⑰タイムレース決勝(女子1年ハードル)
「1年女子ハードル〜。集まって〜」
招集が始まり、ゼッケンの確認を行った。
わたしは6レーンなので、6の腰ナンバーをもらい、右腰に装着する。
ハードルはタイムレース決勝。2組あるが、1度走ればもう順位が決まってしまう。
わたしは1組目。ああ、もう出番だ……。
落ち着け、落ち着くんだ。
いつも通りに走れば、予選は突破できるから。きっと勝てるから……!
「On Your Marks」
震える手を抑えて1礼し、タータンに手を置く。
青い。とてもキレイな色。
右足からスタブロに置き、左足も置いてから、白い線の内側に手をそろえた。
深呼吸。
「Set」
腰を高く上げて……。
「バン!」
うまくスタートを切れた。
第1ハードルまで走る。隣に人は見えない。
左足で踏み切り、右足でハードルを越える。
うん、めっちゃ調子良い。
練習通り、いつも通りのリズム。
転ばないように、練習よりは気持ち保守的な走りをしながら進んで行く。
最終ハードルを飛び越え、全力疾走!!
「はぁ、はぁ」
走り終わると、かなり息が上がっていた。
電光掲示板に映るのを待つ。
『1 M 姫里明日奈 16,62』
うわあ〜、ギリギリ目標タイム届いてないじゃん……。
少し悔しい気持ちを味わいながら、青いタータンに向き直って1礼した。
震える手で腰ナンバーを外す。
ああ、お願い。1位でありますように。
2組目に、わたしより速い人がいませんように……!
「On Your Marks」
もう2組目が始まってしまう。
さっき自分が走った時と同じくらい、いや、それ以上に緊張していた。
「Set」
お願いします。1位をとりたいんです……!
「バン!」
周りの音が、全く聞こえなくなった。
ハードルを飛び越えている人だけを見つめる。
……ゴール!
2組目の中での1位の人がゴールすると、ぶわっと耳に音が入ってきた。
いろいろな学校の応援。知らない人の声。放送。
何を聞いても、落ち着かない。
呼吸が荒い。
怖い。
1度目を閉じ、うつむく。
大丈夫、きっと大丈夫。
バッと電光掲示板を見上げると、そこには……。
16,95!!!
1位の人のタイムは、16,95秒!
じゃあ、ようするに、わたしは……。
「きゃ〜〜!!!」
M中のスタンドから聞こえる歓声。
一刻も早くその歓声のもとに行きたくて、一刻も早くみんなに笑顔で迎えてほしくて、わたしはスタンドへの道を全力疾走で駆け抜けていた。
「姫さん!」
「明日ちゃん!」
「わたし、1位だよね……!?」
「うん!」
「本当におめでとう!」
みんなの笑顔に囲まれて、わたしは本当に幸せな一時を過ごした。




