第15話:ダンジョンを突破するためのもっとも冴えたやり方
どんな攻略でも王道が一番早いと思います。
レベルを上げて、物理で殴れ。
奴が来た。
さて、そういうわけで状況はすっかり悪くなってしまった。
アスパーの加入によって第一階層はあっさりと突破されるようになり、アリアちゃんにとって鬼門だった第三階層も、とうとう突破されてしまった。
まぁ……これに関しては仕方がないと達観している。アリアちゃんとリチャードの力量はアトラスの旦那には及ばないが、フルアーマーの旦那だろうが鎧の隙間に致命攻撃をブチ込め、ナイフの投擲でニーナさんを屠れるようなシーフの加入がでか過ぎる。
体格と顔に見合わず、あの美少年は凄まじく強い。
第五階層に到達されたら、間違いなく門前までやってくるだろう。
一対一なら師匠も後れは取らないと思うが、数が数だけにやられる気がする。
そんなわけで、勇者アリア一行とまともに渡り合えるのは、ザッハとカンナさんだけとなった。なんだかんだと問題はあるものの、この二人はやっぱり頼りになる。
まぁ……それはそれとして、別の問題が発生しつつあるのだが。
「リチャード、ここはダンジョンの一部であって休憩所じゃないんだけど?」
「……頼むから休ませてくれ」
若干やつれたリチャードは、ぐったりと横になって突っ伏していた。
鎧は脱ぎ捨てているし、服は僕の部屋にあったTシャツと短パンで、スポーツジムに通うのが趣味な美形の留学生といった感じである。少なくとも勇者の面影はない。
氷の入ったコップにサイダーを注ぎながら、リチャードは息を吐いた。
「はぁ……美味い」
「相当疲れてるみたいだな」
「おおむね、貴様のせいだ。貴様がアリアを焚き付けたからこうなった……と、言いたいところだが元々そういう素養があったのだろうさ。勇者だからな」
「そういう素養?」
「自分の思った通りに事を成したいという欲求が、人より強いのさ」
言いながら、自嘲気味にリチャードは肩をすくめる。
この美形の勇者は物事をわりと客観的に見ることができる。頭に血が上りやすいタイプではあるのだが、頭が冷えている時はとことん冷静なので、挑戦者としては非常に厄介でやり辛い。
第五階層までにリチャードを倒せれば、師匠一人でもなんとかなると思うのだが。
「で、リチャードの見立てだとどうなのさ? 突破できそう?」
「それを敵であるお前に言うわけないだろ」
「んじゃ、聞き流してくれ。……僕はまだ無理だと思ってるってだけだから」
「ぐっ」
どうやら、図星らしい。
確かにアトラスの旦那とニーナさんに優位を取れるようになったのはでかい。しかし、今の段階で唯一の攻略方法が『火難ちゃんを生存させたまま第四階層に連れて行き、なんとかしてザッハに触れさせる』しかない。
そして、それは不可能に近い。
火難ちゃんはダンジョンのフロアボスの女性陣に滅茶苦茶嫌われているからである。
理由は分からないが、多分こまっしゃくれた小娘なのが原因だろう。大抵は第二階層でロックさんやプルートさんに倒されるし、第四階層まで生存していたとしてもザッハはあからさまに火難ちゃんを狙ってくる。
第五階層までのショートカットはもう使えない。妖精さんにも縄張りやルールがあるらしく、それを守らない不逞の妖精には各地から制裁が下ることになるそうな。
詳細は怖いので聞かなかったが、とにかく諸々あって使えなくなったらしい。
「まぁ、時間の問題だとは思うんだけどさ、その時間が経つ前に肝心要のリチャードが疲れ果ててたら意味がないかなと、ちょっと思ったり思わなかったり」
「ああ、そうだな……しかし、お前にだけは言われたくないぞ!」
「なんでさ?」
「大体お前のせいだと聞いているぞ!」
「いや、確かに僕のせいかもしれないけどさ、見栄を張ってアリアちゃんの成長速度に付き合ってあげるリチャードもいかんと思うな。疲れた時は疲れたってちゃんと言わないと誰も慮ってくれないぞ?」
「くっ……妹と同じことを言うな!」
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて、リチャードはソーダを飲み干した。
そして、二杯目を注いで半分まで飲み、息を吐いた。
「しかし……あと一歩なのは事実なんだ。もう少しで願いが叶う」
「国が欲しいんだっけ?」
「ああ。正確には、国が欲しいのではなく、王になって成したいことがある」
「で、王様になって寝首をかかれるってわけだ」
「…………おい」
「水を差すようで悪いけど、王様になるってのはそういうことだよ。民衆は我がままだから、悪政を敷くようなら即斬首だ。今より忙しくなるしストレスも溜まるしハゲるし太る。個人的には国仕えの騎士みたいなポジションの方がオススメだね」
「なんと言われようが、俺は王になる」
「んじゃ、まずはインフラを整えよう」
「は?」
「水路を引いて、道を整えて、畑と牧場と家を建てる。人間が求めているものは安心できる睡眠と、安定した食事と、適切な体温調節と、そこそこの仕事だ。それがないと生活が成り立たない。インフラは最低限必要だし、国として便利さも必要だろうさ。活気のある街や城ってのは、交通の要所だったり港があったり鉱山が近くにあったり、それ相応の利便性がある。そういう特色がない国はいずれ潰れるもんだ。あとは……国に仕事を引っ張れる優秀な人材が必要かな? お金をほどほどに貯蓄した上で経済を回せる、政治や経済に明るい人がいい。人材がいれば、他のことは後回しでもなんとかなるけどね」
「…………?」
「おい、頼むから黙るな。『なに言ってんだこいつ?』みたいな顔をするな! そんなに難しいこと言ってねぇから!」
賢そうに見える美青年が、意外とお馬鹿な面を見せるのは女性にモテるからやめろ。
王様になりたいんだったら、最低限やりたいことを実践できる知識か、実践してくれる教養のある人がいないとどうにもならないのだが……どうも勇者や英雄といった腕力で国を勝ち取った方々は、その辺の認識が不足しているようだ。
民衆は自分の生活さえ充足していれば、国の頭なんぞどーでもいいのである。
やりたい放題やって首を吊られる例など腐るほどあるのに、誰もが『俺だけは大丈夫』と勘違いを続けている。
温故知新とは、こういう時にこそ活用されるべき言葉だと思う。
「どーせ『ハーレム作りたい』みたいな理由だろうけど、程々にね?」
「半分は当たりだな……まぁ、なんだ。惚れた女にふさわしい男になりたいだけだ」
「………………」
それは実に男らしい理由だ。願いを求める理由としては、実に分かりやすい。
身の丈が合わないから、背伸びをする。
背伸びをするうちに、身の丈に合ってくる。
しかし、残念ながら人間には成長限界が存在する。もちろん、リチャードがそうだとは思わない。リチャードほどの勇者で届かないものなら、誰にだって届かないだろう。
それでも……いくら伸びをしようとも、届かないものがある。
『サブヒロイン戦鬼』よりもさらに醜悪で、冷酷で、残酷なものに阻まれる。
人は……どうでもいい他人になら、どんなことだってできるのだ。
と、そんな下らないことを考えるのに少し疲れたので、息を吐く。
「腹減ったし、飯でも食いに行くか?」
「いや、食いに行くのも億劫だから、カイネが作るというのはどうだろう?」
「どうだろうじゃねーよ、勇者様。ゴロゴロしてねぇで飯食う時くらい動け」
「確かにな……ここ最近はずっと入り浸ってたし、休んでいると勝手に最高に美味い飲み物やら食べ物が出てくるからな……。カイネ、実はお前は高貴な血筋の者なのか?」
「ねーよ。単純に『ワールド』の飯が美味すぎるだけだと思え」
「ところで、このサイダーという飲み物はどうやって作るんだ?」
「砂糖が安定供給されないと、とても作れたもんじゃねぇよ。シュワシュワする水に砂糖と酸味を加えて、香料で匂いをつけたもんだからな」
「では無理か。俺が作る国でこの飲み物が作れたら、実に素晴らしいだろうに……」
「そこで諦めるようじゃ王様は無理だな」
「……なんだと?」
「砂糖がないならある所から仕入れるか、自国で作ればいいんだ。不可能だと諦めずに、やるだけやってみようって感じでGOサイン出すのも、王様の仕事なんだぜ?」
「いや、それならそれでサイダーではなく酒を造るが……」
「酒は競争率激しいだろ。作るんなら定期的に飲まないと手が震えるようなものを作った方がいい。もちろん輸出専用で。戦争も有利になってお金も入る。一石二鳥だな」
「お前は悪魔か!?」
「失礼な。悪魔じゃなくてダンジョンのフロアボスだよ」
「あ……ああ。少なくとも大臣とかにはなるなよ? 絶対になるなよ!?」
それは僕の国では『押すなよ? 絶対に押すなよ!?』という振りに通じるものがあるのだが、恐らくリチャードは本気で言っている。
まぁ……僕のようなお馬鹿に権力を持たせてはいけない。それは当たり前のことだ。
と、そんな馬鹿話をしていると、不意に玄関のドアが開いた。
ダンジョンの方はともかく、僕が住んでいる家は小さいしあまり丈夫ではない鍵で施錠しているのでセキュリティの方はお察しなのだが、鍵を引き千切る勢いでドアを開くのは修理が面倒なのでやめて欲しい。
そして、案の定扉の向こうから姿を現したのは、ツンツン頭の勇者様だった。
「あっ! やっぱりここにいた! リチャードくん、サボっちゃ駄目だよ!」
「べ、別にサボっているわけではなくてな? カイネに昼飯に誘われたんだ! なぁ、カイネ? そうだよな!?」
「滅茶苦茶サボってサイダー飲んでました」
「おおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!?」
「すまねぇ……すまねぇ、リチャード。友達でもなんでもない男を庇ったとか、僕のプライドが許さんのだよ。むしろ今までチクらなかったことを温情だと思ってくれ」
「いや、確かにトモダチじゃないかもしれんが! それでもさぁ!」
「相手がアリアちゃんじゃなかったら庇ってたよ。リチャードだってそうだろ?」
「確かにそうだが、最近のアリアとの修行は苛烈過ぎて辛いんだよ!」
「リチャードくんがなかなか最秘奥を伝授してくれないのが悪いんだよ?」
「俺が必死に習得した秘伝をそんなに簡単に伝授できるわけないだろ! というか、あと二年くらいはみっちり教え込まないと無理だって!」
「じゃあ、最秘奥以外全部でいいよ。詠唱が少なくて利便性が高い魔法がいいな♪」
「カイネ! お前のせいでアリアがふてぶてしくなっただろ! なんとかしろ!」
「いや、アリアちゃんは最初から結構ふてぶてしかった気がするけど……」
「あ、カイネくん。飲み物あるんならボクにもちょうだい?」
「今の呟きは独り言じゃなくて、慎ましさ的なものを習得していただけるとありがたいという皮肉めいた言葉なんだけど……まぁいいや。飲み物は今しがたリチャードが飲んだサイダーで品切れだよ。次回の入荷をお待ちください」
「……リチャードくん。今日はとりあえず、日が暮れるまででいいよね?」
「嫌だあああああああああああぁぁぁぁぁ!」
一瞬で不機嫌顔になったアリアちゃんに引きずられて、リチャードは僕の部屋から連れ去られた。その表情は悲惨の二文字が似合うだったが……まぁ、仕方ないだろう。
あれが勇者アリアの『本気』である。
本気を出したら誰もついてこれなくなるので、普段は調子を合わせているのだ。
僕もよく『人より優れてるんだから劣ってる奴に合わせろよ』とは言うが、それが優れている人にとってとんでもないストレスになっていることは、知っている。
まぁ、これは才能ある奴に限った話じゃない。歩調の合わない他人と合わせて生きるというのはストレスが溜まるものなのだ。
ストレスが溜まらないように、人は歩調の合う誰かを選ぶ。
それができない時は、大体三つのパターンに分岐する。
ストレスを軽減しつつ歩調を合わせて歩く方法を学ぶ。これが普通の人間だ。
歩調を合わせることを放棄して自分のペースで歩く。これはただの馬鹿野郎である。
そして……最後の一つが『ストレスを感じながら歩き続ける』である。
どれが良いということでもなく、どれが悪いということでもない。他人と摩擦を起こさずにいられるならどんな方法を取ってもいい。
もっとも……他人以上に、自分自身と折り合いをつけられなければなんの意味もないけれど。
「……とりえず、アリアちゃんのことは後回しだ」
挑戦者の方はとりあえず様子見だ。アリアちゃんが今から頑張っても付け焼刃にしかならないし、最善を尽くしたところでできることなどたかが知れている。
本人もそれは重々承知した上で、鍛錬に勤しんでいる。
だから……今は別のことに備えよう。
最終的に突破されることになったとしても、ダンジョンのフロアボスとしてやるだけのことはやっておこう。
それこそが――僕がやらなければならないことでもある。
アリアちゃんが本気になってから三回目の挑戦で、彼女がやって来た。
彼女はまさに『招かれざる客』といった感じで、ダンジョンで着るには頭がおかしいとしか思えない清楚なメイド服に身を包んだ目の細い人で、凄まじく狡猾で凄まじく意地の悪い女だった。
あるいは……色々なものが死んでいるのかもしれない。
感覚とか感性とか価値観とか、そういったものを放棄しているのかもしれない。
「こんにちは。十分ぶりですね」
「………………」
口元を引きつらせる。重い息を吐く。第一階層担当の僕は疲れていた。
このメイド服の女は、某不思議っぽいダンジョン感覚で、死のうがどうしようが間を置かずにダンジョンに挑戦してくる。
考える間がない。どう考えても死ぬ要素のない、テキトーなところでわざと死んだりもするので、このメイドに対する有効な対処法が分からない。かといって高をくくってテキトーに罠を配置すると、あっさりと第二階層まで突破されたりする。そして、第二階層でやられて再び挑んでくる。
そもそも、死ぬほど痛いのにそれに耐えてダンジョンに何回も挑戦してくるのが異常極まりない。アリアちゃんだって一度やられば休憩は挟むし準備もするのだ。
人は痛みを恐れる。恐れなきゃいけない。
恐らく情報を入手するために挑んでいるのだろうが……このメイドのような生き物には大切ななにかが欠けていた。
「失礼な。私はお金をくれる人の味方なだけです」
「人の思考を勝手に読むんじゃねぇ。これだからメイドって人種は……それはそうと、三千円支払うから今日のところは帰ってもらえないかな?」
「全然足りませんね。私の要求する額は国家予算くらいですからね」
「国家予算ってのは国家クラスじゃないと扱っちゃいけないから国家予算なのであって、個人でそんな額を所有すると大抵破滅するよ」
「屁理屈クソボケ男は死ね」
「なんでいきなりキレたんだよ!? 情緒不安定過ぎるだろ!」
「私みたいな腐れ性格でメイドみたいな腐れ仕事に就いている人間がまともな人間関係など構築できるわけもなく、仕事一辺倒で通してなんとか自我を保っているものの、将来が不安で仕方がない。そんな人間の寄る辺など、もうお金しかないんですよ!?」
「生々しいよ! 素直なのは素敵だけど、少し自重してくれ!」
「正直、最近では若い子を見るとぶん殴りたくなります! これが老いか!」
「ただの僻みじゃねぇか」
「僻みとは失礼な! これだから気の利かない男は……『そんなことありません。十分お若いですよ』とか言えないんですか!?」
「金に傾倒し始めた時点でもう『若い』とは言い難いと思うよ」
「よく分かりました。ぶっ殺します」
「気に入らないことがあると即殺すって発想はメイドの共通見解なのかよ……。いや、僕より年上だと思うけど、十分若いだろ、アンタ」
メイド服を着ている奴は、どいつもこいつも凶悪である。
息を吐いて、メイド服の人を上から下まできっちりと観察する。
身長は僕より頭一つ半くらい下。上からしたまでかっちりとエプロンドレスを着こなしている。細いフレームの眼鏡と、それ見えてんの? と突っ込みたくなる細めが特徴的。どこからどう見ても美人だし若いのだが……まぁ、女性には色々あるのだろう。
綺麗なのに、もったいない。
「僕の知り合いにイケメンがいるんだけど、紹介しようか?」
「イケメンはちょっと……なんか、簡単に捨てられそうで怖いですし……」
「背の低い美少年もいるよ。国に帰れば役職に就いてるから将来も安泰」
「私より背が低いのはちょっと……」
「……結婚相手募集中の、年上の男性なら何人か知ってるけど」
「年上もなんかちょっと……なるべくなら年下が」
「お付き合いに一番不可欠な愛嬌が欠けてる人間が選り好みすんなや! っていうか、アンタ男と付き合ったことねぇだろ!? 明らかに怖がっちゃってるよねぇ!?」
「確かにありませんが、イメージは完璧です。死角はありません。あなたのような素人童貞とは違うのです。お付き合いさえできれば完璧にこなしてみせましょう」
「すげぇな……実戦経験皆無なのに、ここまで人は慢心できるもんなのか……」
確かに僕は色々と素人だが、似たような人に言われたくはない。
目くそ鼻くそを笑うとはよく言ったもんだ。
「えっと……アンタとは『ストーカーじみてしつこい挑戦者』っていう後腐れのない間柄だからぶっちゃけちゃうけど、なんていうか『金』『仕事』『効率』って感じで、人間的な可愛らしさとか愛嬌がこれっぽっちもないんだよね。彼氏が欲しいってのは普通のことだけど、そんな人間が白馬の王子様を求めるのは高望みが過ぎると思うんだ」
「……殺してやる」
「うん、ごめんね! 僕もちょっと強く言い過ぎたね! だから涙ぐみながら『殺してやる』は怖過ぎるからやめてくれねぇかな!?」
事実は時として、なによりも人の心を傷つける。
僕も事実から逃げ惑っている人間なのでどうこう言う資格はないし、思わず言いたいことを言ってしまったのだが、それは彼女も同じことである。
メイドの彼女は僕を睨み付けた。
「分かりました。では、あなたとお付き合いすることにしましょう」
「頭のどこをどういじったらそんな発想になるんだ!?」
「まぁ……まぁまぁ? あなたの言うことももっともですよ? 私は色々こじらせちゃってますとも。しかし、あなたはどうなのですか? そこまで偉そうなことを語るのなら実践はもちろんあるんでしょうね?」
「いや……うん……なきにしもあらず?」
「なら、その実践力でこじらせた私を満足させてみなさい。それとも、据え膳も食えずにゴチャゴチャ言う玉無し野郎は妄言だけはお得意なのでしょうかね?」
「……ほっほゥ?」
口元が怒りで歪む。
なるほど、確かにその通りだ。吐いた言葉の責任は取らねばならない。玉無し野郎などと言われて黙っていられるほど僕は人間ができていない。
メイドは完全に捨て身だ。事実を指摘され逆ギレするしかなくなったと言えば分かりやすい。理詰めで説得をしようとした相手をぶん殴って黙らせるようなものだが、法律や倫理さえなければ意外と有効な手段だ。
いつの時代も、話し合いより綺麗さっぱり滅ぼした方が怨恨が残らない。
とはいえ、付き合うのは論外だ。僕の心が折れる。
「よーし、いいだろう。お付き合いはとりあえず脇に置くけど、なんにも知らない初心な貴女にお付き合いの気分を味わってもらう程度には本気出しちゃおうかなぁ!」
「そう言ってえっちなことをするつもりでしょう?」
「しねーよ」
えっちはことはしない。少なくとも直接的なことは一切しないと断言しよう。
にっこり笑いながら、僕は手を差し出した。
「僕はカイネ=ムツ。しばらくの間、よろしくね♪」
「……この手はなんですか? お金ならあげませんよ?」
「本格的にこじらせてるなぁ……。握手だよ、握手。僕には害意を加えるつもりはありませんよーっていう意思表示」
「そんなことを言ってこちらを油断させ、えっちなことをするつもりでしょう?」
「……はい、握手」
「ひゃああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!?」
ツッコミを放棄して手を握っただけなのに、滅茶苦茶驚いていた。
その顔はリンゴかってくらいに真っ赤だ。
なんていうかこう……反応が初々しくてとても可愛い。
「い、いきなりなにをするんですか!? 破廉恥な!」
「握手くらいでそんなに驚かなくても……で、君の名前は? さっきからアンタとかお前とか言っちゃってるけど、正直呼びづらいから名前くらいは教えて欲しいな」
「……富良野冥途といいます。富豪の富と良好の良、野原の野であまの。冥府の冥に途中の途でめいどと読みます」
「ユニークな名前だね」
「素直におかしな名前と言ってくれた方が気分的に楽なんですがね……」
「いや、僕の方がちょっとアレな名前だし」
「ちなみに、どのような字を書くのですか?」
「陸奥はそのまま陸奥の国。買う値段と書いて買値と読むんだよね」
「生きる希望が湧いてきました!」
「そりゃ良かった。で……なにかしたいことはある?」
「へ?」
「ごっこ遊びとはいえ、体験版とはいえ、手は抜かない主義でね。メイドさんが彼氏にして欲しいこと、したいことを、なんでも叶えてあげよう」
「……な、なんでも?」
「なんでも」
「す……少し待ってください! なんだか嫌な予感がします!」
なにかを察したのか、メイドさんは慌てて僕から二歩引いた。臨戦態勢と言ってもいいし、すぐに逃げられる距離でもある。
こじらせているが、良い勘してやがる。
「っ……だ、第一階層の攻略方法など教えていただけませんか?」
「真面目だねぇ……質問を質問で返すようで悪いけど、メイドさんは利発そうな人だから第一階層以外の簡単な攻略法も、とっくに察しがついているんじゃないかな?」
「……それは」
「精鋭五人以上。全員が一つの目的に向かって一致団結すれば容易く攻略できる」
火難ちゃんがやったことを、そのまま踏襲すればいい。
このダンジョンには制限などない。ボスを倒さなくても先に進める。もちろんただでは進ませてくれないが、ボスと互角以上に戦える奴が『俺に任せて先に行け』を実行できるなら、実に容易く攻略できてしまうのだ。
「全ての道は王道に通じるってなもんでね。漫画やゲームみたいなことができれば攻略できるように調整してあるんだよ。それができないから挫折する。願いを、理想を叶えたければ、幻想みたいなことをしてみせればいいんだ」
「……滅茶苦茶言いますね」
「まぁ、僕は第一階層とその他担当だからね。他のフロアボスが具体的になにを考えているのかは分からないんだ。みんな切り札くらいは隠し持ってるだろうし」
「なるほど……よく分かりました」
「他にして欲しいことは?」
「……当然、特にありません!」
それだけ聞けば十分とばかりに、メイドさんは踵を返して脱兎のごとく逃げ出した。
まぁ、当然の反応だ。赤の他人と彼氏彼女ごっこなどできる人間はいない。
息を吐く。
しかしまぁ……それはそれとして、僕も舐められたもんである。
この僕が勝ち逃げを許すとでも思ったのか?
情報はくれてやった。心は置いて行ってもらう。
『怨身転嫁』
一歩でメイドさんに追いつき、腕を掴んで足を払い、そのまま抱き上げる。
抱き上げると同時に転嫁は解除し、お姫様抱っこした。
「な……い、いきなりなにをするんですかっ!?」
「ん? お姫様抱っこ、して欲しかったんじゃないの?」
「ッ!?」
「まぁ、確かにシチュエーションがちょっと色っぽくなかったね。もうちょっとロマンチックな場面で、素敵な感じに抱き上げた方がご所望だったかな?」
口元を緩める。軽やかに笑う。下心抜きで、彼女の求めているものを満たしてやる。
繰り返すが『サブヒロイン戦鬼』は、心残りの真正化生である。
例えば……恋人が欲しいとか、異性にこういうことをして欲しかったとか、そういうことも存分に含まれている。
恥ずかしくてそちらから言い出せないのなら仕方ない。
察して欲しいなら仕方ない。
構ってちゃんなら仕方ない。
察して、構って、甘やかし、刃のように薄く丁寧に丹念に叩いてやろう。
メイドさんに第一階層は完全に突破されてしまったが、それならそれでいくらでもやりようはあるというところを、見せてやろう。
あまり見せたくはないけれど……昔取った杵柄というやつだ。
実力や知恵で届かないのなら、まずはその心を砕く。
「さて、それじゃあ始めようか、体験版とて容赦せず、ごっこ遊びとて本気で往こう。僕は君の彼氏になろう。時間限定ではあるけれど、君の望みを全部叶えてあげる」
「ひゃあああぁぁっ!? か、顔が近いです! 近過ぎます!」
「じゃ、とりあえずお茶でも飲みに行こうか?」
僕は笑う。昔のように。己を捨てて口元を緩めた。
久しぶりに、誰かのために……誰かの望む『誰か』になることにした。
藁葺火難は頭を抱えていた。
現状ではダンジョンは突破できない。それは火難が一番思い知っていたし、自分が一番の足手まといであることも自覚している。いっそのこと自分は指示だけ出して、勇者三人だけをダンジョンに挑戦させ続ければいずれは……と、そんなことを思いもしたが、第四階層の壁は思った以上に厚かった。
火難がいなければ第四階層突破は不可能だと言われるくらいに、厚かった。
第一階層は問題なく突破できる。しかし、能力以外は並の女子中学生の能力しか持たない火難では第二階層と第三階層の『ささやかな』トラップや雑魚敵であっても、容易く殺されてしまう。特に火難は執拗に狙われているようで、無事なまま第四階層に到達できたことは片手で数えるほどしかない。
だからこそ……第四階層突破に焦点を当て、他の階層での負担を少しでも軽くするために、メイドに大金を払った。
しかし、ダンジョンの調査を始めた翌日、返金された。
仕事も放りだして有給休暇を取ったメイドは、布団で丸くなる駄目人間と化した。
「あのさ……メイド。仕事はもうどうでもいいんだけど……大丈夫?」
「……だいじょうぶではありませぬ。わたしはもうだめです」
「一体全体なにがあったのよ?」
「あの男は魔性の者。うかつに近寄ってはいけないものだったのです……あんな、あんな恥ずかしいことを平気な顔で! 乙女ゲーのキャラか!?」
「口説かれて骨抜きにされたってこと?」
「HAHAHA。まさかそんな……私はこう見えてもにじゅうよんさいですよ? あんな男に骨抜きにされるなんて……あ……ありえませにゅ!」
「呂律が回ってないわよ、二十四歳」
「お嬢様も耳元で色々囁かれてみればいいのです。知っていますか? 人間は興奮し過ぎると本当に鼻血が出るのです。比喩表現ではないのです」
「……そ、そういうもんかしら?」
「壁ドンとか鼻で笑っていた自分が恥ずかしい!」
「………………」
火難はあえて何も言わなかった。壁ドンは本来壁の薄いアパートでうるさい隣人に対する警告だとか、そういうことも言わなかった。
それは、火難が見せる身内に対する優しさである。
(しかしあの男……女の子を口説くなんて真似ができる男だったの?)
お付き合いとか無理ですぅと平気な顔でほざく駄目男である。女性に対する態度は柔らかいが、それは『自衛』だと火難は思っていた。
女性に対して怖がっているからこそ、人当たりが良い。そういうことはよくある。
(なんか私の時と対応違ってて腹立つわね……)
少しだけイラッとしたが、火難はすぐに思考を切り替えた。
ダンジョンの調査もロクに進まないまま、一番あてになりそうな戦力がリタイア。
痛手以外のなにものでもない。
「お嬢様は本当に軽率ですね。戦力の逐次投入はアホのやることだって、それ一番言われてますからね」
「……唐突に天井から登場は心臓に悪いからやめなさい。紫炎」
「あらあら~、今日は薄い桃色ですね~」
「アスラ、前触れなくスカートをめくるのはやめてくれないかしら!?」
顔を真っ赤にしながら、火難は口元を引きつらせた。
一人は黒装束の女。全身これ鋼といった感じで引き締まっているが、なにより異質なのは天井にぶら下がって平然としているということ。髪の色は黒で、火難が知る限りその目は誰よりも鋭い。
紫炎。このご時世に忍者と名乗る彼女。
一人は高級そうな白いローブに身を包んだ女。長い栗色のふわふわとした髪の毛に赤と青のオッドアイ。女子の中でも身長が低い方に入る火難より、さらに身長は低い。
が、胸は大きい。
アスラ。このご時世に賢者を名乗る彼女。
「私としては~、ザムザちゃんをもう一度行かせるのが一番だと思うの~」
「本人が嫌がってるから、あんまり行かせたくないのよね」
「奴は四天王にも入れない末席の者……どうせまた失敗するであろう」
「私としては四天王ってなによ? って感じなんだけど……そもそも、メイドがいない今この家で家事ができるのはザムザっちしかいないんだけど、二人とも私が満足できる料理が作れるのかしら?」
『………………』
忍者と賢者は即座に目を逸らした。忍者と賢者のくせに、駄目人間であった。
息を吐いて、火難は二人を見据えた。
「まぁ、私にとってはお遊びみたいなもんだし、テキトーにやるからあなたたちは手出し禁止。そもそもキリエちゃんが敗退した時点で手を引いた方が良かった気もするけど」
「火難ちゃんは、ものすごくむきになりますからね~」
「そーね。反省はしてるわ。だからといって攻略を諦めるわけじゃないけど」
「うんうん、殊勝になってお姉さん嬉しいわ~。そんな火難ちゃんにプレゼントがあります~」
「プレゼント?」
「私と紫炎ちゃんの二人がかりで、ようやく捕獲に成功したのよ~」
「うむ。お嬢様のために頑張ったぞ」
「……ハハハ。また私が頭を下げなきゃいけない案件かしら?」
恐ろしいことに、この藁葺家では火難がツッコミ役である。
あまりにも個性が強過ぎて爪はじきにされていたメンツを寄せ集めた結果、そのしわ寄せが自分のところに来るようになってしまったのだった。
いつもならメイドがなんとでもしてくれるのだが、しばらくはフォローも望めない。
(四面楚歌ってやつかしら……)
息を吐き、それでも火難は少しだけ踏ん張ることにした。
「で、プレゼントってなによ?」
「俺らしいぞ」
「……へ」
首筋に冷たい感触。刃物のようなものを押し当てられている。
後ろを振り向くと、そこには男が立っていた。
汚れた旅装束と頑丈そうなブーツ。ぼさぼさでくすんだ灰色の髪に、荒んだ目つき。
そして、桜色の鱗と冗談みたいな大きさの爪が生えた、異形の左腕。
薄汚れたと表現すればその通りだ。お洒落や格好よさからはかけ離れた男。しかし……その目の奥には決然たる覚悟が見て取れる。
使い込まれ、研ぎ澄まされ続けてきた『男』の姿が、そこにあった。
「しかし……人間を贈答物にするのは感心しないな。俺は嫁のもんだ」
「あら~? どうやって私の空間閉鎖から抜け出したのかしら~?」
「俺の左腕の持ち主は地龍と水龍のハーフなんだよ。人間が体現できる魔法程度は容易く打ち破れるさ。……っと、下手に動くなよ。動いたらこの子を殺す」
首筋に爪を食い込ませながら、彼はきっぱりと言い放った。
もちろん、今の状況なら火難が能力を使えばそれで済む。しかし……アスラが『プレゼント』と言い張るくらいの男だ。
利用できれば、火難にとって利がある。
「アスラ。どうしてこの人を連れて来たの?」
「第三階層まで単独で突破した人らしいのよ~」
「……なるほど」
「なるほどじゃない。まさかとは思うが、あのダンジョンを突破するのに俺の力を貸せとか、そういう話じゃないだろうな?」
「嫌なの?」
「嫌だね。力づくってのが気に入らないな」
「取引をしましょう」
「断る。なんか君、性格悪そうだしな」
「……あ、あなたの願いをなんでも叶えてあげるから、力を貸してくれない?」
「友達を選べ」
「選んでたらこうなってたのよ! 私の周囲には聖人みたいな良い子か、アホみたいに素直だけどアホみたいに周囲に迷惑をかける子か、性格最悪なのしか寄ってこないの!」
「……それじゃあ仕方ないな。友達は選べないからな……やれやれだ」
タツヤは苦笑を浮かべて、目を細めた。
「条件が三つある」
「条件?」
「一つ、前払いで俺の嫁の情報を寄越せ。桜色の鱗を持つ龍なんだが、人間に偽装している可能性もある」
「分かったわ。私の持ち得る限りの力で調査してみる」
「二つ、俺は第四階層担当だ」
「なんで?」
「話を聞く限り、第四階層は『龍』が相手だ。俺は『龍殺し(ドラゴンキラー)』が使えるから、一番楽な相手なんだよ」
「分かったわ……もう一つは?」
「三つ、今ある戦力の情報を全部こちらに寄越せ。その上で俺が突破方法を考える」
「あなたにそれができるの?」
「できる。俺の嫁は知識の龍と呼ばれる地龍の血が混ざっているからか、凄まじく賢い。俺が考えなくても腕の方が勝手に回答を出してくれるくらいだ」
「ものすごく便利ね……」
「ああ……便利過ぎて反吐が出る。俺は最適解なぞどうでもいい。知識なんてものは時間をかけて、魂に一つずつ刻み込まなきゃなんの意味もない。こんな腕は一刻も早く嫁に返したいが居場所すら分からん」
「その腕、私に預けてみ……えっと、やっぱりなんでもないわ」
首筋に強めに爪を立てられて、火難は口を閉ざした。
(……この男、結構危険ね)
こんな状況だから仕方がないと言われればその通りだが、言動や行動にまるで躊躇がない。カイネは『復活するから』という前提があるから好き放題やっているが、タツヤは理由さえあれば、最悪殺すことすら躊躇しないだろう。
その機会が『幸運にも』なかっただけで、覚悟を決めている人間である。
そして、アリアやリチャードに引けを取らない賢者の拘束から難なく抜け出し、忍者さえ出し抜いた。単独で第三階層まで到達したというのも頷ける。
火難が納得していると、不意に首に添えられていた爪が離れた。
「ところで、お嬢ちゃん。なにか叶えたい願い事でもあるのか?」
「私にはないわ。ただ、一泡吹かせたい男がいるのよ」
「なるほど……まぁ、カイネの自業自得だから俺からはなにも言わんが……それはともかくとしてだな、お嬢ちゃんはあのダンジョンをどう思う?」
「どう思うって……別にどうも思わないわ。過去の伝承やらその辺を探っても、あのダンジョンで願いを叶えた奴が統一国家とか作ったり真魔名乗ったりしてるし、少なくとも願いを叶えてくれるっていうのは、わりと信憑性のある話よ」
「なんでそんなことをする必要があるんだろうな?」
「は?」
「まぁ、これが俺がダンジョン攻略を諦めた本当の理由でね……嫁を探すのが最優先だったし、アトラスの旦那のスキルをある程度盗めたからってのもあるんだが……」
そこで一端言葉を区切って、タツヤは共に言葉を続けた。
「願いを叶えるっていう美味しい餌をぶら下げて、挑戦者とボスを殺し合わせて、一体なにがしたいんだろうな?」
それは、火難も薄々感じていたことではあった。
美味しい話には裏がある。ダンジョン突破を目指していた時は願いさえ叶えばどうでも良かったし、今はダンジョンそのものに拘ってはいないので、疑問を棚上げしていた。
「願いさえ叶えばなんでもいいと割り切ればいいだけなんだろうが、どうも都合の良い話には懐疑的でな……なにがあるか分からないから、警戒だけはしておきたい」
「あれだけ啖呵切っておきながら、怖いの?」
「怖いね。俺の身内が不幸になるようなことは全部怖い。君は違うのか?」
「………………」
違わない。変な友達しかいないが、友達を失うようなことはもうしたくない。
今は痛切にそう思っている火難だったが、気恥ずかしいので口には出せなかった。
口を閉ざした火難の首筋から爪が離れる。
火難は振り向いて、タツヤの顔を見た。
なんだかんだ言いながらも、その表情には決然とした覚悟があった。
「一緒に戦ってくれるのよね?」
「ああ。嫁の情報も欲しいが……俺も男なんでな。負けっぱなしってのは悔しい」
「んじゃ、よろしく」
「ああ、よろしく」
火難は左手を差し出し、タツヤは火難の手を握った。
「……龍の腕って初めて触ったけど、ものすごく良い触り心地よね。鱗とか固そうに見えるけど絹みたいに滑らかだし、少しふかふかしてる」
「俺の嫁の腕だからな。当然だ。ちなみに体の方はもっと柔らかい」
「あの……ちょいちょい嫁自慢を挟まないと会話ができない体質なのかしら?」
「藁葺ちゃんもいつかこうなるんだぞ?」
「絶っ対にならないわ!」
少女は叫び、男は笑う。
かくて……役者は揃い、ダンジョン史上初となる総力戦が始まる。
●登場人物紹介&裏設定
・カイネ=ムツ
ダンジョンの管理人。どんどん駄目人間が露呈していく、駄目人間。
リチャードのことをボロクソに言っていたが、人のことはとても言えない。
絶食しているだけの肉食系。お付き合いその他等の一切を絶っているだけで、好みの女性を口説けるタイプの男である。
・リチャード・キンブリー
シャンバラにおける名誉称号である『勇者』の一人。
アリアに付き合っているうちに『シャンバラ』でも上から数えた方が早いくらいの実力者に成長しつつあるのだが、本人だけが気づいていない。
攻防魔ボケツッコミとなんでもできるので、作者的に非常に扱いやすい。
・アリア
勇者アレン。ツンツン頭の少女。腹ペコキャラ。
なにかを隠していた少女。怒っている少女。
当たり前のように話しているように見えるが、怒っているし怒りも収めていない。
男女問わず、人は根に持ち怒り続ける。
自分の中で折り合いをつけられるようになるまで。
・藁葺火難
実はツッコミだった中学生の少女。特技は悪巧み。
本人が極端な性格のためか、両極端な友達しかいないのが悩み。
触れることさえできればカイネを除く全員を突破できる可能性を持つが、ダンジョンの女性陣(特にザッハとアナさん)からマジで嫌われているため、第四階層に到達することすら稀。
嫌われている理由は……まぁ、お察しである。
・富良野冥途
ちょろイン。四天王の一。藁葺家に雇われているパートタイマーのメイド。
異性への耐性が皆無だったため、精神攻撃により敗北。
なお、彼女が健在なら火難ちゃんを生存させたまま第四階層に到達できるくらいには情報が集まったはずなのだが……なぜかそうはならなかった。
プロット段階では彼女がいればリチャード君と愉快な仲間たちで十分に突破できそうな予定だったんですよ! 情報さえ集められればネックはカンナさんだけだったのに!
このダンジョンの設定を作った馬鹿は誰だぁ!(自業自得)。
・紫炎
四天王の三。藁葺家に雇われている忍者。
このご時世に忍者である。くの一ではなく忍者である。
忍者のくせに任務を物理で解決し続けた結果、里を追われて火難に拾われた。
『ワールド』出身。メイドと忍者は『ワールド』出身である。
放っておくと要らんことばっかりする人。
戦闘力は随一なのだが、匂いフェチスーツ萌えの火難の要望を蹴って忍装束を固持したため、四天王の三番目に落ち着いた。
・アスラ
四天王の四。藁葺家の家庭教師として雇われている賢者。
このご時世に賢者であるが、賢そうにはとても見えない。
賢者のくせに賢者らしいことは何一つせず、諸々の失敗で財政的に国を傾けた結果、国を追われて火難に拾われた。
放っておくと余計なことばっかりする人。
『シャンバラ』出身。
チート気味に使えるスキルを多数有するが、匂いフェチスーツ萌えの火難の要望を蹴ってお気に入りのローブを固持したため、四天王の四番目に落ち着いた。
・長門辰也
第三階層まで突破した桜色の龍腕を持つ男。
リチャード君と愉快な仲間たちの最終メンバー。舌の根も乾かぬうちに再登場させる羽目になったのは作者の自業自得である。チックショウ。
前回、『アトラスのスキルをパクるため』にダンジョンを訪れた人。
なお、彼がラーニングできるスキルは、彼の努力で再現できる範囲に留まる。簡単な魔法や技術ならなんとでもなるが、固有能力や大魔法は無理である。
腕の持ち主である彼の嫁は固有能力も解析して容易く使用したらしい。
そういうわけで、次回から『リチャードと愉快な仲間たち』によるダンジョンの攻略開始……とはいかない模様。毎回コメディみたいなもんですが、コメディパートを一つ挟むことになります。
ネタを挟まないと死んじゃう病気なのでお許しくださいww




