⑭最後の練習
連陸前日の放課後。
連陸選抜の選手は、視聴覚室に集まって、先生からプリントを受け取った。
全員の招集時間&W-up目安時間、目標タイム、目標順位がまとめられている。
100メートルハードルの目標タイムは16,5秒、目標順位は1位。
うああ、わたしに対する期待すごくね!? すごい緊張する……。
リレーは目標順位4位かぁ……あまり期待されてない感。
「姫さん、目標タイム何秒だった?」
「ハードルが16,5」
「さ、さすが姫さん。速すぎる……!」
先生の話が終わり、ゼッケンとハチマキを取りに行く。
赤い布に白で『M』と刺繍されているハチマキ。なかなかにダサいが、気合入れには良いだろう。
右手首につけたリストバンドを、左手でギュッとにぎる。
今日は連陸前日なので、気合い入れのために、わたし達各キャプテンは全員リストバンドを着用していた。
明日で、連陸が終わってしまう。
陵河と話せる日々が、終わってしまうかもしれない。
そう考えたら、胸がすごく苦しくなった。
「ゼッケン番号610誰〜?」
「あ、はい。わたしです」
白に赤で『610』と書かれたゼッケンと安全ピンを受け取る。
「姫さん、明日リレー頑張ろうね〜!」
4継の第1走を務める真樹が言ってくる。
「うん、頑張ろうね! 若菜と梨奈ちゃんも!」
「頑張ろう!」
4人は、笑顔で顔を見合わせた。
これなら絶対大丈夫。きっと、良い結果を残せる!
「女子の気合すげぇな」
陵河の笑顔に、キュッと胸を締め付けられた。
ねえ、陵河。ずっと考えてたことがあるの。
連陸が終わったら、この忙しいのが落ち着いたら、陵河に告白しても良いですか?
そしたら、想いを受け取ってくれますか?
付き合ってとは言わない。付き合えないのは分かってるから。
でも、想いを伝えても、嫌がらないで聞いてくれますか?
もう我慢できないんだ。どうしても無理なんだ。
どうしてもね、やっぱり……君に想いを伝えたいんだ。
「ねえ唯香」
「何?」
「わたし、連陸が終わったら、陵河に告白する」
「明日ちゃん……?」
「付き合えないことは分かってるけど、想いを伝えたい」
「明日ちゃん、やっと告白する気になったんだね! 大丈夫、陵河くんは良い子だもん。きっと気持ちを受け取ってくれる」
「うん。ありがとう」
「頑張って。お互いにキャプテンなんだから。絶対に告白するチャンスはあるよ!」
「うん、頑張るね!」
唯香と笑い合った。
わたしは唯香みたいにかわいい訳じゃない。
真樹みたいにモテる訳じゃない。
望亜や萌乃や葵みたいに優しい訳じゃない。
でも、きっと大丈夫。
想いを伝えても、陵河なら受け止めてくれる。
「姫さん」
「ん?」
笑顔で振り返ると、そこには高守がいた。
「あ……」
一瞬にして顔が強張ったのが分かる。
「連陸、頑張ろうな」
高守が屈託のない笑顔で言った。
「高守……」
「もう避けんな」
「……うん」
「頑張るぞ」
「うん。頑張ろうね」
笑い合う。
これで、今までの空白の時間がうめられた気がした。
高守との関係も、もう大丈夫。
この気持ちなら、陵河に想いを伝えられる。




