18.届かなかった嘆きと受け止めたヒト
「どうして! あの方とわたくしの子どもたちは優秀だったのに、あの子たちは拒んだ! 選ばれなかった! 相応しかったはずなのに!」
どうしてと繰り返し涙するメリアーノには、今は何を言っても届かないだろう。
…まさかここまで追い詰められていようとは思わなかったな。
いくら国王が指名制とはいえ、正妃の立場というものが彼女を追い詰めていた。
私から見ても兄上たちは確かに優秀といえる。王太子に指名されていてもおかしくない程に。
だが、兄上たちは自ら身を引いた。自分たちでは国を導くことができないと。
そのことが正妃メリアーノという存在をさらに追い打ちをかける形で締め上げてしまった。
お茶会の出席者が私と母上だけとはいえ、侍女の目がある。この事は周囲にも広がってしまうだろう。
それすらも気づけない程にメリアーノは限界だったのだ。
もうどうしようもないと、そう思っていたのに。
「メリアーノ様、そんな風に泣いていたら王族失格ですよ。昔、わたしにそうおっしゃってくれたのはメリアーノ様ではありませんか」
母上が立ち上がり、そっとメリアーノを抱きしめた。
あまりに急な抱擁にメリアーノは虚を突かれたようだ。
「ごめんなさい、メリアーノ様。本当ならもっと早く気が付くべきだったのに、こんなにやせ細ってしまうほど追い詰められていたことに」
「アリス…」
「メリアーノ様が陛下を誰よりもお慕いしていたことは、みんな知っていましたよ。だからこそ、陛下の心の安寧のために側妃を迎えることを認めてくださったのでしょう。国母として、みんなの手本としてあり続けていてくださった。メリアーノ様の王子がとても優秀でいらしたことも、みな分かっております。誰にも否定させません。正妃としてあらゆる事に立ち向かっておられたメリアーノ様がわたしは大好きですよ」
普段の抜けたような雰囲気はどこへやら、母上はそうするのが当たり前のようにメリアーノに語り続けた。
そして、母上の言葉はメリアーノに届いたのだろう。
罵詈雑言を吐くことなく、母上に抱きしめられたままメリアーノは静かに涙をながしていたのだから。
「ルーデルト、ここから先はわたし達の問題よ。大丈夫だからあなたは下がりなさい」
本当に母上であろうかと思うほど力のある言葉を私に向けた。「後は任せなさい」と言われているのだ。
私は一礼して、その場を辞した。
これまで母上とメリアーノがどの様な関係であったかは知らないが、きっと大丈夫だろうと自然と思えた。




