17.メリアーノのお茶会
堪能してくれと言われても。
侍女によって注がれる紅茶を見て、これは飲んでも大丈夫だとは思えなかった。
何せ紅茶と称したそれは、灰色をしていた。
「あらまぁ、変わった色ですねぇ」
「隣国から特別に取り寄せたものでしてよ、さあ飲んでみて」
相も変わらずの母上の言葉にメリアーノの目は少々ギラギラしすぎではないだろうか。明らかにさっさと飲めと訴えている。
飲んだらどうなるかなんて考えたくもない。
分からないように一服盛るのが普通だと思うのだが、ここまで分かりやすく仕込んでくるとはどれだけ追い詰められているのか。軽食は普通のものが置いてあるように見えるが、こちらもやはり何か盛ってあるだろう。
…準備をしておいて本当に良かった。
そんなことを考えているうちに、母上は紅茶と称する何かを口にした。
その光景にメリアーノは嗤ったが、それは母上もある意味同じこと。
「不思議な味がしますねぇ。初めて飲む味ですよ」
「そ、そう。お気に召さなかったかしら」
何の不調も訴えない母上の言葉に、メリアーノは初めて狼狽した。
そう、メリアーノは知らない。母上が使える魔法について。
普通の貴族が使えるような炎を出すような攻撃的な魔法が使えないのは周知の事実。だが、母上の魔法はこういう場において真価を発揮する。
毒に限らず、有害なものを無力化する魔法。
それこそが母上が唯一使える魔法だった。だからこそ側妃として迎えられたときも、何を盛られても平気でいられたのだ。
あの後宮と呼ばれる中で伊達にまともに生き残っているだけのことはあるのだ。
困惑するメリアーノをよそ目にニコニコと軽食にも手を出し始める母上を見て、メリアーノのほうがどんどん顔色が悪くなっていっている。
ここまできて確信した。
殺す気はないのだと。
単純に体調不良でも起こさせて失態を晒させたいだけだったのだろう。
ならばこちらも準備しておいたもので事足りる。
「では、私も頂きますね、メリアーノ様」
そういって私もティーカップに口を付けた。
本来一口ずつ飲むところを一気に飲み干して見せる。
その光景に、メリアーノは釘付けとなっていた。
固まっているメリアーノ見て、「どうしましたか」と首をかしげて見せる。
「のどが渇いていたので思わず飲み切ってしまいました。お代わりを頂いても?」
私の言葉に、ようやくメリアーノは言葉を発した。
「…何なのよ。何なのよ、あなたたち! 分かっていてやっているのでしょう!?」
「何がでしょうか?」
「まだわたしを馬鹿にする気? どこまでも能天気だったあなたなんかの子が、わたしの子どもたちを差し置いて国王になったからって偉くなったつもりなのかしら!」
立ち上がった反動でガタンと椅子が倒れたが、メリアーノは全く気にしないどころか、激昂しだした。
母上を見て、私を指さし、怒鳴り声をあげた。
そして、涙を流した。




