1.国王不在のヴィントリッヒ王国
国の成り立ち説明なので、ちと堅めの表現です
国王の崩御、それは余りにも唐突に訪れた。
ヴィントリッヒ王国はそれなりの領土を持つ内陸部に位置するそれなりに豊かな国である。
農産業もさることながら、鉱山や広大な湖を複数所持し、緩やかに発展を続けてきた。
その発展に尽力してきた国王が、急死した。
原因は未だ判っていないが、原因究明の余裕はなかった。
突如として国王が不在となると、後継となる次代の国王を選定しなければならない。しかしそれがすぐにはできない国であったのだ。
ヴィントリッヒ王国の国王は代々指名制である。ゆくゆくは国王となる王族を王太子に指名して経験を積ませて、緩やかに国王という立場を継承させていくという歴史があった。
故に、正妃の子であろうが側妃の子であろうが関係なく、また生まれた順すら問わず、有能とされる者を指名してきた。
ところが、亡き国王は次代を指名することなくこの世を去ってしまった。
当然のことながら、王族と上位貴族は混乱に陥った。
王太子を指名していなかったことも大きな要因ではあるが、もう一つ問題だったのが、王子王女の数の多さであった。
国王には正妃のほかに側妃が居た。それ自体は他の国から見ても普通の事であるが、如何せん側妃の数が歴代の国王を鑑みても余りにも多かったのだ。
その数は17妃。そしてその全員が子を成している。既に成人となる16歳を超えている者もいれば、まだ生まれて間もない幼子もいる。
その為、一時的に宰相と国王の側近であった者たちで国の運営を凌いでいる状況であるが、長く続かせる訳にもいかず、早急な次代の国王選定を行わなければならなくなったのである。
ここで真っ先に我が子をと推したのは正妃メリアーノであった。正妃には2人の王子を産んでおり、そのどちらも成人済みである。しかしながら、2人の王子は「自分たちでは国を導くことはできない」と以前から公言しており、臣下に下る気満々でいたことで正妃がどうこう言おうときれいさっぱり無視していたため、あっさりと選定から外された。
そうなると次は側妃の子の中からということになる。
国王という椅子にとりあえず座らせなければならないとなると、未成年は論外。ついでに公務・政務の経験のないものも論外。
ここまできて、ようやく7人まで絞り込めた。
この際傀儡王でもと言い出す貴族もいたが、そうは問屋が卸さない。
何だかんだでこの国の王は「優秀」でなければならないのだ。他国に引けを取らない指導者としての実績を持つ国王を輩出してきた歴史を軽んじるわけにはいかないと、特に上位貴族の老人たちは安易に決めることを許さなかった。
上層部は下手な選び方はできないと、仕方なしにと言わんばかりに1人ずつ評価を慎重に下し、国の指導者足りえる者をと悩みに悩んだ。
そうして選ばれたのが公務では一応が付くが外交経験もあり、執務もある程度こなせると判断された9番目の側妃の王子、ルーデルトであったのだ。
次回は主人公視点に戻ります!