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【連載版】最高の祝福  作者: アウリィ
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8.問い詰めたら隠す気が更々なかった友人

祝福の式典からきっかり1週間後、例のごとく例によってどこからともなくオーレリアは執務室にひょっこり顔を出した。そんな彼女をジト目になって見た私は悪くないはずだ。


「要望通り盛大に祝福してやったのに、なんて顔してやがる」

「限度があります! 聞きたいことは山のようにありますが、そもそも貴女がロードなのは本当なのですか、オーレリア」

「あー、それはマジ」

「…知りませんでしたよ」

「聞かれなかったからな」


これである。普通聞かないだろう、というか聞いたらこの友人は正直に答えていたのだろうか。


「顔に出てるぞ。王様が感情表にだしていいのか」

「この場に他の者がいないから問題ないでしょう。先日の件、説明してもらいますよ」


今日ばかりは逃げられる訳にはいかない。こちとら式典以来散々な目にあったのだ。

おかげですっかり頭痛薬と胃薬のお世話になっている。


「まぁ、さすがに今回ばかりは必要か」


観念したかのようにオーレリアはソファにもたれて腕を組んだ。


「ルーデルトも国王になったから少しは分かるだろうが、偉い立場っていうのは面倒なんだよ。適度に息抜きでもしなければやってられん。大体、ロードなんて滅多なことがないかぎりは大聖堂に缶詰めにされるんだ、性に合わん」

「息抜きという割にはしょっちゅう外出してますよね、貴女。最前線で何週間も魔物の討伐隊に参加するなんて、ロード不在の期間として無茶にもほどがあるでしょうに」

「そこはわたしのセヴンスが有能だからな。てか、少しはわたしの身を案じてくれてもいいんじゃないか?」

「オーレリアが強いのはよく知っているのでそこは不要かと」


私がそういうと、「わかってるじゃないか」とオーレリアは満足げに笑った。

だがこれで誤魔化されてはいけない。話が微妙に逸れている。


「ロードという身分を隠していたのは分かりました。ですが聞きたいことはそこではありません。オーレリア、なぜ大聖堂の祝福に追加して貴女の派閥が私の後見になるという話になったのですか?」

「そこなぁ。言わなきゃダメか?」

「ダメです。心労で私が使い物にならなくなったらどうしてくれます」

「…変な脅し方してくるな」


嫌そうにしながらも、オーレリアから視線を離さなかった私に今度こそ観念したらしい。


「大聖堂としては、国王指名制の中で例外的に選ばれたお前の地盤を盤石にして不安定な治世を安定させる材料にしたいというものだ。表向きはな。だが実際はかなり国王のお前にとってはかなり重い話にになるが、それでも聞くか?」

「当然です」

「なら結構。ルーデルト、お前が引き継がなかった『不死』の魔法の件だ。」

「は…?」

「そもそもあの魔法は大聖堂と関わりのある重大案件なんだよ。大聖堂が祭っている神についてどこまで知っているか?」

「昔話程度には…我が国を守護する神が王族を守ってくれていると」

「その王族を守るというのが『不死』の魔法だ」


待った。ちょっと待った。想定以上にスケールが大きくなった。

『不死』の魔法に関しては王族すら分かっていないことが多い。だがそれを大聖堂が把握しているというのはどういうことだ。

混乱する私を後目にオーレリアは話をつづけた。


「この国の子どもなら一度は聞いたことがあるだろうおとぎ話はな、本物なんだよ。大聖堂が祭る神は国王に『不死』の魔法を与えた。そしてそれは国王に代々継承される。その魔法が消えたということは、神の加護を失ったに等しい。だから本来介入しない大聖堂としてはどうにかしてその原因を突き止めたいというのが大聖堂が後ろ盾になった本当の目的だ」

「つまり、オーレリアが言い出さなくても大聖堂は介入してくる可能性はあったということですか」

「そこは、まあ起爆剤になったのはわたしだな。大聖堂が後ろ盾になるよう推薦したのだから。だが、あいつらとしても都合がよかったんだろうよ」


「他のロード二人で内密に話は進めていたっぽいからなぁ」と、そこまで言ってオーレリアはようやく一息ついた。

私も何となくではあるが状況が見えてきた。『不死』の魔法の消失が神の加護と関わってくるとなると、当然大聖堂にとっても見過ごせないだろう。


「そういう事だ。この先他のロードたちとの関わりもあるだろうが、精々がんばれ」

「事情は大体わかりました。私としても『不死』の件は最優先事項に相当しますから、大聖堂からの助力があるのは助かります」

「…本当に、国王やる覚悟あったんだな。その恰好似合ってないのに」

「まだ言いますか。父上からではないとはいえ、この国の上層部に選ばれた王族としての務めを放棄するきはありません」


向き合っていかなければならない現実から逃げる気はない。

改めて覚悟を決めた私を、オーレリアが懐かしいものを見るような柔らかい表情になっていたことに気付かなかった。

ソファから立ち上がり背伸びをしたオーレリアは窓から見える夕暮れ時の光景を見て言った。


「さて、話すことは話したから、わたしは帰るよ」

「いいえ、最後にもう一つ」

「まだ何かあったか?」


首をかしげるオーレリアは肝心な事を言っていない自覚がなかったようだ。


「なぜ、『ロード・カスティニオーリ』が後見になるという話になったかです」

「あぁそれな。使えるものは何でも使えってことだ。これから先、お前とはまだまだ長い付き合いになるだろうからな、わたしからのエールのようなものだよ。応援してやってるんだから精々頑張れ、我が友よ」

「そういうことなら、遠慮なく頼らせていただきますよ。後悔しないでくださいね、我が友人」


そう言って私たちは笑いあった。友人であるオーレリアが惜しみなく頼っていいと言っているのだ。彼女の言う通り使えるものは何でも、いくらでも。


そうして、オーレリアは「じゃあな」と言って執務室から出て行った。ただし、窓から。

あっさり内情暴露するけど、実は隠し事をしている友人でした。

隠し事については追々でてきます。たぶん、きっと、間違いなく!

そして短編版としての内容はここで終わりです。ここから先は完全未公開となっている話なので、ぜひお付き合いください!

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