表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
潜在人間(ジャックマン)①  作者: 竹橋 夢仁
28/38

監視

 


「では、事態の収拾は私に一任していただけますね」


 男は一音一音、有無を言わせぬ声色で台詞を読み上げた。その両耳にボルト固定された通信装置の繋ぐ先で、妹尾勤堂が諦めたように応じた。


(ああ、いいとも。僕は裏方かつふたりの傀儡だからね。こうして本部で踏ん反り返ってるだけのお飾りさ。査察さえ順調なら、現場の意向には口出ししないよ)


鎖巻竜吾さまきりゅうごもこちらへ回していただけると」


(構わない。これまた随分と念入りなことじゃないか。灰島が絡んでいるが、私情で下す判断ではないんだろう? 君に限って)


「私情は道化が持ち去ってそのままです。彼の罪を救い上げるのは私でしょうが、その随喜は個人的な感情によってではなく、先生という形の真理によって齎されます」


(4人のジャックも同意見なのかい)


「かつて存在した道化の詐病です。もう私の中にジャックはいません。会長はご存知でしょう」


(すまない、そんな気がしただけさ。――さてと、経営者の脱線に付き合わせることもあるまいよ。僕はもっと手頃な慰み物を探すから、君は君の仕事に戻るといい)


「お気遣いありがとうございます。次の報告は良い物となるでしょう」


(任せたよ)


 男は特定の記号を念じ、瞬時に通信の対象を切り替えた。また同時に、侵入者が敢えて残したと思われるデータコピーの痕跡を探る。ディスプレイには黒い男の映像。数日前まで死体の転がっていた監視室に、キーボードを叩く音が響いた。


「そうです。オービスの件は放置しなさい。方策でどうこうできる問題ではありません。あなた方はこれまで通り、私たちの眼となって執行官を追えば良いのです。カメラがコンビニエンスストアと故郷の市街地で執行官を捉えているのなら、協力者を特定することも必要です。双方の動向を急ぎ把握し伝えなさい。執行官は私が誘導し私の筋書きで私が回収します」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ