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なんちゃって  作者: きいまき
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 皇城を中心に何かざわめいていると思ったら、守護神の御成りらしい。

 知らせを受けた皇族の血を持つ者達が、続々と皇城へと入って行った。


 そしてその逆に、神がいなくなるまで、六の君は皇城から御出座しにならない。

 御出座しにならない日は、もちろん今までもあったが、神という1つの存在に、掛かりっきりだと思うと、ひっじょ~に面白くないものを感じる。


 よし、もし六の君付に留まれていたら……と妄想しよう。


***


 昨夜は遅くまで神の接待に就いていたから、疲れているのだろう。

 六の君はまだ眠っていた。


 一体、何日顕現し続ける気なのか、今日も全ての予定を打っ棄って、昨日に引き続き、接待に戻らなくてはならない。


 そう思うと、六の君に少しでも長く、睡眠を取って欲しかったが、さすがにもう起こさなくてはならなかった。


「起床の御時間です、六の君」

 声を掛けても、ピクリとも体が動かなかったので、更に寝台へ近づいた。


 途端に腕を捕まれ、六の君の方へ勢いよく引っ張られた。


「目覚めの口付けはしてくれないのか、愛しい人?」

「必要ないでしょう、もう起きていらっしゃるんですから」


 と軽口を返しつつも、今度は己から顔を寄せ、六の君の唇にちゅっとする。


***


 ぐふふ、なんちゃってな~。


 六の君に御仕えする己の図。

 ドサクサに紛れ、偶然を装い、御触りしたり、ちゃっかり視姦。


 そういう事が出来放題だったのに、己ときたら……っ。

 この苛立ちを魔にぶつけるだけじゃ、今日は足りないぞっ!


 ここは、いっちょ殴り込みじゃ~っ!


***


「申し上げますッ! 皇族を何人侍らせれば、気が済むのですかッ?」


 声を張り上げて、神に突撃した。


 このハーレム神めッ!

 ビックリしていやがる、ざまあみろッ!


 今日の己はいつになく攻撃的だぞ~。

 でも妄想内とはいえ、一応神相手だから、敬語だけどな~。


「初代の血さえ引いていれば、何でも良いと仰る? 何でも良い内の1人くらい、わたくしに御寄越し下さいッ。ちなみに六の君が欲しいですッ!」


 おっと、本音がだだ漏れた。


「え? あ? え~っと? 六の君って、ファイ?」

「!!」


 あっ、名前を呼びやがったな、チクショ~っ!

 六の君は自分のものだっていうアピールかよ、腹立つ~~~。


 神に呼ばれた六の君は驚き、それから己に気が付いて、目を見開いた直後、神と己との間に割り込んでくれる。


「神よ。この者が何か粗相でも? お叱りならば、私がお受けします」

「えっ。やだな、引き摺り込まれたのは俺の方だってぇ。こういうのも、たまには面白いから問題なぁい」


 神は、六の君とその後ろにいる己を見、そしてワザとらしく咳払いをした。


「え~、ごほん。それで、どうなのかなぁ? 別に好き合ってるなら、いいんじゃね? 俺からの許しなんか、いらねぇよ?」


 その言葉に思いっ切り拍子抜けした。

 さすが妄想、呆気なさ過ぎる。


 だが己の妄想なのに、いとも簡単に六の君を手放した神へと、ふつふつ反発心が沸いてしまった。


「皇族はもう何代も、神から見捨てられぬ様に尽くして。その上、皇族同士の結婚を続けているというのに、それをアッサリ……ッ」


 六の君はもらっていいと言うのだから、そこで大人しく引き下がれば良かったのだが、悔しくて言い切る。

 たぶん神が想像していたよりも、全く威厳がなく、ノリが己と少し似ていて、砕けているせいもあった。


 ……あ、れ?


 想像していたよりも、って何だ?

 妄想内なのに、想像と違うっておかしくないか?


 威厳たっぷり相手に、それを押して物申した方が、絵になるのに?

 こう思った時点で、何で神の姿が変わらない?


「ええッ?」


 そんな風な疑問は、神の素っ頓狂な声で一旦停止した。


「いっつも大歓迎してくれるしぃ、ナフィの面影を見つけると、ついつい喜んじゃったのがマズかったかぁ。近親婚は止めといてぇね」


 そのまま語る神の話によれば……。


 我が皇国の神は、大災害を起こさない様にする仕事で、手一杯。

 もっと強力な神だと、時間を一定方向しか流さない様に、とか、星が引っ繰り返ったりしない様にとか、勤めているらしい。


 そんな能力差に落ち込んだりで、ついつい癒しを求め、初代との間に生まれた子孫の様子を見に来るだけ。

 例え皇族が手のひらを返しても、人間にとっては長い時間の中で、神の存在を忘れてしまっても、皇国の守護は仕事と割り切って続ける。


「……と、思う。たぶんねぇ。とにかく縛ってるつもりは、なかったんだよぉ」


 だそうだ。


「今の御話はここだけではなく、皆にも伝えて頂けるのでしょうか?」

「もちの、ろぉん!」


「ラガを私の伴侶に認めるという件も?」

「ふふ。そこは絶対に、まっかせてぇ!」


 しっかり念を押している六の君と、神との会話を目の前で見ながら、己の呼吸が浅くなっていく。

 せっかく六の君に名前を呼んでもらったけれど、急激にではなく、緩やかに意識を失いそうだ。


「ラガ。あぁ、愛しい人。その顔はもう気付いているね。考えた事はなかったかい? 気絶で、ろくに見られなかったはずの私の顔を、どうして細かに思い浮かべられるのか?」


「……それ、は」


 絵姿を見て。

 そう答えようとして、でも正直なところ、絵姿の六の君を見て、いつも何か違うと思わずにはいられなくて……。


 それでも、買うのだが~。

 その時々によって違う、衣服や装飾は、妄想力でカバー……という事にしたいっ。


 そんな逃げの一手は、簡単に六の君に読まれてしまった。


「まさか神をも引き寄せるほどの、能力があるとは思っていなかったが、そなたは自分の精神世界に、私の魂を呼んでいるのだよ。逆に私の精神世界に、飛び込んで来てくれる時もある」


 薄々察してというよりむしろ、あえて確信したくなかった正解を、六の君から告げられた。


「神からの承認は頂けた事だし、次に会う時が楽しみだ」

「……ぁぅ」


 い~や~~~っ。

 壮絶に嬉しそうな、それでいて、所謂どことなくイイ笑顔で、頬を撫で撫でされた~~~っ。

 唇をなぞられっていうか……六の君の、か、顔っ、近いッ!!


***


 なっ、ななななななんちゃってぇ~~~~~。

 妄想ここに極まり過ぎだって……だよな? 妄想だよなっ?





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