12.大聖堂が祭る神
この国を守護する神。その存在の詳細は大聖堂関係者の中でも上層部にしか知られていない。
だからこそロード・クローツィアは直接対談することを望んだ。
「カスティニオーリがどこまで話したかは知らないが、俺たち大聖堂はこの国に加護を与え守護する女神を祭っている」
「女神、ですか」
「伝承ではそう伝えられているんだ。願いを叶え、祝福を与える女神だと。その最たる『祝福』が歴代の国王が継承している「不死」の魔法だ」
「女神というのは初耳ですが、「不死」の魔法の件はオーレリアから聞いております。魔法が消えるという事は神の加護を失ったに等しいと」
「あいつほとんど全部話してるんじゃないだろうな…?」
半眼になったロードは盛大な溜息をついた。
オーレリアはやはり大聖堂でも中々に手を焼く存在らしい。
「問題なのは、「不死」を受け継いでいるはずの前国王がどうして亡くなってしまったということですよね」
「その通りだ。仮に「不死」の魔法を失ったとなると、最悪の場合は女神そのものが消滅した可能性もある。だがこれは本当に最悪の可能性だ。もし本当に女神が消滅したのであれば、他の弊害が出ているはずなんだが、今はまだそれがない」
「女神が影響をもたらす何かがあるのですね」
「あぁ。申し訳ないがその詳細についてはまだ話せる段階ではない。その時がくれば知らせよう」
この期に及んで隠し事とも思うが、こちらが話せないこともあるように大聖堂も同じことがいえるらしい。
兄上からの連絡は調査が始まったばかりだから今しばらくかかると思われるので、私は父上の手記の続きを読むことや、こうした大聖堂とのやり取りに集中しよう。
それに、王族と上層部の人間にしか知らされていないが、父上の死因についても実はまだ明かされていないのだ。起床を促しに部屋に入った侍従が、眠るように亡くなっている父上を発見したということしかわかっていない。
…なんにせよ、情報がまだ足りなさすぎる。
考え込む私を見て向こうも察してくれたらしい。
「とりあえず、今日はここまでにしよう。そもそも顔合わせのようなつもりで来たからな」
「ご期待に沿えず申し訳ございません」
「それはこちらも言えることだ。気にしないでほしい。進展があれば連絡を入れることになるだろう」
「失礼する」と一言言ってロードは立ち上がり、出口へと向かったが、ふと思い出したかのように私を見た。
「…もしかしたらだが、俺が連絡を入れる前にロード・ラウレントが動くかもしれないが、その時は注意してほしい」
「何か問題があるのですか」
「いや、陛下はカスティニオーリのお気に入りのようだからな…。ラウレントとカスティニオーリは仲が悪いんだよ」
うんざりした顔で言われて、こちらまでうんざりしそうになった。
この場にいなくても話題の尽きないオーレリアは、どこまでも物事をかき乱す天災かもしれない。
18時にもう1話上げます