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3-9話 学園祭(3)

【読者さまのコメント】

内田さんが心配……夏村さんは速攻対策してくれた。

そして高松も情報収集する。

仙道って子、なんか嫌ぁな感じ〜。

高松の過去が垣間見えた!

孤軍奮闘はよくない。人に頼るって大事だよ。

すると、ヤバい事態になってしまったぁぁぁぁぁ!!!

 ◇◇ 十月二十四日 ◇◇


 翌日の昼休みに早速、夏村さんは内田さんを隣の夏村さんの教室に呼び出した。

「すず、おまえ、学園祭のヘルプでがんばっているのは分かるが、無理してないか? 保健室の高城先生も気にしていたぞ」

「(高城先生、バラしやがったか……) ありがとうございます、なつさん。今、自分凄く頑張っているのが実感できているんですよ。満足感たまんないっんす。まぁ、何かありましたら、すぐになつさんにご相談しますので、その時は宜しくお願いします!」

「あと、和也も現状確認したいので、明日時間がほしいと言ってたぞ」

「かずさんですか。夏休み後にいろいろと話聞いてもらったしなあ。今がんばっている話、聞いてもらいますわ。明日の委員会のヘルプが終わったら声かけるようにします」

 この場はそんな感じで終わったのだが、夏村さんも空元気ではないかと心配になったため、うちのクラスの羽田さんたち数名をフォローにつかせ、何か問題があれば、夏村さんに連絡するよう指示した。


 一方、俺は、実行委員会の現状を聞き出すため、一緒に仕事をしているであろう当事者である仙道に話は聞かず、第三者的な立場で話ができそうな河野に声をかけた。

「河野くん、いま時間いいかな? ちょっと気になることを小耳に挟んだので、聞きたいんだけど……」

「内田さんのことか? だろうな。 もうそろそろ表面化するかと思っていたんだ」

「やっぱ、君も気になっていたのか?」

「ああ、問題は仙道さんと内田さんの関係なんだよね……」

 河野の話では、現在、実行委員会は各担当に別れて業務を行い、進捗を上郷地(かみごうち)先輩に報告するという流れになっていたそうだ。

 そのため、各担当の細かい状況まで上郷地先輩はフォロー出来ていない様子だった。

 そして、今回の話の核心、仙道と内田さんの関係であるが、最初は仙道は広報関係を担当し、校外への宣伝、チラシの作成、入場者向けのパンフレットの作成などを行っていた。

 途中から内田さんがヘルプをしたいと仙道に申し出て、仙道の指示に従い、内田さんは動いていたが、予想以上の内田さんの頑張りを見た仙道は、自分の業務も内田さんに振るようになったようだ。

 一方、内田さんはこれは自分への期待の表れかと思い、自分一人でがんばっていた。

 彼女の周りで同様な作業をしている委員はほとんどが中間層、内田さんの状況をみても自分から進んで助けに入る人はおらず、内田さんの『孤軍奮闘』が続いている状態であるそうだ。

 まず、この『孤軍奮闘』という言葉がどうしても俺の心にひっかかった。

 

 その上、仙道の彼氏というのがサッカー部の部長で、イケメンではあったがサッカーの練習はほとんどせず、活動は主に一年生に任せ、たまに部活に出ると、暴言暴力なんでもありの手の付けられない男であった。

 彼の悪い評判から、仙道に何か言うと彼からの報復を受けるかもしれないと恐れた委員が何も言えない状況にあることも確認した。

 これは想像以上に悪い環境になっているのではないかと心配になった。

 俺は河野に継続的な情報の提供を依頼し、もし変わったことがあれば、特に内田さんがやばそうであったらすぐ連絡してほしいと依頼した。

 

 とても不快だ。

 不快すぎる。

 『孤軍奮闘』

 この言葉は中学時代にやらかした大きな二つの失敗のうちの一つの原因と同じだった。

 俺は中学三年になったとき、生徒会委員とクラブの部長を掛け持ちしていた。

 この時は文字通り『孤軍奮闘』の状態であった。

 ちょうどその時期、生徒会委員で欠員が一名出たため、一名補充をしてはどうかという話になったのだが、補充までは抜けた分までがんばりますと安請け合いをしてしまい、誰にも相談せず、二人分以上の生徒会の業務を行ったため、クラブ活動の方がおろそかになってしまった。

 そして、その俺の行動に嫌気のさしたサッカー部員たちが春の大会一回戦で敗戦した時、一斉に蜂起し、俺の批判を開始し、その批判を聞いた生徒会からもそんな責任感の無いやつに二人分の仕事は任せられないという話となっていった。

 最終的に批判を受けた俺は、四面楚歌の状態になり、生徒会とクラブの両方を追放に近い形で追い出されたのだった。

 このことから、同級生からは批判の的となり、俺は誰からも信用されなくなってしまった。

 そして不満がたまっての『学校の廊下の窓ガラス全壊事件』を起こすまで、俺は落ちていってしまったのだ。

 結局、こうなってくると、自分のことを信じてくれる人は、俺が『孤軍奮闘』をしている時の姿を見て、応援・助けてくれた数人の後輩しかいなかったのだ。


 そんな、あの時と同じ状態に内田さんが置かれているのではないかと思った。

 がんばって行動している時は気持ちがいいのだが、次第に体が持たなくなってくる。

 そして破綻したときに大きなトラブルを生ずる。

 自分は良かれと思ってやったとしてもだ。


 この状況を把握した俺は、夏村さんに情報提供するか否かを考えたのだが、結論として話すのは避けた。

 なぜなら、この報告を聞いたヤンキーたちが仙道に対して攻撃に走ることを避ける為であった。

 そんなトラブルが発生すると、がんばっている内田さんの立場が逆に悪くなってしまうからだ。

 まずは確証を取っておきたい。

 俺は夏村さんに連絡し、俺も内田さんから状況確認したいので、明日中に内田さんと面談する日程調整を依頼した。

 そして、先ほどの夏村さんと内田さんの面談時に俺と会って話をする段取りを取ってくれた。

 一方、河野を通じて、明後日の二十六日の夕方に上郷地先輩に会い、明日の内田さんとの面談の内容の報告をし、今後の対応を相談する手はずを整えたのだった。


 ◇◇ 十月二十五日 ◇◇


 この日も授業が終わると内田さんは仙道と連れ立って教室を出た。

 そして、その後ろを羽田さんと他二名の元ヤンキーがついて行った。

 今日から彼女たちが内田さんをフォローするという理由からであった。


 それから一時間ほど経った時であろうか。

 俺は教室の片隅で明日の上郷地先輩との面談の方向性を練っていた。

 そこに夏村さんが飛び込んできた。

「かずや、すずが実行委員会室で倒れた。俺はやつについて行くから後は頼む」

 恐れていたことが彼女との面談よりも先に起こってしまったと俺は思った。

 委員会の仕事の開始を遅らせてでも面談を先倒しにすべきであったと俺は後悔した。


 夏村さんが部屋に飛び込んできてから、五分程度で救急車は教室棟の入り口前に横付けされた。

 消防署はうちの高校と埼大通りをはさんで、反対側であるのですぐ来てくれたようだ。

 俺は教室から救急車を眺めると、そこには内田さんと一緒に乗り込む高城先生と夏村さんの姿が見えた。


 そういえば、横山……

 奴は模擬店の店舗の外装を作っていたがいつしか姿が見えなくなっていた。

 俺は再度、部屋全体を探したが見当たらなかった。

 俺はとても、嫌な感じがした。

 

 ーーーーーーーーー


 その一時間前の実行委員会室。

 仙道が自分の席に着くと、内田さんは仙道に声をかけた。

「仙道さん、今日から私のフォローしてくれる子たちつれてきたんだけど、入れていいかな?」

 仙道はニコニコしながら、こう返答した。

「ああ、誰でも手伝ってくれるなら大歓迎だよ。呼んで!」

 すると、内田さんはドアを開け、羽田さんたちを部屋に呼び入れた。

「羽田(かなで)さんと、曽根辰美(たつみ)さん、そして川尻李依(りい)さん、宜しくね」

「オッケー、よろしくね!」

 仙道は、自分の机の上を整理しながら、そっけなく羽田さんたちの姿も見ずに挨拶した。


 自分の席に着いた仙道は自分の机の上を見たとき、軽く、ため息をつき、

「じゃあ、また、仕事溜まったので内田さん、よろしくね!」

 と言い、内田さんたちの座ったテーブルの前に自分の机の上にあった資料を持っていき、ドカッと置いた。

 そして、自分はというと、スマホをいじって何もする気配が見えなかった。

 他の委員はこの一連の流れを見てはいたものの何もアクションは起こさなかった。

 羽田さんは作業の準備をしながら、コソリと内田さんに小声で訊いた。

「すず、毎日こんな感じなのか?」

 そう言うと内田さんはこう返答した。

「私は自分から仕事を割り振りする仕事なんて頭悪くて出来ねえから、彼女が振ってきた仕事をがんばるだけなんだ」

「それでいいのか?」

「うん、がんばっているって満足感があるからいい」

 と内田さんは言った。

「でも、これって押しつけじゃない?」

 と川尻さんは言ったが、内田さんは、

「自分がやるべき仕事があるってことは良いことだよ!」

 と言って話を流した。

「しゃあない、やるか!」

 そう、川尻さんは言い、四人で仙道からもらった作業の分担について打ち合わせを始めた。


 しかし、二、三十分もすると内田さんの顔色が急激に悪くなった。

 他のメンバーも初めての仕事で、自分の分担を片付けることで内田さんを見ている余裕はなかった。

「川尻さん、これパソコンに入力して……」

 といいながら、書類を手に持ったまま内田さんは気を失った。

「すず! 大丈夫か!」

 三人は内田さんの体を揺すりながら答えを待ったが、彼女からの返答は無かった。

 さすがに、他の委員も気にして大丈夫かと集まってきた。


 しかし、その騒ぎに気づいた仙道は、内田さんの姿を見るなり、

「ありゃ~? 寝ちゃったよ。役に立たねぇなぁ。ヤンキー上がりはこれだからイヤだよ」

 と言った。

 この言葉が羽田さんたちに火をつけた。

「お前! 自分では何もしないのに、なんだ? その言い方ねえだろう!?」

「私は内田さんがどうしても仕事、手伝いたいって言ってきたから、仕事振っただけ。私が何しようと問題なくない?」

「なんだと! お前ふざけんじゃねぇぞ!」

 キレた羽田さんは仙道の胸倉を掴んだが、

「かなで! 先にすずをどうにかしないと!」

 という川尻さんの声に正気を取り戻し、仙道から手を放し、曽根さんとともに内田さんを保健室に連れて行った。


「お前、いつもこんな感じで進めてたのか?」

 川尻さんが仙道に詰め寄る。

 同じクラスで席も同じ列ということで川尻さんは仙道さんとは何度か話もしていたので、この時は比較的柔らかめの口調で話したようだ。

 だが、仙道は明らかに人を見下げるような態度でこう言った。

「やっぱ、学園祭って楽しんんでなんぼでしょう? 大変なのは嫌! あんたらみたいな、上の意見には逆らわず、がんばっちゃう残念な奴らががんばればいいんじゃないの?」

「お前、最低だな!」

 下手に出ていた川尻さんも仙道の態度にむかついたようで、声を荒げた様子だった。

 すると、仙道はスマホを取り出し、どこかに電話を掛ける。

「修二、悪いけど、実行委員会室来てくんない、何人か連れて。ヤンキーうざいんですけど」

 修二? 

 男か。

 それならこちらも男性をと川尻さんもすぐさま、同じクラスの横山に電話する。

「たけしさん、りいっすけど、実行委員会室に何人か連れて来てくれませんか、厄介なことになったんで」

当作品をここまで読んで頂き、ありがとうございます。

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編集記録

2021/12/05 加筆訂正

2022/08/01 改稿

2022/09/15 3-9話を2分割し、校正、一部改稿

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