⑯予選(女子1年4×100メートル)
「若菜! やったよ!」
「梨奈〜〜!!!」
スタンドに梨奈が戻ってくると、みんなが笑顔で迎え入れる。
「マジでおめでとう! 決勝も頑張れ!」
「うん!」
「バックストレート側でバトン練習しに行こう」
「あ、オッケー」
梨奈以外の人はアップし、バトン練習を少し行うと、あっという間に招集時間になった。
「まずは絶対に予選突破しようね!」
「うん!」
大丈夫、この4人なら。最強メンバーじゃん!
招集を済ませ、それぞれの場所に向かう。
1走は400メートルのスタートのところ、2走はバックストレートの始まりのところ、3走はバックストレートの終わりのところ、4走はホームストレートの始まりのところ。
こう見ると、やっぱり2走は走る距離が長い。エース区間っていうのも納得できる。
まずは予選1組目。わたし達M中は2組目なので、軽くストレッチをし、呼吸を整える。
「はい、2組目入って良いよ〜」
ブルーゾーンからバトンゾーンに向かって18足分測り、唯香がメッセージを書いてくれた白いテープを貼る。
『M中 明日ちゃんFight! 60’00切ろう!』
わたしはリレーに出るのが初めてだけど、陸上部のメンバーは何度かリレーに出たことがあるらしい。
でも、1位とかは全く取ったことないし、タイムも60秒を切ったことがないと言っていた。
このメンバーなら行ける。60秒は絶対切れる!!
だって、リレーって1走以外加速走みたいなものじゃん? 1走の真樹は加速走じゃないから、100メートルの自己ベストが確か14,9秒くらい。わたし、若菜、梨奈は加速走では余裕で15秒台を切っている。わたしが13秒台、若菜と梨奈が14秒台だった。
この4人なら絶対いける。絶対勝てるよ!!
「On Your Marks」
真樹、頑張れ……!
「Set」
真樹なら行ける。今まで練習してきたんだから!
「バン!」
「真樹子ちゃんファイト〜!!」
「三浦ファイト〜!!」
聞き慣れた「ト」が上がる「ファイト」の言い方。
みんなが応援してくれてる。だから、大丈夫!
真樹の片足がブルーゾーンを超えたのを見て、前に向き直って加速し始める。
「はい!」
わたしは2走なので、左手を真樹に向かって出した。
冷たくて固いバトンの感触。
テイクオーバーゾーン内で、バトンの受け渡しが完了した。
「姫さんファイト〜!!!」
後ろから聞こえる真樹の声。
大丈夫、行けるよ……!
バックストレートを本気で駆け抜け、7レーンの人に少し追いついた。
「はい!」
若菜の右手にバトンを押し込む。
「若菜ファイト〜!」
このカーブで、若菜は7レーンと8レーンの学校を抜かした。
バトンは梨奈に渡る。
「梨奈ファイト〜! 行けるよ〜!」
え、ウソ。梨奈1位じゃない?
梨奈がゴールし終わり、若菜の使ったテープをタータンからはがし、すぐに電光掲示板を見る。
『1 M 56,78』
え、ウソ。すごくない!?
初めて60秒を切ったってことだよね!? しかも、その初めてで、56秒台を出したの!?
すごすぎる。短距離においての3秒はすっごい大きいもん。
「おめでとう!」
3走の先輩が声をかけてきてくれて、ハイタッチする。
「先輩も頑張ってください!」
「うん! わたし達はきっと大丈夫!」
笑顔で言う先輩が、本当にカッコ良かった。
「若菜〜〜!! やったね!!!」
「姫子!! サイッコーの気分だよ!!」
4人全員が集まり、すっごく盛り上がり、スタンドに戻った。
「これで決勝行けるんだよね?」
「うん、もちろん!」
「この大会で優勝したら都大会行けるんでしょ?」
「え、そうなの?」
「うん。優勝したら絶対行けて、準優勝でも行けるかもしれない」
「都大会行くしかないっしょ!」
「うん。絶対行こう!」
「この4人で、このメンバーで、都大会に行こう!!」
この4人なら、本当に奇跡を起こせそうな気がした。
スタンドで少しパンを食べる。
「あ、もうハードルの招集だ。行かなきゃ」
「もう!? めっちゃハードじゃん。頑張ってね!!」
「うん! 行ってきまーす」
このサイコーの気分でなら、ハードルも跳べる気がした。




