11.ロード・クローツィアの来訪
王宮図書室の件をイアン兄上たちに任せ、父上の日記に手を付けようとしたとき。
「ルーデルト様…」
「…今度は誰ですか」
「大聖堂からです」
またもや面会依頼が舞い込んできた。
どうしてこう次々と大物がやってくる。
いや、立場上そういうものだというのは理解しているが、こちらの作業が進まない。
…イアン兄上に言われた通り、もう少し仕事を振り分けるか。
受け取った書状を読んで、ついに来たか、という思いになった。
相手は大聖堂の御三家が一つ、クローツィア家からだったからだ。それも、ロード直々に面会したいとのことだった。
日時の指定はこちらが全て決めていいとのことで、随分とこちらに気を使ってくれているようだ。本来ならこれが普通なのかもしれないが。
どこかの友人の影響を受けすぎているかもしれないと我ながら思わなくもなかった。
そうして3日後、こちらが示した時間丁に大聖堂の紋章が入った馬車が王城に来た。
同行人が2人いるとのことだが、別室で待機させてほしいとの依頼もあったため、先に客間に案内してロードだけ私の執務室へ通した。
ロードに同行するということは恐らくはセヴンスなので、そちらは丁重にもてなすよう指示を出しておいた。
部屋へ訪れたロード・クローツィアは男性だった。
目を引く白銀の髪に褐色の瞳。年齢は私と同じくらいだろうか。
「お初にお目にかかる、ルーデルト陛下。俺はレスティオン・ロイマン・クローツィア。ロード・クローツィアと呼ばれているよ」
「わざわざおいでいただき、ありがとうございます。ロード」
「カスティニオーリが迷惑かけているからな。こちらから赴くのが妥当だろう」
思っていたのと違い、ロード・クローツィアは随分と砕けた話し方をするが、どこか穏やかで丁寧だ。
独立組織である大聖堂のトップと私は対等の立場にあると考えれば妥当かもしれない。ちなみにオーレリアは例外扱いでいいだろう。
「うちのセヴンスはそちらが用意してくれた客間で待機させているから、俺たちの話し合いに立会人はいないが、問題ないか?」
「はい、そちらとしても王族以外に聞かれたくない話をするおつもりなのでしょうから、構いません。ただし、内容によっては王族のみに伝える事項があるかもしれません」
「それなら大丈夫だ。セヴンスにも全てを教える気はこちらもないから安心してほしい。では、本題に入ろうか」
ロードは手を組んで改めてこちらを見た。