⑦ライバル
「姫里」
学校が始まった最初の日。
陸上部の朝練に参加していたわたしは、陸上部の先生に呼び止められた。
「連陸のことなんだが……」
「はい」
「ハードルの出場が決定した」
「おお〜! 100メートルは?」
「今のところ、結城」
「梨奈ちゃんか……」
陸上部のエースなんだから、当然だね。
「姫里が出る種目は2種目だ」
「もう1つはリレーですか?」
「ああ。1年女子100メートルハードル、1年女子4×100メートルリレーだ」
「リレーの走順は?」
「2走。エース区間だぞ」
「分かりました。頑張ります!」
「おう」
ハードルと、リレー。
足や腰の状態を考えたら、大丈夫だとは思えない。
「え〜っと、桧野は100メートルハードルと1年男子4×100メートルリレーに出ることが決まっている」
「はい、分かりました!」
「陵河もリレー、2走かな?」
「2走? 姫さん2走なの?」
「うん。エース区間なんだって」
「そうなんだ」
「ハードル、一緒だね」
「何に出ることになってるの?」
「100メートルハードル、1年女子リレー」
「え、一緒やん」
「うん」
「すげぇな。これで走順も一緒だったら……運命?」
「運命って、それだけで?」
笑い合った。
運命って……赤い糸とか、そっち系を想像しちゃうよ〜。
陵河と話す時間が、わたしにとっては本当に幸せな時間だった。
「陵河くん!」
「あ、真樹ぴょん」
真樹……。
笑顔で陵河に話しかけてきたのは、B組の三浦真樹子。
わたしや陵河とは違う小学校だったが、小学校時代に学年で1番モテていたという、陸上部の女の子。
陵河とは同じクラスのため、かなり仲が良い。
「昨日楽しかったね!」
「真樹ぴょん昨日ヤバかった」
「ああ、あれね。でも陵河くんもヤバかったじゃ〜ん」
「そんなことないし〜」
本当に楽しそうな2人を見ていると、胸がつまった。
昨日、一緒に遊びに行ったんだね……。
真樹は、わたしが陵河のことを好きだって知っている。
それを知っていて、陵河と仲良いってことを見せつけてきているんだ。
真樹の勝ち誇ったような笑みに、涙がこみ上げてきた。
なんで真樹なんかと仲良くするの?
真樹にカレシがいること、陵河だって知ってるでしょ?
しかも、それが、すぐそばにいる川中さんだってこと。
川中さんの表情を、見ていられなかった。
切なすぎるよ。
川中さんはそれぐらい、真樹のことを大切に思ってるんだね……。
「明日ちゃん、教室行こう」
「あ、唯香。うん、行こ!」
必死に笑顔をつくり、自分の感情を閉じ込めた。
「何の種目に出場するか言われた?」
「うん。100メートルハードル、1年女子のリレー」
「さっすが! 個人種目もリレーも掛け持ちだね!」
陵河のことを気にするのなんてもうやめよう。
何度そう思っただろう。
誰にでも優しいあいつが、モテないはずがない。
そんな陵河に恋したら、辛いに決まってる。
そんなことは分かってたのに。
でも、それでも、他の女子と仲良くしてるのを見るのはやっぱりキツいな……。
「明日ちゃん? 大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫だよ」
「真樹子ちゃんのことは気にしなくて良いから」
「え、なんで……」
「陵河くんは結構見る目あると思うよ。真樹子ちゃんなんかを好きになることはないよ」
「唯香……ありがとう」
「でも、川中もかわいそうだね」
「うん。川中さんをどうにかしたい……」
「真樹子ちゃん、川中のこと好きじゃないよね。告白されたからテキトーに付き合ってるだけだよ」
川中さん……。
真樹と付き合わなくても良いんだよ。
川中さんなら、もっと良い人と付き合えると思う。
そして、陵河。
お願いだから、真樹のことだけは、好きにならないで……!




