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3-15話 人と多く接するということ(3)

【読者さまのコメント】

上郷地先輩に呼び出しを受けて、高松は夏村さんと一緒にいく。

生徒会メンバーになれと言われるかと思いきや?

なるほど! 実動部隊として動ける人材が欲しかったのか。

夏村さんはやる気満々! でも、高松はというと。

もう少し前面に出てもいいと思うなぁ。

 上郷地先輩とは学園祭の一件から、『学園祭実行委員α』という実行委員のグループラインに入れさせていただいたため、それを使うことで連絡はすぐにつく。

 実行委員の職を終えて、さっさとグループラインから出ていった人がほとんどだったが、上郷地先輩とのはつながっていた方が、今後の進学の件も含めて相談できると思い、俺と夏村さんは残っていた。

 学園祭を含めて上郷地先輩からは自分たちにはわかりえない二年生の状況を聞くことができた。

 二年生は開校一年目の入学ということもあり、かなり多種多様なメンバーがそろっているようで、ヤンキーは今回の一件でいなくなったが、スポーツヤンキーと呼ばれる、運動部に在籍しながら部活はほとんどせず、先輩風をふかしているような生徒が一部運動部で幅を利かせていることもわかった。

 例の滝川もその一人であったようだ。

 そんなのを相手に二年生で実質一人、学園祭の実行委員長として奴と対峙していた上郷地先輩には本当に頭が下がる。

 (委員会室でたけしと滝川が言い争っていた時も、他の二年生の委員は我関せずと自分の作業を続けていたのだ)


 当然グループラインには夏村さんも入っていたのだが、上郷地先輩の『高松君、ちょっと来てくれないか』の連絡に夏村さんが『がずやと向かいます』と伝えた意図が俺には理解できなかった。

 もしかして生徒会活動に興味でもあるのだろうかと勘ぐってもみたりした。

 まさかね……

 俺は授業も終わり、教室で会話していた勉強仲間に別れを告げ、立ち上がったところでの上郷地先輩からのラインだった。

 上郷地先輩に生徒会長が決まった後であったため、嫌な予感がしていた。

 嫌々廊下に出ると、隣の教室前の廊下にはすでに夏村さんがカバンを持って待っていた。

「待ってた、一緒に行こう」

 夏村さんもどういう用件で俺を上郷地先輩は呼んだのかを知りたかったのだろうか。

 まぁいい、喜んでご同行していただくことにしよう。


 はじめの数分間、何も言葉を交わさず歩いていると、夏村さんから口を開いた。

「ところで、かずや。上郷地先輩から生徒会を手伝えと言われたら、どうするつもりだ?」

 ド直球できたなぁと思った。

 しかし、上郷地先輩から呼び出された以上、ある程度腹をくくっておかなくてはいけないと思っていた。

「俺はお断りしようかなぁと思ってる。俺の優先順位としては夏村さんとの勉強が第一優先かな? その次が、俺の受験。やっぱ、夏村さんとイチャイチャが第一優先かな?」

 夏村さんはニコッと笑いながら、

「最後のはいいなあ! う~ん、いい…… でも、もし、俺だったら、上郷地先輩から協力を頼まれたら、やりたいと思うよ」

 俺は夏村さんの意外な回答に驚きを隠せなかった。

「なんで?! 受験は?」

「もちろん受験はする。駅前巡回とかやってた時期に比べれば時間はあるし、何よりも俺はメンバーの目標になりたいんだ。やっと、メンバーたちも自分たちのやりたいことを見つけ頑張ってくれている。そこで俺がみんなの見本になりたいんだ。頑張れば何でもできるって」

 夏村さんの目はマジだった。

 茶色の瞳の中に何かが眩しく燃えているものが見えたように思えた。

 こうなると、俺の回答は自ずと決まってしまう。

「わかったよ。その時は俺も付き合いますよ」

 俺は少し笑いながら、こう返事をした。

 それはいつまでも、どこまでも俺は夏村さんに付き合うよという意味を含んでいた。


 『わかったよ』


 という言葉は言葉の文字数以上に自分たちにとって深い決意表示であると二人は思った。


 そんな時、俺は今更どうでもいいようなことを思い出した。

「そういえば、夏村さんって最強のヤンキーになるって小目標があったとおもうんだけど、今じゃ、ヤンキーやめちゃって、この目標どうするの?」

「そうだな? 喧嘩で最強の女子高生になるか?」

「えっ? まだ、喧嘩する気なの? てか女子高生ってそんなに喧嘩する機会ないんじゃないの?」

「そりゃ、メンバーが危ないときはやらなきゃいけないときがあるかもしれないからな」

「でも、それじゃ犯罪者じゃん。それじゃあ、うちの嫁には無理かな?」

「それは、まずいな…… うん、犯罪になる前、ギリで止める」

「そう頼むね(笑)。ところで夏村さんって喧嘩強いの?」

「何?! お前、やるか?! 俺は昔、少林寺拳法を習っていた」

 最初のデートで池袋の路上で絡まれたあんちゃんにも見事な身のこなしだったことを思い出した。

 少林寺拳法か……

 そういえば、妹の晏菜も小学生の時、少林寺をやっていて、そこで晏菜と仲良かった子がいたことを思い出した。

 まだ、その子と付き合いはあるのだろうかと昔の思い出を懐かしんだ。

 名前は何だったけなぁ…… まぁいいや。


 さて、生徒会室は学園祭実行委員室の隣にある。

 前述のとおり、うちの高校は開校二年目ということで今年が初めての生徒会役員の選出であった。

 ドアの上に掲示された『生徒会室』の印刷も真新しかった。

 生徒会室に着くと俺がドアを叩いた。

「高松、夏村、来ました」

「入ってくれ」

 声だけで上郷地先輩であるとわかった。

「では、入ります」

 と言って俺はドアを開けた。

 中から上郷地先輩がこちらに向かってやってくる。

「なんか、あんまり時間たっていないけど、お久しぶり!」

 ずいぶん上郷地先輩、口調が柔らかくなったなぁと思った。

 まあ、学園祭のときはストレス莫大だっただろうしね。


 部屋の窓際を見るとうちのクラスの河野と見たことのない男性が立っていた。

「こんにちは」

 とあいさつすると、上郷地先輩からもう一人の男性が二年の小鳥遊(たかなし)さんという方で、昨年の学園祭の委員長をやった人だと紹介を受けた。

 上郷地先輩にしても小鳥遊先輩にしても、なんともめんどくさい苗字の人がここには集まっているのかと思った。

 ところで、この展開は?

 やはり、嫌な予感しかしない……


 改めて、上郷地先輩が話を始める。

「今回、生徒会選挙で私が生徒会会長に選ばれたのだが、副会長、書記長の立候補が最終的に出なかった。そこで職員会議の方から私の推薦で選出してよいという話になった。色々と考えたんだけどなかなか適任者がおらんでな。そこで昨年の学園祭実行委員長で私のクラスメイトの小鳥遊くんに副会長を、今年の学園祭の書記でがんばってくれた河野君を書記長をお願いし、さっき了解してもらったんだ」

 よし! よし! 俺たち二人は委員にならなくていいのね! と俺は胸をなでおろした。

 そうなると、俺たちは何で呼び出されたんだろ?

「さて、話は本題だが、学園祭の時、君たち二人の活躍を私は見てきた。その活躍を見て、今後の生徒会運営で君たちの力が必要になると考えた訳だ。学園祭の時のように私たちの手助けをしてはくれないだろうか? 誠に勝手な話だが、是非とも考えて欲しい」

 俺は先ほど言ったように、夏村さんの意志に従う、彼女をサポートするとこの時点で決まっていた。

 さて、夏村さんは……


 上郷地先輩の話を聞いてじっと考え込む夏村さん。

 そしてゆっくりと話だした。

「承知しました。私は喜んでサポートさせていただきます。ただし、まだ私にはヤンキーを辞め、これからどうしたらよいか迷っている子たちも少なくありません。もしよかったら、彼らからの要請や希望が有ったら生徒会として先生方に伝えさせていただくような役柄も任せていただくことは可能でしょうか?」

「もちろん結構だ。ただ、元ヤンキーの方だけになると不公平感が出てくるから、併せて他の生徒の意見も取り入れながら対応してもらいたい。それでいいか?」

「結構です。それでしたらご提案の方針で参加させていただきます」

 上郷地先輩と夏村さんはにっこり笑い、二人でアイ・コンタクトを取ると、自ずと二人の視線はこちらを向く。

「へいへい、私もご協力しますよ。それでいいんでしょ?」

 と嫌々ですよ的な雰囲気を出しながら、返事をすると、上郷地先輩から意外な言葉がでてきた。

「実は高松君にはヤンキー以外のいわゆる、中間層と言われている人たちと色々とコネクションを作って欲しい。これは一番大変なことだと思うが、中間層は単純に言えばバラバラだ。各々主張が出ては校内が混乱する。だから裏から高校生活を安定して送れるような人間関係を構築し、その人たちへの影響力をもって欲しいんだ」

「ぶっちゃけ、この学校をヤンキー側は夏村さんがコントロールして、その他の人たちと俺が顔見知りになって、学校をいい方向に持っていければって話ですか?」

「できるかな? 高松君」

 そんなこと、俺ができるだろうか。

 学園祭の件でも俺は結局、直接的には何もできなかった……

 井上さんがいたからどうにか収めることができた。

 では、自分ひとりで何とかせず、井上さんと同様にこれからいろいろな人脈を作っていき、その人たちを巻き込めばいいのかと思った。

 そのためには今以上に多くの人たちの接していく必要がある。

 俺にできるか……?

 でも、やはり俺、目立ちたくないんだよなぁ……


 迷いながら俺は夏村さんの顔を見た。

 じっと、俺の目を見る夏村さん。

 この顔みたら……

 …… やるしかないか。

 この時、以前井上さんから言われたことを思い出した。


 『これが君にとってのチャンスなのかもしれないよ』


「先輩、一つお願いがあるんですけど」

「なんだね、高松君」

「生徒会の組織ってトップに生徒会会長が居て、その下に生徒会副会長が居て、書記長がいるって形じゃないですか。そこに実行部隊として生徒会実行委員というのを作って、夏村さんをその委員長に任命してくれませんか?」

「おい、お前。急に何を言い出すんだ?!」

 夏村さんは声を上げた。

「やっぱ、生徒会って生徒の代表として意見をいう立場だから『委員長』って役職の人が声を上げたとなると重みが違うと思うんですよ。これからはどんどん夏村さんに発言してもらって学校をよくしてもらえればと思うんですよね」

「かずやはどうするんだ?」

「俺が上郷地先輩から頼まれた仕事はある意味、『地ならし』的な仕事だから、役職名のある人が表立ってやるべき内容じゃないと思うんだ。だから俺は役職はいりません。そして俺の行動で夏村さんが活躍してくれるのなら俺は本望だしね。それと、俺が入手した問題点、意見は確実に夏村さんに伝えます。それを、夏村さんたちが解決してくれれば生徒会の信頼にも繋がると思うんです。ここに来る時、夏村さん、上郷地先輩から委員の声が掛かったらやる気でいたでしょ。だから俺は夏村さんには『実行委員長』という看板を背負って、がんばってもらいたいと思う。いつも言っているけど、俺はいつも夏村さんを見守っているから、必要だったら頼ってください。俺はそれでいい。俺、目立ちたくないんで」


 -- 沈黙 --


 上郷地先輩が沈黙を破る。

「まぁ、これでいいんだよな。いつもお前ら仲がいいから、仲を壊しちゃったらどうしようかなぁと思ったよ(笑)」

「こんなことじゃ、俺と夏村さんの仲は壊れないんで大丈夫ですよ。お互い信じ合ってますから」

「お前、さっきからよくそんなこと他人の前で恥ずかしくなく言えるなぁ。俺は恥ずかしくて死にそうだぞ!」

 夏村さんを見ると本当に顔を真っ赤にしていて笑えた。

「よし、これで生徒会役員は決定だ。会長、上郷地あかね。副会長、小鳥遊優、書記長、河野祐希、実行委員長、夏村沙羅、そして実行委員長の手下として高松和也でいくぞ」

 俺、夏村さんの手下扱いかよ。

 スパイとか諜報部員の方がかっこいいのだが、007的な……


 河野が初めて口を開く。

「書記長というお役目なので他に書記ができるメンバー見繕ってきます。メンバーは会長の了解必要ですか?」

「自由にやってくれ」

「了解しました」

 夏村さんも同様に実行委員のメンバーを自分で集めたいと言い、上郷地先輩は了承した。

 そして、最後に、もったいぶった様子で上郷地先輩はこう言った。

「あぁ、言い忘れたけど、生徒会の相談役として渋谷先生にお世話になることになっているので……」

 また、渋谷先生か……

 まぁ、顔見知りの先生なので良しとしよう。

 普通、生徒会は生徒の自治を尊重するため作られるはずだが、うちの高校は、何もかもできていない状態だから、相談役が先生でも問題ないだろう。

 何でも相談できるし、実際、補習の件も含めて、渋谷先生には実行力もある。

 そう考えると、渋谷先生はありがたい存在に感じた。


 話は委員の内輪話っぽくなってきたのを見計らい、俺は、

「じゃあ、失礼します。」

 と、こっそりと部屋を出ようとしたが夏村さんに気づかれてしまった。

「かずや、どこに逃げようととしているんだ! でも、本当にこれでいいのか?」

「俺は目立たないくらいが本当は性に合ってるからさ。それと俺、役付きってなると必ず図に乗るタイプなんで。目立たないくらいがちょうどいいんだよ。役付きになっていきなり失敗して、夏村さんにカッコ悪いところ見せたくないし(笑)。なにより、一緒に仕事していなくても俺たちいつも何処かで繋がってるから!」

「だよな! よし! その分、土日はくっつきまくってやる。土曜は俺んち泊まるか? お前の好きな献立作ってやるぞ!」

「会長、こいつら不純異性交遊予告してますので、補導第一号にしましょう!」

「河野の意見に賛成だ! こいつらの日常生活を事情聴取しよう!」

「勘弁してよ!」


 そういうことで、二学期が始まってからいつも一緒に行動をしていた夏村さんとは、すこし距離をもって行動することになった。

 あんなに生徒会室ではかっこよく啖呵(たんか)を切ったが、良い作戦など簡単には出ては来ないものだ。

 しかも、今まで以上に生徒たちと付き合う……

 ボッチ出身の俺には想像がつかなかった。

当作品をここまで読んで頂き、ありがとうございます。

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編集記録

2021/12/15 加筆訂正

2022/09/21 校正、一部改稿

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