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3-20話 孤立(5)

【読者さまのコメント】

高松は石拾いをしながら林キャプテンとの距離を詰めていた!

ううむ。キャプテンとして動ける人みたいだけど、ヤンキー嫌いが激しそう?

過去に何かあったのかなぁ……。

そしてついに話し合いの日!

夏村さん、カッコいいーーー!!!

 時は俺がサッカー部で朝練を始めてから間もなくまでさかのぼる。



 ◇◇ 十一月十五日、水曜日 ◇◇


 俺がグラウンドで石拾いを始めて六日たった時のことだった。

 野球部のフェンス越しに俺に向かって誰かが声をかけてきた。

「おい、お前。新人か? こんな時期に入部なんて珍しいなぁ」

 俺は声をする方向を見るとそこには胸に『林』とシャツにマジックで書いた二年生らしき野球部員とアンダーシャツ姿の一年生らしき生徒が数人いた。

 俺は立ち上がりながら、フェンス越しにその野球部員に向かって一礼し、話し始めた。

「チワッ! まだ、新人なんでグラウンド整備させてもらってます」

 すると彼はこう言った。

「そうか、今はグラウンド整備でも、練習を頑張れば、認められる日も来る、がんばれよ!」

 正直、中学時代から今まで部活に入ってこんなことを言われたことが無かったため、流石に嬉しかった。

「ありがとうございます。」

 という言葉が自然に出た。

 とても、感じのいい先輩だと思った。

 すると、まわりの一年生部員から

「林キャプテン、各メンバー揃いましたので練習お願いします」

 という声が聞こえた。

 この人が井上さんが言っていた野球部キャプテン、林先輩らしい。

 彼は後輩たちを見ると、ニコニコしながら指示を与え始めた。

 確かに好青年とは彼みたいな人をいうのであろう。


 俺はそれから数日、林先輩の行動を見ながら石拾いを続けていたが、彼はどの部員に対しも親しげな口調で指示をしているが、指示に従わないものに対しては厳しかった。

 まぁ一生懸命部員を育てようとするキャプテンの典型ってやつだと思った。


 時は十一月……

 荒川方面から吹く風は冷たさを増し、秋とは異なった強さで俺に容赦なく吹き付けてきた。

 寒い~

 そろそろ、ジャージ出してこないと寒いなぁと思いながら、俺は石拾いを続けた。


 その数日後、林先輩は、グラウンドの三分の一まで、石拾いが終わった俺に、砂利収取場まで追ってきて声をかけてきた。

「君、知らなかったけど、サッカー部に入部したんだって? サッカー部が真面目にグラウンド整備しているのを俺は見たことなかったものでね、陸上部かと思ったよ。そういえば二年の、練習もやらん、何をやっているのか訳のわからん奴らはいなくなったけど、まだ、奴の息がかかった残党は部活を妨害してこないか? やりにくく無いか?」

 多分、滝川の仲間たちのことだろう。

 彼らは俺との外周での口論事件で、生徒会がサッカー部への出入り禁止になったことを知らないようだった。

 生徒会が部長会に報告するのも本末転倒であり、俺は上郷地先輩には部長会に伝える必要はないと言っておいた。

 ここは俺から報告すべき内容と思い、こういった。

「実は、先日自分が朝練で外周を走っていた時、因縁をつけられましてね、新しくできた生徒会が動いてくれて、彼らを出禁にしてくれたんですよ。なので今はまったく不安はありません」

「そうか。できたばかりの生徒会だったが動いてくれたんだな。ちょっとは期待できるってところか」

「そうみたいですね。ありがたく思っています」

 実際、生徒会の活躍にもっていったのは俺だったのだが、そこは公言できない。

 あくまで、生徒会の活躍と林先輩に印象つけたかったのだ。


 ところで林先輩の言う『何をやっているのか訳のわからん奴ら』であるが、確かに俺は学園祭でのバンド演奏で、なぜこんなにサッカー部員が絡んでいるのかと疑問には思っていた。

 後で一年生の部員に聞いたところ、今、部活終了後に俺と練習をしている二年生の先輩以外は、形ばかりで、適当に部活をやり、チャラチャラしていたと言う。

 彼らが一年の時、滝川がサッカー部を作り、その取り巻きと本当にサッカーをやりたい先輩とが集まり、部という形になった。

 しかし、滝川がキャプテンになってからは、滝川が取り巻きをレギュラーにし、真面目な先輩たちが空いたポジションを担当させられた。

 そんな部活だ、大会では一度も勝てない。

 評判の悪い学校に練習試合の申込みなんかある訳がない。

 要は奴らはサッカー部に在席しているだけの腰掛けであったのだ。

 この状態では、他の部から活動を正しく評価されないのもしょうがないと思った。

 これで林先輩が、サッカー部を嫌いな理由はある程度推定できた。

 多分、当時の不真面目なサッカー部の雰囲気が嫌いだったのである。

 しかし、なぜ廃部にまでしたのだろうか?


 俺は、林先輩に、

「以前のことは知らないんですが、今は同級生の勝村くんがキャプテンになってから雰囲気が変わったと言ってますよ、みんな」

 と言っってみた。

 すると、林先輩は、

「そうか、彼も一生懸命やっているからなぁ。このままの雰囲気を維持してもらいたいものだよ。何か心配なことあったら相談してくれたまえ。所詮、サッカー部は同好会扱いだからね。部長会からいくらでも圧力加えられるから」

 実はサッカー部が同好会扱いになっていることはこの時点で俺は初めて知った。

 それと、この学校の運動部の部長会ってそんなに権力があるのかと驚かされた。

 ということは目障りなサッカー部をこの際、潰してしまえと思い、実行したのだろうと思った。


 さて、次に、俺はなぜ石拾いを外周側のゴール前ではなく、反対のゴール近辺、野球部とのフェンスのそばから始めたのかという理由を話しておこう。

 以前、井上さんから林キャプテンはレフトが守備位置であることを聞いていた。

 そのレフトに一番近いところは反対ゴールのフェンス付近である。

 ここにいれば林キャプテンの情報を得やすいと考えたのだ。

 俺は併せて、林キャプテンの情報をサッカー部員や他のクラブの一年生に聞いて回った。

 得られた情報では以前井上さんから聞いていたように中間層からの評判はすこぶる良い。

 悪いところは悪いと指摘し、ほめるところは褒める。

 キャプテンの鏡のような人だ。

 学校側にナイター設備や夜間練習の延長を承認させたのも林キャプテンを中心とした部長会の活動だった。


 さて、石拾いも三分の二が終わり、ゴールも近くに見えたころ頃のことだった。

 林先輩が俺のところにやってきてこう言った。

 この時は明らかに表情が少しこわばっていたのを覚えている。

「君、今、付き合ってる彼女って、うちの総番だった夏村なんだって? どうしてそんな奴と付き合っているんだ。脅されてないか? 何か有ったらヤンキーが飛んできて『袋』とかなかったか?」

 ひどい言い様だなぁ、この人そんなにヤンキーに恨みでもあるのかと思った。

「いやぁ、うちのヤンキーは全員知り合いですけど、根は悪い子いないので付き合っていてとても楽しいですよ」

 と言うと林先輩は明らかに引いた表情でこう言った。

「そうか、随分君は肝が座っているんだなぁ。」

 と言って別れたのが会話を交わした最後だった。

 そう、その後、俺と顔を合わせても声すらかけてこなくなったのだ。

 その時、俺はこの人はヤンキーに対し、かなりの嫌悪感を持っているのだと感じた。


 以上の情報を夏村さんに伝えると

「了解だ。後は俺が部長会で頑張る。いざと言うときはいつものように手助けしてくれ」

「もちろん!」


 そして、運命の部長会は三十日に決まった。



 ◇◇ 十一月三十日、木曜日 ◇◇


 部長会は十六時から部室棟のミーティング室で開催された。

 さすがに運動会系の部長が全員揃っていると、始業式前の教室でタムロっていた横山たちより威圧感があった。

 俺と勝村は司会側の左の席に座らされた。

 司会を挟んで反対側には上郷地先輩、小鳥遊(たかなし)先輩、夏村さんが着席していた。

 しかし、会場が落ち着かない。

 生徒会役員の横に夏村さんがいることにざわついているようだ。

 しかし、そのなかでも、女子バレー部の永堀先輩は、俺の方を見ては手を降ったり、Vサインをしたりと、言葉は発していなかったが口の動きから『がんばって!』と応援してくれていた。

 井上さんといい、永堀先輩といい女子バレー部の方々はいい人だ、その上、かっこいい。

 (夏村さんといい、俺って身長高い女性好きだよねと密かに思ってしまう……)


 時間になったらしく、司会の先輩が開始の挨拶に続き、本日の議題について話した。

「本日の議題は主に二つ。一つめが先般、学園祭前の混乱の原因となったサッカー部の部活動の再申請審議と二番目が最近発足しました生徒会と部長会とのかかわり方についてです」

 まずはうちの案件が先と分かり気合が入る。

 机の上にはプレゼン資料を置き、事前に先輩方に資料は配布済みだ。

 オッケー! いつでも来い!

「第一案件の関係者として本日は現サッカー同好会キャプテンの勝村くんと補佐として高松くんに出席してもらっています」

「勝村です。よろしくお願いいたします」

「今回、彼のサポートをさせていただきますサッカー部の高松です。宜しくお願いいたします」

「では、サッカー同好会より、今回の部活動への再申請についての説明をお願いいたします」

 くそっ! いちいちサッカー同好会なんて呼ばないでほしいなと俺は思った。


 その時、夏村さんが割って話に入って来た。

「すみません。お話の途中ですが、まず、サッカー部を廃部にした経緯をお教えいただけますか? 先日、部長会の議事録を拝見しましたが、その経緯についての記載がありません。詳細お教えいただけますと幸いです」

「失礼ですが……」

と司会が間を入れると、

「申し遅れましてすみません。生徒会実行委員長の夏村と言います」

「夏村が生徒会の実行委員長!」

 部長会の会場内がざわめく。

 確かに、職員室前の掲示板に生徒会役員として会長、副会長、書記長の名前は記載があったが、生徒会実行委員長というものについての記載はなかった。

 そのうえ、実行委員長が元ヤンキー総番の夏村さんである。

 会場がざわめくのは当然だ。


 確かにサッカー部が部活から外された理由は気になる。

 さて、林キャプテンからどのような説明を出してくるのか、俺はプレゼン用の説明資料をしまいながら聞き耳を立てたが、話し出したの女子バレー部のキャプテン、永堀先輩だった。

「たぶん、話の発端はうちの部だから私から話します。今回の一件ってうちの部員からのクレームを部長会に報告したのが発端でした。サッカー部の部室で行われた事件もそうだけど、学園祭をボイコットした上に、学校を誹謗中傷するビラを配った件を含め、問題はかなり大きなものになりました。そこで、サッカー部の一時活動休止を決議する方向で進んでいたのだけれど、林君の方から今後の他の部への影響を鑑み、というか同様なことが起こらないように、言い方は悪いけど見せしめにサッカー部自体を活動停止にしてはどうかという話になりました。サッカー部の残っているメンバーは現在キャプテンをしている勝村くんのように本当にサッカーが好きな子ばかりが残ったので、そこまでする必要はないのではという反論も出ましたが、最終的に部として責任を取らせるためにも廃部が適当と林君の意見が出て、採決で廃部と言うことになったのが経緯……だったよね、林くん?」

「それで、いい」

 沈んだ声で林先輩は回答した。

 すると、

「それでは、質問、いいですか?」

 と夏村さんが質問に立つ。

「まず、部として責任を取るとおっしゃいましたが、なぜサッカー部の責任、それに対する処罰を他部のキャプテンである林さんが廃部という形で提案されたのですか」

 林先輩はこう続けた。

「今回の一件はサッカー部の代表であるキャプテンの起こした不祥事であり、サッカー部の総意をくみ取ることは不可能と考え、また、今までの活動内容を鑑み、廃部を提案しました」

「確認します。他のサッカー部員への聴取もなく、あなたが提案したということでよいでしょうか?」

「責任者がいない部でかつ、状況を判断する体制も無い部内で自分たちに対する処罰を検討するのは無理があると思いました」

「では、勝村さん。あなた方に今回の騒動に対して対応する時間を部長会から与えられましたか?」

「いいえ」

「それでは、あなた方にサッカー部が廃部になると伝えられたのはいつですか?」

「たぶん、部長会があった日から一週間前後して、他の部の同級生から伝え聞きました」

「廃部の判断を下した部長会からの報告は無かったのですか?」

「ありません」

「林先輩にお聞きします。サッカー部の総意をくみ取らない状況下で部長会で判断し、その判断はその部へ報告なしとはどういうことですか? 先輩のご主張では管理能力がない部の判断は部長会で行うはずです。しかるべき報告は部長会が管理能力のないと評価しているサッカー部に行うべきと考えますがいかがでしょうか?」

「たしかに、その点は配慮不足で有ったことは否めない。反省しています」

 夏村さんは続けた。

「例えば、高校野球連盟では、野球部内で不祥事が起こった場合、学校側が部側から事情聴取を行った後、連盟の規範に基づき、罰則を判断しています。そのことを林先輩はご存知ですよね」

「はい」

「では、組織、ノウハウが無いのであれば、各部長の集まりでしかない部長会では決めずにご自分に一番身近な高野連の対応をモデルに検討するというお考えはなかったのでしようか?」

「………」

 林先輩は黙ってしまった。

当作品をここまで読んで頂き、ありがとうございます。

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編集記録

2021/12/21 加筆訂正

2022/09/25 3-20話を2分割し、校正、一部改稿

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