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きゅーちゃんは死にました

作者: 希恵和

 きゅーちゃんは死にました。社会的に死にました。

 どう死んだかっていうと好きな人をバラされ死にました。

「女子のくせに女子が好きなんだぜーきめえー」で死にました。

 何がきめーじゃ、お前の高校生許容を超えた加齢臭よりは害もないし、鼻も刺激しとらんわぼけえ。

 

 そもそもきゅーは、優紀(ゆうき)を逆から読んで、きゅうっと伸ばしてきゅーなんじゃ。

 はるなちゃんがつけてくれたんじゃ。お前みたいなおっさん顔のおっさんがパパラッチみたいに大声で叫ぶように出来てないんじゃ! それほとんど「きゅー」じゃなくて「きゅいん」になっとるやないかい! どこのドリルじゃ殴り飛ばしたろかぼけえ!

 

 はるなちゃんは高校1年のころからうちに優しくって、2年になったらもっと好きになってもーて、3年なったら爆発してもうたんじゃ! 分かるやろ!? あんなかわいいたんぽぽの綿毛の妖精みたいな子に出会って、運命やって思うやろ!? 悪かったなああうちも女子でさああ! できれば性別変えたかったわ! 


 でも知っとるか? 男子って元は女子やねんぞ?

 おかんのお腹の中でスライってやつがいたかいなかったかの違いなんじゃぼけえ! うちはあれや、スライもらっててんけどスライとタライ勘違いして持ってもうただけやっつーの。そうやと思いたいっつーの!


 じゃあ、男子になれるんかっていったらまた別やけど。

 でもはるなちゃんが好きやったし、大好きやったし、やったしって過去形やんか。


 

 わかるのは数秒やった。

 はるなちゃんが言ったんやわ。

 だって、LINEで伝えてしもうたし。

 

 LINEでどう聞き耳たてんねん。

 というか、はるなちゃん昨日から未読スルーやし。別にスルーするのは仕方ないって。


 見たくないものを見ないことも、これから一生私と話さないことも別に、仕方ないってわかってる。

 うちは泣いちゃうかもしれんけど、それが仕方ないことで、LINEなんかで伝えた私の罰やって知ってる。


 声で伝えればよかったかっていうと、そこまで私は強くない。

「でもな、おっさんに言うのは無しやで」

 せめて言うのなら、担任の都先生とかな。クラス委員長のさよこちゃんとかにな、『あいつ、うちにこくってきてん』って言ってたらな。とんちんかんの私は気が付かなかったのにな。


 いつかクラスで孤立することになっても、なんも怖くなかってんで。

 

 でもね、はるなちゃんはおっさんなんかちっとも好きじゃないやろ。

 

 好きなのはたくみとかごうとかテレビの向こうの人やろ。何? おっさんにスマホの画面でも見られたんか? んなわけないよな未読やねんから。もし、見られたとしても『女同士の冗談』って言っとけよ。


 裏切者。


 裏切りって、人が死ぬんやで。筆箱の中にカッター入ってんねんけど、手首切るのは怖いしな。

 さっきから教室の隅で女友達とげらげら笑ってるはるなちゃんを刺すのは流石に勇気いるわ。

 おっさんころすのはもっといややわ。加齢臭が散らばりそう。一番いいのはこの教室から出ていくことやな。ドアはどっちやったっけ。あー、たぶんこっちやと思う方向を。進む方向を私は選んだ。


「おっさん、そこどいて」

 私は窓枠にもたれかかって、私の悪口いうやつをなんとなくどかした。


 窓はあきっぱやったから、そのままぴょんって飛び込んでんけど。

 どうなんやろ、4階で人って死ぬんやっけ。


 

 

 


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