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【連載版】最高の祝福  作者: アウリィ
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4.回想:自由すぎる友人との出会い

ようやく出てきたオーレリアの話です!

「似合ってねぇな」


戴冠式の数日後、久方ぶりに会った、もとい前触れもなく突如として押しかけてきた友人は、開口一番私にそう言い放った。

国王という身分を鑑みない我が友、オーレリアはかなり奇特な人間に分類されるのではないかと兼ねがね思っている。


オーレリアは自由の塊だ。とにかく、やりたいことをやりたいようにやる。その割に彼女の自由すぎる行動を咎める人間を見たことはほとんどない。


否、口の悪さは咎められているのを見たことがあるが、大概スルーされるか逆に言い負かされている。


そもそも、私がオーレリアと知り合うきっかけとなったのは、数年前にあった大規模な魔物討伐の叙勲祝賀会であった。

彼女は主賓の一人として招かれていており、私は成人した王族として来賓をもてなす立場にあった。とはいえ、あまり華やかな場所は得意ではない私は必要な会話以外ほとんど壁の花と化していた。

果実酒のグラスを揺らしてぼんやりとしていた私の前に、ふいに人影が見えた。視線をグラスから移せば、自分より頭一つ分背の低い女性が立っていた。

長い黒髪をポニーテールで簡素にまとめた、大聖堂所属の証である法衣を纏った仏頂面をした女性。

記憶から名前を探り当てて用件を伺おうとしたとき、彼女が先に口を開いた。


「なぁ、もう帰っていいか?」


…いや、帰っちゃダメでしょう主賓。


口に出さなかっただけ私は偉いと思う。顔には出ていたかもしれないが。それにしても乱暴な物言いだ。

何か不手際でもあったのだろうかと聞こうとしたら、やはり先に相手が話しかけてきた。


「お前、こういう場所苦手だろ。なら時間つぶしにわたしに付き合え。こっちも好きじゃないんだ」

「…ご所望とあらば」

「決まりだな。わたしの名はオーレリアだ。見ての通り大聖堂の聖職者」


簡素な自己紹介をした彼女は目線でお前も名乗れと訴えてきた。私が王族だと分かったら態度が変わるだろうか。


「ルーデルト・ヴィントリッヒと申します、オーレリア様」

「やっぱ王族か。あぁ、「様」とかつけるな。呼び捨てでかまわんよ」

「いえ、そのようなことは…」

「わたしがいいと言っている。こっちも呼び捨てにするから気にすんな」

「はあ…。ではオーレリア嬢と」

「呼び捨てろ」


完全命令形、決定事項らしい。王族だと名乗っても彼女の口調は変わらない。それどころかますます機嫌が悪くなっていっているのが嫌でも分かった。

恐らく敬意を払う気はないし、こちらも払わなくていいということだろう。

一瞬王族に対する不敬罪という言葉が頭をよぎったが、たぶん彼女には通じない。


結局そのまま彼女―オーレリアは文字通り好き放題しゃべった。

今回の魔物討伐で前線で戦ったこと、討伐した魔物の種類、支援物資への不満やら食事の感想まで。


途中でふと疑問に思い「衛生兵としてではないのか」と聞いてみた。

前線に駆り出される聖職者は回復魔法のエキスパートが多い。だがオーレリアは直接、メイスと呼ばれる鈍器で殴り倒したという話をするからだ。

回答として、


「回復魔法は管轄外」


と、しれっと言い放った。それでいいのか聖職者。


そうしてひたすら話を聞くことと相打ちを打つことに徹していた私に、オーレリアは初めて笑って見せた。


「お前、聞き上手だな」

「そうでしょうか?」

「無自覚か? そんなに目を輝かせてわたしの話を聞き入ってる奴は珍しいぞ」

「確かに、私にはとても新鮮な内容だったのですが」


幼い頃からガレスに話をしてもらうのが当たり前で楽しかったためか、私は知らないことを聞くのは好きだという自覚はある。だが、そこまで楽しそうに聞いてるように見えていたとは。

首をかしげる私に、オーレリアは上機嫌に言った。


「気に入った。近いうちにまた会うだろうさ。じゃあな、ルーデルト」


そう言ってオーレリアはひらひらと手を振って会場から出て行った。

気が付けば、祝賀会は終わっていたのだ。

時間が経つのがこんなにも早いと感じたのは初めてだった。


…近いうちにまた、か。


また会うのが当たり前のように言った彼女の言葉は、不思議と必ずそうなるだろうと思わせるものがあった。

これがオーレリアとの付き合いの始まりだった。

この人自由すぎて筆者が対処できない時があるんですよね…

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