4-8話 大鳳の歌姫(3)
【読者さまのコメント】
高松は山田さんとお近づきになるため、さっそく作戦実行!
するとありがたいことに、引っかかってくれた!
けれど彼女のいう兄が少々気掛かり……。
そしていよいよ歌姫との歌対決!
高松は無事、山田さんを軽音楽部に入部させられるのか?!
書記ちゃんの名前は新藤瑠璃さん。
生徒会が出来て、河野が書記として連れてきた子だが、生徒会では俺とは一緒に仕事をするわけでもないので、以前に名前を聞いていたのだろうが、俺は完全に忘れていた。
先日、サッカー部の勝村に今度の練習試合の相手の高校から打診されていた内容を伝えるために彼のいる六組に行った。
その時、偶然入口で会い、勝村に紹介してもらってやっと名前を覚えた次第だ。
生徒会では黙々と作業をしている印象だが、クラスでは活発に色々な子と交流しているそうだ。
交友関係も広ければ、ノッコとの関係もうまく取り持ってくれるだろうと俺は思ったのだ。
◇◇ 一月二十五日 ◇◇
それから二日後、新藤さんは小柄な女子生徒とともに生徒会室にやってきた。
身長は百五十五センチぐらいであろうか、色白で、髪はショートヘアだった。
二人は生徒会室のドアをノックし、中に入ると、
「新藤です。高松君、山田さん呼んできました」
と言ってきた。すると、後ろから付いてきた山田さんは、
「失礼しま~す。山田信子で~す」
と物怖じもせず挨拶し、俺の定席である生徒会室の奥にやってきた。
「あっ、高松です。実は先日、学園祭の合唱のDVDを見ていたら、めちゃくちゃ歌がうまい子がいたんで、この子誰? って話になったら山田さんって聞いたものだから、一度、生で歌を聞けたらなぁと思ったんですよ。そこで手っ取り早く、まだ友達でもない俺が歌声を聞くには、歌での挑戦状出した方が山田さん的にも乗ってくるかなぁと思ったんで、新藤さんに仲介をお願いしたってわけです」
ノッコは首をかしげながらこう言った。
「私がその挑発に乗ってこない可能性については考えなかったの?」
俺は自信有り気に胸を張りながらこう言った。
「歌うのが好きだと聞いていたので、歌での挑戦だったら、絶対乗ってくるって思ったんですよ。まぁ実際、今来てくれてるし!」
「うまくやられたなぁ! まぁ、別に私はいいけど」
ハメられたという嫌な顔ではなく、山田さんは笑顔で言った。
「日時と場所、曲は決まったら連絡するでいいかな? いちよう、山田さんのバックはうちのバンドで、俺のバックは軽音楽部にお願いしようと思っています」
「へえ、うちの高校って軽音楽部あったんだ?」
「最近出来てね、俺が面倒みてるんだ」
「そうなんだ。ちょっと待ってよ…… 高松君のバンドって半プロみたいなところだよね。兄貴に相談しないと…… まぁいいか、内緒にしておけば問題なし! じゃあ、決まったら新藤さん経由でいいので教えてね。じゃあ!」
と言って、山田さんは自分の教室に戻っていった。
「新藤さん、サンキュー!」
と俺がいうと、彼女は少し頷き仕事を始めた。
まぁここまでは上出来である。
気になるのは話の中に出てきた山田さんの『兄貴』の存在だった。
なぜ、半プロと一緒にやるときは兄貴に相談しないといけないんだろうと。
「かずやには生徒会は軽音楽部の状況確認を命じたつもりだったと思っていたんだが、いつから女子生徒を入れることが中心になってきたんだ?」
と夏村さんは疑念の目で俺を見ていた。
「いや、彼女を軽音楽部に入れることは当初は考えてもいなかったんだけど、彼女が軽音楽部に入ったら、たぶん軽音楽部にいい方向に作用すると思ったんだ。そして軽音楽部が変われば、文化部全体に変化が波及すると考えたんだよ」
と俺は回答したが、夏村さんは頭をかしげていた。
「だけど、何でかずやが軽音楽部をバックに歌って、彼女のバックは和也のバンドなんだ?」
「それにも理由はある。結果をご覧じろだよ」
「まぁ、かずやが何も策が無くてこんなこと考えないだろうから、良い結果を期待してる」
「結果をお楽しみに!」
人というものは評価している人から直接言われるより、他人を介して評価を聞く方が、気分が良く感じるものである。
山田さんをこの場にあげるために新藤さんにお願いしたのはその目論見もあった。
彼女は舞台に上がってくれた。
次は俺が動く番だ。
俺は生徒会室を出て、廊下に出て、総合棟と教室等の渡り廊下に降り、電話をかけた。
ここが学校では一番電波状態がいい場所であったからである。
「あっ、達也さんですか? 和也です。お疲れ様です」
勉強仲間の坂本の兄であり、俺のバンド仲間の達也さんに電話した。
同じ浦和のアーチストつながりで何か聞けないかと思ったのだ。
「山田……信子……ノッコ……。あっ! 兄弟で音楽やってるんだけどバンドを転々としているヤツらのことは聞いてる。お兄さん、確か『隆』って言ったかな? 彼もベースやってて、ノッコはキーボードとヴォーカルやっているんだけど、隆がこのバンドだとノッコの声が活きないとか言って、すぐ辞めちゃうという噂を聞いてるよ。それと録音した音源を色々な音楽事務所に送っては自分たちを売り込んでいるって話も聞いたことがある」
「ありがとうございます。どんな兄弟関係なのかはわかったので、次は音楽関係者に当たってみます」
「畑中さんか…… あの人なかなか捕まらないからなぁ…… ライン入れて、地味に待つしかないな」
「そうですね。でも今はこれだけで十分です。また、別件でお願いするかもしれませんが、その時は……」
「わかったよ、お前からの無理強いはいつものことだもんな!」
「すみません……」
音楽関係者と聞いて、俺の頭に浮かぶのは畑中さんだけである。
畑中さんはうちのバンドのPAをしてくれているだけではなく、編曲やアレンジメントを担当している。
また、本業として、アニメ関係の音楽のブロデュースもやっている。
もしかして、山田さんについて知っていことがあればとラインをしてみたが、意外と返信は早かった。
畑中さんが言うには山田さんのボーカルはいいのだが、隆さんのアレンジが下手で兄弟セットでは…… ということで採用は見送られているらしい。
しかし、隆さんは山田さんとセットで売り出したいのだと思った。
このようなことがわかると、生徒会室での山田さんの『兄貴』の意味も掴めてくる。
そして、ありがたいことにラインには、畑中さんの手元に有った二人のプロモーション音源まで添付されていた。
俺はその音源を聞いて、次の作戦を練った。
◇◇ 一月二十六日 ◇◇
俺は、昼休みに六組の教室を訪問した。
そこで、すぐに俺を見つけたのは勝村。
サッカーで養った二人のアイコンタクトはまだ健在である。
俺は、勝村に山田さんの方向を目配せすると、勝村は頷き、山田さんのそばに行き、何かを話した。
すると、彼女は俺を見つけ、手を振りながら立ち上がり、近づいてきた。
「高松くん、決戦の日時と場所、決まった?」
「うん、いちよう軽音楽部のメンバーの練習時間もほしいんで、二週間後の二月十日、土曜日。十三時から秋葉原の『サウンドスタジオノア 秋葉原店』というスタジオを借りたんだけどどうかなぁ? その日、俺のバンドの練習日でその前に対決をやるって感じかな」
「別に空いているからいいけど、なんの曲で勝負するの?」
「こっちで勝手に決めちゃったんだけど、いいかな?」
「別にいいけど、何?」
「Heartの『alone』って曲、どうかな?」
この曲名を言った時、必ず彼女からオーケーを引き出す自信が俺にはあった。
「あれ、女性ヴォーカルの曲だけどいいの?」
「別に俺はいいよ。同じキーで歌えるし」
「オーケー! 私、何か持って行くものある?」
「もし、自分用のマイクあったら、それ使えるから持って来て。その他は特にないよ」
「わかった。じゃあ当日よろしくね!」
「当日、新藤さんには審査委員をお願いしたので、二人で一緒に来ればいいと思うよ、彼女には地図を渡しておくよ」
「了解! じゃあねぇ!」
山田さんは話を終えると自分の元居た場所に戻っていった。
Heartは、アメリカ合衆国出身のロックバンドで、アンとナンシーのウィルソン姉妹率いるユニットとして活動、女性ロック・ミュージシャンを核とした先駆的グループとしても知らており、二〇一三年に『ロックの殿堂』入りしている。
Aloneは、Heartの一九八七年五月に発売したシングル曲で全米第一位を三週連続して獲得している名曲だ。
なぜ、この曲を選んだのか……
理由は後述したい。
山田さんが俺のところから去っていくのを見ながら勝村は俺のところにやってくると、
「今度は山田さんを軽音楽部に入れて何企んでるんだ?」
と笑いながら話しかけてきた。
「今度は夢のある学校生活の構築かな?」
俺はちょっと、はぐらかしながらいうと、勝村は頭を掻きながら、
「結局はお前の想定通りになって、みんなが笑える結果になるんだよな」
と言った。
「だったらいいねとしか言えねぇよ(笑)」
さて、今日から軽音楽部をしごかないとな……
◇◇ 二月十日 ◇◇
その日はバンドの練習日であり、いつもより長めにスタジオの時間をとっておいた。
場所は大き目の『Cst+Subroom』という部屋で、二十四畳分の広さがあるので大人数で入ることができる。
今日は俺のバンドのメンバー、軽音楽部の全員、生徒会のメンバーそして山田さんが集まった。
今日演奏をしない軽音楽部のメンバーも演奏の勉強のためと付いて来たことには感心した。
交通費も結構かかるのにね。
歌での対決の後に俺のバンドの練習を設定したので、俺のバンドのメンバーも快く参加を受諾してくれた。
それと畑中さんから山田さんの歌唱力が結構すごいという話を聞いていたので喜んで乗ってくれた。
最初に、俺が対決方法について説明した。
「今日の対決は、バンドの演奏ではなく、俺と山田さんの歌の評価をお願いしたいと思います。評価は生徒会メンバーと言っても夏村さんは俺を推して、新藤さんは山田さんを推すだろうから、その他の方の投票で決めます。今回のバンドは俺のバックは軽音楽部で、山田さんのバックは俺のバンドとしました。順番は山田さん、俺の順番でいきますがいいですか?」
単純に半プロのバンドの前に演奏となると軽音楽部のメンバーが緊張するだろうと思ったからだ。
しかし、結果的には心配は不要であった。
「いいよ!」
と簡単に答える山田さん。
「じゃあ、最初に山田さんに歌ってもらうんで、メンバー準備お願いします」
と畑中さんの声がモニタースピーカーから聞こえた。
このスタジオにはsubroomでミキシングできるため、畑中さんはそちらで準備をしていた。
まぁここで俺たちのバンドがどういう準備をしているのかを見るのも軽音楽部のメンバーの勉強にもなるだろう。
俺もギターケースからギターを取り出し、チューニングや準備を行った。
ノッコの歌の時には俺もバックバンドのギターとして演奏に入るためである。
軽音楽部の演奏の時は俺はギターを演奏しながらの歌を選んだ。
軽音楽部メンバーのギター担当者では現在の演奏能力では力不足と考えたからである。
「じゃあ、山田さんの歌で始めます」
という畑中さんの声の後、一拍、息を整え、マイクスタンドを掴みながら下を向いていた山田さんは、キーボードのきょんさんにアイコンタクトをし、オーケーを出した。
ゆっくりとしたキーボードの音で曲は始まる。
頭を軽く振りながらリズムを取る山田さん。
そして張りのある、空間に広がっていくような歌声が染みわたっていく。
”I hear the ticking of the clock
I'm lying here the room's pitch dark
I wonder where you are tonight
No answer on the telephone
And the night goes by so very slow
Oh I hope that it won't end though
Alone”
そして芯のあるパンチ力のある歌声に変わり、人の心を打ちのめす。
”Till now I always got by on my own
I never really cared until I met you
And now it chills me to the bone
How do I get you alone
How do I get you alone ”
バックでギターを弾きながらもなんて気持ちのいい声だなあと聞き惚れてしまった。
しかし、声が若干濁っている。
俺は少し眉間に皺を作った。
これは普段歌いこまれていない、磨かれていない名刀のような歌声だと思った。
演奏が終わり、再度頭を下げながら、マイクスタンドから手を放す山田さん。
自然と出席者や観客から拍手が巻き起こる。
じゃあ、次は俺の番だね。
バックバンドを軽音楽部の最初にセッションした山中、大塚、新田先輩に変更した。
俺は、メンバーを集めてこう言った。
「基本、大塚君のテンポに合わせてやりましょう。出だしのスティックのカウントに合わせて山中さんが演奏を始めて、おれはそれに合わせて歌うので」
「オッケー!」
ドラムスのスティックのカウントとともにキーボードの演奏を始め、それに合わせて俺は歌い始めた。
俺の方が山田さんより歌声が前に出る感じがするが、トーンは彼女の方が上だった。
もっと声に磨きがかければ彼女はとんでもないシンガーになるだろうと自分で歌いながら彼女の声を思い出し比較してしまう。
と言いながらも、俺はこの歌での対決に勝つ気はサラサラなかった。
山田さんを引き立て、軽音楽部のメンバーを引き立てるのが真の目的だった。
まぁ、いちようはカッコつくレベルでの戦いに持っていかないと俺の意向がバレてしまう。
と思いながら俺が歌っていたところで、なんと山田さんは立ちあがり、俺の横に立って、俺の声にハモリを入れてきた。
「もう、勝負はいいや! あんたと一緒に歌いたくなった! このメンバーとも一緒に!」
俺は一旦、演奏を止め、最初から行こうとメンバーに指示した。
ノッコがメインを歌い、今度は俺がサブに回った。
Heartも女性二人のツインヴォーカルだ。
俺も頭の中にサブの歌声がどんなもんだったかを思い出し、オッケーを出した。
声質が違う者同士の歌声がこんなにシンクロするのかとびっくりするほどの迫力になった。
彼女の声は先ほどよりも声の響きが良くなっていた。
彼女をもっと磨いてやりたいと俺は思った。
軽音楽部の演奏も歌に引っ張られ上手く聞こえた。
歌い終わったとき、全員から拍手が沸き起こった。
軽音楽部の残りのメンバーからはアンコールの声も聞こえた。
「気持ちいい! ほかにも歌いたい! やっぱ、生バンド最高!」
と彼女は喜んでいた。
「じゃあ、いくつか練習してきた曲で山田さんに歌ってもらおう! それでいい、山田さん?」
「いいよ! 何でもどうぞ!」
と同時に軽音楽部とノッコの共演が始まる。
ノッコの声は軽音楽部のメンバーの下手な部分を覆い隠すようなそんなやさしさがあった。
そしてとても心地よい一つにまとまった『音楽』に変わっていった。
そんな奇跡の空間と化したスタジオにドタドタと見知らぬ男性が乱入してきた。
男はスタジオに入ると大声を上げこう言った。
「おい! うちのノッコを許可なく歌わせたのは誰だ! うちの商品を勝手につかうんじゃねぇ!」
演奏が止まり、ノッコは、
「兄さん……」
と言い、息を飲み、黙った。
また、周りで一緒に騒いでいた軽音楽部のメンバーも黙った。
「おい、うちの商品を傷つけたらどうなるかわかってるのか?」
と隆は周りを見回し威嚇した。
するとすくっと立ち上がり鋭い眼光で隆をにらむ人がいた。
「お前が人を商品化できる立場か? お前、何様だ!」
と夏村さんは隆に声をかけた。
「あ~? お前、誰だ」
「俺か? ここにいるバンドの熱狂的なファンだ。 そして今日から山田さんの歌声のファンにもなったものだ。山田さんが通う高校の生徒会実行委員長 夏村沙羅という」
「なんで生徒会のやつがこんなところにいるんだ!」
「今日、妹さんと俺の応援しているバンドのヴォーカルが歌で対決することになったんで審査員をやってくれって言われたので来た」
「お前なんかに評価なんかできるのか?」
「できる!」
「なに!」
「良い声は人を感動させることができる。それはどんな人にでも響くものだ。率直に言おう。妹さんの声は良い。だけど、声を使っていないのか、声にベールが掛かっている。それがどうだ。軽音楽部のメンバーと歌っているうちに声の響きが変わって来た。なぜかわかるか?!」
「……」
「お前がいう『商品』の本当の価値を高めるために、その『商品』を磨くことを疎かにしたからだ。君は彼女の『商品』である声を磨くことをしてきたのか?」
「……」
夏村さんの説明に声がでなくなった隆。
そこにサブルームから出てきた畑中さんを見た時、隆は、
「畑中さん、ここで何をしてらっしゃるんですか?」
「今日はうちのメンバーの練習日だったので参加していたんだが、俺が君に言いたかったことは全て夏村さんが言ってしまったよ。その通りなんだ。君が信子さんの輝きを失わせてしまっているんだ。君が信子さんを売り込むには自分がもっと技術をつけた上で、信子さんも輝かせなくてはいけない。こんな創立何か月の軽音楽部のメンバーでさえ、信子さんを輝かせることができたのなぜだと思う。音楽への愛情だよ。彼らは三度の飯より音楽が好きだ。上手になれるように何度も何度も練習してきた。今日の彼らの演奏は立派だったよ。だから、信子さんも進んで一緒に歌いたいとおもったんじゃないか? どうだ、隆君。もっと信子さんを自由にやらせてあげたらどうだ?」
するとスタジオの中にいた軽音楽部のメンバー全員が一礼をし、
「信子さんと一緒にバンドやらせてください!」
と声を合わせて言った。
何も言えない隆に代わり、俺は山田さんに、
「山田さん、どうする? 軽音楽部、入ってくれる?」
と尋ねた。
すると、ノッコは少し考えこみ、兄の顔を少し見た後、こう言った。
「やっぱ、私は歌いたい。みんなと一緒に歌いたい!」
軽音楽部のメンバーは全員大喜びだった。
そして、隆のそばに行った畑中さんは隆に何かを言って、再びサブルームに入っていた。
「さて、これからうちのバンドの練習始めるけど、どうする?」
俺はノッコに尋ねると、
「飛び入りOK?!」
と聞いてきた。俺は、
「いいよ。でも、メンバーが俺を解雇しないようにしてね。(笑)」
といい、二人で笑った。
「ところでお前らは?」
と軽音楽部のメンバーに尋ねると練習風景を見学したいと言って全員が結局残った。
さすがに生徒会役員は投票が宙に浮いてしまい、今日は何しに来たの? という顔をしていたが、上郷地先輩も小鳥遊先輩もいいものを聞けたと喜んでいた。
だが最終的には新藤さんを除いて全員先に帰っていった。
バンドの練習風景も気に行ってくれたらしく、軽音楽部のメンバーも山田さんもこんな感じで音楽作りしているんだと感動していた。
そして二時間の練習が終わると、そこで解散とし、バンドのメンバーとの恒例反省会をやった後、俺は夏村さんと帰路についた。
電車の中で……
「夏村さん、よく山田さんの声のこと、わかったね? とてもびっくりしたよ」
「いや、かずやの表情を見ていたらそう考えているんじゃないかと思った。眉間に皺を寄せてたしね。俺にはそこまで声の細かいことはわからないよ」
「俺の表情で何考えているかわかるの?」
「かずやがエロいこと考えているのも大体わかる」
「さすが夏村さん……(注意しないと)」
「ところで、今回の課題曲を選んだ理由は? いい曲だったけど」
そこで今回の選曲とバンドの選択理由を夏村さんに語った。
「実は畑中さんとラインをしたときに添付されていた音源が隆さんが作ったプロモーションの音源だったんだけど、その曲が”Alone”だったんだ。その曲のノッコの声がとても良かったので、彼女の実力を引き出すならこの曲かなって思ったんだ」
「で、軽音楽部とうちのバンドの選択は?」
「軽音楽部とうちのバンドと歌うのではどちらが楽だと思う? うちのバンドだよね。その方が彼女の実力が発揮できる。軽音楽部をバックで俺が歌ったのは軽音楽部の癖を俺はわかりきっているから、軽音楽部のメンバーの良さを引き出すことができる。それを聴いて山田さんが軽音楽部と一緒にやりたいと思えれば俺の使命は終わりだって思っていた」
「相変わらずかずやの考えは抜け目ないな!」
「いや、表情で俺のことをわかっちゃう夏村さんもすごいというか怖いよ!」
「じゃあ、今週の木曜日はかずやにやさしくしてあげる」
「なんで?」
「バレンタインデーだよ!」
「ごちそうになります……」
◇◇ その後…… ◇◇
二年間、山田信子は軽音楽部でヴォーカル担当として奮闘し、学園祭では学校内外にファンを集めるほどの人気ものとなった。
併せて軽音楽部のメンバーも力をつけていった。
その人気に負けないよう他の文化部の活動も盛んになっていったのだ。
隆は秋葉原の一件後、畑中さんに師事することとなり、二年間の努力の甲斐もあり、フリーのミュージシャンとなっていた。
山田信子は浦和の名物ロックカーニバルにも参加し、有名になり、卒業とともに隆が組んだバンドに加入し、『NOKKO』という芸名となり、当時のバンドブームに乗り、複数の大ヒット曲を生んだのだった。
当作品をここまで読んで頂き、ありがとうございます。
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編集記録
2022/10/05 校正、一部改稿




