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君に想いを届けたい  作者: sakiko
11/30

⑪本気

「ただいま」


望亜、葵、萌乃、宇宙と別れて家についた。

1人でいても、高守のことがわたしの頭の中を占領している……。


「お帰り」


2階にあがると、お母さんが夜ご飯を作っていた。


「明日ちゃん手伝って」

「はーい」


荷物を置き、着替え、手を洗ってキッチンに行く。


「今も膝痛いの?」

「うん、痛いよ」


いきなりどうしたのかな?

突然の質問に、戸惑いながらも答える。


「もうテニス部じゃなくて、陸上部に入りなよ」

「え! なんで!」

「テニスは危険でしょ」

「そんなことない!」

「あなたはただでさえケガしやすいんだから。テニス部に入って、何回ケガした?」

「5月に腰強打、7月に足首捻挫、8月にテニスボールで目を強打……3回」

「明日ちゃんは、これからも絶対ケガする。そんなにケガしたら、先生も迷惑でしょ」

「そ、それはそうかもしれないけど……」

「テニス部よりも陸上部のほうがケガは少ない」

「何言ったって、陸上部には入んないよ!」


感情が高ぶってしまった。


「わたしは、テニスがやりたくてテニス部に入ったの。陸上部になんて入る気ないから」

「なんで? 足速いし、良いじゃない」

「イヤだよ。中長距離やんなきゃいけなくなるし、好きなのは短距離だけだから」

「……」

「とにかく、テニス部以外の部活に入る気ないからね」


そう言いながら、ご飯を盛る。

テニス部に入った自分を否定されたようで、とても悔しかった。

小学生のころ、お母さんにテニス部に入ってはいけないと言われた。ケガをするから、危ないから。

だから、1度テニスをあきらめた。

その時は、陸上部に入ろうと思った。陸上部に入って、走り幅跳びか走り高跳びをやろうと。

でも、やっぱりどうしてもテニス部に入りたくて、お父さんとお姉ちゃんも味方になってくれて、お願いして、やっと許してくれた。

やっとの思いでテニス部に入ったのに、今さら転部なんて……絶対イヤだ。

それに、今から陸上部に行ったところで、専門は短距離かハードルにさせられると思う。

先生の勧誘の仕方や誘うタイミングから分かる、絶対にそうだから。


「……じゃあ、ケガしないようにして」

「うん、分かった」


これって、お母さんもテニス部を認めてくれたってことだよね。

テニス部以外の部活に入る気はない。

これは本当のことだし、本気。

わたしは、テニスが本当に大好きになっていた。

そして、走ることの楽しさが、前よりも感じられなくなってきていた。

わたしが好きなのは、短距離を少しだけ走ることだけ。

ダイニングテーブルの横で、スタンディングスタートの姿勢をとる。

前、後ろ、前、後ろ……。

リズムに乗って、勢いよく。

後ろ足の左足をすっと前に出し、右足で思いっ切り床をける。

このスタートダッシュの仕方が、1番好きだ。

リビングの端まで走り、急停止した。


「スタートダッシュうまくなったね」

「うん」


陸上部で初めてクラウチングスタートをやった時。

「On Your Marks Set」の合図に慣れなくて、戸惑ったなぁ。

しかも、陸上部の人は1礼してからスタート姿勢になるし。

慣れないことだらけだった陸上部。

でも、あと1週間たったら、もう陸上部に行くことはない。

スパイクを履いてタータンで走ることも、もうないかもしれない。

2年生で連陸に出れる保証も、何もない。

大好きな短距離を、本気でやれるのは、今年が最後だけかもしれないんだ。

陸上部には入りたくないけど、でも、やっぱり、陸上は好きだ。

リーダーとして出れる、貴重な連陸。

やっぱり……やっぱり……本気で頑張りたい!

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