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君に想いを届けたい  作者: sakiko
28/30

㉘できない

次の日。

久しぶりに放課後にテニス部に参加した。


「あの……悩んでることがあるんだけど……」


陸上部に入ろうか迷っていること。

これは、望亜と萌乃と葵には言っておくべきだと思った。


「陸上部に入るか、悩んでるの」

「え!?」

「ダメだよ、姫さん! 絶対ダメ!」

「姫さんがテニス部からいなくなったら、どうなっちゃうと思ってるの!」


え……。

驚いた。みんながここまで反応してくれるとは思っていなかった。


「え、何? 姫さん陸上部入るの?」


高守も会話に参加してくる。


「え、イヤだよ。姫さんが陸上部に行っちゃうんなら、オレは陸上部か野球部かサッカー部かバスケ部に入るからね」

「選択肢多っ!」

「とりあえず、陸上部行っちゃダメだからね!」

「陸上部行ったら一生ゆるさない」

「めっちゃガチじゃん」


そっか、テニス部のみんなは、こんなにわたしを必要としてくれてるんだ。

だったら、わたしは、テニス部に残る。

テニス部で卒業まで過ごしていく。

ごめんね、唯香。ずっと陸上部に誘ってくれてたのに。

ごめんね、梨奈、真樹、若菜。もう一緒にリレーは走れないかもしれないね。でも、今の陸上部のみんななら、わたしがいなくても55秒台前半が出せるよ。

陸上部のみんな、本当に陸上が楽しかったです。短い間だったけど、ありがとうございました。


「姫さん、テニス部に残ってくれるよね?」

「……うん!」


自然に笑顔になれた。

部活のことは決着がついたんだから、次は陵河とのことだ。

今日は雨のため、室内トレーニング。

室内トレーニングは校舎内で行うから、サッカー部、野球部、陸上部にも会える。


「あ、姫さんファイト〜!」


走っている陸上部の梨奈達が声をかけてきてくれた。


「うん、ファイト〜!」


梨奈達と違う部活っていうのが変な感じ。

わたしが高守の隣で空気イスをやっていると、足元で筋トレをしていた陵河が話しかけてきた。


「都大会どうだった? 足速かった?」

「え、うん」


いつもと変わらない声と笑顔に、少し戸惑ってしまった。


「11秒台いた?」

「うん、いたよ。でも普通は12秒台って感じだった」

「ふっ、遅えなぁ」

「おまえが言えることじゃねぇだろ」

「いや、言えることだから」


ナゾに偉そうな陵河に笑ってしまう。


「姫さんはどうだった?」

「わたし? ……わたしは、全然ダメ」


応援してくれてありがとう、わざわざ「頑張って」って伝言を頼んでくれてありがとう。

そう言いたかったのに、喉がつまったようにその言葉を発せなかった。


「おい陵河、真面目に筋トレやれよ!」


サッカー部の男子が陵河に声をかけて、また筋トレをし始めた。

そして、そのまま、その日は陵河と話すことができなかった。

やっぱりダメだ。

ちゃんと話をしようって思ったのに……無理だった。

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