⑳閉会式
全員がスタンドに着席し、連陸の閉会式が始まった。
ついに、総合順位の発表だ……!
「まずは女子から。6位から発表します」
6位以内に入っていない学校は、名前さえ呼んでもらえないんだよね。
「6位、H中学校」
そのまま5位、4位、3位と続くが、M中の名前は出て来なかった。
今年のM中はかなり強いはずだ。
ようするに、2位で呼ばれなければ、きっと1位……!
「第2位」
お願い、お願いします……!
「R中学校!」
「やったぁぁぁぁ!!」
勝利の確信をしたわたし達は、名前を呼ばれてもいないのに歓喜の声をあげる。
「第1位、M中学校!」
「よっしゃぁぁぁぁ!!!」
「やったぁ!!」
「きゃ〜〜!!!」
盛り上がりまくる女子。
先輩後輩関係なくハイタッチを交わし、みんなが幸せな笑顔に包まれた。
「次は男子です」
6位、5位、4位、3位……男子もまだ名前を呼ばれていない。
お願い、1位でありますように……!
「第2位。M中学校!」
「ああ……」
「優勝できなかった……」
10何校かある内の2位。それでもかなりすごいはずなのに、男女アベック優勝をねらっていたわたし達にとっては、少し悔しさの残る結果になってしまった。
でも、でも、男子準優勝、女子優勝ってすごすぎない!? 男女総合で考えたら、M中学校が完全にトップだよ!
先輩が賞状や優勝旗、優勝杯をもらっている姿をながめる。
何にも代え難い幸福感。
ああ、今まで頑張って良かった……。
テニスを休んで、陸上に本気でチャレンジして、本当に良かった……。
わたしの今シーズンの陸上ももう終わり……って、終わりじゃないじゃん!
そうだ、これから支部対抗都大会があるんだ!
もうすっかり終わったような気分になってた。
「キャプテン」
閉会式が終わると、梨奈と若菜と真樹が話しかけてきた。
「ん?」
「本当にありがとう」
3人が、幸せそうな笑顔で言う。
「姫さんがいなかったら、絶対に、優勝なんてできなかった。60秒、今まで切ったことがなかったんだから」
「でもわたし達は陸上部なんだから、例え姫さんにでも負けたくないって思って、いつも以上に頑張って、短距離もすごく速くなることができた」
「姫さんがいなかったら足速くなれなかった。バトンもうまくなれなかった。本当にありがとう!」
3人からの言葉が、本当に嬉しかった。
「この4人じゃなかったら、きっと都大会出場はできなかったと思う。これはわたしの力じゃないよ。3人とも、本当にありがとう!」
リレーによって育まれたチームワーク。
わたしは、陸上を楽しむことができるようになっていた。
それは唯香のおかげ。梨奈、真樹、若菜のおかげ。
本当に、ありがとう!!
「ってことで、陸上部来て」
「なんだそれ!」
「姫さんがいないと、リレー自己ベスト更新できないよ〜」
わたしを求めてくれている。その事実がとても嬉しい一方、その期待には応えられない切なさもあった。
「キャプテン」
「え?」
いたずらっぽく声をかけてきたのは、陵河だった。
「ハードルとリレー、1位おめでとう。総合優勝おめでとう!」
屈託のない笑顔に、胸がつまった。
「……ありがとう。陵河も、ハードル3位おめでとう。リレー3位おめでとう。総合準優勝おめでとう!」
「うん」
陵河がうなずく。
「これで、笑顔で学校に帰れるな」
「そうだね」
「都大会行けるんだよね」
「うん、多分」
「オレは行けなかったわ……。ダサいな」
「ダサくなんてない! ……だって、頑張ってたじゃん」
目を見ていられなくて、目線を足元に落とした。
「……姫さん……ありがとう」
何かの片付けに行っていた陸上部が帰って来る。
「え〜、この後、学校に行きます。部活などで残っているみんなが待っていてくれてるそうです」
あ、そうなんだ。
でも、この結果なら大丈夫だよね。笑顔で戻れるよね。
「明日ちゃん、本当にお疲れ様。ホントにカッコ良かったよ!」
「ありがとう! 唯香も、サポートありがとう!」
体も疲れ切っているし、喉も少しかれている。
でも、わたし達は、この上ない幸福感で包まれていた。




