再会①
その時、ユリヤは窓の外から誰かが呼ぶ声を聞いた気がして、会話を止めた。
「ユリヤ、どうしたんだい?」
「今、誰かが呼んだような気がして。…ほら!」
ユリヤに促されるように、話し相手である青年も耳を澄ました。
わずかだか、確かに外から人の声がする。
もしやと思い、ユリヤは窓へと駆け寄り、それを勢いよく開けた。
その瞬間、ユリヤの耳に紛れもない義理妹の声が聞こえた。
「お姉ちゃん!!助けて!!」
「ミランダ!!」
「し~!!」
ミランダの言葉に思わず、ユリヤは両手で口をふさぎ、周りの様子をそっと見渡した。
幸いなことに、他に気づいた人物はいないようである。
ほっと息をつくと、ユリヤは声を潜めてミランダに言った。
「ミランダ、探したのよ!!こんな夜にどこに行っていたの?」
「ごめんなさい!!でもお姉ちゃん、たすけて!!」
「助けるって??」
「皆に追われているの。」
それを聞いて、ユリヤはミランダが長に怒れられることを称してこのような表現をしたと思った。
村は今、神歌を歌うミランダが行方不明ということで大騒ぎである。
こんな中、村人に顔を出しづらいのだろうとユリヤは思ったのだ。
だから、一時的にミランダを部屋にいれ、頃合を見計らって長に伝えればよいだろうと考えた。
「分かったわ。お入りなさい。」
そう言って部屋に招きいれたユリヤは、思いがけないミランダの同行者に思わず大声を上げた。
「!!ミランダ、この人たちって!!」
「しー!!」
ミランダは慌ててユリヤの口を小さな手で塞いだ。
ミランダの同行者はニ人。
一人は長身の男性。柔らかい髪質とアメジストの瞳があいまって、不思議な雰囲気を醸し出している。もう一人は金の髪の少女。だが、彼女の顔色は真っ青で、今は長身の男性に抱きかかえられていた。
「この……人、達は?」
ユリヤは外の人間を見たことがない。
だが村の外の人間だということは一目で分かった。
小さい村だから、大抵の村人の顔は分かっている。
そして何より、二人の纏っている雰囲気が村人達とは全く異なっていたからだ。
初めて見る村の外の人間に、ユリヤは恐れと戸惑いを覚えつつ、ミランダに尋ねた。
「命のおんじんなの。なのに、みんな『あくま』って言って…」
「立ち話もなんだよ。とりあえず、その子を寝かせてあげよう。」
「エリク兄さん…」
ユリヤと話をしていた青年―エリクがそう提案すると、長身の青年は静かに礼を述べた。
そして、エリクに促されるように、近くのソファーに少女を横たえた。
「リン、大丈夫ですか?着きましたよ。」
「アンリ……着いたって……?」
「リン、ミランダのお姉さんの部屋ですよ。具合はいかがですか?」
「アンリ……。大丈夫よ。」
よろよろと上半身を起こしながら、少女は周囲を見渡した。
その時、少女の顔を見て、エリクが小さく叫んでいった。
「あ、あなたは!!」
「昼間の!!」
少女は信じられないものを見たかのように、そのハシバミ色の目を大きく見開いて言った。
そこには昼間、ぼったくりの武器屋から助けてあげた青年がいた。
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