16.不穏な招待状と憂鬱なルーデルト
招待状の送り主を見て頭痛が再発してしまったのは当然だろう。
不意にもたらされたお茶会への誘い。それも亡き父上の正妃メリアーノからだからだ。
嫌味恨み積り積もってそうなお茶会の誘いなど、どうして行きたいと思おうか。むしろ行ったら逝っちゃうんじゃないかとすら思う。
メリアーノが側妃たちをよく思っていないのは周知の事実だ。
そんなメリアーノが側妃の子である私が王位に就いた事を面白く思っていないのは重々承知のことではあるが、ついに直接何か仕出かしてこようとしてくるとは。
私が例外的だったとはいえ、そもそもこの国の王は指名制なので、正妃側妃に関わらずだからそこまで憎まれるとはたまったものではない。
文句なら自身の子どもである兄上達に言ってほしい。あの二人は自ら辞退していたのだから。
お茶会の日時は1週間後。返事に悩むが、出なければそれはそれで何かしらあるだろう。
となれば、選択肢は一つのみ。
準備に向けて、私はベルを鳴らしガレスを呼んだ。
少し忙しくなりそうだ。
そして迎えた1週間後。
メリアーノが準備したお茶会の席は温室の一角だった。
色とりどりの花を咲かせるこの時期は、まさにふさわしい場所なのだろう。
なのだけれども、明らかに何かされると分かっていると、なかなかどうして不穏な場所のように感じてしまう。
指定された場所に赴けば、二人分の人影が見えた。
一人は当然メリアーノだった。もう一人は。
「あら、ルーちゃん」
「その呼び方やめていただけませんか、母上」
私だけだと思っていたら、まさか母上まで呼ばれていたとは。
我が母、アリスはいつも通りのほほんとしているが、なぜこの空気でもそれが保てるのか。
母のマイペースさはメリアーノの殺気立っている様子にも全く動じてない。
私としては今すぐこの場を辞したい気分だが、席についてもいないのに流石に帰られない。
「ルーデルト、いえ陛下と呼ぶべきかしら? どうぞお座りなって」
殺気立ってはいるが、表面上は取り繕っているメリアーノに勧められるがまま、席に着いた。
「二人とも来てくれて嬉しいわ。さあ、用意していたとっておきのお茶を堪能して頂戴」
そうして笑顔のメリアーノの言葉で、お茶会は始まった。




