⑨言えない
高守に追いつき、階段の下に荷物を置いた。
走ったからではない、違う胸のドキドキが止まらない。
「返事、待ってるから」
ぼそっとつぶやき、高守が中庭のテニスコートに足を踏み入れた。
「あ、高守!」
葵の元気な声が聞こえる。
「姫さんは?」
「そこ」
「姫さーん!!」
葵、萌乃、望亜が飛び付いてくる。
「陸上部お疲れ様! もうあとちょっとしか時間ないけど」
「ちょっとでも良いよ! テニスが出来ればわたしは幸せ」
「テニス大好きだよね。足速いのに陸上部入んないしさ」
「陸上部はイヤだよ。中距離と長距離走、苦手だし大っ嫌いだから」
「苦手ではないでしょ! 外周は1年女子の中で1番速いし」
「いや、速くないよ」
そんな会話をしながら、ラケットを出し、テニスシューズを履く。
「これ何してんの? わたしも入って良い系?」
「今は休憩時間。で、球出し4球やってる。打ったら毎回ラダー、4球中3球入んなかったらバービー3回」
「ああ、いつものヤツね」
「そう、いつものヤツ」
「先生に当てたら腕立て50?」
「うん。もう望亜は100回やってるから」
「やばっ。当てすぎでしょ」
笑ってしまう。
望亜って、ボールを先生に当てる確率とボールを高いところに上げる確率が異常に高いんだよね。
「っていうか、さっき高守暗かったけど、なんかあった?」
「え? いや、知らない」
とっさに首を振った。
告白されたなんて、そんなこと、言えるわけない……。
「あれ? そのリストバンド何?」
「あ、これは連陸のリーダーが付けるもの」
「姫さんリーダーなの!?」
「陸上部じゃないのに。さすが」
「リーダーって、学年のリーダー?」
「ううん。1年女子のリーダー。男子のリーダーは、陵河」
「おお〜、2人でリーダーか」
「そう! このリストバンドも2人だけのおそろいなの!」
「良かったな」
話していると、先輩がわたし達を呼びに来た。
「もうそろそろ休憩終わりだよー」
「はい!」
「今行きます!」
うおお〜、やっとテニスができる〜!
もう、来年は絶対連陸に選ばれたくない。
陸上部キツいし、あんなに走りたくないし、テニス一筋で頑張りたいんで。
陸上部の人達もかなり足速くなってきてるし。
テニス部のわたしが出る幕じゃないと思う。
でも、推薦に選ばれて、頑張って陸上も練習したんだから、今年はめっちゃ頑張るよ!!
今年が最後だと思って、本気で走り抜きたい。




