国軍との会議
アルフレードの視点です。
今日、私は国軍と合同会議のため国軍の建物へ訪れた。
国軍の建物内部は魔導師団の建物と同じ内容で中央が階段になっている。
1階は装備品を置いてある装備品室がある。軍の装備は剣種、槍種、鉾種、弓種などが主で国軍と近衛兵団とが共同で使用している。
2階は軍団員の控え室及び訓練室とになっている。国軍と近衛兵団とはあまり仲が良くないため、たまに小競り合いが起きることもある。いわゆる場所取りなど私にとってはどうでも良さそうなことでケンカしている。『そんな時間があれば訓練でもしろっ!』と言いたいが、近衛兵団は私の管轄でないので国軍にだけ言ってもしょうがない。団体での訓練は外の訓練場で行っている。外の訓練場は国軍の建物と寮の間にある。ちなみに寮も国軍とで近衛兵団が共同している。
3階は中央の階段で別れていて正面からみて右側が近衛兵団、左側が国軍で別れている。それぞれ階段に近い2部屋は会議室で奥にいくごとに副団長の執務室とプライベートルーム、団長の執務室とプライベートルームになっている。
私が行ったのは左側国軍の会議室である。会議室の中は10人ぐらいが余裕で座れるぐらいの円卓があり、今日の会議のメンバーは私と国軍の軍団長のヘイダル・ジダンと副軍団長のロメオ・ウォルシュとの他に国軍の隊長クラスの者5人とで会議を行った。
話は変わるが国軍の軍団長のヘイダル・ジダンは我が国の国王ラシード・ワルドとは従兄弟であり、ラシード王がいつも身代わりにヘイダルを使っている。ラシード王とヘイダルは姿形がそっくりでよく間違えられるほどだからだ。よく見ればヘイダルの方が少し高いのだが……。そのためだと言うのか、ラシード王は最近王宮を勝手に抜け出しては街に遊びに行き、いかがわしいところに出入りし自分のすべき責務をまっとうせず遊び呆けて、女遊びに興じていると王宮の者達が嘆いているのを耳にすることが多くなった。そしてまた、気に入った女は後宮に連れ帰りラシード王はその女と共に後宮に籠りきり執務をしない。またその女に飽きると後宮を追い出すように放り出し自分はまた街へと繰り出すと王宮の者達が噂をしていた。今のところ後宮には女はいないらしいが、私にとってはどうでもよい。私との月に一度行う国王への謁見の日をすっぽかさなければな。さすがにラシード王もその日は居なくなることはないが、もしそのようなことがあればたとえラシード王であっても容赦はしないがな。
そういえば朝からここに来ているがシノは大丈夫だろうか?今日から少しシノの行動範囲を拡げるため、結界の範囲を建物内部に拡げた。シノが今日1日建物内部を見学していると言っていたので、夕食時にでもシノと話をするのも良いだろう。
シノが来て以来ほとんど毎日私は、シノと食事をともにしているがたまに私一人きりで食べる時がある。そんな時なんだか食事が味気ない感じがする。今まで一人きりで食べていた時はそんなことを思ったこともなかったのに、シノが来てからはそう感じてしまうのはなぜだろうか……?
あれほど面倒だと思っていた子供の世話を、この私が苦にもせずやっているのだからな。自分でもシノが来てから変わったように思える……。特に泣いている子供はどうも苦手で近寄るのも嫌だが、シノが泣いていると無性に泣き止むまでギュッと抱きしめていたくなる。だが、淋しそうにしていたり今にも泣き出しそうな顔を見たことはあるが、まだ私の前でシノが泣いたことがない。もし、そんなことがあったらさきほど述べたように泣き止むまで抱きしめていよう。そして泣いた原因を私の手で取り除いてやろう。
ふっ、私としたことが会議中だというのにシノのことばかり考えているな。なんだかナミルみたいなことをしているな(苦笑)、集中しなければ……。
◇◆◇◆◇◆◇◆
やっと長い会議が終わった。まずは魔導師団の副団長のナミル・コルトーに会い今日の報告などを聞かなければな!その後はシノと一緒に食事をし、シノが今日していたことをゆっくり聞こう。
私はナミル・コルトーの執務室に来た。私はナミルの執務机の前に立ちナミルの報告を聞いた。
「アルフレート団長。お帰りなさい。お疲れ様です」
「ナミル。今日は何も変わりはなかったか?」
「アルフレート団長。特に今日は何も変わりなかったですよ。シノちゃんが俺の部屋に来てくれたぐらいですかね」
と、ナミルはニヤニヤと笑いながら答えた。
「今日までの書類整理はできてるか?」
と、私が尋ねたら今まで笑っていたナミルが一瞬で顔色を青くし
「あっ………。うーー………。すみません。まだできてないです………」
と、ナミルは最後はだんだん小さな声で答えていた。
「ナミルっ。今日1日何をやっていた?あぁ?」
「午前中はちゃんとしていましたよ!あー。シノちゃんが俺の部屋に来てくれたあとは、ちょっとしかできなくて…………はははっ」
ダーーーンッ
私はだんだんと手がふるふると震え、ナミルの執務机を思いっきり殴っていた。
「ヒィーーッ」
ナミルは椅子から転げ落ち、ガタガタと震えながら徐々に顔面を蒼白にしていた。
「ナミルッ。いい加減にしろっ!最近、お前はたるんでいるっ!今日中に書類整理を終わらせろっ!良いな!」
「はいっーっ!」
「もし、今日中にできなかった場合。お前は明日特別訓練を、この私が直々にしてやるから覚悟しろ!解ったか!」
ナミルは勢いよく立ち私に敬礼をしながら
「わかりました!」
と、ナミルは答えた。私は軽く頭を振り大きな溜め息を吐きながら、ナミルの執務室をあとにした。