表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小町  作者: こころ龍之介
6/8

第六話

「てかさ、貴文美ちゃん、何で又また大阪の高校へ?ここ長野でしょ?」

貴文美は恥ずかしそうに、

「そだね。ボク、特待生枠で入れてもらってるから・・・。元々、高校行く予定無かったし。特待生だと、授業料免除で寮費も要らないから。見ての通りボクん家、ビンボーだし」

りかが周りを見渡すと、確かに生活臭のするモノと言えば、りかが寝かされていた板間の上のちゃぶ台位だろうか。

ハッと気づく。

《この部屋、電気が無い》

部屋の中は粗末なランタンと暖炉の光だけで満たされていたが、それでも暖かかった。

りかは立ち上がりながら、

「そろそろ失礼するわ。旅館も心配してるだろうし・・・」

すると貴文美は首を横にふり、残念そうに、

「今はやめた方がいいよ。吹雪いてるし・・・」

そう言って指差した窓は、かなり激しい雪が降っていた。

「だから、ゴローに手紙持って行ってもらうから、これに明日帰ると書いて」

貴文美はノートペンを差し出す。

りかは驚き、

「ゴローって、あの小町の傍にいるワンちゃんよね?大丈夫?」

貴文美は自慢そうに、

「うん。ゴローなら一時間で帰ってくるよ。ね、ゴロー?」

貴文美の問い掛けにゴローは任せろと元気よくワンと吠えた。

りかは肩をすくめると更々と走り書きで、明日帰るから心配しなくて大丈夫です。と書いた。

貴文美はゴローを呼び寄せると、ノートをビリッと破り首輪に巻き付け、更にバンダナで巻く。

「これで大丈夫。お姉さん、泊まってる旅館名は?」

「水明館だったと思うわ」

貴文美は頷き、ゴローを抱き寄せると耳元で、

「ゴロー、街の郵便局の隣の水明館迄まで行って、この手紙渡してきてね。任せたよ」

もう一度、ゴローをハグして、扉を開けた。

雪は激しくなり、数メートル先も見えない。

貴文美の行っておいでの掛け声で、ゴローは雪の山中へ駆け出して行った。

りかは感心して、

「へぇー、凄いね、。貴文美ちゃん。よく(しつけ)てあるのね」

貴文美は首を横に振り、

「躾てなんかない。お互いに気持ちが理解(わか)るから、ボクとゴロー」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ