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小町  作者: こころ龍之介
7/8

第七話

手持ちぶさたからか貴文美は紅茶を入れる。

アールグレイの良い香りが部屋に満たされた。

マグカップをりかに渡し、

「はい、温まるよ。りかさんも飲んで・・・」

りかは一口啜ると、

「あっ、美味しい」

「でしょ?先ぱいのお土産なんだ。何でも日本にはまだ入ってないブランドの紅茶なんだって。これなんだけど」

りかが紅茶の缶を受け取ると、黒地に溶けたゴシック体で“Nicks”と書いてあった。

「ニックスかぁ、初めて聞いたわ。でも、美味しいわよ。この紅茶」

貴文美は先輩のお土産を喜んでもらったのが余程嬉しいのか、

「りかさん、お腹空かない?ボクが作った野菜ゴロゴロシチュー美味しいんだけど」

りかは紅茶を飲み干すと、ニッコリ微笑み、

「せっかくだから、ご馳走になろっか」


りかと貴文美はちゃぶ台に向かい合わせに座り、話をしながら貴文美特製の野菜ゴロゴロシチューを食べている。

小町はりかの横で安心したのか眠っていた。

野菜の素朴な味が美味しい。

貴文美がすまなさそうに、

「ゴメンね、りかさん。ホントに野菜しか入ってなくって」

事実、シチューは野菜しか入っておらず、具材はじゃがいも、玉ねぎ、かぼちゃ、ニンジン、ヒヨコ豆位だった。

りかは気にする事もなく、

「あら、私は好きよ、貴文美ちゃんの味。調和が取れてて美味しい」

「そう?ならいいや」

貴文美は照れる。

丁度、一皿食べあげた頃、りかが疑問を口にした。

「気を悪くしたら、ゴメンね。貴文美ちゃんご両親は?」

「二人ともいない。亡くなったの。母さんは元々病弱だったから、ボクを産んでスグ。父さんはボクが10歳の時に事故に巻き込まれて・・・。それからは、ボクとゴローの二人っきり。あと、たまに父さんの友だちのお医者さんが様子を見に来てくれるの」

りかは驚き、

「寂しくない?貴文美ちゃん」

「寂しくないと言ったら嘘になるけど、学校に戻れば友だちがいるし。離れていても気に掛けてくれる先ぱいも沢山いるから」

そう言って、貴文美は首を横に振った。

刹那、小屋の扉で犬の吠える声が聞こえる。

ゴローが帰ってきたのだ。

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