとだけ。
とはいえ、これは戴冠式以上に盛大に執り行わなければならないのは決定事項。
指定された日時までにやることは山のようにある。
「大聖堂」が動くということは、祝福を授けに来るのは最高位である大司祭、即ち御三家のロードのうちの誰かであろう。絶対に手は抜けないし、時間もあまりない。
貴重な時間を無駄にしないためにも早急に段取りを決めなければならない。
国王としてのあの正装をまたしなければならないと思うと憂鬱ではあるが、こればかりはオーレリアの行動力を甘く見すぎていたいた私の失態だ。乗り切らなければならない。
とりあえず、すべてが終わったらオーレリアを問い詰めよう。
私は心に強く誓った。
今日は夕方もう1話上げる予定です!