閑話:帰ってきたロードたち
「なんでお前ら二人して黙ってろなんて念を押してくるんだ、ラウレント、クローツィア」
「しなければ貴様はペラペラと喋りかねんだろうが」
「カスティニオーリが内容を話すということが問題なんだよ。今まで何も興味持たなかったくせにあの国王には何であそこまで甘いんだよ」
言わずもがな、順にカスティニオーリ、ラウレント、クローツィアである。
この場にセヴンスはいない。ロードだけで話をしたいということを、その名に於いて命じればセヴンスに拒否権はない。
大聖堂から帰ってきてロードだけの場になった途端、カスティニオーリは二人にそれはもう愚痴った。
ルーデルトとの話し合いの場でラウレントとクローツィアが彼女を見たのは、黙っていろという牽制だったのだから。
カスティニオーリとしては無視してもなんら問題はないが、自分が原因でルーデルトの不興を買うのは避けたいから大人しくしていただけで。
こういうところがあるあたり、やはりカスティニオーリはルーデルトに相当甘い。自覚はあるが、こればかりは当人にもどうしようもないのだ。
彼女という存在はそういう風に在るのだから。
「で、何を国王に渡したんだ」
「内緒」
「何? 貴様、今度は何をやらかした」
「今回やらかした奴に言う必要ねぇな。大体ラウレント、お前何しにルーデルトに会いに行ったんだ」
「貴様ら二人の話だけでは信用ならんから私自ら見定めに行ったまでよ。御方の『祝福』が失われたなんぞ前代未聞にもほどがある。それに一応は同意したが、本当に大聖堂が後ろ盾となるに相応しいか、カスティニオーリの判断だけでは今一つ信用しきれなかったからな」
「…そんなにわたしが信用ならないなら先に会いに行っておけ。順序がめちゃくちゃだろうが」
「後ろ盾になったという立場がなければ行けないだろうが」
「お前本当に面倒くさいな」
「貴様が好き勝手しすぎなだけだ」
ルーデルトに何かを渡したことの回答を聞きそびれた上にラウレントと言い合いになってしまっている二人をクローツィアはいつもの事として聞き流していた。
この場においては止める義理はない。
それよりも重要な事を考えていた。
前国王が女神に会っていたということ。
女神の力が不安定になっていること。
そして何より「オーレリア」が現国王に応えているということ。
実情として、最後が一番気がかりなのだ。
大聖堂で一番女神との繋がりがあるのは、事実上カスティニオーリに他ならないのだ。大聖堂という組織ができた最初の頃からそれは変わらない。むしろここはカスティニオーリを留めておくために創られたような場所なのだから。
ラウレントも気が付いていると思うが、最近のカスティニオーリはおかしい。
女神の影響を受けているのか、はたまた逆なのか。カスティニオーリが一人の人間に執着するような行動をとることが今までなかっただけに、対応に苦慮している部分はある。
その気になれば大聖堂そのものすら動かせる。それだけ特別な存在なのに、当人は知ったことではないと好き勝手やってきた。ずっと昔から。
決して驕っているわけではない。彼女は自由であるがゆえにカスティニオーリのロードとしての座に縛り付けられる形でここにいるのだ。
その為に、御三家という椅子すら用意して。
それだけに、カスティニオーリに弊害が起きていないか注意しておかなければならない。
大聖堂が最重要事項としているのは国ではなく女神の存在そのもの。
いつかあの国王には話す日が来るかもしれないとクローツィアは思った。
大聖堂が絶対の機密としているあの事について。




