㉙再びの告白
テニス部に残ることを決意して、完全に陸上から身を引いたわたし。
唯香達陸上部のみんなは残念がってくれたし、望亜達テニス部のみんなは喜んでくれた。
こんなにみんなが必要としてくれるなんて、本当に幸せなことだよね。
やっと平凡な毎日が戻って来る……って思ったのに、すぐにテスト2週間前。
いつもは勉強しないわたしだけど、さすがにテスト前勉強しないのはマズいからね。
頑張らないと!
「え、明日ちゃん毎日勉強してんの!? えらっ!」
1週間毎日30分程度は勉強し続け、もうテスト1週間前。
わたしの学習計画表を見た唯香が驚く。
「何言ってんの? トータルの時間だと唯香のほうが多いじゃん」
「……明日ちゃんは良いよね。他の人より勉強しなくたって、他の人より頭良いんだもん」
「そんなことないよ」
ああ、やっぱり困る。
こういうことを言われた時、どう反応すれば良いのか……。
「今日はもう部活ないよね?」
「うん、1週間前だもん。でも自習室がある」
「ああ〜、自習室か。頑張ってね。じゃあね〜」
「うん、じゃあね」
唯香に手を振って別れた後、学習室に向かった。
1年学級委員会主催の自習室。前期からこの取り組みを行っている。
今回は来てくれる人が多いんだよね!
「まだ4時じゃないから話してても良いよね?」
「うん、良いでしょ。先生もいないし」
サボる気しかないじゃん。
笑ってしまう。
「自習室入らせてください!」
は? 誰?
ぱっと振り向くと、そこにいたのは陵河と川中だった。
「生徒手帳書いてきたの?」
「ううん」
「じゃあダメ」
「お願いします〜!!」
他の学級委員が相手してくれているので、わたしは気にせず話し続ける。
「じゃあ姫さんと2人で交渉させて!」
陵河が訳分からないことを言い始める。
「何で明日奈ちゃんなの?」
「とりあえず良いから! お願い!」
陵河がわたしのことを見た真剣な瞳。
うん、何がしたいのか分かったよ。
わたしが好きって言ったこと……そのことについて、話したいんだよね。
「うん、分かった。向こう行こう」
陵河の瞳を見てうなずき返し、廊下に出た。
階段の踊り場まで無言で歩いて行く。
「あの……さ」
沈黙を破ったのは陵河だった。
「前、話した時にさ、姫さん言って逃げたじゃん」
「……」
「……好き、って」
顔がかあっと赤くなった。
恥ずかしくて顔を直視できない。
「あ、あの、あれって間違えて言っちゃっただけだよな? 大丈夫、オレ、変な誤解とかしてないから。姫さんがオレのことを好きじゃないなんてよく分かってるし」
「なんで……」
「え?」
「なんでそう言うの?」
「え?」
「……わたしが陵河のことを好きじゃ、ダメ?」
あ。何言っちゃってるんだろう。
顔を見れない。
だけど、わたしには、陵河が今どんな顔をしているのか、手に取るように分かった。
「姫さん。それって……」
再び流れる沈黙。
「……陵河、ごめんね。わたし、陵河のことが好き」
ゆっくり顔を上げると、驚いた顔の陵河がいた。
ああ、やっぱり……告白なんてしなきゃ良かったのかな。
「姫さん。オレは……」
陵河が、ゆっくりと言葉を発し始めた。




