⑫避けてしまう
「姫さ〜ん! 陵河が呼んでる!」
連陸2日前。
休み時間、クラスの男子に呼ばれ、わたしはドアのほうに向かった。
「何?」
陵河が呼んでくれた。
それは、連陸が関わっているからだろう。
でも、そう分かっていても、あり得ないくらいに嬉しかった。
「なんかね、明日学年集会があるらしくて、そこで連陸選手の紹介をするんだって。で、連陸選抜で学級委員なの姫さんだけだから、姫さんに司会進行してもらうっぽい」
「あ、そうなの? 司会進行ってどうすんの?」
「いやよく分からん」
「え、誰に言われたの?」
「山内先生。『連陸の中の学級委員は姫里だけか?』って聞かれたから『はい』って言ったら『じゃあ姫里に司会するように頼んでくれ』って言われた」
「え、な、なんと無責任な……!」
戸惑うわたしを見て、陵河が笑う。
「まあ姫さんならどうにかなるっしょ」
「じゃあ、連陸のリーダーである陵河も一緒に司会しませんか?」
「イヤだね。オレ学級委員じゃないもん!」
「良いじゃん別に〜。学級委員じゃなくても〜」
「とにかく、姫さん頼んだぞ!」
「ちょまっ……どうすれば良いん!?」
「詳しくは、竹中先生に聞けば分かるんじゃない?」
「分かった。オッケー」
うなずいて、教室に入る。
そうだよな、学年集会なんだから山内先生よりも竹中先生に聞いたほうが良いよな。
「姫子! 今、しゃべってたね」
若菜に満面の笑みで言われる。
「ちょっ、声でかい……」
「何ニヤけてんの」
「若菜のほうがニヤニヤしてるよ!」
もう〜。
「で、陵河くんと何しゃべってたの?」
「明日の学年集会で連陸選手を紹介するんだって。で、わたしが司会進行するらしい。それを言いに来ただけ」
「え、それだけのことであんなに楽しそうにしゃべってたの!?」
「え、そんなに楽しそうだった?」
「うん。陵河くんも姫子もめっちゃ楽しそうだった」
「うお〜」
「姫子、いけるよ! 陵河くんも姫子のこと好きじゃない?」
「それは友達としてね」
「友達から恋人になるの!!」
若菜、考え方楽観的すぎる〜。
「で、若菜は好きな人できたの?」
「……うん」
「マジかぁ! え、誰? 誰?」
「違う学校の人だよ」
「なんだぁ。頑張ってね!」
「うん。姫子もね」
「って、次英語じゃん! やばいやばい、急がなきゃ。少人数だよね」
「そうだよ、少人数だ!」
若菜が急いで自分の席に戻る。
「明日ちゃん、行こ」
同じ少人数のクラスの唯香が話しかけてきた。
「あ、うん。行こー」
「若菜と何話してたの? めっちゃ盛り上がってたけど」
笑顔で聞いてくる。
「いや、さっき陵河と話してたからさ。何話してたのって聞かれた」
「おー、話したんだ」
「うん。業務連絡みたいな感じだったけどね」
陵河と話したってだけで、こんなに舞い上がってる……おかしいね。
「あ、高守だ」
C組の前の廊下にいる高守を見て、唯香がつぶやく。
わたしは、高守と目を合わせないようにして、C組の教室にサッと入った。
「どうしたの? なんか動きがいきなり速くなったけど」
「いや何でもないよー。速く動きたかっただけ」
「何だそれ」
2人で顔を見合わせて笑う。
良かった、ひとまずバレなかった。
「でもさ、高守が明日ちゃんに話しかけないなんて珍しいね」
「え、そうかな? 視界に入らなかったんじゃない?」
高守のことを避けてしまっている。
こんなに、あからさまに。
わたしだって避けたくない。いつも通りに接したい。
でも、それが、できないの……。
告白されてから、変に高守を意識しちゃって、友達だと思えなくなっちゃって、なんか怖くて……。
どうすれば良いのか、分かんないんだよ……。




