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散り逝くは真紅に染まりし花  作者: 天野 みなも
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潜入①

 


 リンとアンリはミランダ案内で、森の中を進んでいた。

 聖騎士という仕事柄、闇でも目が利き、方向感覚も一般人のそれよりも優れているはずであったが、リンとアンリは既にガザンへの道筋が分からなくなっていた。

 それほどまでに縦横無尽、道なき道を3人は進んでいた。

 正直、本当にこの先にミランダの言っている村があるのか、リンは疑わしく思い始め、思わずミランダに尋ねた。

 「ミ、ミランダ……本当にこの道(?)で合ってるの?」

 「うん。だいじょうぶ。……たぶん。」

 「たぶんって……。」

 ミランダの返答にリンは脱力しそうになった。

 「まぁ、まぁ、リン。迷ったとしても、朝になれば何とかなりますよ。」

 「確かに、そうかも知れないけど…」

 「あ、着いた。」

 不意にミランダは明るい声で言った。

 その様子を見ると、本人も帰り道が正しいか、不安だったようである。

 夜の森を出歩いたのは始めてであったということを、そしてミランダが五歳という幼い子供であることを思い出し、リンは自分の度量の狭さを反省した。

 敢えて明るくミランダを励ましていたアンリの態度はさすがといえるだろう。

 とは言うものの、三人の目の前には、リンの背丈よりも大きな岩が幾重にも重なった岩場が圧倒的な存在感を持って立ちはだかっている。

 それはリンは体を反らせて見上げた。

 「ミランダ……これ村っていうの?」

 「うん。これが一番の近道なの。」

 と言うミランダの返答から、これが村への道だと察することができた。

 だが、どこにも入り口らしいものはなく、リンは訝しげにその岩を見つめた。

 そっと触れる。

 確かにある手ごたえ。

 リンはどこに入り口があるのかと、巨石をぺたぺたと触っていた。

 そんなリンの様子など気にすることもなく、ミランダは静かに言葉を紡ぎ始めた。

 

     我はこの地に住まいしもの

     古来よりの契約により、

     この地に根をおろしたものの末裔なり


 だが、ミランダが静かに呪文を唱えると、その岩の感触が一気になくなり、リンはそのまま前のめりに倒れこんだ。

 「わ!!痛ったーい!!」

 「リン、どこに行ったのですか!?」

 扉となっていた岩がなくなり、中の洞窟へ入ったようだ。

 先ほどまでリンが立っていた場所にはアンリとミランダが月明かりに照らされて、立っているのが見える。

 「リン!!」

 慌てたようにアンリが声を荒げた。

 まるで自分が見えていないかのように。

 「アンリ!どうしたの?」

 「リン、無事なのですね?突然消えてしまって……どこにいらっしゃるのです!?」

 「どこって……アンリの目の前だよ?」

 目の前に立ってもあらぬ方向を見つめるアンリ。

 リンはそんなアンリに手を伸ばそうとした。だが、見えない壁に遮られ、アンリに触れられなかった。

 「大丈夫だよ。呪文の後、一緒に入ればへいきだよ。」

 ミランダはにっこりと微笑むと再び呪文を唱え、アンリの手を引いて洞窟の中へと入ってきた。

 「い、今のは?」

 「これは、村をまもるためなんだって。村の人も知らない言葉なんだけど、お兄ちゃんがこっそり教えてくれたの。」

 「……呪文が無いと入れない。そうか!結界の一種で村を包んでいるんだわ。」

 どおりで村の存在が公になっていないはずだ、とリンは思った。

 「これでは、ミランダの呪文が分からなくては出て行くことも出来ないですね」

 アンリに言われてリンは気づいた。

 確かに先ほどアンリの元に手を伸ばしたときに、見えない壁に阻まれ、触れることが叶わなかった。

 「もう……進むしかないってことよね。」

 「とうにそのつもりでしたが、ここまで何の準備もしないで乗り込むことになるとは。。。」

 予想だにしなかった展開に、リンもアンリも状況を把握するので手一杯だというのが、二人に共通した思いであった。


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