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3-16話 孤立(1)

【読者さまのコメント】

上郷地先輩のお願いを聞き入れたからには中間層と繋がりを持たなければ!

けれど、どうやったらいいのだろう?

高松は悩み、夏村さんと相談した結果、井上さんに聞いてみることにした!

高松、ただでさえ忙しいのに、プラスで部活……大丈夫かしら?(汗)

 生徒会室での話の後、夏村さんと少し話をしたおかげで一時的には何か吹っ切れた感じにはなっていたのだが、夏村さんをバス停で見送った後から、上郷地先輩と何であんな約束をしてしまったのか、何から始めたら良いか、手詰まりの不安感がじんわりとかつ確実に俺の首を絞めてきた。

 自転車での帰路を走らせながらも考えてみたが……

 帰ってから、テレビを見ても解決の糸口も見えず……

 読みかけのラノベを読んでも答えは非ず……

 今日は木曜日ということで夏村さんの家での勉強会の日ではあったが生徒会室での話が長くなり、時間も遅くなってしまったためキャンセルにしてもらった。

 こんなに悩んでいると、不安が悪夢になって襲ってくる。

 なぜか夢の中で上郷地先輩と夏村さんから、経過はどうなったのかと校内を追いまわされる夢だ。

 それも二度。



 ◇◇ 十一月十日 金曜日 ◇◇


 ボサッとした顔でリビングダイニングに降りてくると晏菜が茶化してくる。

「おにぃ、どうしたの? 沙羅ちゃんに振られた? そういえば最近、沙羅ちゃん、うちに来ないけど。真剣におにぃに嫌気が差したのかな?(笑)」

「夏村さんも忙しいみたいよ。生徒会の実行委員に選ばれて頑張ってるよ」

「沙羅ちゃん、生徒会やってるんだぁ。さすが人格のある人は違うねぇ…… まさか、おにぃ生徒会とかやってないよね」

「やってはいるんだが、中学時代の反省で夏村さんのサポートと申しますか……」

「つまりはおにぃはパシリ?」

「半ば正解、半ば不正解。パシリだったら何にも考えないで指示にしたがってりゃいいけど。自分でいろいろ考えることが多くてな」

「じゃあ、頭悪いのにおにぃが勉強しすぎてオーバーヒートになったわけではないのね? だったら、昔みたいに気晴らしに運動やればいいのに。部活とか無いの? おにぃがいつも言ってる、それなりの成績で、それなりの大学なら、部活しながらでも入れなくない?」


 部活か……


 でも、部活をやるとなると進学塾に行ってる時間の都合をつけるのが難しくなるし、バンド活動の時間もと考えると、時間がいくらあっても足らなく感じ、なおさら頭が痛くなった。

 だが、『部活』というこの言葉が登校まで俺の頭から離れなくなる。

 たしかに中間層と付き合うなら部活は良い選択だ。

 しかし、なんの部活を選ぶのか? と考えると、ますます混乱してしまう。


 いつもならもう一日がんばれば、明日は恒例バンドの練習ということになるが、朝からストレスが溜まっている。

 夏村さんとの早朝勉強会を終え、不用意にため息をついてしまった時、夏村さんが心配そうに俺の顔を覗き込んだ。

「和也、大丈夫か? 昨日のことで悩んでいるのか?」

「うん、そうなんだけどね。実のところ何から始めたらいいか、良くわからないんだよ。まずは中間層にどう入り込むかなんだけど…… ヤンキーなら夏村さんに聞けば全てわかるけど…… 相手は中間層だからねぇ……」

 『相手は中間層』と、俺が言うや否や二人の回答は出た。

「井上!」

 そういえば、生徒会の話を勧めてくれたのも井上さんであった。

「俺、井上さんに相談してみるよ」

「そうだな! 話した内容とどんな話になったか俺にも教えてくれ。手伝えることがあれば俺も手伝うから。で……」


 突然黙り込む、夏村さん。

「どうしたの?」

「そういえば、学園祭のときの井上さんの貸しってどうなった?」

 井上さんが学園祭が終わった後、俺を一日貸してくれれば、滝川の一件を解決するという交渉で決まった約束のことだ。

「いや、あれから、何度もその話題にはなるんだけど、井上さんは茶化すだけで具体的な話ってないんだよね。多分、部活の買い物行くから、荷物持ちしてとかじゃないかかなぁ? 彼女、バレー部でボールとか買ったら結構荷物になりそうだしね」

「いまさらだが、俺はあまりいい気持ちがしない……」

 (ですよね。自分の彼氏が別の女性に一日貸し出されるんだから)

「まあ、そのへんも決まったら連絡するよ」

 と言って夏村さんとは別れた。


 しかしだ。

 言いたい相手にたった一言、言えばいいことをなかなか言い出せないのが陰キャの悪い性格。

 教室で隣に座っているにも係わらず、言い出せずグダグダしていると、案の定、井上さんに何か有るのかとバレてしまった。

 井上さんはニコニコしながら、こう言った。

「かずくん、どうしたの? 私の方をチョコチョコ見ては考え込んじゃって? もしかして私に告白とか? 困ったなぁ〜(笑)」

 いつも冗談を言っている井上さんだが、常識のある人だ。

 ましてや、生徒会という提案を思いついてくれたのは、間違いなく井上さんである。

 おれは少し躊躇しながら井上さんにこう言った。

「悪い、めちゃくちゃ面倒な厄介事、一緒に解決してくれないかな?」

「おっと、学年トップの高松さんが私に相談なんて嬉しいねぇ。どんなことでも言ってみそ!」

 俺は昨日の生徒会の決定を井上さんに洗いざらい話してみた。

 すると、井上さんは腕を組み、

「上郷地先輩もやり手だね。想像つかなかった。本当にやる気なんだね。しかし、夏村さんは存在だけでも威力あるからまだしも、かずくんを引っ張りこむって、確かにスパイ行動だわ(笑)。さてと…… かずくんの話に戻すけど、多分、ヤンキーの一件、学園祭の一件でかずさんは一年生には理解されたと思うんだよね。問題はニ年生だよ。今回の件ってニ年生って運動部の部長会のメンバーくらいで、その他の人たち抜きで解決しちゃったから、かずさんの名前もニ年生にはわかってもらってないだろうしね。たぶん知られていることとしては、一年生の成績一位、夏村さんの彼氏、学園祭でバンドしてた、ってところ位じゃないかな? そこでだ、ニ年生で一番味方にしたいなら、手っ取り早いのは、やっぱ、人格者を押さえることだね。そうなると、野球部主将の林祐也先輩と仲良くなることかな? 運動部部長会の会長だしね。あの人押えられたらニ年生の運動部関係者は安泰だよ。周りからの信頼も厚い人なんだよ。でも、どう接触するかだよね。かずくんが野球部って感じじゃないし。かずくんが坊主ってうけるし(笑)」

 確かに、俺が坊主頭は想像出来ない。

 近所の人たちに家のそばにある玉蔵院(ぎょくぞういん)というお寺で出家したのかと冗談を言われかねない。


「ところで、今、運動部で一番ゴチャ付いてるのってどこ?」

「やっぱ滝川の一件から、滝川と仲間がどっと抜けたサッカー部かな? いま、一年生だけで、人数ギリでがんばってるって言ったし」

「ところで今のキャプテンと顧問の先生って誰?」

「もしかして、かずくん、サッカー部に関わろうとしてるの? マズイよ。あの部、一年ばかりだけど、あの一件からヤンキー関係者、ここではかずくんだけど、そことのいざこざを嫌がっている人たちがいるだろうし、新キャプテンがまだ部員全員を掌握できていないって聞いてるしね。かずくん、孤立するの、目に見えてるよ」

「まあ、孤立してもそれは部活内での問題だし、井上さんが言うには俺一年生には理解されているんでしょ。だったらやり方はあると思うんだ。その上、俺はボッチには慣れている」

「あ~あ、本当に知らないよ。あっ、そうそう。キャプテンは勝村くん、一年六組ね。サッカー部なのに劇団に入っているイケメン君。結構女子には人気かな? 顧問は物理の境先生」

「ありがとう。これだけ揃えばなんとかなる。まずは勝村か。女子に人気っていうのが嫌だけど、まぁ行ってくるわ!」

「最後に言っておくけど、少なくとも女子バレー部は全員かずくんのこと応援してるから! 何か有ったら相談して!」

「心強いわ! ありがとう! 助かったよ」

「いやいや、これって内助の功ってやつかな? 内縁の妻の……」

 全然意味が違っているのだが……

 俺は井上さんに礼を言い、勝村に会いにクラスを出た。


 井上さんは俺の後姿を見ながら小声でこう言った。

「でも、本当になんとかしてくれそうだよね、かずくん。一学期の体育の課題の鉄棒の蹴上がりできなかったのを、毎日遅くまで練習して、最終的に試験の時にはできるようになってたもんね。見えないところで努力して今の君の立場がある。君のいいところはそこだよ。信じてる……」


 すぐに俺は井上さんとの話の内容を夏村さんにラインした。

 夏村さんは隣のクラスなので話せば早いのだが、記録として残すためにもラインに書き残す方法をとった。

 夏村さんからは部活に入って勉強は大丈夫かと心配されたが、俺にとっては、まずはサッカー部に受け入れてもらえるかの方が問題だった。

 しかし、夏村さんはいつも通り最後には、がんばってと返信してきた。

 その言葉だけで俺には勇気が沸いた。


 俺は六組の教室に着くと入口そばにいた女子に勝村への取次ぎをお願いした。

 その女子はある男性に前に行き、コソコソ話すと彼は俺の方にやって来た。

 そして俺の前で立ち止まり、笑顔でこう言った。

勝村政信(かつむらまさのぶ)です。高松さんですよね。有名人だから知ってますよ。今日はどうしたの?」

 彼は身長は百六十八センチメートルぐらい。

 顔はさすが劇団所属だけあって、俳優のように良い。

 これは俺と違って女子にモテそうなやつだなと思った。

 男子の俺でさえ彼の笑顔は眩しかった。

「いや、時期はずれなんですけど、サッカー部入りたいなあと思いまして。もし、よかったら入部させてくれませんか?」

「えっ! そうなんだ! 今、部員が十一人で一人抜けるとやばい状態だったんだよ。ところでサッカーの経験は?」

「まぁ浦和出身だから、小学校時代からサッカーは趣味程度ですがやってました。あんまりうまくはないんですけどね」

「中学時代の部活の経験は?」

「サッカーやってました。二年ちょっとですけどね」

「そうなんだ、ところでポジションは」

「主にボランチやってました。トップ下とかもやりましたが」

「いいね! サッカーの戦術とかに興味は?」

「自分で組み立てしたり、ミーティングで提案したりはしてました」

「そうなんだ! 話、聞いていただけで経験者だってわかるよ。嬉しいなぁ。ただ……」

「ただ……?」

「高松くんって学園祭のメンバーだったから、やっぱ、うちは滝川先輩の一件があったから旧サッカー部のニ年生からの嫌がらせが君だけではなく、今いる部員たちに来ないかなって、それだけが心配なんだよ」

 それはあるかなぁと俺は思った。

 そんな恐怖感があれば、なんでこんなトラブルメーカーを入れたんだと他の部員は思うだろう。

 仮に入部したとしても、入部当初に声をかけてくるのは勝村だけというのが自然の流れか。

 まあ、ボッチには慣れているのでそれなりの楽しみ方はありますよ。

「勝村くん、ぜひ入れてくれないかな?! ただ、月水金曜と進学塾二学期分授業料払っちゃったんで、出れないんだ。それと、土曜も……」

「いいよ、ぼくも劇団入ってて、出れない時も多々あるからね。中には真面目にサッカーやりたい子もいるんで悪いなあと思っているんだけどね…… じゃあ今日の放課後、ってそう言えば、塾ある日じゃないの?」

「いいです。初日から頑張らないと認めてもらえないから」


 入部手続きは勝村が入部届を管理していたため、作ってさっさと出してしまった。

 そんな部活ってあり?

 はてさて、どんな部活生活が始まるのか。

 部室で部員みんなに紹介するので授業が終わったら迎えに来て欲しいとのことだった。

 はてさて、部員に迷惑を掛けず、うまく先輩方を抑え込む方法でも考えますか……

当作品をここまで読んで頂き、ありがとうございます。

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編集記録

2021/12/16 加筆訂正

2022/09/22 校正、一部改稿

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