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【連載版】最高の祝福  作者: アウリィ
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15.帰りたくない友人と容赦しない部下

「それで、何時までいるつもりですか」

「当分は帰りたくない。泊めろ」

「無理です。子どもじゃないんですから駄々こねないでください」


この応酬を暫く繰り返しているうちに、どんどん日は傾いていく。


コンコン、と扉を叩く音を聞いて埒が明かないこの戦いに終止符が打たれた。


「失礼致します、ルーデルト様。こちらにロー…、いえオーレリア嬢がいらっしゃると伺いまして」


入室してきたガレスはオーレリアをロードと呼ぼうとしたらしいが、すぐさま言い直した。

見ればオーレリアが今にも射殺さんと言わんばかりの目つきをしていた。


…なんでそんなに嫌なんですか。


あれだけ大々的に式典で顔と素性をさらしておいて、何を今更とも思うがオーレリアは面白くないようだ。


「ガレス、どうしてここにオーレリアが来ていることを知っている?」

「それが…」


何とも言いづらそうに、助けを求めるように扉の方を見た。


「やはりこちらにいらっしゃいましたね、オーレリア」


先ほどの気迫は何処へやら、入ってきた青年を見て、オーレリアは「げっ」と言い何を思ったか私の後ろに逃げ込んだ。

彼には見覚えがある。式典の際にオーレリアが連れ立っていたセヴンスの一人だ。茶色の髪を伸ばして首筋で緩く束ねている青年。

私を見て会釈した彼は、背後にいるオーレリアに笑いかけた。

が、表情としてはにっこり笑っているはずなのに、目が欠片も笑っていない。なんというか、庄がある。


「帰りますよ、オーレリア。自分でしでかしておいて仕事から逃げ出すなんて許すはずがないでしょう」

「…フラウ、何でここにいるってわかったんだよ」

「ここ最近は、ご友人のところにいらっしゃるのがお好きなようでしたので」


とりあえず私を挟んで会話するのやめてほしい。振り返って私を盾にしていた友人を見た。


「オーレリア、迎えが来たのですから大人しく帰ってください。後、仕事なさい」

「お前誰の味方だ」

「仕事をきちんとする方の味方です」


渋るオーレリアをよそに、更なる追加射撃がやってきた。


「オーレリア、観念なさいな」

「なんでセレスティアまで来るんだ…」

「フラウ一人に任せるなんて可哀そうだからに決まっているじゃない。それと、この子を見てまだ帰らないと言うつもりかしら」


セレスティアが自身の背後を示すと、彼女の服をつかんでいる少女がいた。

それも、思いっきり涙目になっている。


「オーレリアのばか!ルーシェにお勉強しなさいっていうのにオーレリアはちゃんとお仕事しないってセレスが言ってた!オーレリアばっかり好きなこといっぱいしててずるい!!ずるいのぉ!!」


ほとんど泣き叫ぶに近い形の少女に、オーレリアは、彼女にしては珍しく気まずい顔をした。恐らくセヴンス相手ならこうはいかないだろう。


「やーい、泣かせたー」

「泣かせましたねぇ」

「お前ら分かっててルルシエラ連れてきたな!?」


完全に棒読みの大人二人にオーレリアは食って掛かるが、それを聞いたルルシエラと呼ばれた少女は今度こそ泣いた。


「うわああああああん!何でオーレリア怒るのぉ、ルーシェ悪くないもん!」


「ばかばかばかぁ」と泣く少女のこれが、トドメとなったらしい。

オーレリアは、文字通りガックリと手と膝を床に付け地に伏し、「…わかった、帰るからルルシエラを宥めてくれ」とかすれる声で言った。本気でこの少女に弱いようだ。


結局、オーレリアは項垂れたままフラウ青年についていく形でトボトボと部屋から出て行った。

ものすごく珍しいものを見てしまった。あのオーレリアがここまで弱い姿を見せるとは。


泣いている少女をあやして、抱きかかえたセレスティアはこちらに向き直り、


「うちのロードが申し訳ありません、陛下。次またやらかしたら遠慮なくわたくしたちにご連絡くださいな」


何やらどす黒いものを抱えてそうな笑顔でそう言って、先に出た二人の後を追っていった。


「…セヴンスのお二人の方が上手でしたね」

「オーレリアにも弱点があったんだな」


静けさを取り戻した自室で、私とガレスはしみじみと呟いた。

泣き落されるオーレリアでした。

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