14.進展と「彼女」とは
今日も18時に1話上げます!
『資格を持つ私が彼女に会わなければならない。これ以上辛い思いをさせないためにも、彼女に会って私が終わらせなければ』
父上の日記の最後にはそう記されていた。
日付は亡くなる数日前。
震える手で書いたのか、筆跡はひどく乱れていた。
自室で日記を読んでいた私はそのページにしおりを挟んで閉じた。
あれから分かったことがいくつかある。
父上は「不死」の魔法があったため重視されていたなかったが、心臓の病を患っていたらしい。医師から鎮痛薬を処方されていたことが報告された。「不死」がなければ、いつ死んでもおかしくないほどに重症だったらしい。
そして兄上からの図書室の件の報告。
あくまで中間報告だとのことであったが、図書室の一角に本が積み上げられていたとのことだ。王族以外が入れないため気づかれなかったようだが恐らく父上だと思われるとのことだ。
内容の種類は大きく三つ。
一つは予想通り「不死」の魔法について。
そしてもう一つはこの国の建国から今に至るまでの歴史についてであった。特に多かったのは、童話も含めた「不死」の魔法を授かったとされる時代の歴史の詳細。
三つ目は、夢について。これに関しては医学書から哲学書まで、眠っている間にみる夢に関することだったそうだ。
父上がなぜこれらの本を読んでいたかは、やはり「不死」にかかわる事柄であるからだろう。気になるのは夢について調べていたことだ。
「不死」と夢の関連性が分からない。これは兄上にも分からなかったとのことで、引き続き調査を続けるとのことであった。
最後に、父上の日記に記されていた「彼女」について。
父上の日記は毎日書かれているものではなく不定期なものであったが、亡くなる直近の内容はひたすらに「彼女」と書かれる人物についてだった。
誰の事を指しているのかわからないが、「会いたい」「会わなければならない」というフレーズが繰り返されていた。
この期に及んで新たな妃を迎えようとしていたわけではないだろう。
だからこそわからない。
日記の指す「彼女」とは誰の事なのか。そして「資格」とは。
以前報告させた行動記録を読んでも、王族以外の女性との接点は特になかった。
…これらがどのように関連するかは分からないが、一歩前進といったところだろうか。
なんだかんだで少し進展があったと思えば幾分気が楽になった。最近は頭痛薬と胃薬を飲む回数が減っているので、ストレスでうっかり逝ってしまうこともないだろうとちょっと思っている。
「ちょっとホッとしたって顔だな」
私以外誰もいないはずの部屋に突如響いた言葉にばっとソファを見ると、足を組んで頬杖をついているオーレリアがいた。
「どこから湧いて出てきましたか」
「窓から?」
「扉から入ってくるという選択肢は」
「めんどい」
この友人には何を言っても無駄だろうということは分かっているが、分かり切っているが立場上言わない訳にもいかない。オーレリアにしてみれば、一々面会依頼を申請してロードという立場で会うのが嫌なのだろう。立場を気にしないという意味合いにおいては、こちらも望ましいとは思う。
遠回しを好まないストレートなタイプなので、こちらも気を使うだけ無駄だし、使う必要もないのでありがたいのだが、前触れもなく「気が付いたらいた」を繰り返すのは何度あっても心臓に悪い。
「せめて入ってきたときに声をかけてください。お久しぶりですね、オーレリア」
「次からは善処する。久しぶりだな、ルーデルト。全然頼ってこないから寂しかったぞ」
「貴女に寂しいという感情があるとは思いもしませんでしたよ」
「人を何だと思ってやがる」
むっすりとした彼女だが、機嫌は悪くないらしい。どちらかというと拗ねているように見える。
もしかしたら寂しいというのも本心なのかもしれない。
自分を頼らないことに拗ねているというのは、オーレリアにはあまり似つかわしくないが。
「クローツィアに会ったんだな」
「誰かから聞いたのですか?」
「セヴンスから。仕事しろってあいつらに部屋に缶詰めにされていた可哀そうなわたしを慰めろ」
「いや、仕事はしないといけないでしょう…」
それで最近来なかったのか、この人。
次回、大聖堂サイドです!