19.悪い予感は当たるものと知るルーデルト
お茶会から数日後、メリアーノから簡素ではあるが謝罪の手紙が届いた。
あの後母上とどのような会話を交わしたかはわからないが、お茶会の醜聞は広まることなく終わったので、上手いこと丸く収まったのではないかと思われる。
普段のんびりとしている母上の、一人の妃として立ち振る舞う意外な一面を見ることとなったので、少々困惑しているが。
何にせよ、今後メリアーノが何かしてくることはないと思われるのでホッとした。
…当人が思っているより影響力があったからな。
この先メリアーノが協力的になってくれれば、明らかに仕事は早くなる。なんだかんだでメリアーノはこれまでの実績から高く評価されている。私とは完全に敵対していた訳ではないが、よく思われてなかったために彼女を押すものたちからの協力を得るのは困難であったのだ。
また一つ、問題が片付いた。
だがこれで油断してはいけない。
一難去った後には大抵もう一難やってくるということを最近身を以て知っているのだから。
予測を立てるとすれば、大聖堂の関係者で唯一会ったことのない御三家最後の一人、ロード・ラウレントが来る可能性だ。
以前ロード・クローツィアはカスティニオーリとラウレントは仲が悪いと言っていた。そうなれば、ロードであるオーレリアと友人としての私は格好の餌食になりかねない。
何とか情報を集めたいところだが、相手は大聖堂の、しかもロードだ。そうそう手に入るものではない。
オーレリアに聞くという選択肢もあるが、先日のやり取りを見る限り当分は仕事の缶詰めと化していることが容易に想像できるため無理であろう。というか私を理由に仕事を放り出したらセヴンスに申し訳ない。
そんなことを考えていたら、部屋の外が急に騒がしくなりだした。
何事かと思っていると、執務室への通路を警備をしている兵が飛び込んできた。
「申し訳ありません、陛下。その、大聖堂のロードを名乗る者が突然押しかけてきて、陛下に会わせろと…」
「本当に大聖堂の者なのか」
「乗ってきた馬車の紋章は間違いなく大聖堂のものだったとの報告です。一応確認が取れるまで客間へ案内して待たせております」
「人数は」
「三人です。一人は先日いらっしゃったロード・クローツィアと同じ法衣で、残りの二人もまた、セヴンスの法衣を着用されてました」
いかがいたしましょう、と弱り切った顔をした兵に思わず同情した。
前触れもなく来るのはオーレリアくらいだと思っていたが、そうでもないらしい。
噂をすればなんとやら。これで本当にロード・ラウレントであれば無下にはできない。
しかしながら向こうがこちらに対して無礼を働いていることに変わりはない。ならば直接会って苦言を呈するほかないだろう。
「構わない。こちらに通してくれ」
「よろしいのですか」
「会えば分かることだ。何かあれば声をかけるから扉の前で待機していてほしい」
「かしこまりました」
…まさか本当に来るとは。
物事の展開の速さに若干頭が追い付いていないが、来てしまったものにはどうしようもない。
こちらもそれなりの対応をするだけだ。
そうして通されたのは、先頭にロードの法衣を着た初老の男性と、その後ろに彼よりは若干若く見える男女。どちらもセヴンスだろう。
「たとえ大聖堂のロードであったとしても、前触れくらいは出していただきたい。こちらも暇ではないのですよ」
口頭に苦情を入れたが、ビクリと反応したのはセヴンスだけで、聞いているのかいないのか私を上から下まで見ていた目の前の男性は私を鼻で笑った。




