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小町  作者: こころ龍之介
5/8

第五話

暖炉の火が暖かい。

りかは子供の工房(アトリエ)らしき場所の板間の上で、ブランケットを掛けてもらい眠っていた。

傍らには小町も寝息を立てて眠っている。

小町の体には包帯が巻かれていた。

黄金色の犬は心配そうに小町を見詰め、時折額を舐める。


「ゴロー、もうそのワンちゃんは大丈夫だよ」

黄金色の犬は、ゴローと言うらしい。

嬉しそうに数度鳴いた。

ゴローの鳴き声で、今度はりかがうとうととして、

「うっ、ううん。もう少し寝かせて・・・、小町・・・」

仕事の疲れが溜まっているのだろうか。

「ゆっくり寝てたらいいよ、お姉さん」

少年と思わしき子供の声にハッと目を覚まし、身体をりかは起こす。

「ここ、何処(どこ)?」

「ここはボクのアトリエ。山の中の」

りかがガラス窓を見ると、雪深い山中である事は判断(わか)った。

真っ白で見事な雪景色が広がっているからだ。

りかは自身が古びたジャージを着せられてる事を確認し、

「私の裸見た?」

少年?に問い掛ける。

子供とはいえ、襲おうとすれば襲えるからだ。

少年?はコクンと頷き、

「濡れたバスタオルのままだと風邪引くし、凍傷にもなっちゃう。だから・・・」

りかは反論し、

「だからって、人が気を失っているのに、裸を見るってどうなの?これでも嫁入り前なんだからね、一応。助けてもらったのは、ありがたかったけど・・・」

りかは熊から助けてもらった事を、思い出した様だ。

愛犬の事を心配し、

「そういえば、こ、小町は?」

「小町?あぁ、あの雌のワンちゃんね。そこ」

少年?の指差した先に包帯を体に巻き付けた小町が、黄金色の犬からドッグフードを分けてもらって食べてるのが見えた。

りかは安心して、

「よかった。小町の怪我診てくれたの?ボク?」

少年?は頷く。

「危なかったけど、もう大丈夫。けど、街に戻ったら、念のため獣医さんには連れて行った方がいいよ。あっ、それから、こう見えてボクは女の子なんだけど」

少年?は着ているトレーナーの襟元から、チラリとブラジャーの端を見せた。

「だから、女性の裸見ても何とも」

いたずらに答えた。


りかは驚き、

「ごめんね。とってもショートカットだし、線も細いから、てっきりカワイイ男の子だと。私は藤城りか。今は大阪に住んでるシンガーソングライター。ラジオのDJやテレビのレポーターもするのよ」

そっと右手を差し出した。

ボクっ子の少女は手を握り返し、

「ボクは貴文美(きふみ)雲雀丘(ひばりがおか)貴文美。こう見えても、18才の高校3年生。よろしく」

元々、貴文美は極度の人見知りではあるが、良好な高校生活が彼女を人並みの対応が出来る人間に変えていた。


貴文美はちょっと、オドオドして、

「お姉さん、大阪って言ってたよね。河内長原の“聖クリ”って知ってる?」

「もちろん、私のマンションから見えるか・・・、らっ。

えーーーーっ!貴文美ちゃん、もしかして“聖クリ”生徒なの?」

りかは熊に出会った以上に驚いた。

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