9.月のない夜道と無関心のオーレリア
ぬるいですが戦闘シーンもとい人が死ぬ描写があるので、苦手な方は飛ばして次話から読んでも大丈夫です。
普段なら転移魔法で大聖堂へ戻るところだが、たまには歩いて帰るのも悪くない。
そう、たまには夜道をゆっくり歩いて、余計な膿をあぶり出すのも悪くない。
王城からの道のりで、どうしてわざわざ歩いて帰る必要があろうか。
馬車も使わずに徒歩。
思惑がないと考える余裕すら今はないのだろう。
ロードが公に姿を見せる機会は滅多にない。あの式典だって、本来ならベールをかぶり顔を隠して行うべきであった。
それにも関わらず顔を晒した。面識のある人間は今やオーレリアをロード・カスティニオーリとして扱うが、実のところ、オーレリアはそれが面白くなかった。彼女が予想していた通り、今までと関係が崩れることがなかったのはルーデルトただ一人だった。
ルーデルトにとってそうである通り、オーレリアにとってもルーデルトは唯一の友人なのだ。
だからこそ、邪魔なものはわざと隙を見せて排除したいと思った。
少なくとも分かりやすいものに関してのみだが。コソコソしている連中は、その時対処すればいい。
「これまた随分と嫌われたものだな」
そういって肩をすくめたオーレリアは立ち止った。
すると物陰から3人の男が出てきてオーレリアを囲んだ。その手には長剣が握られている。
「月夜ばかりと思うなよといったのは誰だったか」
そういって夜空を見上げる緊張感のないその声に男たちから怒気が膨れ上がった。
明らかに自分の命を刈りにきているのに、オーレリアはどこか退屈そうだった。
「どんな手を使ったのか知れないが、大聖堂が王族に介入するなど認められん!」
「あの王に王子の頃から取り入っていたようだが、何が目的だ」
「お前の目的は…っ」
取り囲む男たちの質問に答えることもなく、またわざわざ最後まで聞く気のなかったオーレリアは3人目の男が言葉を言い切る前に動いた。
ほぼ一瞬の出来事。どこからか取り出したロングメイスを片手に自分の左後ろにいた男との距離を詰め、その頭に手を伸ばし鷲掴みにする。そのままオーレリアは力ずくで男のバランスを崩し勢いのままロングメイスで首の骨を叩き折った。
余りにも突然の出来事に動けずにいた残りの二人のうちの一人に絶命した男を放り投げもう一人の男に突っ込むように走り一気に距離を縮めて下から顎に蹴りをいれてのけぞらせ、その勢いに乗せて地面に1回転して着地した直後に、体制を立て直せていない男の顔面にロングメイスを叩き込んだ。
仲間の亡骸を投げつけられた最後の一人は、「え、えっ」と狼狽えていたが、オーレリアは一切の躊躇なく後ろに回りこみ、後頭部をロングメイスで陥没させた。
あっという間にオーレリアの命を狙った男たちは、逆にその命を刈りとられた。
「………」
数秒オーレリアはあたりを軽く見まわし、興味をなくしたように、何事もなかったかのようにその場を立ち去った。
静かになった夜道に男たちの死体が残された。
オーレリアのことが面白くない人は実は結構います(お察し)
次回の閑話をはさんで、物語は次の段階に進みます!