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【連載版】最高の祝福  作者: アウリィ
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3.王家の魔法と形だけの戴冠式

相変わらず真面目過ぎる主人公です

意味のない戴冠式を目前に、母上からも衣装に着られているを連呼された私は、はたから見れば死んだ魚のような目をしているだろう。


我が国の戴冠式は、前国王が取り仕切るのが習わしだ。

聖職者によって行う慣習がある国もあるが、この国の聖職者を繰り出す大聖堂という組織と王族は基本的にお互い干渉することはほとんどない。あるとすれば、国王の婚姻の時くらいであろう。

そして、本来ならば次期国王の戴冠まで国王は死ぬことはない。


王族の持つ呪いともいえる魔法の力によって。


この世界には魔法と呼ばれる力が存在する。それ自体は貴族平民誰もが持っている。ただし、使いこなせるかは生まれ持った魔力量に大きく左右される。貴族であれば水を生み出したり炎を出したりとその辺りの魔力量はあって当然、平民はそれだけのことが出来る魔力量がほとんどない。完全に先天的なものであるとされている。故に、貴族は平民より優位な立場にあり、王族は更に上の立場に立てる魔力量を持っているため、最上位の存在なのだ。


そしてそれ故の弊害が「国王」にのみ引き継がれる呪いのような魔法、「不死」である。


不老ではない。怪我もすれば病気にもなる。だが、死ねない。どれだけ苦しくても、痛くとも、切り裂かれて腕や足を失うようなことがあったとしても、死ぬことだけはではない地獄を見る。


それゆえに歴代の国王は選択を迫られてきた。

次代を早く育てて解放されるか、自分の治世を限界まで続けるか。


だがその土台がひっくり返った。

次代を決める前に、父上が死んだ。本来ならありえないことだ。

「不死」の魔法を解除する方法は一つしか無いはずだから。


そのこともあり、王族と上位貴族は焦ったのだ。新たな国王を選定し、即位させる。この魔法は王族、にしか適応されないからだ。そして王族の中から選ばれた私には父上が死んだ原因を解き明かすと共に「不死」の魔法を取り戻す義務がある。


正直王になどなりたくなかった。別に「不死」の継承がないことが恐ろしいわけではない。

答えは単純。


…政治とか面倒くさい。


この一言に尽きる。

ただ、本気で嫌ならば正妃の王子たちのように臣下に下るという選択肢を選べばよかった。

だけれども、もし、私以外の者が国王になってそれに従えるか。最終選抜で残った他の6人の王子たちは、私が言うのもアレだがあのクセの強い異母兄弟では原因究明以前に国が傾きそうだと心底思ってしまった。だからこそ、『王族としての資質を知りたい』という課題に手を抜けなかったのかもしれない。もしかしたら、だが。


結果、今に至る。

ここまで来れば後悔も後腐れもない。


父上―前国王が居ない戴冠式には、王族とそれに連なる者、国王代理として父上の兄にあたる公爵によってあっさりと終わってしまった。

本来ならあるべき「不死」の継承がないゆえに、どこまでも簡素なものだった。

これでいいのかと思ってしまうほどに形式上の義務的なやり取り。祝辞ですら完全に定型文。


新たな時代の国王として、正式に認められるはずの戴冠式がただただ虚しい。

だが、後戻りなどできないし、できたとしてもするきもない。


私は、ルーデルト・カイザー・ヴィントリッヒ。

国王の証であるカイザーを継いだその名に於いて、この国の王となったのだから。

次回の更新で、ようやく口の悪い友人が登場します!

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